|
Josefさん、
>引用されている伊藤元重という人は構造改革推進派、TPP推進論者で、竹中平蔵氏たちのお仲間ですよね。まあそれはいいとして、引用文中にある「ケインジアン」と「シカゴ学派」との対立について、佐伯啓思氏がちょっと言及しているインタビュー記事を紹介します。
伊藤氏がどんな学派に属するのかはJosefさんの話以外に見聞きしたことはありませんが、初学者向けの本を学派の主張で染め抜く様な非「合理的」な人物でもありません。引用にある様にケインジアンの業績の説明がほとんどであり、それへの批判的考察は重要なもののみに留めてゐます。
たとひ財政出動を批判するにせよ、ケインジアンの論理により行ふのが、ほとんどの経済学者だと思ひますし、氏もその掟に従ってゐます。ケインジアンだってあらゆる財政出動の乗数効果が同じでそれらの施策にはどれも等しく意味があると考へてゐるとは限りません。それに訴へるのが「リカードの定理」への言及です。
以前Josefさんは事情で働きに出ざるを得なかった非進学者が学校助成金を負担することに強い違和感を表明なさってゐましたね。ケインジアンのテーマは、学びに飢えた非進学者への減税と、学生向け補助のどちらが、読書など教育振興に繋がるかと云ふのに通じます。意欲があるのだから前者の方が本に出費して読みます。
これを一般的な消費について言ったのが乗数です。例へば、貯蓄に回されがちな子供手当を支給して、入ったお金を衣食住にすぐ使はざるを得ない低所得者の配偶者控除廃止で穴埋めするなんてのは愚の骨頂なのです。消費性向は前者<後者ですから後者が乗数効果大です。
ケインジアンが財政出動策の子供手当に疑義を呈する論理は乗数効果が政策対象者によって異なることに基きますが、状況によっても異なると思ひます。政府が出した将来の社会保障制度への見通しが税の裏付けに始まって嘘臭い時に、公共工事が増えて多少給料が増えようが、それは将来への貯蓄に回るのではと云ふことです。
従って氏がリカードの指摘を「重要なもの」と評価したのに何ら誤りは無く実態の分析に有効と考へます。そして、ケインジアンの主張の骨格は批判派もベースにしてゐるので、「主流」にあって経済学に浸透してゐるのでは? 「普遍性を標榜する」学派も珍しくはなく、ならケインジアンやマルキストは例外なのですか?
少し長い旅行から戻ったばかり。取り急ぎお返事します。
|
|