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「所得10年で100万円増」という自民党の政権公約案
熊木秀夫2009/07/30
東京新聞7月30日の1面で、自民党の政権公約案「10年で所得を100万円増やす」という見出しを見た瞬間、私は、池田内閣の所得倍増論を思いだした。
当時私は、日本石油横浜製油所の新設プラントの仕事にたずさわっていた。確かに所得は増えたが、1週間に2回も徹夜をやり、翌日もさらに8時間も働いた。
電気溶接で、ホルダーに溶接棒をはさんで溶接をしたまま眠ってしまったことがあった。
製作工場に戻ってみると、夜10時までの残業は当たり前で、徹夜をする人もいた。疲れるからビタミンの入った水のようなドリンクを飲んでがんばったが、結果としてもらった残業代の半分は、栄養剤に使われてしまい、もう残業も徹夜もホドホドにしよう、と話し合った。
池田内閣の所得倍増というのは、私たちの賃金が同じ8時間でも10倍になるかのような錯覚を与えたが、私の経験では残業が増えていっただけだ。
元請の会社幹部がいった。「うちは給料が安いから、残業で稼いでくれ」と。その日本的体質は今もかわっていない。
池田内閣は1961年から、年間11%の国民総生産を伸ばして、60年に13兆円の国民総生産を10年後には26兆円にしようとするものだったが、その恩恵を受けて給料が10倍になったという労働者は、私の周りにはいなかった。
【大胆且つ集中的な経済政策】【持続的かつ安定的な成長経路に復帰】という華やかな言葉の中に、今国民が望んでいる「小学校から大学まで授業料を無料化して、誰でも大学まで行けるようにしてほしい」「病気になったときに医者代を心配せず治療を受けられる制度」こそ、これからの10年で実現してほしいのだが、そんな願いへの回答などはどこにもない。
1996年にデンマークの港町ヘルシンガーの友人を訪ねたとき、「この国ではあなたのような海外の旅行者でも、病気をしたときお金は1円もいらないんだよ」と声を掛けてくれたことを、昨日のように思い出す。
こんな記事が目に留まりました。みなさんどう思われますか。
いま、衆議院選挙を目前にして、政権交代が予測される中、各党の公約が出揃ってきました。
経済問題は勿論ですが、過疎、弱者、やさしさの復活などに光を当てる、人間の生活にゆとりのある社会をきっちりつくってもらいものです。
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