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「えっ!? そ、宗助!?」
「そうよ。あなたが一人で先に突っ走っちゃうからアタシになるしかなかったの。ま、おかげで間に合ったんだけどね!」
そう言って俺は翼をつかって女を弾き飛ばす。見た目以上にこの翼は強く、いつも重宝している。アタシの知識もあるから、自分の身体の延長線のように使えるし。
俺に数メートルほど吹き飛ばされた女は何事も無かったかのように立ち上がり、こちらを睨み付ける。……さほどダメージは与えられなかったようだ。
「彩菜! アタシがひきつけている間に仲魔を!」
「……うん、分かった! ○×△……」
このやりとりが終わった直後、様子を伺っていた女がこちらに向かってくる。
――予想以上に速い。突然目の前に現れた女は両手の爪で俺を引き裂こうとして、腕を振りかぶる。
とっさに後退するが少しかすった。
「ぐっ……」
「うがぁああ!!」
俺の隙を見逃さず、すかさず叩き込まれる二発のパンチ。だが食らってやるわけにはいかない。よく動きを見て、捕まえる。くっ、女性だとは思えないほどの重さだ。
だが今の俺は淫魔。少し強化されたぐらいの人間には、力でだって劣ることは無い。
そのまま力比べの状態に持ち込む。
……やはり俺が優勢。このまま押し込んでおわりだ。
そう俺が勝利を確信したその時、それは起こった。
「×■×■×■――!!!」
「なっ、何なの!?」
突如、言葉にならない咆哮をしたとたん、女の腕の筋肉が膨れ上がった。だが、これでは奴の身体がもたないはず。捨て身の攻撃と言うわけか。
さすがにこれは抑えきれない。優勢だった状態がどんどんと拮抗していき、ついには押し倒される寸前に。女の表情が嬉しそうに歪む。
だが、これでも俺の勝ちだ。俺の仕事はあくまで敵を引き付けること。倒すのはあいつだ。
俺が確信するとともに女の頭上に巨大な光が降り注ぎ、二、三度うめくとそのまま前のめりに倒れた。
ゆっくり振り返るとそこには、彩菜の召喚した智天使級の仲魔と、やりきった表情の彩菜がいた。
「もう、宗助だって危なっかしいじゃないの。もう少し遅れてたらやられてたよ?」
「ゴメンゴメン。まあ無事だったんだからいいじゃない」
「良くない! ……それで、この人はいったい?」
「悪魔に操られてた一般人のようね。しかも、悪魔に操られたらもう助からないわ。
一生を悪魔の隷属として生きなければならないのよ」
「……そう、なんだよね」
「でもせめてもの慈悲に、アタシがあの人を呪縛から解放してあげるわ。きっとあの人もそれを望んでいるでしょう」
そう言って俺は気絶している女性に近づき、身体を重ねた――
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