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芥屋氏の「英国伝統の議会制民主主義が機能していない」はまさにその通りで、イギリス下院議員の大半はEU残留派でした。ところが国民投票は見てのとおり。政治家たちがEU加盟による恩恵を受けるロビイストたちの意見を容れる一方で、国民の声をバランスよく反映する機能を失っていく。これは他のEU諸国にも共通する現象だと思われます。
たとえば21世紀に入って起草された欧州憲法案を、ドイツ議会は圧倒的多数で批准しました(反対は10分の1以下)。一方フランスでは国民投票を実施し、反対多数で批准されませんでした(2004年)。総じて、国民投票を行った国は反対、議会のみで賛否を問うた国は賛成という傾向が強く出て、EU全体にわたる議会と国民との乖離が浮き彫りになったといえます。
この不平等は一国の中でも、またEU諸国間でも起こっていて、このまま行くと極めて危険な状態になると思われます。大英帝国の歴史から移民には慣れているイギリスですら憎悪が渦巻いている。他国もそれは同じなわけで(むしろイギリスよりも憎悪の強い国、地域が多いでしょう)、このままEU諸国民のEU憎悪が膨らんでいくと、どんな形で爆発するか分かりません。だからEUエリートたちは引締めに必死なわけですが、単一市場という不自然なルールを基盤とする限り、この憎悪圧を食い止めることはできないでしょう。
さしあたり、ユーロ圏でないがゆえに離脱しやすかったイギリスが離脱を選択して本当に良かった。これによって、各国で離脱の動きに弾みがつくのも良し、あるいはEUのトップたちが「引締め」ではなく「緩和」の方向に舵を切ることによって、より緩やかな共同体となっていくのも良し。
そのためにも、イギリスが離脱後の国家運営に成功することを望んでいます(上に書いたように現議員は存続派が多いのだから政治の混乱は当分続くでしょうが)。
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