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マージョリーさん、俺の姐(あね)さんと呼ぶ人物で、うちの居候。
弔詞の読み手と呼ばれるフレイムヘイズ。
「今日は狩人のガラクタをチビジャリ達と調べにいくんだろ?」
おかしい。いつもはいくら起こしても起きないマージョリーさんが?
その日は朝から何かが違っていた。
「ふあ〜あ、なんだいこの暑さ。おまけになんだか・・・変な感じ。」
アスファルトから立ち上る陽炎の中を廃墟となったデパートに向かう俺と姐さん。
「どうせたいした物あるわけないんだし、なんでこの私があのチビジャリなんかと一緒に・・・あら♪」
ハイヒールの足が止まる。
駅近くのオープンテラスのカフェ。
「おいおい我が麗しのゴブレット、マージョリードゥよぉ、まさか朝っぱらから酒かっくらうほどの・・・!」
マージョリーさんのこぶしが肩から吊った巨大な本にめり込む。
「うっさい!ばかマルコ。ケーサク、アンタ先にいってさ、何かいいもの有ったらチビジャリたちより先に見つけて連絡するのよ?いい?」
「え、あ・・・ああ・・・判りました。」
「ちょっとお兄さん、生チュウね!」
仕方ない、俺一人で向うしかなさそうだ。
いつも一緒だった田中はオガちゃん(同級生の緒方真竹)と付き合い始めて以来、殆ど顔を出さなくなった。
普通の人間は俺、佐藤啓作だけ。
平井ゆかりこと、シャナちゃんはマージョリーさんと同じフレイムヘイズ。
坂井悠二はその体内に零時迷子と呼ばれる宝具を持つミステスという存在で、実は既に人間としての悠二は既に死んでいて・・・という説明は聞いたがいまいちまだ俺には理解できない。間違いない事は、俺より遙かに強く、遙かに紅世の徒(ぐぜのともがら)との戦いで役に立つであろうということだった。
「よう、坂井、シャナちゃんも。」
「佐藤、一人?」
坂井が振り向きながら額の汗を手の甲で拭う。
「弔詞の詠み手は?」
シャナちゃんは不機嫌そうだ。
取り壊し予定の建物には当然電気も来ていない。籠もる熱気は滞留し、ガラクタの山は埃と機械油のような匂いを滲み出しているようだ。
「あ、姐さんはちょっと寄る所があるって。よし、俺は何をすればいい?」
「ふんっ、まったくまたどっかでビールでも飲んでるんじゃないの?」
図星だ・・・まあ誰が考えてもそうかもしれない。
「あっつ〜〜い、ねえ佐藤、アイス買ってきてよ!」
シャナちゃんが俺に言う。何のいやらしさも無く、率直におねだりされた。
「あ、そうか。オッケー。コンビニいってくる。」
「い〜〜〜っぱい買ってきてね!」
「うん、判った。」
アイスのショウケースを開けると心地よい冷気が溢れ出てきた。
すぐには来ないと思うけど、マージョリーさんの分も入れて20個ぐらい買っていけばいいか。多すぎるかもしれないけど足りないよりはいいはずだ。
崩れそうになる足元に注意しながら懐中電灯を頼りにさっきの場所に戻る。
「お〜い、アイスかってきたぞ、坂井?どこだ?」
返事が無い。どうしたって言うんだ?
「!?」
暗闇に青白い光が広がり、そしてまた元の暗闇に。
「な、何やってんだ?そこにいるのか?」
懐中電灯で照らした先には・・・
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