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30cm四方くらいの通気口が、大きな口をあけて壁からひっそりとはみ出していた。
幸いにも換気扇のようなものは付いておらず、どうにかすれば入れそうだった。
見たところ他に誰にも見られずに侵入出来そうな場所は無かったし、普段ならば誰も見向きもしないようなこれならば、俺の目的を果たすにはうってつけの入り口だろう。
そうと決まれば、まずはこの体から抜け出さなければ。……当然、一部は体内に残しておくが。万が一というのもある。
「うげぇぇぇ……」
虚ろな目をした女の子の口から、液体状の俺がニュルニュルと這い出す。
それに呼応するように、身体はゆっくりと通気口に歩み寄り口を上へと向けた。
そのまま俺はスルスルと壁を登り、やがて入り口が見えると一気に飛びこんだ。
――後ろの方で誰かが倒れた音がした。
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