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英国のEU離脱と米国大統領選挙について、藤原正彦氏が「週刊新潮」最近号のエッセイで私と同様の見方を、私よりもずっと達意な文章で伝えているので、部分的に紹介します(発売中の雑誌なので大量引用は控えます)。
>日本を含め世界中の有識者やメディアは、ほぼ一致して英国のEU残留と大統領選でのトランプ敗北を固く信じ、またそうなることを強く望んでいたから、選挙後の彼等の負け惜しみや歯ぎしりは見物だった。EU離脱では「理性が感情に負けた」「ポピュリズム(大衆迎合主義)の恐さ」「今となって後悔する国民」などと言いたい放題だった。「扇動され踊らされた低学歴労働者による無責任な愚挙、民主主義の危機」と慨嘆してもみせた。今回のトランプ勝利後も同工異曲が繰り返された。さらには反トランプデモが全米に広がるなどのおまけもついた。
そして藤原氏は二つの歴史的出来事に共通因として「グローバリズム(ヒトモノカネが自由に国境を越える)」と「PC(ポリティカリー・コレクト、ありとあらゆる差別や偏見をなくすこと)」の二つを挙げています。グローバリズムは各国で冨が一部の上層に集中し下層を増やして国民を分断し、PCはグローバリズムによって増加する一方の移民を抑制しようとする議論を非人道的な差別として封印する役割を果たしてきた、というわけです。
前回の投稿で私はトランプ氏が「優れた大統領になる可能性はほとんど無い」と書きました。藤原氏もトランプ氏の力量を評価しているわけではないようです。その上で、トランプ氏に投票した人たちの気持ちをこう推測してエッセイを締めくくっています。
>グローバリズムにしがみつく人々とその体制を倒してくれるなら、無教養の成金オヤジでも誰でも構わない。セクハラでも差別でも何でもよい。彼等の怒りはそれほどまでに深かったのである。
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