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バジル二世さん、こんにちは。
もともとTPPを俎上に載せたスレッドですので、主にその観点からコメントします。
日本はバブル崩壊で自信を失ったのかどうか、以後20年以上にわたってアメリカン・グローバリズムに頭の中まで乗っ取られたかのように、日本の状況に即した経済政策を打てなくなっているというのが私の見立てです。だから戦後例のない「デフレ」という事態になっても「グローバル、グローバル」、「改革、改革」と念仏のように唱えながらインフレ対策と見紛う構造改革なんかをやってきたし、大震災が起こったその年に復興とは真逆のTPP交渉参加を表明した。足許の国民経済はガン無視。この点、自民党も民主党も違いはありません。こういうのをパラダイムと言うんでしょう。パラダイムだから国民もそこに巻き込まれ、推進勢力の一部となってしまっています。
このパラダイムの理論的後ろ盾となったのがしばしばシカゴ学派と呼ばれる新自由主義であり、直接的な政策としては「ワシントン・コンセンサス」として1989年にまとめられたアメリカの国際経済方針であると言っていいでしょう。「ワシントン・コンセンサス」の10項目をWikiから引用します(英語Wikiにはもっと詳しく書かれています)。
1. 財政赤字の是正
2. 補助金カットなど財政支出の変更
3. 税制改革
4. 金利の自由化
5. 競争力ある為替レート
6. 貿易の自由化
7. 直接投資の受け入れ促進
8. 国営企業の民営化
9. 規制緩和
10. 所有権法の確立
ほとんどが90年代以降、日本においても、「改革」の名であたかも「正義」であるかのごとく連呼され、推進されてきた内容であることがお分かりのことと思います。もちろんTPPもこの延長線上にあります。これらの実現には国民の反発が障害となるから、様々な手段を通じて、たとえば「財政赤字」に対する恐怖を植えつけたり、ルサンチマン(「悪いのは公務員だ!」)を利用して郵政民営化をより良い社会への突破口であるかに思わせたりすることに成功してきました。
今、TPP問題などで臨時国会の開催を求める野党に対して政府は「議論は尽くされた」として開催を見送っています。TPP暫定合意の詳しい内容を国民はもちろん国会議員ですら知らされていないにもかかわらず、です。以下は「政府は日本語訳を開示せよ TPP「暫定案文」」と題する弁護士の記事です。
ttp://moriyama-law.cocolog-nifty.com/machiben/2015/11/post-8876
ところで私がデフレに対してケインズ的(あるいはニューディール的)財政支出政策を支持するのは、戦前のデフレに対して効果を上げた政策だからです。ケインズ派がシカゴ派より客観的に優れているからではありません(そのような優劣判断は私にはできません)。どんな経済状況にも通用する万能な経済理論など今のところ存在しないでしょう。リーマンショックを予測した「理論」はありませんでした(たまたまある人が予測していた、みたいことはあったようですが)。というふうなわけで、株価の上下予測といったことには関心がないわけです。
>Josefさんたちは現在、金利が低いのをもって日本に債務危機があり得ないと云ふ無理な説明をされる。それは断崖絶壁があるかも知れない暗闇をまだ急坂には出遭ってゐないのを理由に安全だと言ひくるめ、前進を強要する様なものです。
国債金利が低いのは結果であって原因ではありません。金利の低さは「円」への信頼が高いことを示す指標の一つです。財務省やマスコミが必死で「財政破綻の危機」「借金は国民一人当たり○百万円」と喧伝し、かなり成功していますが(最近は信じない人が増えているようでめでたしめでたしですが)、本気で「円が危ない」と心配している人がいったいどれだけいるでしょう。政府の借金が多いといってもギリシャみたいな対外債務ではないし(債権ならたくさんあるが)、国民の金融資産も国の外貨準備高も世界最高レベル。そして多くの国際機関等にアメリカに次ぐ多額の資金を拠出している国、日本。そんな国の通貨が、デフォルトの断崖絶壁の手前にあるわけがないじゃありませんか。
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