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いくらなんでも突然すぎる。紺道零香と言えば、強情なことで有名だけどここまで大胆な人じゃなかったはずだ。
それこそ、俺みたいなさえない奴を実験に誘うなんて有り得ない位に。
どうにも腑に落ちない俺は、目の前にいる彼女に疑問を投げかけた。
「なあ、あんた紺道 零香じゃないだろ?」
「……? どうして、そう思うのかしら?」
一瞬、ピクリとゆらいだ彼女の左目を俺は見逃さなかった。この動作には見覚えがある。だが……そんなまさか……
「お前、もしかして……健、介なのか?」
「あーはいはい。ご名答。まさかこうも簡単に見破られるとはねぇ……。
正真正銘、一週間前に消えちまった尾崎健介(オザキケンスケ)ですよっと」
信じられなかった。目の前に居るのは紺道零香ではなく、健介だって!?
「あー、聞きたい事は山ほどあると思うんだが後にしてくれ。まずはコイツをお前に預けておきたい」
と言って、何やら装飾の派手な、俺には見覚えのないものを投げてきた。
これは、銃、か? なんでこんなものを、コイツが。
「そいつは部分入れ替え銃って言って、打ち抜いた人物とお互いの何かを入れ替えることが出来る便利な代物だ。 俺が紺道零香としてここに居るのもそいつのおかげなんだぜ」
「入れ替える……? どういうことだ? 詳しく教えてくれ」
やれやれ、と彼女には似つかわしくないポーズを取りながら答える。
「じゃあ具体例を話そう。俺とコイツ、紺道零香はいったい何を入れ替えたと思う?」
「お前が何を入れ替えたか、か」
何だろう。部分っていうからには何かの一部なんだろうけど。
肉体? いや、これじゃあ一部とは言えないな。……うーん。
「分からないな。いったい何を入れ替えたって言うんだ?」
「ふっふっふ〜。それはだな――」
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