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バジル二世さん、
引用されている伊藤元重という人は構造改革推進派、TPP推進論者で、竹中平蔵氏たちのお仲間ですよね。まあそれはいいとして、引用文中にある「ケインジアン」と「シカゴ学派」との対立について、佐伯啓思氏がちょっと言及しているインタビュー記事を紹介します。佐伯氏は90年代から構造改革を批判していた保守系の学者さんです(したがって伊藤元重氏とは立場を異にします)。
ttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/33285
ところで、日本の構造改革(規制緩和)はサッチャーやレーガンのやった改革にならったものですが、経済状況が正反対(インフレとデフレ)であるところに最大の問題があります。
サッチャー=レーガンの改革は、長引くインフレ不況を構造的なものとみて、経済・産業構造を転換すべく、規制の緩和・撤廃を中心とする自由化を行ったものでした。インフレとは「需要>供給」ですから、規制を外して自由化すれば供給サイドが活性化され、競争原理によって然るべき需給と価格のバランスが期待できると考えた。イギリスでは強い抵抗もありましたが、全体としては成功したという評価が一般的です。
ところが、日本はデフレ不況なのに、橋本内閣以降、英米を真似た構造改革をやり続けたんですね。デフレとは「需要<供給」ですから、英米と同じことをやっても、もともと過剰な供給サイドがだぶつくばかりで、過当競争→価格下落→賃金低下というデフレのスパイラルを押し進めるだけです。
日本の経済リーダーたちは、サッチャー=レーガン型の経済政策を万能だと思ったようです。それは彼らが馬鹿だからではなく、サッチャー=レーガン改革の後ろ盾となったシカゴ学派の経済学が普遍性を標榜するものだったからでしょう。伊藤氏も竹中氏も、その経済学を学んだ人たちです。英・米・独も、IMFも、つまりは現在の世界経済をリードする人/組織は、各国政府は通貨量調整と財政バランス(収入と支出の均衡)の調整をする以外には市場に介入しない方が良いというシカゴ学派的イデオロギーに染まっており、日本も軌を一にしているということだろうと思います。そしてこれが経済グローバリズムの本質です。
しかし先進国中、戦後にデフレに陥ったのは日本だけです。そしてデフレ下で上のような自由化政策を行えばどうなるかは少なくとも日本人は身を持って分かったはずです。しかし一度身に付いたイデオロギーを変えるのは容易ではない。昨今、ケインズ的政策を見直す人たちが日本でもアメリカでもフランスでも増えてきているように思いますが、主流派とのせめぎ合いはしばらく続くのだろうと思います。
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