|
前回の投稿で、昨年朝日新聞が慰安婦強制連行の誤報を認めて以降、従来と違う論調のコラムやインタビュー記事が載るようになったと書きましたが、今月7日には、護憲論者であった作家池澤夏樹氏の従来と異なる視点のコラムが掲載されました。
ざっくり言うと、アメリカへの従属から脱するために改憲し、「外国の軍事基地,軍隊,施設は,国内のいかなる場所においても許可されない」というふうな条項を入れることで、日本が主権を回復できる可能性があるのでないか、という内容です。
念のために付け加えておくと、池澤氏は改憲すべしと主張しているのではなく、そういう考え方もありうるのではないか、と問題提起をしているのです。それは、普天間基地移設問題などこれまで起こってきた様々な米軍基地問題が、アメリカに従属するしかない戦後の日本のあり方に発しており、アメリカの作った現在の日本国憲法下では根本的な解決は困難であるという認識から来るものです。
私は左派的改憲論には賛成しませんが、池澤氏が「事実上、日米安保条約は日本国憲法の上位にある」と書いているのはその通りだと思います。1957年の砂川事件の裁判について、ウィキペディアの「砂川事件」にはこう書いてあります。
>この事件は安保体制と憲法体制との矛盾を端的に示す政治的に極めて重要なものであることから大いに論議を呼び、特に最高裁判所の判決に対し強い批判が浴びせられたが、日本国憲法と条約との関係で、最高裁判所が違憲立法審査権の限界(統治行為論の採用)を示したものとして注目されている。
そしてウィキの同じ項目には、判決を出した最高裁長官・田中耕太郎氏が裏でアメリカ駐日大使ダグラス・マッカッサー二世と意を通じ、アメリカの意向に沿う判決を出した経緯が近年明らかになってきた旨が記されています(「近年」なのは機密指定を解除されて関連するアメリカ公文書の分析が始まったのが8年前からだから)。
つまり、日米安保条約に関しては憲法の番人である裁判所も事実上介入できないことが判例として確定してしまっているわけです。
ともあれ、護憲派の人たちも護憲護憲と言っているだけでは何も解決しないことは認識すべきでしょう(ここで言っても仕方ないかもしれませんが)。立場は違っても、改憲について議論するために意義のあるコラムだと思います。
|
|