|
名前は三窪秋羽。その筋では有名な対悪魔集団のガイア教団に所属していたようだが、俺達のような特別な力はなく、持つ気もなかったらしい。教団の活動内容も余り深くは知らず、単に給料の良い働き口としか思っていなかった。
そのため、彼女は為す術もなく悪魔たちの魔の手に堕ちてしまったようだ。
無理矢理に魔力で肉体を改造され苦痛に顔を歪める秋羽さんを、とても愉しそうに見つめている悪魔の姿が見える。そいつがピアノを引くようにして指を動かす度に、彼女の姿は醜悪なものへと変わっていった。
どうやらこれが、彼女が最期に見た光景なのだろう。
その後は、俺達との戦闘風景が断片的に遺っている。この時点で、もう人間としての意識はなかったようだ。
「酷い……私達みたいなバスターならまだしも、なんで普通に暮らしているだけの人がこんな事されなくっちゃならなかったのよ……」
彩菜が俯きがちに呟く。過去に悪魔たちによって人生を狂わされた経験があるからか、いつも明るく振舞っている彩菜もこの時ばかりは口を噤んでいた。
「そうね……私も、無念だったと思う。何をされたか分かんないまま、化け物にされちゃったんだし」
念の為に持ってきていた予備の女性用スーツに着替えながら、小さく答えた。サキュバスの体型に合わせているため、少しばかり大きいが、秋羽さんを産まれたままの姿にはしておけなかったから。
「でも、悪いことばかりじゃないわ。私の見た悪魔……私は知らないけど、俺には見覚えがある」
その言葉にハッとして、彩奈が振り向く。さっきの陰鬱な表情はどこへやら、デビルバスターとしての真剣な顔つきでこちらを見つめていた。
それを見て少し安心しつつ、タブレットを操作して例の悪魔を探す。……あった。こいつだ。
それは――
|
|