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先日施行した特定秘密保護法は、今回の選挙ではほとんど争点になっていませんが、相変わらず意味がよく分かりません。以前にも書いたように、自衛隊法や国家公務員法ですでに機密情報の保護が定められているのに、なぜ多くの反対を押し切って別個の法律を作ることが必要だったのか、なぜ従来法を改正する程度ではいけなかったのか、はっきりしません。この点、総理自ら具体例を挙げて必要性を説明した集団的自衛権とは対照的です。
そこでどうしても考えが行ってしまうのは、実は特定秘密保護法というのは軍事機密を主対象としているのではなく、従来機密扱いされてこなかった情報を秘匿するという隠れた意図があるのではないかという疑念です。分かりやすいのがたとえばTPPです。これはもともと交渉内容は秘密とされていて、日本が交渉に加わってもうだいぶ経つのに交渉の中身は報道されません。おそらく従来だったら官僚からのリークでもっといろんな情報が流されていたと思うのですが、今回は不気味なくらい静かです。
総選挙で自民党が勝てば(おそらく勝つでしょう)、近い将来TPP交渉が妥結し、ひどい内容だったことが判明しても、国会で否決することは困難になります。TPPの次にはティサ(TiSA)というサービス事業の貿易協定も待っていると言われていて、グローバル資本家つまりハゲタカたちの欲望は止まるところを知りません。電気とか水道とか、国民の生活に直接関わるサービス事業までもハゲタカたちが国境を越えて自由に参入できるようにしようというわけです。
そういう、日本でも強い反対が予想されるグローバル協定を今後続々と締結していくためには、国民に情報を知らせないことが肝腎です。政府にとって恐いのは、事前に情報が漏れて反対運動が起こり、政権が倒れてしまうことだからです。
郵政民営化はアメリカが年次改革要望書で90年代前半から繰り返し求めていたことであったことをかなりの国民が知るようになっています。郵政民営化とは郵便貯金・保険の莫大な財産(日本国民の財産です)を自由市場にぶちまけるということで、さすがに完全自由化とまではいかなかったのですが、こういうことに対する国民の警戒心は小泉内閣時代よりもだいぶ強くなっています。グローバル化を進めていくためには、良い情報だけを流して悪い情報は隠すということを、これまでよりも細心にやっていかなければならない。特定秘密保護法にはそういう目的があるのではないか。
そう考えれば具体例が出せないのも当然です。
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