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祝!TPP交渉決裂 Josef 15/8/3(月) 21:30
  Re(1):祝!TPP交渉決裂(交渉下手) Josef 15/8/4(火) 12:31
  Re(1):祝!TPP交渉決裂 バジル二世 15/8/31(月) 15:01
   Re(2):祝!TPP交渉決裂 Josef 15/9/8(火) 17:26
   Re(2):祝!TPP交渉決裂 Josef 15/9/8(火) 19:29
   Re(2):祝!TPP交渉決裂 Josef 15/9/9(水) 20:01
   Re(3):祝!TPP交渉決裂 バジル二世 15/9/11(金) 14:53
   Re(4):祝!TPP交渉決裂 Josef 15/9/18(金) 18:50
   Re(5):祝!TPP交渉決裂 バジル二世 15/9/27(日) 20:06
   Re(6):祝!TPP交渉決裂 バジル二世 15/9/28(月) 6:50
   Re(7):祝!TPP交渉決裂 Josef 15/9/30(水) 19:01
   Re(8):祝!TPP交渉決裂 Josef 15/10/1(木) 19:29
   Re(9):祝!TPP交渉決裂 バジル二世 15/10/9(金) 22:47
   Re(10):祝!TPP交渉決裂 Josef 15/10/16(金) 19:03
   Re(11):祝!TPP交渉決裂 バジル二世 15/10/20(火) 20:38
   Re(12):祝!TPP交渉決裂 Josef 15/10/23(金) 19:27
   Re(13):祝!TPP交渉決裂 バジル二世 15/10/26(月) 22:59
   Re(14):祝!TPP交渉決裂 バジル二世 15/10/28(水) 13:36
   Re(13):祝!TPP交渉決裂 バジル二世 15/10/29(木) 12:27 [添付]
    Re(14):祝!TPP交渉決裂 Josef 15/10/30(金) 17:23
    Re(15):祝!TPP交渉決裂 バジル二世 15/11/12(木) 4:28
    Re(16):祝!TPP交渉決裂 バジル二世 15/11/16(月) 21:50
    Re(17):祝!TPP交渉決裂 バジル二世 15/11/17(火) 1:48
    Re(18):祝!TPP交渉決裂 Josef 15/11/18(水) 18:05
    Re(19):臆病者の罠(祝!TPP交渉決裂) Josef 15/11/20(金) 18:37
    Re(20):臆病者の罠(祝!TPP交渉決裂) バジル二世 15/11/20(金) 22:23
   Re(12):祝!TPP交渉決裂 バジル二世 19/1/20(日) 10:40
   功成り名を遂げた後のミクロ回帰 バジル二世 19/1/24(木) 7:57

祝!TPP交渉決裂
 Josef  - 15/8/3(月) 21:30 -

引用なし
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   まだ終わったわけじゃないから「祝!」は早いですが、ひとまず合意に辿りつかなかったことを喜びたいと思います。といっても、「いずれそのうち」という雰囲気がある限り、日本の一次産業が衰退していくことに変わりはないでしょう。はっきり決裂して終わり!としてほしいものです。

しばらく前、ナナコさんが家庭菜園をやっているという書き込みに絡めて、私はこう書きました(検索してみると2009年6月15日。そんな昔だったっけ?)。

>農業はしっかり保護すべきです。ヨーロッパに行ってきた学生なんかがよく「あっちは野菜や果物が安い、おまけに劇場も安い、なのに日本は・・・」と羨ましがったりしてますが、保護(援助)されてることを知らないんですね。

「食」は生きていく上での基本中の基本。国民の「食」を国民みんなで守っていくのは当然のことです。ヨーロッパで野菜や果物が安いのは、市場価格を低く抑え、その代わり農家に国が直接報酬を支払うという形をとっているからです。もちろん農家に支払われるお金を調達するために、消費税は日本よりずっと高い。ドイツの農家は収入の8割以上が国から支給されています。フランスに至っては優に9割を超えると言われています。こうした手厚い保護があってはじめて、たとえば広大な葡萄畑が維持され、質の高いワインが安く提供される。

対して日本は保護があまりにも薄く、ただでさえ後継者は減る一方、そこに「日本の農業は保護されすぎている」という栃狂ったデタラメ言説がまかり通って、農村は荒廃し、今や食料自給率は先進国中最低クラスとなっています。

日本はTPPみたいな馬鹿げたグローバリズム(=国境なき金儲け至上主義)に血道を上げるのではなく、しっかり足もとを見て、日本の一次産業を立て直す努力を始めるべきなのです。

Re(1):祝!TPP交渉決裂(交渉下手)
 Josef  - 15/8/4(火) 12:31 -

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   TPPに関連して、以前、芥屋アニキと「日本の交渉下手」について話したことがありますが、今回のTPPでも、本当に間抜けですよね。

私がTPPに反対であることはさておいて、交渉を成功させたいなら甘利さんみたいに「早く妥結させたい、早く、早く」みたいな態度を見せちゃダメなのは大原則でしょう。あんな態度見せるから、妥結が間近という段になって、ニュージーランドが高い要求をしてくるわけで。「早く妥結したいの?わかった、じゃあこれとこれも呑んでね。妥結したいんでしょ?したいんでしょ?したいんでしょ?」

TVニュースをみると甘利さんはだいぶ頭にきている様子で「(某国代表は)頭を冷やしてほしい」と言っていましたが、頭に血が上っているのは明らかに甘利さんの方でした。

本来は、「離脱もありうる」という姿勢をほのめかさないといけない。もちろん、口先だけではなく、「日本は本当に離脱するのでは」と思わせないといけません。カナダも、マレーシアも、それをやっているし、アメリカでも有力な次期大統領候補とされるクリントン氏が先月演説で「得にならないなら交渉を離脱する」と明言しました。

日本はTPP交渉の最重要国の一つです(マーケットがでかくてマネーが豊富という意味で)。いろんなチャンネルを使って、「離脱もあるぞ、本気だぞ」というところを示せばかなりの効果が期待できます。ところが反対に日本はあれもこれも譲歩して、「こっちはこれだけ譲歩したんだから、そっちも誠意を示せ」みたいな交渉をしているようにみえます。

そして政、財、官、マスコミこぞって「TPP万歳」「何としてでも早期妥結を」と叫び続けている。今年に入って農協改革なるものを断行し、反対の声を弱体化させるという、早まった行動までしてしまいました。こうした日本の国内情勢を交渉参加国は見ています。「もっと要求しても日本は呑むぞ」――足許を見られているのですね。

Re(1):祝!TPP交渉決裂
 バジル二世  - 15/8/31(月) 15:01 -

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   >Josefさん:
>まだ終わったわけじゃないから「祝!」は早いですが、ひとまず合意に辿りつかなかったことを喜びたいと思います。といっても、「いずれそのうち」という雰囲気がある限り、日本の一次産業が衰退していくことに変わりはないでしょう。はっきり決裂して終わり!としてほしいものです。

それがぬか喜びにならない事を心底から願ひますよ。ちなみに月末が最後の合意のチャンスと報じられたのに、今朝の日経新聞もNHKニュースもそして政府のTPP対策本部のホームページにも、新たな会合の予定ほかは書いてゐなかった(新聞・テレビには週間の予定が纏められてゐたりする)ので、騒がれるのを嫌気しての沈黙なのか。

ここで書いたことで裏目に出るのかも知れませんが、やはり書いてしまふと、産業保護の自主権はオバマさんとかの手柄の為に献上するには勿体なさすぎます。これは労働者待遇の切り下げなんかも含んでゐて、4、5年前には議題に貿易収支改善を目的とした労働者保護緩和の禁止がありました。

以前タクシー料金の価格支持政策でJosefさんと論争した様な記憶があるのですが、私の考へは出来るだけ純粋な需要・供給を反映した放任政策です。運転手がそれでは割に合はないと云って田舎に土地を借りて農業に転業するのが丁度いいと云ふくらゐの頑固な古い経済学の信者であります。

けれど外国資本の参入のために価格支持をやめろと云ふならば本末転倒です。産業政策は第一義的に国内事業者のものでなければいけないと思ひます。労使含めた彼らの対論を通じた意見の積み上げ無しの自由化は、安倍さんの14日の談話にあった空疎な「世界の大勢」とかへの順応のパフォーマンスに過ぎません。

あまりよく解らないけれど、そもそも「安倍政権のインフレ目標設定が失敗」との見方が強まってゐる様にも見えます。これも保守的な経済学派にはうなづきやすいものです。つまり国債を日銀が買ひ入れることにより、市中にお金を流すことが物価上昇を招き実質賃金の伸びを相殺してしまひ不況を長引かせると云ふ理窟です。

例へば、私などは個人情報を渡すのが嫌なので読めないけれど野口悠紀夫氏の「マイナス成長が明確に示す経済政策の根本的誤り」(週刊ダイヤモンド)なんかで、アベノミクスへの本質的な批判に見えます。以上、「新自由主義」的で人権軽視的な観点からの最近経済論の風景です。笑

Re(2):祝!TPP交渉決裂
 Josef  - 15/9/8(火) 17:26 -

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   バジル二世さん

TPPは大詰めのようだから、主要各国は慎重になっています。日本を除いて、と言うべきか。

一般にそうだと思うのですが、交渉というものは最後の段階で意見の食い違いが大きかったらもう決裂です。大詰めとされるTPP交渉は、次回決着しなければ交渉終了という段階に来ています。だからこそ、妥結を目指す国々は交渉開催時期に慎重にならざるをえない。裏交渉を繰り返して、これなら行けるというはっきりした感触を得たときに次回(最終)交渉の日程を決めることになるでしょう。

ところが日本は前回交渉が決裂した後、すぐに次の交渉をやりたがっていましたよね。どうしてなんでしょう。本当は最終決裂を狙っているとか(まさかね)。

まあ、はなから損な交渉に勇んで出掛けるような人たちだから、本質的に交渉下手なんでしょう。こういう人たちに、交渉内容は国会議員にも知らされないという秘密交渉を任せて平気な人の気がしれません。テレビ、大新聞、全部そうです。集団的自衛権なんかよりこっちの方がよほど「主権」そして「生活」に関わることなのに。

Re(2):祝!TPP交渉決裂
 Josef  - 15/9/8(火) 19:29 -

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   >あまりよく解らないけれど、そもそも「安倍政権のインフレ目標設定が失敗」との見方が強まってゐる様にも見えます。

失敗でしょうね。細かい要因はいろいろあれど、大元は消費税を8パーセントに上げたことでしょう。しかし消費税増税は政府が強行したわけではなく、民主党政権時代に自・公・民で約束したことを実行しただけであり、しかも全マスコミが賛成し、国民も概ね理解を示すという中で行われたことですから、安倍政権だけのせいにはできません。

消費税10パーセントへの増税も予定されていて、相変わらず全マスコミが賛成し、国民も概ね理解を示しているようですから、増え続ける社会保障費への対応はますます困難になっていくでしょう。自分で自分の首を絞めているのです。

もう一つの失敗の原因は、アベノミクス第二の矢(財政)を途中でやめたことでしょう。だから第一の矢の異次元緩和で生まれたマネーが回らなくなってしまった。先月、谷垣自民党幹事長はGDPが依然落ち込んでいることに対して「補正予算を組むことも考えなければ」と言っていましたが、こういう場当たり的な財政政策ではダメでしょう。

しかしこのことについても安倍政権だけを批判するのは酷かもしれません。財政出動しようとすると財務省が渋るのはともかく、マスコミ・国民が一斉に「無駄な公共事業だ」と言い始めるから、なかなか難しい。

こうして、国民の貧困化を押し進める政策ばかりが国民に支持され、実施されるという異様な状況がここ20年くらい続いているように思います。構造改革推進者たちは笑いが止まらないでしょう。

Re(2):祝!TPP交渉決裂
 Josef  - 15/9/9(水) 20:01 -

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   バジル二世さん

>以前タクシー料金の価格支持政策でJosefさんと論争した様な記憶があるのですが、私の考へは出来るだけ純粋な需要・供給を反映した放任政策です。運転手がそれでは割に合はないと云って田舎に土地を借りて農業に転業するのが丁度いいと云ふくらゐの頑固な古い経済学の信者であります。

いろんな考え方があるでしょう。

私の考えをいうと、経済の基本は「経済」という訳語の元となった「経世済民」、すなわち「世を治め、民を救う」ことであると思います。この言葉は最近やけによく使われるようになった印象がありますが(この夏のNHK高橋是清ドラマでも使われていました)、おそらくその理由は、いわゆる新自由主義が「自由のための自由」となって、民を救うどころか多くの民を貧困に落とす要因になっている、という認識を持つ人が増えているからでしょう。増えているといっても、自由主義信奉者の方が依然として多いですが。

経済活動の自由については、完全自由放任からお上による完全管理を両極として、その間に様々なヴァリエーションがあります。完全放任の方に近づけば近づくほど弱肉強食となって少数者が多数者を搾取する社会となり、完全管理の方に近づくと共産主義国の実例が示すように停滞した抑圧社会となります。

どの辺りでバランスをとるのがいいかは未だ正解のない難問ですが、実質所得が減り続け、そのくせ上位5パーセント、10パーセントの富裕層の所得だけは増えているというここ20年の日本の規制緩和路線は、「経世済民」に逆行するものであると考えます。

というふうな基本的スタンスで私は個々の問題を私なりに判断しています。

Re(3):祝!TPP交渉決裂
 バジル二世  - 15/9/11(金) 14:53 -

引用なし
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   >Josefさん:

>>あまりよく解らないけれど、そもそも「安倍政権のインフレ目標設定が失敗」との見方が強まってゐる様にも見えます。
>
>失敗でしょうね。細かい要因はいろいろあれど、大元は消費税を8パーセントに上げたことでしょう。しかし消費税増税は政府が強行したわけではなく、民主党政権時代に自・公・民で約束したことを実行しただけであり、しかも全マスコミが賛成し、国民も概ね理解を示すという中で行われたことですから、安倍政権だけのせいにはできません。
>
>消費税10パーセントへの増税も予定されていて、相変わらず全マスコミが賛成し、国民も概ね理解を示しているようですから、増え続ける社会保障費への対応はますます困難になっていくでしょう。自分で自分の首を絞めているのです。

その増税でさへ現状必要な上げ幅からは程遠くて実質減税が進んでゐるのではないかと疑ふほどには大衆は合理的なのではありませんか。以下の「リカードの定理」は人間が裏付けがない大風呂敷を聞いたときなどに見せる反応をよく洞察して面白いと感じます。

>>>以上で説明してきた財政政策による景気安定化は、ケインジアンのマクロ経済政策の根幹です。このようなケインジアンの考え方に対して、マネタリストないしシカゴ学派のグループから次のような批判が出されています。ケインジアンによれば、景気の悪い時には減税をすれば、消費が刺激されて乗数プロセスに乗って、生産や雇用も拡大することになります。マネタリストは、消費者が合理的であるかぎり、そのような減税政策では消費は刺激されないと主張します。
>>>(中略)
>>>さて、もし消費者が合理的であるならば、現時点における消費を現時点での所得のみによって決めることはしないでしょう。生涯設計を考えるのであれば、現時点の所得だけでなく予想される将来時点の所得まで考慮して、現時点の消費を決めるはずです。そのような合理的な消費者が減税をどうみるのでしょうか。たしかに現在の税金は少なくなりますが、それは将来の増税と引き替えに行われるのです。したがって、生涯所得という観点からは、現在の減税はほとんど意味がありません。したがって、本当に合理的であるならば、減税されたからといって消費を増やすべきではないのです。
>>>(中略)もっとも、現実に人々の多くが上で述べたよう合理的に行動するかどうかは、明らかではありません。しかし、減税政策が有効であったとしても、それが人々の錯覚から生じたものであるかもしれないという指摘は重要なものです。(伊藤元重「入門経済学」P.187-188の小見出し「減税政策の有効性に対する疑問:リカードの定理」から、1988年)

昔読んだ教科書を読んでゐて、今は違ふ読み方ができるんだなと妙な感慨を覚えました。ただ、私が本式の学問的な思辨などとは正反対の生活を送ってきた俗物であること、この学者の講義を受けたことなども無いことは述べておいた方がよいと思ひます。

Re(4):祝!TPP交渉決裂
 Josef  - 15/9/18(金) 18:50 -

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   バジル二世さん、

引用されている伊藤元重という人は構造改革推進派、TPP推進論者で、竹中平蔵氏たちのお仲間ですよね。まあそれはいいとして、引用文中にある「ケインジアン」と「シカゴ学派」との対立について、佐伯啓思氏がちょっと言及しているインタビュー記事を紹介します。佐伯氏は90年代から構造改革を批判していた保守系の学者さんです(したがって伊藤元重氏とは立場を異にします)。

ttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/33285

ところで、日本の構造改革(規制緩和)はサッチャーやレーガンのやった改革にならったものですが、経済状況が正反対(インフレとデフレ)であるところに最大の問題があります。

サッチャー=レーガンの改革は、長引くインフレ不況を構造的なものとみて、経済・産業構造を転換すべく、規制の緩和・撤廃を中心とする自由化を行ったものでした。インフレとは「需要>供給」ですから、規制を外して自由化すれば供給サイドが活性化され、競争原理によって然るべき需給と価格のバランスが期待できると考えた。イギリスでは強い抵抗もありましたが、全体としては成功したという評価が一般的です。

ところが、日本はデフレ不況なのに、橋本内閣以降、英米を真似た構造改革をやり続けたんですね。デフレとは「需要<供給」ですから、英米と同じことをやっても、もともと過剰な供給サイドがだぶつくばかりで、過当競争→価格下落→賃金低下というデフレのスパイラルを押し進めるだけです。

日本の経済リーダーたちは、サッチャー=レーガン型の経済政策を万能だと思ったようです。それは彼らが馬鹿だからではなく、サッチャー=レーガン改革の後ろ盾となったシカゴ学派の経済学が普遍性を標榜するものだったからでしょう。伊藤氏も竹中氏も、その経済学を学んだ人たちです。英・米・独も、IMFも、つまりは現在の世界経済をリードする人/組織は、各国政府は通貨量調整と財政バランス(収入と支出の均衡)の調整をする以外には市場に介入しない方が良いというシカゴ学派的イデオロギーに染まっており、日本も軌を一にしているということだろうと思います。そしてこれが経済グローバリズムの本質です。

しかし先進国中、戦後にデフレに陥ったのは日本だけです。そしてデフレ下で上のような自由化政策を行えばどうなるかは少なくとも日本人は身を持って分かったはずです。しかし一度身に付いたイデオロギーを変えるのは容易ではない。昨今、ケインズ的政策を見直す人たちが日本でもアメリカでもフランスでも増えてきているように思いますが、主流派とのせめぎ合いはしばらく続くのだろうと思います。

Re(5):祝!TPP交渉決裂
 バジル二世  - 15/9/27(日) 20:06 -

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   Josefさん、

>引用されている伊藤元重という人は構造改革推進派、TPP推進論者で、竹中平蔵氏たちのお仲間ですよね。まあそれはいいとして、引用文中にある「ケインジアン」と「シカゴ学派」との対立について、佐伯啓思氏がちょっと言及しているインタビュー記事を紹介します。

伊藤氏がどんな学派に属するのかはJosefさんの話以外に見聞きしたことはありませんが、初学者向けの本を学派の主張で染め抜く様な非「合理的」な人物でもありません。引用にある様にケインジアンの業績の説明がほとんどであり、それへの批判的考察は重要なもののみに留めてゐます。

たとひ財政出動を批判するにせよ、ケインジアンの論理により行ふのが、ほとんどの経済学者だと思ひますし、氏もその掟に従ってゐます。ケインジアンだってあらゆる財政出動の乗数効果が同じでそれらの施策にはどれも等しく意味があると考へてゐるとは限りません。それに訴へるのが「リカードの定理」への言及です。

以前Josefさんは事情で働きに出ざるを得なかった非進学者が学校助成金を負担することに強い違和感を表明なさってゐましたね。ケインジアンのテーマは、学びに飢えた非進学者への減税と、学生向け補助のどちらが、読書など教育振興に繋がるかと云ふのに通じます。意欲があるのだから前者の方が本に出費して読みます。

これを一般的な消費について言ったのが乗数です。例へば、貯蓄に回されがちな子供手当を支給して、入ったお金を衣食住にすぐ使はざるを得ない低所得者の配偶者控除廃止で穴埋めするなんてのは愚の骨頂なのです。消費性向は前者<後者ですから後者が乗数効果大です。

ケインジアンが財政出動策の子供手当に疑義を呈する論理は乗数効果が政策対象者によって異なることに基きますが、状況によっても異なると思ひます。政府が出した将来の社会保障制度への見通しが税の裏付けに始まって嘘臭い時に、公共工事が増えて多少給料が増えようが、それは将来への貯蓄に回るのではと云ふことです。

従って氏がリカードの指摘を「重要なもの」と評価したのに何ら誤りは無く実態の分析に有効と考へます。そして、ケインジアンの主張の骨格は批判派もベースにしてゐるので、「主流」にあって経済学に浸透してゐるのでは? 「普遍性を標榜する」学派も珍しくはなく、ならケインジアンやマルキストは例外なのですか?

少し長い旅行から戻ったばかり。取り急ぎお返事します。

Re(6):祝!TPP交渉決裂
 バジル二世  - 15/9/28(月) 6:50 -

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   先の投稿「飢えた」の仮名遣は誤りで「飢ゑた」です。

白状すれば、ここで出たシカゴ学派について私は全く知らないのです。単にリカードの話を読んで、ああ、かう云ふことなのかと膝を打った次第。つまり、税収で足りない分の政府支出は主に公債によって賄はれる。その将来的影響です。

これについて様々な意見がありますね。眉に皺を寄せて、子供や孫の代に負担を押し付けるなと云ふ声。金利が高止まりして、投資活動を圧迫する上に、インフレを惹き起こして人々の生活を圧迫すると云ふ予測もあります。

一方、償還不能になったからと云って命までも取られるものぢゃありません。少なくとも下々の人間はです。どうせ信用やお上の面子が吹っ飛ぶだけ、そのもとでは日用の商品の生産・流通の営為がなほも続くはずとの悲観論を戒める見方です。

しかし私は、際限なく借金してよいかの、あるいは貧しい者のために金を使へ、財政は所得再配分のためにある、とする考へは嫌ひです。他人が懸命に何かのために貯めた金を当て込むのが当然であるみたいなあの自己主張!

洋の東西を問はず、剰余生産は争ひの種になります。これもその代理戦争かも知れません。貧しい者のために働きたいとする人々と私とは経てきたものがもしかしたら大きく違ふのかも知れません。

>でも結局、アメリカに一周遅れで金融工学などをやっても、その分野では圧倒的に強いアメリカの相手になるはずがない。(ご紹介のサイトでの佐伯氏辯)

アングロ・サクソン以前に先物市場を整備し、デリバティブ取引の先駆けをやったのは大坂の堂島米会所を始めた札差ほかです。この事実はNHKの時代劇「まんまこと」なんかも下敷きにしてゐて、江戸の番頭が上方に勉強に行ったりします。

歓喜も失意も山っ気も不正も織り交ぜた人間模様がその後設けられた各地取引所では繰り広げられたでありませう。何故かそんな話に接することが多かった私で、全くこのBBSはバックグラウンドが異なる者のごった煮劇場です。

Re(7):祝!TPP交渉決裂
 Josef  - 15/9/30(水) 19:01 -

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   バジル二世さん、こんにちは。

TPP交渉が再開されるようですね。日本はマゾヒスティックに締結したくで仕方ないみたいだから(「性奴隷」に謝罪・補償したくて仕方ない朝日新聞も応援してます)、私としてはぜひニュージーランドあたりに頑張ってもらって、「漂流」状態になってほしいものです。しかし再開されるということは裏で話がついたのかな。

さて、消費者の(経済的)合理性についてですが、あくまで自己を中心とする狭い範囲の合理性であろうと思います。日本が苦しんできたデフレの場合、理屈からいうと、みんながお金を使いまくれば(つまり需要が増えれば)、脱却できる可能性が高まります。しかしそんなことはしません。賃金は下がる、待っていれば商品価格も下がる。そういうデフレ状況では、できるだけ消費を抑えるのが合理的行動です。

企業も同じで、消費が冷え込んでいるデフレ下で、雇用を増やしたり賃金を上げたり新規事業に投資したりすれば潰れてしまいます。消費者は消費を控えるのが合理的であり、企業は人件費をカットし、少なくとも国内での新規事業投資は控えるのが合理的です。

みんながそういう「合理的」行動をとることによって、デフレはますます脱出し難いスパイラルを描いていく。ミクロな合理がマクロでは不合理になる――「合成の誤謬」というやつです。

このように、自由市場に任せていたらにっちもさっちもいかないという時こそ、政府の出番。デフレ下では政府が積極的財政政策をとるべきだというのがケインズ型の経済政策でしょう(ケインズ経済学は世界大恐慌というたぶん史上最大のデフレ不況において登場しました)。

ところが、90年代に始まる「構造改革」以降、日本がやってきたのは、「インフレ」対策として成功を収めた英・米の規制緩和・自由化政策でした。一般に新自由主義と言われるやつです。誰かが言っていた喩えを使わせてもらうと、これは、栄養失調の人に肥満を治すためのダイエット治療を行ったようなものです。かくして日本は10数年にわたるデフレ・スパイラルに落ち、今なお脱却できないでいるのが現状でしょう。栄養が足らないのに食事を減らされ「もっと運動しろ」と競争へと駆り立てられるのだから、そりゃ「閉塞感」にも陥るでしょう。その上、患者自身も「でもこれが正しい治療法なんだ」と信じ込んでいたりするから始末が悪い。そこまで頑張れない自分、治らない自分に「自分はダメなやつだ」と自己否定感を抱き、閉塞感はますます深まる。

比喩ばかり言ってても仕方ありませんが、ついでにいうと、治療方法は患者の病気によって変えるのが当然なのに、経済エリートたちは一つの方法を万能だと思い込んでいるようにみえます。でもそれだとエリートじゃなくて単なる馬鹿だから、本当はエリートたちは全部わかっていて、自己利益のために庶民をだまくらしかしているのかもしれません。実際、このデフレ不況の間に資産家は資産を増やしているのだし。

TPPも、ユーロ圏とやらもそうですが、文化も歴史も地理的特性も国民性も、そして目下の経済状況も、何もかも違うにもかかわらず、経済や金融のシステムだけは同じにしたい、同じにする方がいいのだ、というふうな一神教的な単一原理主義はどうにかなりませんかね。非常に邪悪なものを私は感じています。

Re(8):祝!TPP交渉決裂
 Josef  - 15/10/1(木) 19:29 -

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   バジル二世さんが言及している点について若干コメントします。

足らない税収を補うために政府が借金を積み重ねていくと、将来の増税が予測される。だから、たとえ今減税や給与アップがあったとしても、やがて来る増税を見越して、消費者はお金を貯蓄に回すのではないか、という点についてです。

前提として、お金は無からは生じず、まずは中央政府がどこかから借りるという形をとって世に出されることは押さえておきたいと思います。つまり貨幣を発行することができない個人と違って、貨幣を発行する大元である政府は借金(借金して返し、また借金して返し、という運動)があることが常態です。ただ、借金があまりに増えていくと、野放図に貨幣を発行していると解釈され、貨幣の生命線である「信用」が損なわれます。そうなると最悪ハイパーインフレになるから、この「信用」だけは絶対に確保しておかなくてはなりません。

わざわざこんなことを書いたのは、世間では「国の借金」なるものが、必ず返済しなければならないもの、と誤解されているフシがあり、マスコミも「大変だ―」と煽っている気がするからです。問題は借金の額ではなく、信用を棄損しかねない状況にあるかどうかであり、日本の通貨「円」はどうみてもそんな状況にはありません。ハイパーインフレどころか、政府・日銀が2年のうちに達成するとした2%のインフレ目標にすら遠く及ばない状況、つまりは未だデフレから脱却できていない状況です。生活を圧迫するインフレを心配しなければならないようなお目出度い状況では全然ないのです。

マイルドなインフレに持っていくことができれば、税収増とインフレ効果によって政府の負債は相対的に減ります。アベノミクスはそれを狙って、(1)異次元緩和による円高是正とインフレ期待の喚起、(2)積極財政による需要創出及び実体経済の駆動、をやるということだったのですが、実際には(1)によって円は安くなり株価上昇は成功していますが、(2)をやめてしまったために日銀口座にお金が積み上がるばかりで、実体経済は停滞したままです。当初から(3)として「構造改革」があったので嫌な予感はしていましたが(というのも(2)と(3)は反りが合わないから)、案の定です。

で、何が言いたいかというと、「どうせそのうち増税が来るんだからお金は使わないでおこう」というふうなマインドは、これまで書いてきたように、政府がデフレ下でなぜかデフレ継続政策をとっているところに起因するということです。今のやり方を続ける限り、どうせ増税されるんだから、というマインドこそが合理的ということになります。そしてその合理がさらなる停滞を作り出す。社会保障費は増えるばかりで大変、だから税収が足らないので緊縮財政、まだ足らないので消費税増税――「国の借金」とやらではなく、こういう「縮み志向」の悪循環の方が日本人とりわけ若い世代を閉塞感に陥れ、ひいては子や孫の世代に大きな負債を残すことになっていることに気づくべきでしょう。

Re(9):祝!TPP交渉決裂
 バジル二世  - 15/10/9(金) 22:47 -

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   Josefさん、

>わざわざこんなことを書いたのは、世間では「国の借金」なるものが、必ず返済しなければならないもの、と誤解されているフシがあり、マスコミも「大変だ―」と煽っている気がするからです。

借り換へをしようが何だらうが、「お金は返してくれるのですよね」と云ふのが貸し手の最大関心事ですよ。その信用を毀損しないための危機管理ってどうすればいいのか、全く解らないのですが。

ここでの貸し手は最終的に自分で、銀行に預けた、つまり貸した金が巡り巡って国債を買ってゐて、デフォルトかインフレの危機にさらされてゐるわけでせう? 「縮み志向」だらうが、心配なものは心配としか言へません。 

>マイルドなインフレに持っていくことができれば、税収増とインフレ効果によって政府の負債は相対的に減ります。

それだって私の様な親の遺産と退職金頼みの職に就くこともない生活者から見れば、無痛ではないのです。

>で、何が言いたいかというと、「どうせそのうち増税が来るんだからお金は使わないでおこう」というふうなマインドは、

これは昔の教科書に妙に懐かしくなったのもあって自分なりに考へた推論で、まあしっぺ返しは覚悟しといた方がいいぞと。

そんなこと書くと、セクハラへの制裁の覚悟が足らないとか思ふ人がゐるのかな。ますます働きに出るのが怖くなりますね。

Re(10):祝!TPP交渉決裂
 Josef  - 15/10/16(金) 19:03 -

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   バジル二世さん、

>ここでの貸し手は最終的に自分で、銀行に預けた、つまり貸した金が巡り巡って国債を買ってゐて、デフォルトかインフレの危機にさらされてゐるわけでせう?「縮み志向」だらうが、心配なものは心配としか言へません

デフォルト、インフレ、いずれの危機も今のところまったく無いと思いますけどね。

国債の利率がぐんぐん上がってきているというならデフォルトの心配も分かりますが、ここ何年か史上最低のレベルが続いている、言い換えれば、利率が極端に低くても買いたい人がいっぱいいるという状態です。日本国債の信用度は極めて高いと考えるべきでしょう。

インフレについても既に書いたように年2パーセントというインフレ目標にも遠く及ばない状態で、心配すべきはむしろ再度のデフレ突入だと思います。

ただし、「『縮み思考』だろうが、心配なものは心配」というバジル二世さんの言葉ををおかしいと言うつもりはありません。個人レベルでは「縮み」を志向する方が合理的であるという状況がかれこれ20年くらい続いています。それが全体として「不合理」に繋がっているということを前に書きましたが、「全体」と言われても、個人にはどうしようもないわけです。だから政府が積極財政を…、というのが私の言っていることで、そう言いながら自分自身はといえば基本「縮み」志向の生活をしています。これは矛盾ではなく、当然の(理屈通りの)行為です。

このようにミクロとマクロでは合理が一致しないことがあります。われわれ個人はミクロの合理で動いていくから(そうしないと生きていけない)、それで全体が変な方向に行くなんてことにならないように、政治家さんたちには適切なかじ取りをしてもらいたい。そのかじ取りが、もう長い間まちがった方向に進んでいるのではないかと私は思っています(最近は「一億総活躍」などとまた変なことを言い始めました)。

Re(11):祝!TPP交渉決裂
 バジル二世  - 15/10/20(火) 20:38 -

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   Josefさん、

>「『縮み思考』だろうが、心配なものは心配」というバジル二世さんの言葉ををおかしいと言うつもりはありません。個人レベルでは「縮み」を志向する方が合理的であるという状況がかれこれ20年くらい続いています。

シカゴ学派の依拠する経済主体の「合理」が証明不能なのは先の引用にもありますね。ただし、これはそれぞれが臆測も加へての色んな情報に基いて全体の「予想」「期待」を生み、現実の力として市場に影響を与へるとの基本認識があります。

その妥当性を判断する上で一つの指標になると思ってゐるのが、今月終はりに予定されてゐるFOMCです。アメリカのFRBが金利を決めるのですが、今利上げが取り沙汰されてをりますね。

断定的に語るのは危険ですが、シカゴ学派は利上げ待望が出た段階で、その将来の利上げ「予想」で株価が下落し、もし利上げが発表されたら実現によるその予想の冷却から上昇に転じると予測します。据ゑ置きなら更なる下落予測でせう。

通常ケインジアンは、利上げが実現した段階では設備投資ほかを冷やすと考へ、経済減速を予想して、株価下落を予想します。据ゑ置きならば、利上げを免れたと云ふ気分で株価上昇予想ですので、少なからず違ふと思ひます。

有り合はせの株知識をひけらかすのは、増税なりを悲観する消費者の買ひ控への「合理」も同じだと思ふからです。先の教科書に両派経済学の論争は長引くだらうとありますが、私の大きく頓珍漢である可能性が高い読み筋はどう云ふ結末に?

>(最近は「一億総活躍」などとまた変なことを言い始めました)。

どうしても引っ掛かるのは「需要<供給」の状況下の供給刺激が癌だったのだと簡単に言へるのかってことです。交ぜ返すみたいですが、「需要」「供給」ともに意味がよく判りません。

例へば土地資金の総量規制が銀行の担保価値を減じ長い不況に繋がったのはよく言はれますが、地権者の細かい土地を集めて開発業者に売る「地上げ屋」を需要側、供給側のいづれとしても、仰る市場の需給政策の問題の反例となります。

その様な事柄によってまだら模様の需要・供給の強弱の関係を、或いは刺激・制動の匙加減をどうして一括りに仰ることができるのでせう。さらに言へば、デフレ下では供給刺激が何でもかんでもいけないとも言ひ切れないと思ふのです。

例へば、お米の銘柄が色々出てきたのは、自主流通米を認めた食管制度の自由化のお陰で、これなんかはもろに供給の刺激によって新たな需要を掘り起こしたと考へます。それが無ければ米は消費者に見放されてゐたと云ふ話も聞きます。

Re(12):祝!TPP交渉決裂
 Josef  - 15/10/23(金) 19:27 -

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   バジル二世さん、

株価の上下とか、バブル(崩壊)といったことに私はあまり関心がありません。というのも、一般庶民の生活からは遠いところにあるからです。

80年代バブルで踊っていたのはごく一部の人たちであって、庶民の生活が激変したわけではないし(土地が高くなりすぎて「マイホームなど夢の話」などとよく言われるようになりましたが)、安倍二次政権になって株価が8000円から20000円に上がっても、実質賃金はむしろ下がっていることが示すように、庶民とはあまり関係がありません。
まあそうはいっても極端な変動があればみんなが巻き込まれてしまうので、せいぜい、「迷惑かけない程度にしとけよ」と思うくらいです。

>例へば土地資金の総量規制が銀行の担保価値を減じ長い不況に繋がったのはよく言はれますが、地権者の細かい土地を集めて開発業者に売る「地上げ屋」を需要側、供給側のいづれとしても、仰る市場の需給政策の問題の反例となります。

私は少し違う解釈をしています。土地バブル崩壊の引き金を引いたのが「総量規制」だったことは確かで、ここまでは問題なかったと思います。バブル狂想曲を踊っていた人たちがコケただけですから(バブルはいずれ崩壊するもの)。問題は土地バブルをインフレと見て政府(日銀)が金利を引き上げたことでしょう。それでなくても不良債権を抱えて慎重になっている金融機関に対して、金利引き上げ政策は「貸すな」というメッセージになります。これにより、バブルに直接関わった分野だけでなく、そこらの町工場に至るまでが、資金繰りに困って倒産、社長は首をつる、というふうな事態が全国に広がってしまいました。長引く不況は政府の政策の誤りにあったと思います。

80年代をバブルと結び付けて連想するのは後世の見方で、当時は、高度成長はとうの昔の話になり、2度のオイルショックをなんとか乗り切って、これからは低成長の時代だと言われていました。別の面からいえば、低成長であっても大多数の国民が十分暮らしていけるという豊かさと余裕を達成した時代でした。インフレ/デフレでいえば、ゆるやかなインフレであり、だから80年代後半の消費税(3%)導入は税収増をもたらし、国民生活に大きなダメージを与えることはありませんでした。

ところが、土地高騰という一部の強いインフレ状況に対して、総量規制でやめておけばよかったものを、金利大幅引き上げという経済全体に影響を与える全面的なインフレ対策をやってしまった、つまり過剰反応をしてしまったのだと私は解釈しています。他にも不良債権処理にもたついたことをはじめ、不況が長引いた原因はいろいろあるでしょうが、詳しいことは知らないので省きます。

アメリカは日本の失敗に学んだと思います。というのも、住宅バブルの崩壊(リーマン・ショック)後、金利に関しては、かつての日本がやったのとは逆に、下げましたね。これはバブル崩壊後のデフレを防ぐ対策だったと思います。で、さすがにもうそろそろいいだろうということで、しばらく前からFRBの利上げが取り沙汰されていることはバジル二世さんが仰っているところでもあります。また、日本が手間取った不良債権処理にも学んだか、リーマンショック後、アメリカ政府は多くの批判を浴びながらも巨額の公金を銀行その他にどっとつぎ込んだ。日本の失敗例がなかったら、アメリカは「私企業を公金で救うのは許されない」というふうな自由主義に押されて泥沼にはまっていたかもしれません。

Re(13):祝!TPP交渉決裂
 バジル二世  - 15/10/26(月) 22:59 -

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   Josefさん、

>>例へば土地資金の総量規制が銀行の担保価値を減じ長い不況に繋がったのはよく言はれますが、地権者の細かい土地を集めて開発業者に売る「地上げ屋」を需要側、供給側のいづれとしても、仰る市場の需給政策の問題の反例となります。
>
>私は少し違う解釈をしています。土地バブル崩壊の引き金を引いたのが「総量規制」だったことは確かで、ここまでは問題なかったと思います。バブル狂想曲を踊っていた人たちがコケただけですから(バブルはいずれ崩壊するもの)。問題は土地バブルをインフレと見て政府(日銀)が金利を引き上げたことでしょう。それでなくても不良債権を抱えて慎重になっている金融機関に対して、金利引き上げ政策は「貸すな」というメッセージになります。

私がこの話で気持ちが疼くのは、やっぱりあの頃の一人としてこのバブル潰しに両手を上げながら今は評論家然として、その過去を忘れてゐたりする辺りかな。親父は都心まで毎日数時間の通勤をしてゐたのだけども、何せ首都圏とあって土地の相続が酷いことになると風説が流れてゐました。まあ、その尻馬に乗っての賛成です。

それに景気の過熱感がやっぱり極度に強くて、地方では高い給料が出せる都会に人手を奪われて事業継続が不可能になったりなんてこともあって、金利引き上げ万々歳って空気に同調してゐました。その様に褒められたものではない来し方で、ご自身強調なさってゐる土地バブル対処と物価対策の峻別などはしてをりません。

>80年代をバブルと結び付けて連想するのは後世の見方で、当時は、高度成長はとうの昔の話になり、2度のオイルショックをなんとか乗り切って、これからは低成長の時代だと言われていました。別の面からいえば、低成長であっても大多数の国民が十分暮らしていけるという豊かさと余裕を達成した時代でした。

「バブルとはその中にゐる当人たちには誰にも判らない’」とは名言だと思ひます。バブルとは日本と英語圏で崩壊後用ゐられる様になった言葉でその頃は騰貴とかspeculationが使はれたと思ひますが、記憶する限り「花見酒の経済’」などと危惧したマスコミは一紙だけで、ほかは特に株なんかがバブルと喝破されるのは見ませんでした。

>ところが、土地高騰という一部の強いインフレ状況に対して、総量規制でやめておけばよかったものを、金利大幅引き上げという経済全体に影響を与える全面的なインフレ対策をやってしまった、つまり過剰反応をしてしまったのだと私は解釈しています。

友人の経済学徒が地価対策実施前に担保価値の減少を通じて金融を巻き込んだ大不況に繋がるだらうと警鐘を鳴らしてゐたのに、その様なバブル退治が妥当か疑問を感じなかったのですが、若くてある経済階層の利益代辯者である愚に気付きませんでしたね。

>アメリカは日本の失敗に学んだと思います。というのも、住宅バブルの崩壊(リーマン・ショック)後、金利に関しては、かつての日本がやったのとは逆に、下げましたね。これはバブル崩壊後のデフレを防ぐ対策だったと思います。

アメリカは株急落に直面したからこそさうした目的意識が持てたのですよ。日本は過熱した景気の冷却などを求める民意他に押されての施策で、デフレ対応との位置付けでは本来、ありません。日本の利上げの開始は株価が落ち始める前、アメリカは後です。

デフレに対策を打つべきかや規制緩和についての評価では、Josefさんと私には立場に開きがあるのですが、一点だけ認めないといけないのは、景気浮揚と国の借金対策を両立する一つの正解が、経済成長すなはちGDP増加だと云ふことです。

そこで「財政出動」が果たしてその「経済成長」に本当に繋がるのか、「シカゴ学派」として疑問を述べた次第です。つまりご主張の政策により人々に将来に確信のないままでも消費拡大と成長があると証明がなければ、景気も上向かず債務も積み上がる危険が大きいです。

Re(14):祝!TPP交渉決裂
 バジル二世  - 15/10/28(水) 13:36 -

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   >一点だけ認めないといけないのは、景気浮揚と国の借金対策を両立する一つの正解が、経済成長すなはちGDP増加だと云ふことです。

「景気浮揚」は正しくは「財政出動」です。元のままの景気浮揚だと「経済成長」「GDP増加」と意味が被り、文意が通らなくなるため訂正します。つまり

ttp://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/12/30/fujii-123/

での、竹中平蔵氏が名目GDPに対する政府債務の比率を低めるためにはPBを黒字化する必要があると言ってゐるとの指摘が事実とするのなら、私は氏に賛同しません。債務比率はPBが赤字の時でも名目GDP増加率が十分高い場合などで低下するのを、式が表現してゐますので。

Re(13):祝!TPP交渉決裂
 バジル二世  - 15/10/29(木) 12:27 -

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[添付] 〜添付ファイル〜
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   >株価の上下とか、バブル(崩壊)といったことに私はあまり関心がありません。というのも、一般庶民の生活からは遠いところにあるからです。

意図が解らないのですが、私が株の話を出したのは、株価への関心からではありません。シカゴ学派の思考方法の当否を検証したいがためです。つまり、消費財や株など資本財を市場参加者が売り買ひをする方向付けとなるのが将来への「予想」であると云ふものです。

むろん、それをJosefさんは否定されてゐませんが、仰る様に財政に問題なしとすると消費者、国民もそれを知ってその限りの財政の効果は問題無いと言へるでせう。あとは、そこで予想され、まだ不問のままの福祉国家の問題ですが、それへの賛否と思ひます。

それもシカゴ学派の重視する消費者の「予想」に組み込まれるでせうが、とりあへずは、今朝のニュースからその思考法が経済の現実を映す妥当なものだと言ふことができると思ひます。午後2時に金利据ゑ置きが発表されたアメリカ市場の株価を添付します。

添付画像
【image(6).png : 0.8MB】

Re(14):祝!TPP交渉決裂
 Josef  - 15/10/30(金) 17:23 -

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   バジル二世さん、こんにちは。

>アメリカは株急落に直面したからこそさうした目的意識が持てたのですよ。日本は過熱した景気の冷却などを求める民意他に押されての施策で、デフレ対応との位置付けでは本来、ありません。日本の利上げの開始は株価が落ち始める前、アメリカは後です。

あの頃、デフレ警戒の意識は皆無だったと思います。戦後にデフレになった国は少なくとも先進国では日本が初めてで、当時はありえないこととされていたでしょう。日本の失敗を目の当たりしたせいか、近年は欧米でもデフレを警戒するようになってきたようですが。
株価は日本のバブル末期には既に落ちてきていました。89年末に最高値をつけて以降です。株価が下落傾向にあったにもかかわらず当時の日本政府は金利を上げたわけで、その理由の一つはデフレという文字がまったく頭になかったことにあるのではないかと思います。

>一点だけ認めないといけないのは、財政出動と国の借金対策を両立する一つの正解が、経済成長すなはちGDP増加だと云ふことです。

ここはバジル二世さんとの一致点ですね。私は「成長成長」というのは体質的にあまり好きではないのですが、デフレという病に罹ってしまったら経済成長しかありません。税収が減ったから消費税増税だ、というのは「貧すれば鈍す」の典型です。デフレになれば税収が減るのは当たり前、貧困が増えるのも当たり前。そんな時に貧困者ほど負担が大きい消費税を増税してどうすんの、脳みそ腐ってんの?と思います。国の責任において「経済成長」を図るべきです。

ところで上のバジル二世さんの文は仰るとおりに「景気浮揚」を「財政出動」に換えて引用しましたが、「デフレ脱却」の方がいいのではありませんか。「デフレ脱却」のために財政出動が有効かどうかで専門家の間でも意見が分かれているのですから。

>意図が解らないのですが、私が株の話を出したのは、株価への関心からではありません。シカゴ学派の思考方法の当否を検証したいがためです。つまり、消費財や株など資本財を市場参加者が売り買ひをする方向付けとなるのが将来への「予想」であると云ふものです。

利上げすると株価がどう動くか、というふうなことはその時々の経済状況をどう捉えるかによって判断が違ってきますよね。天気予報みたいなもので、現場の実務者が何らかの判断を下すしかないのですが、当たることもあれば外れることもあります。一方、シカゴ学派かケインズかというのは、たとえば地球温暖化を人為的な原因に帰すのか過去に繰り返されてきた地球気象変動の一つと考えるかの違いみたいなもので、天気予報のためのデータ分析とは異なる水準にあるとものと考えます。したがって、アメリカ当局が利上げした場合の影響をシカゴ学派的orケインジアン的に考える、というのはあまり意味がないのではないでしょうか。

Re(15):祝!TPP交渉決裂
 バジル二世  - 15/11/12(木) 4:28 -

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   おはやうございます、Josefさん。

>株価は日本のバブル末期には既に落ちてきていました。89年末に最高値をつけて以降です。株価が下落傾向にあったにもかかわらず当時の日本政府は金利を上げたわけで、その理由の一つはデフレという文字がまったく頭になかったことにあるのではないかと思います。

予想できないものまで警戒したりなんてことはできないし、あるいは自分がどう受け取られるかを気にして手を打たないなんてのは本末転倒ですよ。「貸すな」と云ふメッセージになるかも知れないからと株バブルや足元のインフレを放置するなんてのは、特にですね。

>>一点だけ認めないといけないのは、財政出動と国の借金対策を両立する一つの正解が、経済成長すなはちGDP増加だと云ふことです。
>
>ところで上のバジル二世さんの文は仰るとおりに「景気浮揚」を「財政出動」に換えて引用しましたが、「デフレ脱却」の方がいいのではありませんか。「デフレ脱却」のために財政出動が有効かどうかで専門家の間でも意見が分かれているのですから。

ドーマー条件の式は政府が恒常的に行ふ活動についてのもので、額の大小に関はらず「財政出動」あるいは「公共事業」がいいと思ひます。後は財政出動が先にあって「浮揚」も「脱却」もその後に’来るものですよ。あたかも実体ある活動みたいには書きたくありません。

国が管理する河川の工事事務所を尋ねると面白いですよ。近畿なんかだと古代からの河川工事の歴史が展示してあったりです。その後にスーパー堤防の必要を訴へる宣伝があったりするのがオチですが、時の行政も頭を痛めて人と金をひねり出してゐたのが窺へます。

>利上げすると株価がどう動くか、というふうなことはその時々の経済状況をどう捉えるかによって判断が違ってきますよね。

さうではなくて、経済主体のどんな行動に着目するかで、両学派の予測が違ってくると言ってゐるのです。仰るのは政策決定する主体、政府の事で学派の話ではありませんよね。

>一方、シカゴ学派かケインズかというのは、たとえば地球温暖化を人為的な原因に帰すのか過去に繰り返されてきた地球気象変動の一つと考えるかの違いみたいなもので、天気予報のためのデータ分析とは異なる水準にあるとものと考えます。

いや、その温暖化の原因論議だって、短期的な気象予報がそれとは合はないデータを繰り返し示す様なら、疑ってかかるちゃんとした理由になります。要は家計、企業、政府などの経済的な意思決定を予測するための十分な視点を提供できるかどうかでせう。

私の言ひ方は不正確の極みなので解りにくかったかもしれませんが、少なくとも株式については政策決定がその意図通りに市場を動かすと云ふケインジアンの考へは現実と合はず、その間にワンクッション、市場参加者の予想が入ると云ふのに説得力があります。

勿論、ニュースに耳をそばだててゐる相場師、仕手屋が大手を振るふ株式市場だからこそのあの綺麗な一方向への値動きだったのかも知れませんし、消費財の市場はまた別の話です。けれど、不況のたびのケインズ政策要求の大合唱ってのもうんざりなんですね。

そこにもってきて、デフレかさうでないかとか、経済情勢に応じて規制を調整しろとは、政府はそれぞれの物事の理非を超える裁量権を持ってゐるんでせうか? 経済学を専門に学んだわけではありませんが、大変疑問を感じてゐます。

Re(16):祝!TPP交渉決裂
 バジル二世  - 15/11/16(月) 21:50 -

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   >>>一点だけ認めないといけないのは、財政出動と国の借金対策を両立する一つの正解が、経済成長すなはちGDP増加だと云ふことです。
>>
>>ところで上のバジル二世さんの文は仰るとおりに「景気浮揚」を「財政出動」に換えて引用しましたが、「デフレ脱却」の方がいいのではありませんか。「デフレ脱却」のために財政出動が有効かどうかで専門家の間でも意見が分かれているのですから。
>
>ドーマー条件の式は政府が恒常的に行ふ活動についてのもので、額の大小に関はらず「財政出動」あるいは「公共事業」がいいと思ひます。後は財政出動が先にあって「浮揚」も「脱却」もその後に’来るものですよ。あたかも実体ある活動みたいには書きたくありません。

ここは自分の言ったことが違ひますね。修正します。「専門家の意見」がさうだからこそ、「財政出動」を「デフレ脱却」に変へてはいけないんです。その踏み絵がJosefさんの問ひなのかも知れないけど、そこだけは譲れないものですね。

Josefさんたちは現在、金利が低いのをもって日本に債務危機があり得ないと云ふ無理な説明をされる。それは断崖絶壁があるかも知れない暗闇をまだ急坂には出遭ってゐないのを理由に安全だと言ひくるめ、前進を強要する様なものです。

気付いたときには真っ逆さまってことだって無いとは限らないのだから、今の低金利は十分な判断の材料とはなり得ません。とするのなら、消費者や企業が将来の不確実性に備へて支出を控へ財政出動が所期の効果を持たないことも考へ得ます。

Re(17):祝!TPP交渉決裂
 バジル二世  - 15/11/17(火) 1:48 -

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   と云ふか、仮令財政出動がGDP拡大に繋がってもそれが前年度に比べてその年度の「債務対GDP比(名目)」を減らすとは限りませんね。式の第1項の前年度までの債務の重荷が第2項を相殺する様な成長ができる財政出動の方法と大きさは限られてくるはずですから。

Re(18):祝!TPP交渉決裂
 Josef  - 15/11/18(水) 18:05 -

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   バジル二世さん、こんにちは。
もともとTPPを俎上に載せたスレッドですので、主にその観点からコメントします。

日本はバブル崩壊で自信を失ったのかどうか、以後20年以上にわたってアメリカン・グローバリズムに頭の中まで乗っ取られたかのように、日本の状況に即した経済政策を打てなくなっているというのが私の見立てです。だから戦後例のない「デフレ」という事態になっても「グローバル、グローバル」、「改革、改革」と念仏のように唱えながらインフレ対策と見紛う構造改革なんかをやってきたし、大震災が起こったその年に復興とは真逆のTPP交渉参加を表明した。足許の国民経済はガン無視。この点、自民党も民主党も違いはありません。こういうのをパラダイムと言うんでしょう。パラダイムだから国民もそこに巻き込まれ、推進勢力の一部となってしまっています。

このパラダイムの理論的後ろ盾となったのがしばしばシカゴ学派と呼ばれる新自由主義であり、直接的な政策としては「ワシントン・コンセンサス」として1989年にまとめられたアメリカの国際経済方針であると言っていいでしょう。「ワシントン・コンセンサス」の10項目をWikiから引用します(英語Wikiにはもっと詳しく書かれています)。

1. 財政赤字の是正
2. 補助金カットなど財政支出の変更
3. 税制改革
4. 金利の自由化
5. 競争力ある為替レート
6. 貿易の自由化
7. 直接投資の受け入れ促進
8. 国営企業の民営化
9. 規制緩和
10. 所有権法の確立

ほとんどが90年代以降、日本においても、「改革」の名であたかも「正義」であるかのごとく連呼され、推進されてきた内容であることがお分かりのことと思います。もちろんTPPもこの延長線上にあります。これらの実現には国民の反発が障害となるから、様々な手段を通じて、たとえば「財政赤字」に対する恐怖を植えつけたり、ルサンチマン(「悪いのは公務員だ!」)を利用して郵政民営化をより良い社会への突破口であるかに思わせたりすることに成功してきました。

今、TPP問題などで臨時国会の開催を求める野党に対して政府は「議論は尽くされた」として開催を見送っています。TPP暫定合意の詳しい内容を国民はもちろん国会議員ですら知らされていないにもかかわらず、です。以下は「政府は日本語訳を開示せよ TPP「暫定案文」」と題する弁護士の記事です。

ttp://moriyama-law.cocolog-nifty.com/machiben/2015/11/post-8876

ところで私がデフレに対してケインズ的(あるいはニューディール的)財政支出政策を支持するのは、戦前のデフレに対して効果を上げた政策だからです。ケインズ派がシカゴ派より客観的に優れているからではありません(そのような優劣判断は私にはできません)。どんな経済状況にも通用する万能な経済理論など今のところ存在しないでしょう。リーマンショックを予測した「理論」はありませんでした(たまたまある人が予測していた、みたいことはあったようですが)。というふうなわけで、株価の上下予測といったことには関心がないわけです。

>Josefさんたちは現在、金利が低いのをもって日本に債務危機があり得ないと云ふ無理な説明をされる。それは断崖絶壁があるかも知れない暗闇をまだ急坂には出遭ってゐないのを理由に安全だと言ひくるめ、前進を強要する様なものです。

国債金利が低いのは結果であって原因ではありません。金利の低さは「円」への信頼が高いことを示す指標の一つです。財務省やマスコミが必死で「財政破綻の危機」「借金は国民一人当たり○百万円」と喧伝し、かなり成功していますが(最近は信じない人が増えているようでめでたしめでたしですが)、本気で「円が危ない」と心配している人がいったいどれだけいるでしょう。政府の借金が多いといってもギリシャみたいな対外債務ではないし(債権ならたくさんあるが)、国民の金融資産も国の外貨準備高も世界最高レベル。そして多くの国際機関等にアメリカに次ぐ多額の資金を拠出している国、日本。そんな国の通貨が、デフォルトの断崖絶壁の手前にあるわけがないじゃありませんか。

Re(19):臆病者の罠(祝!TPP交渉決裂)
 Josef  - 15/11/20(金) 18:37 -

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   デフレに関連して私は「縮み志向」という言葉を使いましたが(ご存知のとおり、もともとこの言葉は韓国人学者が日本文化について言った言葉です)、経済学者のクルーグマン氏は「臆病者の罠」(timidity trap)という言葉を使っているそうです。

>プリンストン大学教授でノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏は、最近、IMFのパネルディスカッションで、長期停滞が続いた日本は、「Timidity Trap(臆病者の罠)」に陥っており、もはやQQE政策のみで、この長期停滞を脱出できないであろうと述べた。(QQEとは量的・質的緩和のこと――引用者注)
ttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/46443?page=4

この記事には、他に、アメリカのルー財務長官がつい先日麻生大臣に積極的な財政出動を促したことも触れられています。

しかし、他国から言われるまでもなく、積極的な財政出動など、とっくに実行中でなきゃおかしいんですよね。安倍政権は当初より「三本の矢」と言ってたんだから。なぜ「第二の矢」(積極財政)をやめてしまったのか。取り巻きのリフレ派たちに「破綻するぞ!」と言われて恐くなった?「臆病者」は当たっているかもしれません。

ところが今回、アメリカに積極的財政拡大を言われてたからっていうんで、TPP対策等のために組む予定になっている補正予算に急遽「景気対策」を盛り込んでいくことになるかもしれません。めでたし、と言いたいところですが、ダメですね、こんなんじゃ。グローバリスト、リフレ派の顔色を見て緊縮財政、アメリカ政府から何か言われたら財政拡大、あっち見たりこっち見たりで計画性もへったくれもない。ただ一貫しているのは、日本の一般国民の生活からは目をそらすというところ。

Re(20):臆病者の罠(祝!TPP交渉決裂)
 バジル二世  - 15/11/20(金) 22:23 -

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   こんばんは。

別に病気で同情を買って意地の悪さを誤魔化さうと云ふのではありませんが、糖尿病で目を患ってしまったので、誤字・脱字ご容赦を! それから私の方はJosefさんと主要に遣り取りを交はしてきたアベノミクスについて書きます。

>私がデフレに対してケインズ的(あるいはニューディール的)財政支出政策を支持するのは、戦前のデフレに対して効果を上げた政策だからです。

対立学派とされるシカゴ派は特に規制緩和論が不況下で不人気で供給刺激反対論が湧き起こったりします。初めの頃ご紹介の佐伯啓思氏もその論者です。しかしこの論が依拠する相互独立する需要・供給観には例へば需要を生む供給の存在なんかが反証になりますね。

よくは知りませんがケインズの恐慌時の「効果」は異論もあるみたいです。だから勝利宣言はまだ早いですよ。そして義務教育で喧伝される様に特定学派を肯定するご自身こそ、批判なさったパラダイム=「時代に支配的な物の見方」に乗っかってゐるのではありませんか?

その成果の真偽はこれからも調べるつもりですが、私の質問が決して時代の状況から目を背けたものではないことは述べておきたいです。財源的に先が見えない現政権の政策が、財政支出の効果を疑問視できるシカゴ派提起の条件に一致するからこその指摘です’。

>>Josefさんたちは現在、金利が低いのをもって日本に債務危機があり得ないと云ふ無理な説明をされる。(……略)

>国債金利が低いのは結果であって原因ではありません。金利の低さは「円」への信頼が高いことを示す指標の一つです。財務省やマスコミが必死で「財政破綻の危機」「借金は国民一人当たり○百万円」と喧伝し、かなり成功していますが(最近は信じない人が増えているようでめでたしめでたしですが)、本気で「円が危ない」と心配している人がいったいどれだけいるでしょう。

すいませんが、解らないです。円の危機(急落?)が「原因」になって日本国債の金利上昇=債務危機が「結果」として起きると云ふことですか? さうしたシナリオは初耳ですので、もしよろしければ誰がどんなところで言ってゐるのかご教示願へませんか。

確かにこれまで申してきたのは、国債の暴落(金利の急上昇)が「原因」になったインフレ(「結果」)です。機序は詳しく知りませんが、おそらく市場が公的債務負担軽減を狙った政府のインフレ政策を予想するのが圧力となって起こる物価上昇になると思ひます。

>政府の借金が多いといってもギリシャみたいな対外債務ではないし

対外債務中心とすると、仰ってゐると思はれる様なシナリオ、その国の通貨への信用失墜(通貨安)が国債の利払ひ・元本償還能力への不安を生み暴落を引き起こす事態もあるでせう。それが日本では杞憂であるのには同意しますが、元々私も想定してゐません。

>そんな国の通貨が、デフォルトの断崖絶壁の手前にあるわけがないじゃあかりませんか。

その様な油断は危ふいと思ひます。信用不安が表面化してから対策を打つのではもう遅いんです。累積債務の膨張への不信は何かの切っ掛けで金利の突然の急上昇として表れることが多いのです。借金の水準も決して安心できるものではないと考へます。

>ところが今回、アメリカに積極的財政拡大を言われてたからっていうんで、TPP対策等のために組む予定になっている補正予算に急遽「景気対策」を盛り込んでいくことになるかもしれません。

現在「第二の矢」を棚上げしてゐるのかは詳しく調べてゐないのですが、どうでせう。記事を読んだけどクルーグマンや財務長官が言ってゐるだけの話で、政府周辺の顔ぶれは同じだし、勢ひづくのは積極財政派だけなので、政策が大きく変はる感じはしないのですがね。

まあ、アベノミクスに当初喜んでゐたのも、御祝儀相場って感じもなくはないし、どうしても財政政策の効果に疑問を感じてしまふ私からすれば、記事を読んでもああ、設備投資にもケチが付いてんのか位の感想しかないです。やっかみと言はれればそれまでです。

でも自分の「縮み志向」は結構当たってゐる気がするので、記事が紹介する様に短期的に消費が上向いたと云ふ統計が出ても消費は低空飛行だなって思ひます。だから積極財政と云ふ線に賛同するためには最低限、福祉・社会保障の財源と将来像を示してもらひたいですね。

Re(12):祝!TPP交渉決裂
 バジル二世  - 19/1/20(日) 10:40 -

引用なし
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   >
>「需要」「供給」ともに意味がよく判りません。
>
>例へば土地資金の総量規制が銀行の担保価値を減じ長い不況に繋がったのはよく言はれますが、地権者の細かい土地を集めて開発業者に売る「地上げ屋」を需要側、供給側のいづれとしても、仰る市場の需給政策の問題の反例となります。
>
>その様な事柄によってまだら模様の需要・供給の強弱の関係を、或いは刺激・制動の匙加減をどうして一括りに仰ることができるのでせう。

引用最終段落のみ真ですね。不動産需給は「総需要=総供給」とは意味が異なります。市況の弛緩、逼迫による下落や騰貴が直接にはGDP計算の構成数値とはなり得ないのは、付加価値ではないからです。

更には税制措置の影響下にありGDPへの貢献や減殺は捕捉が大変難しいです。つまり毎年について取得価格÷年数が固定費として、減価償却に従ふ形で上に建った工場の製造価格に跳ね返るのみでしかありません。

これは単に不動産取得費の費目が労賃や地代、原料費と全く異なるストック量だからで、フロー量、付加価値の和たるGDPに単純に加減できないと云ふことに他なりません。統計の成り立ち上両者は異質のものですね。

功成り名を遂げた後のミクロ回帰
 バジル二世  - 19/1/24(木) 7:57 -

引用なし
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   ttp://blog.livedoor.jp/hebo0909/archives/15484806.html

正仮名の本ではないので購入は致しませんよ? しかし何故に百貨店なのか。バブル崩壊後あの淘汰の大嵐が吹き荒れた卸小売業界の中でも、マスコミが特に不効率で古い事業形態と判で押す様に叩きに叩いた本丸でした。

私たちの世代でマクロ経済学と云へば、ケインズを土台としたもので、それは即ち天下国家を論ずることを意味しました。その国民所得GDPを如何に極大化するかの文脈での有効需要管理政策が効かなくなってゐます。

大河ドラマの時代考証が当てになるかは別にして、千利休役の桂文枝が南蛮渡来の品々を秀吉に売り付ける絵も流れた、正に近世のイメージを負った豪気な商法です。それへの単なる郷愁でせうか?

アメリカのネット流通企業の国内物流センター開設の大々的宣伝なんかを横目に、伊藤氏はここで何故再考の狼煙を上げるのでせうか? そこに思ひを致さない経済学論議こそが日本をデフレの苦海に沈めてをります。

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