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最初は勘違いかと思ったのだが、どう考えてもこの辛さは本物だ。だが何故? 俺は今スライム状になっていて、呼吸は必要ではないはず……とすると、何か起こったのか?
……うーん、考えていても埒が明かない。今はとりあえずプールの中から出るとしよう。そろそろ本格的に危なくなってきた。
勢いよく水を掻き、水面からざばっと音を立ててモグラのように頭を出し……
――そこで信じられないものを見た。
頭から水をしたたせて、口をあんぐりと空けている競泳水着姿の女の子……さっき見た女の子の顔がゆらゆらと揺れる水面にうかんでいる。本来ならば、俺が映るべきところに。
俺が表情をコロコロと変えるたびに、水面の表情も次々変わっていく。
――これはつまり、どうしてかは分からないが俺はこの子の身体を乗っ取ってしまった、ということなのだろう。
だが、それならばさっき息苦しかったのもうなずけるし、とっさに泳いだにもかかわらずあんなにスムーズにいったのも納得だ。水泳部員ならば泳ぐのは上手いだろう。
「ふう。一時はどうなるかと思ったけど、結果オーライってとこかな」
たまらずそう呟いた。が、安心したせいか、俺は周辺の警戒を怠ってしまっていた。
「あれ〜? 家に居ないと思ったら、もうきてたんだ」
「相変わらずの水泳バカね。ま、そこが良い所なんだけど」
プールサイドに上がった俺を、嬉しそうに見つめる水泳部員らしき女の子たち。
とっさに俺は――
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