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芥屋さん:
> 「好きな野球のチーム」程度に偏りがある、と思いますよ。
いや、だからさ、「男らしさ・女らしさ」の基準が雇用や出世に影響する可能性と、「好きな野球のチーム」がそれに影響する可能性とでは、話にならないくらい違うでしょうが。わたしが問題としているのは、個人の内心にある「男らしさとはこういうものだ」という考え方や態度ではなく、規範としての「男らしさ・女らしさ」なんだから。
そもそも、野球のチームと言えば巨人ファンとアンチ巨人ファンというように世の中には両極端がありますが、ジェンダーの規範に関して「スカートを履かない男よりもスカートを履いた男の方が歓迎される」ような職場が(職務上スカート着用が必要な例をのぞいて)どれだけありますか? どう考えても、圧倒的に「スカートを履かない男性」を歓迎する職場の方がはるかに多いでしょう。個々の好みだから理不尽でも(システム循環を伴う)「差別問題」ではないと言うなら、「ある職場ではスカートをはいた男性が歓迎されるけれど、別の職場ではズボンをはいた男性が歓迎される」程度の状態であるということになるはずですよ。
> その場合、そういう場に合わせることを求められるのは当たり前のことです。
話を逸らしましたね。
わたしが主張し、芥屋さんにも今のところ採用していただいている「差別」定義モデルによれば、それはジェンダーの規範による差別と呼ぶほかないわけです。
そのうえで、例えば大峰山問題でもそうですが、わたしは「差別であれば文化も社会常識も無視して問答無用で禁止あるいは打倒すべきだ」という考え方を取りません(と同時に、伝統や社会常識であればまったく疑ってはいけない、とも思いません)。わたしが定義する意味におおいて差別かどうかという論理上の議論から、必ずしも「差別だったらどう対処するか」という結論は導き出せないとわたしは考えているわけです。
したがって、あなたが「そういう場に合わせることを求められるのは当たり前のこと」と言われても、それは「どう対処するか」の部分についてあなたの意見を述べていることにしかならなず、「差別である」という事実認識と何ら矛盾しません。
> 所かまわず好きなように自由に表現したいのにさせてもらえない…そういう壁
> が「差別」なんだ、場もわきまえず自由に表現するのも「権利」なんだ、邪魔
> するな!なんてのは、ガキのツッパリですよ。
まず、上記の通りわたしは「場をわきまえず自由に表現することを邪魔するな!」という立場に必ずしも立ちません。例えば、大峰山の問題についてわたしは女性の入山を認めないのは差別であると思っていますが、かといって大峰山側の意志を無視したりその非合理性を嘲ったりして良いとは思いません(と同時に、かれらの主張を無条件で受け入れる必要もありません)。しかし、もし大峰山に女性が入ってはいけないというルールが全く差別的ではないとあなたが言うのであれば、反論するでしょう。
> いえ、こんなものを「差別だ!」なんて言い出すから「差別」という言葉のイ
> ンフレが起るんです。
そうしたリスクは取らざるをえないと思います。
それに、例えば同性愛者の権利というのが今は重要な人権問題として取り上げられていますが、50年前は National Organization for Women という巨大女性団体のトップが「レズビアンの権利なんてそんなくだらないものを真面目に取り上げたら、フェミニズム自体がバカにされて見向きもされなくなる」と言っていました。その他にも、黒人を奴隷として扱うのは間違いだとか、女性に参政権や土地所有権を持たせるなんてあり得ないとか、差別に反対する運動が起きるときには常に「そんな問題はくだらない、もっと重要な問題に取り組むべきだ」という反論がありました。
もちろん逆に、誰かが「これは重大な人権問題だ」と訴えたけれども、ずっと笑われるだけで終わったという例もたくさんあるでしょう。しかし、いまあなたの目から見て「くだらない、取り上げるまでもない」問題に見えることが、次の世代においては大きな社会的不公正の問題として注目を浴びる可能性は常にあるわけです。
「ジェンダーの規範に関する権利」という問題意識は、現時点では女性や性的少数者のための取り組みだと思われていますが、わたしはこれは男性も含めた大きな流れとなる可能性があるんじゃないかと思っています。そうした意識が広く共有されるまでは、あなたの言う通り「反差別運動」の足を引っ張る事にもなるかもしれませんが、今時点の考えだけで排除せずに、寛容に「ジェンダーの規範による差別」の取り組みを見守って欲しいと思っています。
> 何でもかんでも差別差別と言い立てることが逆に反差別をスポイルしていると
> いう現状、この問題を考えるときに、何をもって差別かという基準に今一度、
> 弛緩した被差別意識を厳しく立て直すのは必要なことだと思います。
なるほど、しかしそれはわたしの戦略とはかなり違います。
わたしの定義に代わる新たな定義も必要になると思いますが、何か原案はあるでしょうか?
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