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私の数少ない友達の一人。いつもキツイ雰囲気を醸し出している私にいやな顔一つせず話しかけてくれる、優しい子。
つい、まじまじと顔を見つめてしまいます。それにしてもきれいな瞳ですわ。
「どうしたの白川さん?私の顔に何かついてる?」
「いえ、何でもないですわ。ただ……」
「ただ?」
「その……かわい……かったから……つい……」
「ふえっ!? いっ、いきなり何言いだすの!?そんな……可愛いだなんて……」
はっ、私は一体何をこんな告白まがいの恥ずかしい事を……
「俺」が少し出てきてしまったのでしょうか。それはともかく謝らないといけませんわね……
「す、すみません。こんなことを言うなんて、私どうかしていましたわ」
「いや、いいよ。褒めてもらったんだからね。……でも、珍しいね。白川さんからそんなこと言われるなんて思ってもみなかった。何かあったの?」
「……そう、見えるのですか?」
「うん。いつもはあんまり冗談とか言わないしね、白川さん」
「なら、なにかあったということで。ふふっ、さ、遅刻しないためにも早く行きましょう瀬能さん」
***
今日はいつもより少し遅れちゃったから、急がないと。
そう思って早歩きをしていると、前から見慣れた子が来た。
きれいな薄めの黒髪をストレートに流して、優雅に歩いているのはおそらく白川さんだ。でも何か違和感があるような……ま、いいか。
そう思って近づき、いつものあいさつ。
「おはようございます。白川さん」
「おはよう。瀬能さん。今日も元気そうですね」
柔らかい笑みで返してくれる。でも、やっぱりどこかいつもとは違う気がするな。
いつもならあいさつした後はすぐに歩き始めるのに、今日は立ち止まって私を見つめてる。
「どうしたの白川さん?私の顔に何かついてる?」
「いえ、何でもないですわ。ただ……」
「ただ?」
「その……かわい……かったから……つい……」
「ふえっ!? いっ、いきなり何言いだすの!?そんな……可愛いだなんて……」
わわっ、驚いて変な答え方しちゃった。だっていきなり可愛いだなんて言われちゃったんだもの。それもあの白川さんに。
でも、いやな感じはしなかった。寧ろそう言われて良かったような気がする。何でかな。
……それにしてもどうしたんだろう?いつもはこんな冗談みたいなこと言わないで、先に行っちゃうのに。
気になったから聞いてみると、また白川さんらしくない答えが返ってきて驚いちゃった。
あんな楽しそうな白川さん、今まで見たこと無かったよ。
あと、赤面してうろたえてた白川さんもだけどね。あの不意打ちは犯則よね……
***
なんとか遅刻ぎりぎりで登校できました。横の瀬能さんも安堵の表情です。……来る途中で、私を見て何かを思い出したような素振りをしては、ニヤニヤしていたのが気になりますけど。
……そのまま瀬能さんと取り留めの無い話をしながら下足室へ。
ここの学校の下足室は学年で分けられていて、けっこうな広さがあり、概ね生徒からの不満は無いようです。生徒会長としては嬉しいことですわ。
自分の靴箱で靴を履き替えていると、聞きなれた声が後ろからしました。
なにやら気だるげな声の調子。
誰なのでしょうか、と思い振り向くとそこにいたのは――
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