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バジル二世さん、お久しぶりです。お元気ですか。
>TPPは別として、政府、それを取り巻く免許保有企業が独占している郵便、
>運輸、金融などの事業領域から、無免許の民間行業者がやる気十分なのに
>締め出されているのを見た日本人が、無免許業者を応援しようとやってきた
>ことではないですか。
ええ、私もそういう「善意」だと思います。
でも経済が普通に回っている時ならいいけど、不況の時にそれをやったら
駄目でしょう。郵政民営化は単一イシューではなく、構造改革・規制緩和と
いう枠組みの象徴として行われたわけで(中途半端なままですが)、
この枠組を押し進めた結果、たとえば製造現場では非正規雇用への切り替えが
進み大量の「希望を持てない若者」を作り出す、タクシー業界だったらただで
さえ不況で売り上げが落ちているのに新規参入と料金値下げの過当競争が
生じ運転手は食えなくなる、等々で社会全体としては格差の拡大、貧困層の
増大、税収の落ち込み、…となってきました。
好況時であればいいんですよ。売り手市場で企業は労働者が欲しいから好条件
を提示する、労働者の賃金は上がり、中間層が増大し、税収は伸びる。
そういう時なら自由化は新たな投資を生み、労働市場はさらに活性化する。
ところが不況時は経済が縮小して買い手市場となり労働者は仕事がないから
悪条件の仕事を選ばざるをえない。そんな時に自由化すれば「非正規」という
形で労働者の賃金は押さえられ、ますます貧困が増え、税収は落ち込む。
だから経済状況を見て規制をコントロールするのが政府の役割のはずなの
ですが、政府はやるべきことをやらずやるべきでないことをやってきた、
しかもそれを国民が支持した、というのはどういうことなのか、という疑問
から前投稿で「アメリカ信仰」を仮定してみました。
しかし考えてみると、80年代くらいまで、日米の間には貿易摩擦なんかが
あって日本人の多くは「アメリカは自分の都合で勝手なことを言うなあ」
くらいに思っていたはずです。ところが90年代初めから、ということは
冷戦が終わった後ということですが、アメリカが年次改革要望書で繰り返し
郵政民営化をはじめとする規制緩和を求めてきたときには日本は乗った
わけですね。一貫してアメリカ信仰だったわけではない。
ということは、時代が関係しているのかもしれません。90年代といえば
バブルがはじけて銀行は不良債権を抱え不況になっていった時期、一言で
いえば、日本が自信を喪失し始めた時期です。自信を失っていた時に
アメリカの要求が来たため、80年代までだったら「またアメリカが理不尽な
要求を突き付けてきた」となるところが「救いの声」に聞こえてしまった。
それ以前、サッチャーやレーガンの新自由主義政策で彼の国々の経済状況が
回復していたこともあるでしょう。そこで日本人はアメリカの要求を
我が欲望として、デフレ不況の時に規制緩和や公共事業削減等を行うという
ちぐはぐな政策をとってしまった。
以上のようにアメリカ信仰という前投稿の仮説を修正してみましたが、まあ
これも一つの仮説・解釈です。とにかくちぐはぐなことはやらないでほしい。
今日の朝日新聞の消費税増税についての社説はひどいものでしたよ。これに
ついて書くと長くなるのでとりあえずこの辺で。
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