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r>g、つまり、(長期的にみた場合)資本の収益率(r)の方が経済成長率(g)より大きいというピケティの公式は今やすっかり有名になりました。例外が第一次大戦後と第二次大戦後で、持てる者たちの資本(資産)が破壊されたために持てる者と持たざる者との不平等が小さくなったということだそうです。安定期に入ると上記のr>gにしたがって再び不平等は広がっていく。
これは日本のことを考えてもなるほどでして、たとえばデフレが始まった90年代後半から10数年、経済成長はほとんどしていない(つまり国民全体の資産は増えていない)のに上位10%の資産は増えているというのだから、r>gが見事に当てはまっています。
また、戦後は都市が破壊された上に国債は紙切れになるわ財閥は解体されるわ農地改革で土地持ちは資産を失うわで、まあ、みんな貧乏になった。そこからしばらくは経済成長とともにみんなが少しずつ豊かになっていく時代が続いた(成長の果実が貧乏なみんなにも行き渡った)。貧しい家庭の子も未来に希望を持つことができた。しかし、破壊的な出来事の起こらない安定期に入って久しい今、親に資産があるかどうかで子供の学力・意欲に大きな差が出てくる、つまり格差が世代から世代へと受け継がれ、拡大していく時代に入っています。
フリーター赤木智弘氏の「希望は、戦争」という8年前の言葉をいやでも思い出します。ピケティが膨大な資料を調査分析して実証的に示したことを、彼は直感的に知っていたのかもしれません。
とまれ、政治は依然として、国民の生み出す財を資産家に移転する政策に余念がありません。このことがやりきれないのは、事が政治家や財界やハゲタカだけの話ではなく、この後に及んで一般国民がなおそれを支持していることです。振り込め詐欺に騙されるお年寄りたちが、騙され続けている日本人そのもののようにも見えてきます。
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