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    [107] 2012年春夏新作shopping2009スーパーコピー品続々登場!

    記事引用返信

      ・投稿者/ shopping2009 -(2012/02/19(Sun) 00:39:48)

        2012年春夏新作shopping2009スーパーコピー品続々登場!

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    [167] 皆で楽しく小説書きましょう

    記事引用返信

      ・投稿者/ ラッキー -(2013/03/03(Sun) 18:53:37)

        皆で、小説書こう!五人ぐらいあつまったらやろう!


      [186] Re[1]: 皆で楽しく小説書きましょう

      記事引用返信

        ・投稿者/ ゆう -(2013/10/11(Fri) 18:43:53)


          ラッキーs> はじめまして!ゆうです☆
          私、ラッキーsといろいろ雑談したいですっ♪
          よろしくお願いしまーす!!



    [185] 友愛の花が咲いて

    記事引用返信

      ・投稿者/ ゆう -(2013/10/11(Fri) 17:49:08)

        これは、祖母を亡くして心を閉ざした少女の物語です☆
        同時に家を失い、ホームレスになった少女は、学校の友達
        ともうまくいかなくなります・・・。
        これは、そんな少女とクラスメイトの友情の話ですっ♪
        感動的で、つい目が追ってしまうお話なので、是非読んで
        ください〜!



    [177] デッド・マインド

    記事引用返信

      ・投稿者/ SEED -(2013/07/03(Wed) 22:08:13)
      ・URL/ http://mb2.jp/_sst/18495.html

        どうも、はじめまして、SEEDです。
        人生初めての自作ラノベを公開しました
        あらゆる助言やコメント欲しいので沢山よんで書いていってください。
        あと、本編へ飛ぶURLの行き先はメビウスリングという初心者自作小説投稿用無料サイトです、危ないところではないので安心して利用してください。


        本編(デッド・マインド)
        http://mb2.jp/_sst/18495.html

        本編への感想やコメント
        http://mb2.jp/_subsst/18495.html



    [52] 目指す者たち

    記事引用返信

      ・投稿者/ 鍵山 -(2009/09/13(Sun) 17:55:07)


        0話



        それは快晴と呼ぶに相応しい天気の中、行われた試合だった。


        カッキーン!!!

        強烈な打球が二遊間を抜ける。

        打ったバッターは、一塁上でおっしゃあ!と雲一つない空に腕を突き挙げる。

        逆に、打たれたピッチャーはばつが悪そうに、スパイクのつま先部分でマウンドを小突く。

        観客席から喜びの歓声がおこるのと同時に落胆のため息が聞こえる。

        スコアは2−1、先程ヒットを打ったチームが一点のビハインドを追う展開。

        回は最終回、試合は最大の山場をむかえた。

        「よーし、チャンスだチャンスだ!」
        「続け続けー!」
        「落ち着いて行けよー!」

        この回、ノーアウトから先頭バッターが出て、同点はたまた逆転の兆しが見えてきたチームは力の限り声を上げる。

        その中で一人、静かにグラウンドを見つめる選手がいた。

        その選手は一点ビハインドを追う側の先発ピッチャー。

        負けたら終わりの試合で、それも格上の強豪校を前に二失点の好投を見せるが、相手の先発はそれ以上の投球を披露した。

        しかしここに来て勝敗のわからなくなった試合を、声は出さないながらも打ってくれといった思いで見つめる。

        (頼む、打ってくれ!)

        口に出すことは無いが、三年間頑張ってきた仲間とまだまだ野球がしたい。

        ここで負けて、中学生活での野球終了なんてまっぴら御免だ。

        「ボール、フォアボール!!!」

        次のバッターはカウント2−2から粘ってフォアボールを選んだ。

        ノーアウト一二塁、二人のランナーが帰ればサヨナラだ。

        ここで相手がピッチャー交代、背番号1のエースがマウンドを悔しそうに降りていく。

        (エースを降ろした……このピンチを任せられるピッチャーがいるのか?)

        ベンチから出てきたのは、眼鏡をかけた中肉中背な男。

        一見強そうに見えることは無いその男が、その後ある意味期待を裏切って三者連続三振にとることになろうとは、この球場にいる人間の誰が予想しただろうか。


        試合が終わる頃、空は曇天と化していた。

        俺達の気持ちを、象徴するかのように。












      [58] 目指す者たち

      記事引用返信

        ・投稿者/ 鍵山 -(2009/09/18(Fri) 20:16:12)





          1話


          心地よい春風になびく栗色の髪。

          桜が堂々と咲き誇る並木道を行く一人の少女。

          少女の名前は葛木 観羽。

          今日から、この先数百メートル進んだところにそびえ立つ「創誠高校」の生徒となる葛木は、新たに始まる生活に心躍らせている反面、心の底に一つの物悲しさを秘めていた。

          (ゆう君……)

          もしここにいれば、自分の隣でぶっきらぼうにして歩いているだろう彼の名前。

          彼、と言っても別に付き合ってたわけじゃない。

          ただ、わたしは彼のことが、たぶん好きだったんだと思う。

          (何考えてんだろ、もうここにはいないのに)

          その彼は三年前、わたしが中学一年生を迎えようとしていた春に引っ越した。

          詳しい理由は知らないが、親の仕事の都合のためと聞いた。

          わたしはその事実を知らされた時、部屋にこもって家族に気づかれないように泣いた。

          恥ずかしかったのだ、いくら幼なじみの彼が引っ越したからってえんえん泣くことが。

          ふと葛木の目が微かに潤む。

          (なんで登校初日にこんな……)

          周りの人に気づかれると恥ずかしいので、ポケットから取り出したハンカチで目を押さえる。

          (もうゆう君のことは考えないようにしよう、これからは楽しい高校生活が始まるんだから)

          そう決意した矢先、ゆう君がいたらもっと楽しかったのにと考えてしまった自分にため息を吐く葛木だった。



          「観羽ー!」

          「あっ、さきちゃん!」

          学校に到着し教室に向かう途中、幼なじみの西尾 紗槻、通称さきちゃんに出会う。

          「観羽は何組?」

          「C組」

          「わたしも」

          「やったあ!さきちゃんと同じクラス〜!」

          紗槻の手をとり、喜ぶ観羽。

          「ちょ、ちょっと!喜びすぎでしょ!」

          「だってー、紗槻ちゃんと同じクラスになれるとは思わなかったから……」

          人見知りな観羽は、知ってる人と同じクラスになれなかったらどうしようと一人悩んでいたため、一番の親友の紗槻と一緒のクラスになれたことがとても嬉しかったのである。

          「まったく、あんたってホントに喜怒哀楽はっきりとしてるよね」

          「そ、そうかな?」

          「そうよ、絶対そう。わたしが言うんだから間違いないわ」

          人見知りで比較的おっとり系な観羽とは逆に、人好きする性格でてきぱきと物事をこなす紗槻。

          一見正反対の二人だが、仲が悪いなんてことはない。

          「ほら、行くわよ」

          「待ってよー」



          ドンッ!!!

          「きゃっ!」

          「観羽!?」

          先を行く紗槻を追って、曲がり角を曲がろうとした時、逆側から来た誰かとぶつかり尻餅をついてしまった観羽。

          「いたたた……」

          「悪い、だいじょうぶか?」

          声からしてどうやら男の人らしい。

          それならぶつかって倒れるのも納得出来る。

          うん、だいじょうぶと顔を上げた観羽。

          途端、観羽は目をかっぴらいて呆然とする。

          「どうしたの観羽?」

          紗槻の問いかけにも何の反応も示さない。

          いや、観羽は今それどころではないのだ。

          観羽の瞳に映る男の姿。

          それは忘れもしない……彼。



          「……ゆう君」



          観羽の眼前にいるのは、間違いなく三年前引っ越していなくなった、早乙女 悠だった。



      [69] Re[2]: 目指す者たち

      記事引用返信

        ・投稿者/ 鍵山 -(2009/09/23(Wed) 03:25:46)




          2話


          ゆう君。

          その呼び名が微かに聞こえた。

          地面にへたり込み、こちらを呆然とした表情で見つめる栗色の髪の少女。

          その少女が放った言葉だということもわかった。

          「お前……」

          俺をそう呼ぶのは一人しかいないはず。

          それに、俺が想像している人物の名前が先程聴こえた。

          目の前の少女が誰なのかを確信していながらも、俺は少女に問いかけた。

          「お前……観羽、なのか?」

          「……うん」

          大当たり。

          やっぱりこいつは観羽、葛木 観羽だった。



          「ひどいよっ!」

          久しぶりの再会、出会って三言目がそれとは。

          まったく、どこかの恋愛ドラマの様だと思った。

          「何が……」

          「だって昨日帰って来たってわけじゃないでしょ?なのに連絡一つくれないなんて……」

          「別にする必要も無いだ……」

          「幼稚園からの幼なじみだよっ!」

          観羽はことごとく俺が喋っている途中に喋り出す。

          俺の記憶にはあまり無い、怒気を帯びた観羽だ。

          「だいたい、ゆう君は昔っから周りに気がきかない性格で……」

          まるで自分の子を叱る母親のように喋り始めた観羽。

          「ねぇ、早乙女君、わたし西尾なんだけど……覚えてる」

          観羽の説教まがいなものは軽く無視して、西尾が話しかけてきた。

          「覚えてるよ、よく観羽と一緒にいたよな」

          「ご名答。それにしても、相変わらずにぶいねー」

          ニヤニヤと自分だけ何か知ってるような笑みを浮かべる西尾。

          「何が?」

          「何でも無いよー」

          何でも無いなら言うなよとつっこんでみると、いつのまにか話すのを止めていた観羽がこちらをじっと睨みつけていたのに気づく。

          「ゆう君」

          「何だ」

          「おかえりなさい」

          予想もしない言葉が返ってきて一瞬戸惑ったが、その後すぐに返すことが出来た。

          「たっ、ただいま……」

          少し恥ずかし成分が入っていたが。



          「照れちゃって、このこのー」

          「ばっ、照れてねえし!」

          「ふふっ、ゆう君わかりやすい」

          早乙女 悠、三年ぶりの生まれ故郷凱旋はとてもいいスタートを切れた。



      [137] Re[2]: 逶ョ謖紂閠紜≦瓠

      記事引用返信

      [143] Re[3]: 騾カ繝ァ隰門巨笘詭▲離≪薀コ縲

      記事引用返信

      [145] Re[4]: 鬨セ繧ォ郢昴ぃ髫ー髢蟾ィ隨倥侠阡薙ヮ繧「隨ウ繼槭け繧ウ邵イ船

      記事引用返信

      [168] Re[2]: 逶ョ謖紂閠紜≦瓠

      記事引用返信






    [4] 2人の約束

    記事引用返信

      ・投稿者/ シード -(2008/03/20(Thu) 17:40:01)

        プロローグ




        「暑いなぁ……」
         不意にライトの守備についている少年がつぶやいた。
         中学野球最後の試合にふさわしいほど天気はいい。
         雲ひとつない絶好の野球日和である。
         しかし、守備中にそんな事を言っていいものか。守備の時には集中力を切らしてはいけない。

        「ストライク! ゲームセット!」
         その心配もなく投手は、最後の打者を空振りに打ち取る。
         こうして中学最後の試合は勝利でおわる。
         
         その後日
         少年は疲れからか机で寝ていた。
        「なぁ修お前高校どこ行きたいんだ?」
         修と呼ばれた少年は声に反応し顔を上げる。
        「そういうお前はどうなんだよ? お前ほどの投手ならどこかの高校で推薦きてるんじゃないのか?」
        「まぁな! この高校から」
         そういうと少年は一枚の紙を取り出した。
         その紙には「白陽高校」とかかれていた。
        「ここって確かここの地区の古豪だったよな。毎回惜しい所まで行くけどここ数年は府の大会にもでれてない」
        「ああ! だから俺がここに入って変えてやる! だから修も一緒にこいよ」
        「俺が行ったところでどうなるんだ? 最後のほうは全部お前にまかせっきりじゃないか」
         確かにそうであった。最後の試合はエースの少年に頼りきっていた。
        「何言ってるんだよ。お前の守備と打撃には色々助けられたぞ? 例えば秋の大会の1回戦とか」
         そういうと少年はかたり始めた。


      [5] Re[1]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2008/03/22(Sat) 01:13:30)


           あれは俺たちが新チームとなって初めての公式戦だった。
          「相手は沖部中前の試合でも当たったところだ。勝ってるからって油断はするなよ」
           監督から告げられた言葉に、みんなしっかり答えたよな。でも俺たちの心に慢心があったんだ。
          「集合!」
           そのことを確かめる時間もなくすぐに試合が始まった。


           1回表の守備で簡単に三者凡退で終わった。今思えばここで1発でもヒットが打たれていたらすぐ考えを直したと思う。
          「やっぱお前のボールはあいつらにはうてないな!」
           そんなことを言われると気分がよくなってしまう。この時点で皆は相手を甘く見ていたんだな――お前以外は。
          「どんな敵でも甘く見ないほうがいいんじゃないか? しっぺ返しを食らうかもしれないぜ」
           お前の言葉に大半の奴を耳を傾けなかった……俺も含めて。


           試合は俺たちのペースで進んで5回の裏まで3−0で俺たちがかっていた。
          「しまっていくぞ!」
           キャッチャーからの掛け声を返し投球ホームに入る。
           体をひねって投げる。内角ギリギリいいコースに入る。
           相手打者はバントを仕掛ける。サードに転がりサードが捕球し一塁に送球する。これでワンアウトと思った。
           しかし、サードが悪送球でランナーを出してしまう。
          「悪い!」
           どんまい! とか切り替えて! という言葉を掛け合う。
           俺も次の打者をアウトに取ればいいと思って構えて投げる。
           またもやバント今度はファーストに転がる。
           「セカンド!」
           セカンドがランナーの様子から刺せると思いすかさず叫ぶ。
           でも点数差があるんだからここは確実にファーストでアウトを取ればよかったんだ。
           また悪送球でランナー一、三塁の状況。
           ここで俺は少し腐って投げていたかもしれない。
           ここから俺は三連打を浴び何とかワンアウトを取るも3−4で一、二塁のピンチになった。
          「ここを抑えよう!」 
          「このバッターで切ろう!」
          (お前らのせいだろ……)
           俺はこう思っていたんだ。
           ボールは真ん中に入っ他。その球を見逃さず相手はライトに大飛球をはなった。
           俺はその時初めて油断していたことを悟った。そしてもうこの試合は勝てないと思った。
          「セカンド! 入ってろ!」
           その時、ライトからそんな声がしたんだ


      [6] Re[2]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2008/03/26(Wed) 01:34:18)


           俺は驚きライトの方向を見ると、必死でライト線の打球を追うお前の姿が目に飛び込んできた。
           飛び込んで打球を捕球しすぐさまセカンドに送球。サードまで回っていたランナーをアウトこれでチェンジとなる。
           6回の攻撃は意気消沈したのか三者凡退
           後の守備は何とか粘って0点で抑えるが以前3−4だった。



          「あ〜あもう無理だな……」
           チームはもうあきらめムードに入っており、俺が何を言っても無理だと思った。
          「まだ試合は終わってないぞ、ここからが勝負だ!」
           修の言葉通り最初の打者は四球で出塁しすかさずバントで送り、修の打席になった。
          「無理だよ。アイツそんなに打撃よくないからさ」
           不意にそんな言葉がチームメイトの前でもれる。
           確かにその頃あまり修は打撃がうまくなかったな。
          「あ〜あやっぱり」
           2ストライクを取られ皆はやっぱりと思ったと思う。
           しかしそこからが凄かった。
           どんな球でも食らいついていく。
           そしてカウントは2−2となった。
          「おい……アイツ打つんじゃないか?」
           チームメイトから希望の声が漏れ出す。
          「修! 打てよ!」
           俺も思わず声を出す。
           投手はセットポジションから投げる。
           ここに来て球威が落ちており甘いコースに入る。
           修は見逃さずフルスイング。
           快音と共に打球は伸びグラウンドの外に消えた。
           結局それが決勝打となり俺たちは勝った。




          「ってことがあっただろ?」
          「あったような……なかったような」
          「それでお前は高校どこ行くんだ?」
          「そういえば言ってなかったな……俺転向するんだ」
          「えっ! お前何冗談言ってるんだよ」
          「本当だ。今まで隠してて悪い。迷惑をかけたくなかったんだ」
          「そうか……それは仕方がないな。でも新しい楽しみができたな」
          「楽しみ?」
          「ああ……甲子園でお前と戦うというな!」
          「そんな簡単に言うなよ」
          「でも……狙ってるんだろ?」
          「勿論狙ってるさ」
          「なら約束だ!」
          俺はこぶしを前に出す。合わせて修もこぶしを前に出してこぶし同士が当たった。


      [22] Re[3]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2008/08/24(Sun) 19:16:56)


           俺は、15年間住んだ福岡を離れ、神奈川に引越しをした。
           春休みは、色々と忙しく、すぐに高校の入学式が終わり、今日から登校することになった。

          「早いな……もう高校生か」
           そんな事を呟きながら歩いていると、すぐに学校に到着してしまった。もう少し余韻に浸っていたかった。
           そうも言ってられないので、早速クラス分けの看板を見に行く事にする。
           見てみると、2組に名前を発見し、早速向かう事にする。


           学校は、私立と言う事もあり、中々綺麗で広い。教室をさがすのもひとくろうだ。
           何とか見つけ出し、中に入ると、どうも少し早かったようでまだ人は少ない。窓際の席に座り、そこから外を眺めることにした。
           校庭が見え、先程よりさらに人が増えているのを見て、少し安堵した。

           少し立つと、教室にも人が増えてくる、皆緊張しているのか、あまり話し声は聞こえない。教室を見回していると、隣の席の女と目が会ってしまった。

          「何かようか?」
          「何でもない」
           
           話しかけられるとは思わなかったが、軽く答えた。そして、担任の先生が。現れ色々と話しをした後、初日を終えた。



           


      [23] Re[4]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ 加奈 -(2008/09/05(Fri) 19:54:20)


          みなさんすごいですね!!


      [26] Re[5]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2008/10/19(Sun) 02:10:56)


          >>加奈さん
          ありがとうございます。


           初日は、色々と担任から話があったが、退屈だったので外を眺めていた。
           正門前には車が行き交っており、飛び出すと引かれかねない。

          「おい……上田。ちゃんときいていたのか?」

           不意に呼ばれる。上田と言うのは俺の名字だ。俺は教卓のほうを振り向く。そこには、めがねをかけた教師がたっている。

          「ええ……はい」
          「なら今俺が言っていた事をいってみろ」
          「本校は自転車通学は、学校から許可された者に限る」
          「なんだ……ちゃんと聞いていたじゃないか」

           生徒手帳で確認していたから当然だ、俺はまた窓に視線を向ける。そのとき隣の席の女子の手が気になった。
           手に豆が出来ている。あの出来方は俺と似ている。こいつも野球をしているのか。放課後になれば分かる話しだと思い俺は、行動を起こすことはしなかった。

           俺の予想は当たっていた。放課後野球部のグラウンドでその女の姿があった。

          「おお! 中々いるじゃないか」

           そういいながら、中年の男性があるいてきた。どうやら顧問みたいだ。

          「俺は大仙――名前はまぁいいだろ。数学教師だ。後は太鼓まかせた」
          「分かりました。監督」

           そういって前に出たのはなんというか――濃ゆい。失礼だと思うがそれが一番似合っていた。眼鏡をかけており、少し理知的なきもするが、髪型が全てをぶち壊している。

          「この野球部のキャプテンの太鼓です。正式な部員は……日暮と矢部だけですがね。後の人は他の部の助っ人でして。新入生の方々には期待してますよ」

           俺は耳を疑った。助っ人? 本当にこの野球部は大丈夫なのか? 



      [27] Re[6]: 2人の約束

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        ・投稿者/ シード -(2008/10/19(Sun) 20:54:35)


          その後自己紹介があった。あまり面白くないので割愛することにする。しかし一番最後の女――六道聖の時いざこざがおこった。

          「最後はすごいぞー!なんと女性選手の六道聖君だ!」
          「……」

           俺は今はじめてそいつの名前を知った。教室での挨拶なんて聞いてもなかったからな。

          「キャッチング、バッティング共すばらしいセンスがあるそうだ。一言挨拶を頼む」
          「……」

           頭を軽く下げただけだ。なんとも無愛想なやつだな。

          「無愛想な子でやんす、でも女の子で野球部って何者でやんすかね」
          「そうかな? 早川選手の登場で女性の野球する人増えたみたいだけど」

           後ろで先輩が会話している。すると六道は、後ろの二人に向かって歩み寄った。

          「何なら試してみるかそこのメガネ」
          「先輩にタメ口とは生意気でやんす! お仕置きでやんす!」

           今のは、どっちもどっちだと思うが。日暮先輩が止めるが、二人はききもしない。

          「このバッティングマシーンを打つでやんす、ヒット勝負でやんす!」
          「なんでもいい。早くしろ」

           流石は先輩か、130キロ台の速球をしっかりミートする。まわりからは一年だけでなく二年までどよめいている。まぐれなのか?
           
          「ざっとこんなもんでやんす。次は聖ちゃんの番でやんすよ」

           すぐさま打席に入り、打ち始める。どこか貫禄までうかがえる。

          「振り遅れてるでやんすか? そんなことじゃストレートは打てないでやんすよ」

           しかし、どんな球で対応している。監督のいった事はうそじゃないようだ。

          「矢部君、聖ちゃんの打球全部一塁ベースにあたってるよ」
          「なんと?! でやんす」
          「なんだ? そんなに珍しいか。神経を集中すれば簡単だ」

           いや……難しいだろ。

          「いい機会だ。新入生の打撃でもテストするか。じゃあ上田お前からいけ」

           いきなり呼ばれるとはおもってなかったから、少し反応が遅れたが取りあえず自分にあったバットを選んで打席に立った。


      [29] Re[7]: 2人の約束

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        ・投稿者/ シード -(2008/10/25(Sat) 02:20:44)


          「守備練習も兼ねて守備に……その前にキャッチボールだな。1年も誰かと組んでやっておけよ」

           そういうのは早く言って欲しい。すぐさまバットをおき、自分のグラブを取り出し相手を探す。

          「組め」

           背中から声をかけられる。この無愛想な声は――六道しかいない。

          「あぁ……」

           俺がそう返すと、六道は無言で先にいってしまう。やはり女だから敬遠されているのだろうか。
           そんな事を考えているとボールが飛んできた。咄嗟にキャッチする。

          「集中しろ。怪我するぞ」
          「悪い。注意する」

           その後は黙々とキャッチボールに取り組んだ。



          「それじゃあ守備につけ。実践守備だ取ったらその状況に応じて動け。一年は塁に出れたら残るように」

           監督がそういうと、全員が声をそろえて返事をする。こういうところはきっちりと出来ていてホッとした。

          「じゃあ……上田打席に入れ」

           返事を返し、打席に入る。バットを軽く握り打席に立つのは久しぶりだ。日暮と呼ばれた先輩はショート眼鏡の先輩はセンターにはいっている。


          「いくぞ!」

           監督がボールをマシーンに入れると、勢いよくボールが飛び出して来る。俺はそれを見送った。
           続いて来た球を合わせる感じで打つと。ライトにフラウラとあがり、そのままおちた。

          「次どんどんいくぞ」

          「よぉし! どうぞ!」

           かなり元気そうな奴だ。名前は――忘れた。まぁ真面目に聞いてないから仕方がない。少し猫背で、クラウチング打法である。
           一球目を思い切り振りぬき鋭い打球を三遊間に飛ばした。俺よりかなり打撃がいいようだ。

           三人目はショートライナー日暮先輩が取った後ファーストに送球する。

          「うぉっ!」
          「駄目だぞ。ライナーは飛び出さず球を確認しろ」
          「すいません……」

           どうも走塁は下手なようだ。


      [30] Re[8]: 2人の約束

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        ・投稿者/ シード -(2008/10/28(Tue) 01:18:52)


           その後は、走りこみや素振りなど基礎練習を行い、午後6時におわった。

          「明日からはもっと厳しく行くから、覚悟しておくように」

           正直言ってクタクタだ。だけど、ここでへばっていたらこの先やっていけないだろう。
           俺は残って練習することにした。出来る事といっても素振りぐらいだが。


           俺は一振り、一振り確かめながら素振りを行う。

          「そんなんじゃ全然駄目ね」

           後ろから文句をつけられ振り向くと、四人組の男女がこちらを見ていた。何処かで見たような気がするが思い出せない。

          「ええと……どなた?」
          「この私をしらないの?」

           リーダー格の女が詰め寄ってくる。知らないものは知らない。

          「知らないです……」
          「この学校の生徒会長! 今日も挨拶したでしょ!」
          「まぁまぁみずきさんおちついて……」

           鬼のような形相でこちらを睨みつけている。

          「それで、貴女方は野球経験者ですか?」
          「いや……そういうわけじゃないけど」

           俺はすぐに素振りを再開した。おしゃべりしている時ではない。

          「アンタ! 待ちなさいよ!」
          「まだ何かあるんですか?」

           いい加減にして欲しい。さっさと練習がしたいんだが。

          「アンタ名前は?」
          「上田修ですけど……」
          「分かったわ」

           それだけ言うとみずきと呼ばれる女は取り巻き三人を連れてどこかに去っていった。何がしたかったのか分からない。


      [31] Re[9]: 2人の約束

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        ・投稿者/ シード -(2008/10/29(Wed) 00:37:48)


           その後やる気を失った俺は下校することにした。家までは割りと近いので歩きだ。

          「何なんだあいつ等は……何処かで見た気がするけど思い出せないな。まぁどうでもいいか……そういえば帰り道には寺があるのか……次からは邪魔が入らないようにここでするか」

           手ごろなお寺を発見した俺は、明日のことを考えながら帰宅した。

          「ただいまー」

           玄関で声をかけると居間のほうから帰ってくる。俺は取りあえず自分の部屋で着替える事にした。

          「修ー」

           ノックもせずに部屋に入ってくる女――妹の明菜。コイツも中学で野球している。妹といっても生まれた日が3ヶ月遅いだけである。

          「いつも言ってるけど部屋に入るんならノックしてくれ」
          「別に兄妹なんだし別にいいじゃん」

           そういうと俺の本棚から野球雑誌を取り出し、俺のベッドで読み出した。

          「貸してやるから自分の部屋にいけよ」
          「だってこのベッド寝心地いいんだもん」

           前々から思っていたがこの妹はわがまますぎる。昔は良かったのに何故こんな性格になってしまったのやら。

          「俺は風呂はいってくるから。夕食の時は電気けしておけよ」
          「は〜い」

           俺はそのまま部屋をでて洗面所に直行した。俺は汗を流した後外に出て軽く素振りを始めた。生意気そうな女のお陰で全然出来なかったからな。

          「真面目だね。毎日毎日飽きないで」
          「まぁな……打撃はあんまりよくないから」
          「そうだよね〜私のほうがいい位だし」

           恥ずかしい話だが、俺は本当に打撃が苦手だ。中学通算でホームランなんて1,2回程度しか打ったことがないし、打率は何とか2割に乗っている程度だ。
           さらに明菜はというと、ホームランこそ打てないものの打率は常に4割後半をキープし不動の三番として中学でも活躍していた。

          「お前のほうこそどうだ? 守備は上達したか?」
          「知ってるくせに……意地悪」

           しかし俺はどちらかというと守備は得意でエラーをあまりしなかったのに対し、明菜はその逆で毎回のようにエラーをする。少しずつ上達しているのだが、まだ完璧に改善は出来ていない。

          「そろそろ飯だな。おわるか」

           素振りを一旦終え俺は、家の中に戻っていった。


      [32] Re[10]: 2人の約束

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        ・投稿者/ シード -(2008/10/31(Fri) 21:40:08)


           それから二週間走りこみを集中的に行われた。何km走ったかわかったものじゃない。
           殆どの奴が苦しそうにしている中で、上級生の二人組みはあまりしんどくなさそうに見えた。流石は、一年間続けているだけのことはある
           そして今日事件が起こった。

          「何で女が野球やってんだよ! 目障りなんだよ!」
          「何だ? 女が野球をしてはいけないと言うルールでもあるのか?」

           ある一人の先輩が六道の態度が気に入らないようだ。まぁたしかに後輩らしくないといえばないがそこまで怒る事かね。
           日暮先輩や矢部先輩が止めようとしている。他は四人から少し離れている。キャプテンは塾のようだ。こんな時に限って監督もいない。

          「先輩〜数年前に早川選手の高校のおかげでルールが改正されて女子でも試合にでれるようになりましたよ〜」
          「お前は火に油をそそぐな」

           すぐに横にいたバカの口を塞ぐ。息苦しそうだが気にしない。こいつの名前は山岸渉(やまぎし わたる)最初の打撃練習で鋭い打球を飛ばしたやつだ。後に同じクラスと言う事がわかり仲良くなった。

          「一年はだまってろ!」

           やはり火に油を注いだようだ。

          「同じ捕手なんだし仲良くしてくれよ」
          「そうでやんす! 喧嘩はよくないでやんす!」

           矢部先輩も最初言い争ってたけどな、ということなどいわずに傍観する。だんだん魂胆が読めてきた気がしたぞ。

          「何だお前? もしかして私にレギュラーの座を奪われるのがいやなのか?」
          「ぐっ……男に奪われるのならまだしも、女なんかに奪われてたまるか!」

           やはりレギュラーを奪われるのがいやだったようだ。一応助っ人でも長くやれば愛着がわくというものか。

          「なら……実力でレギュラーの座を守れよ!」

           日暮先輩が正論を言っている。その通りだ妹もそうやって他の部員もだまらせてるようだし。

          「いまから勝負したらいいんじゃないですか〜捕手なんですし、肩とかでそれで決めた方が早いでしょうし」

           またバカが余計な事を。しかし今回は俺も同感だ。

          「そうだな……それがいいかな。勝負方法は……肩力・送球力・リード力だな。各自ランニングキャッチボールを行え」

           そういうと部員がぞろぞろとグラウンドに出て行く。さてどうなることやら。


      [33] Re[11]: 2人の約束

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        ・投稿者/ シード -(2008/11/21(Fri) 02:24:42)


          ああ……何故俺はこんな所に立っているんだろうか。周りより幾分か高い――ピッチャーマウンド。何故俺が此処にいるかというと、少し前にさかのぼる。

           他の奴らは周りで素振りやキャッチボールを行っている。その例に漏れず俺は、山岸とキャッチボールをしていた。

           どうやら送球では、六道。肩力では外村先輩が勝ったそうだ。ちなみに何故俺が先輩の名前を知ったかと言うと、山岸が話していたからだ。どうもこいつは全員の名前を把握しているらしい。
           マメな奴だ。俺なんて二人ぐらいしか覚えていない。


          「上田ちょっときてくれ!」

           俺は日暮先輩に呼ばれ、すぐに向かった。

          「何でしょうか?」
          「六道がお前に投手をしてほしいんだとさ」

           俺は驚いた。何故いきなりそんな事をいわれたのかが。

          「それは何故でしょうか?」
          「最後のリード力で実践守備をすることになったんだ。それで投手を指名する事にしたんだ。六道はお前を選んだ」

           訳が分からない。何故俺が選ばれるのか。頭の中がまとまらない。

          「来い」

           そういうと六道は、歩き出す。俺は後を追う。

          「おい! 一体どうするつもりだよ」
          「お前投手だっただろ」

           俺は驚いた。まさか見抜かれていたとは。確かに俺は三年の春までは投手をしていた。しかしアイツがいたお陰で俺は出番もないまま外野に転向した。

          「確かにそうだが……俺は一度も試合で投げた事ないぞ?」
          「なるほどな……お前はいい指導者に恵まれなかったようだな」

           確かに顧問は野球に興味を示さなかった。

          「お前は、他の大抵の投手がもちえない球のノビとキレをもっている」
          「そうかい……それだけで俺が投手だと分かったのか?」
          「それもあるが、お前は外野手といっていたが投げ方が安定していない」

           なるほどな……そういうわけで俺は今マウンドに立っている。どうも九人で何点取られないのかを競うそうだ。

          「来るでやんす!」

           いきなり矢部先輩か。ランナーに回すと厄介だ。六道のサインを確認し、振りかぶりボールを放る。何の変哲もないボールだ。

          「やんす!」

           矢部先輩がバットを振ると打ち損ねの打球が一塁前にころがる。山岸が捕球し一塁を踏み、まずは一人を抑える。戻る途中矢部先輩は何故か首をひねっていた。



          「おかしいでやんすね……」

           矢部は手がしびれるような感覚に襲われていた。

          「矢部君どうかしたの?」
          「確かに球をミートしたでやんす……でも何故か芯から外れていたでやんす」

           ネクストで準備していた日暮は、矢部の言われたことについて考えていた。

          (何かの変化球? それとも別の……)

           最近は外国から変化球が色々と入ってきている。丁度二番もセカンドゴロにうち取られた。

          (見極める……)

           日暮が打席に立つ。




      [35] Re[12]: 2人の約束

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        ・投稿者/ シード -(2008/11/22(Sat) 02:22:01)


           嫌な人を迎えてしまった。日暮先輩この部のなかではダントツに上手い。多分他の高校でもレギュラーになれるだろう。

          (見極める……)

           左打席に立ち、バット垂直にあげている。六道のサインは、内角高めに外れるストレート。頷き寸分なく放るが微動だにしない。
           次には外角にサインがでる。俺は力いっぱい放った。

          (何の変哲もないストレート! もらった!)

           日暮先輩のバットがボールを捕らえる。鈍い音立てて一塁のファールゾーンを転がった。

          (なんだ……この感じは……)

           何回か素振りを行うのを確認した後、六道のサインを確認し放る。それを日暮先輩は見送った。

          「流石の日暮先輩も初見でアイツの球を打つのは厳しいか?」
          「さぁね。どうだろうか」

           ささやき戦術を行っている六道からサインを確認する。内角低めどうやら次で決めるようだ。俺は力いっぱいボールを放った。
           鈍い音がした後フラフラとセンターに上がり、打ち取った。
           その後危なげなく打ちとった。



          「聖ちゃん上田の球はいったい……」
          「ただのストレート……ものすごいノビと球の重さを誇るが」

           私としても驚いている。まさかノーヒットとは。
           最初のキャッチボールから違和感を感じていた。普通とは違う何かが、それも今回ではっきりした。

          「お〜い! 上田」

           日暮先輩は上田を呼び出した。


      [45] Re[13]: 2人の約束

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        ・投稿者/ シード -(2009/08/06(Thu) 19:26:00)


          「あ、山岸ちょっと待っててくれ」

           上田は、山岸とのキャッチボールを切り上げて、日暮の方に向かう。
           
          「何でしょうか? 先輩」
          「お前投手になる気はないか?」
          「先輩、次だぞ?」
          「あ、そうだね。じゃあ上田考えておいてくれ」

           そういうと、日暮は足早に打席に向かっていった。
           上田はその場で固まっていた。

          「二つ同時……は無理だよな」
          「夏までに二つ同時を仕上げるのは間に合わないだろうな」

           投手をするのであれば、変化球を覚えたり内野での連携を覚えなくてはいけず、外野をするのであれば、打撃や守備などの練習がある。
           その二つを両方こなすのは流石に無理があった。

          「次は私の打席だな行って来るぞ」

           日暮はヒットを打ったようで、二塁に居る。
           六道は、バットを持ち打席に立った。
           上田はキャッチボールをする為に山岸のところにもどった。




          「私の勝ちだな先輩」
          「ぐっ……」

           あの後六道がヒットを打った所で勝負は終わった。外村先輩は顔を真っ赤にしているが。少しするとキャッチャーミットを外し、内野用のミットを取った。

          「どうする気でやんすか?」
          「ファーストは固定のレギュラーいないからな……練習する」

           それだけ言うと、ファーストの守備練習に入っていった。

          「丸く収まってよかったな〜じゃあ、俺もサードの守備練習いってくるな」
          「ああ、エラー多いしな」
          「だから、練習するんだよ」

           山岸も走っていってしまった。打撃は凄いが他は粗い。並にできれば大きな戦力になるだろう。

          「ところで、上田どうするか決めたか」
          「今回は野手に専念しようと思います」
          「そうか……分かった。じゃあ期待してるからな」

           日暮先輩もショートの守備練習に行ってしまった。

          「俺も守備練習に行くかな……」

           俺は外野に走っていった。



          「今日はこの位で終了する」

           太陽も西に落ちかけた頃、監督の言葉で練習が終わり解散となる。

          「修〜」

           声が聞こえた方を向くと、明菜が笑いながら手を振っている。
           俺はそれを無視した。

          「誰でやんすか! あの可愛い子は!」
          「修って……お前じゃないのか?」
          「言うな……山岸」

           矢部先輩に気付かれると何かと面倒な事になりそうだ。
           山岸は俺の名前もしっかり把握しているらしい。日頃は馬鹿そうなのに。
           明菜は痺れを切らしたのか俺の方に向かってきた。

          「ちょっと! 何で無視するの?」
          「面倒臭いからだ……」
          「なんと! 上田の彼女でやんすか! 神様は不公平でやんす!」
          「違いますよ。こいつは妹です」
          「妹の上田明菜です。よろしくおねがいします」

           予想通り面倒な事になりかけた。回りからの視線がいたい。

          「あ! 女の選手もいるんだね。初めまして」
          「む……初めましてだ」

           明菜は六道を見つけると駆け寄っていった。
           六道は困惑している気がする。

          「明菜、六道が困ってるみたいだからやめておけ。それと俺は用事があるから帰るのは遅れる」
          「あ! 練習するんだね。手伝ってあげるよ」
          「明菜ちゃんも野球を?」
          「そうですよ。中学で三番を打ってます」

           日暮先輩の問いに笑顔で答える。見た目はまぁまぁなのだが中身がアレだからな。
           先輩達は驚いた顔をしていた。


      [46] Re[14]: 2人の約束

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        ・投稿者/ シード -(2009/09/06(Sun) 23:30:46)


          「野球をやっているんだね。ポジションは何処なんだい?」
          「はい、三塁手をやってます」
          「三塁手か、野球やってるのってやっぱり、上田――修の影響?」
          「小さい頃はそうですね。よく修にキャッチボールをせがまれましたから」
          「それは逆だ。お前が言ってきてたんだろ?」
          「違う! 絶対修が言ってきた」
          「いや、お前が言って来た」
          「え〜と、話し進めて良いかな?」

           絶対俺からはせがんでいない――と思う。しかし、一度言ったからには、退く事はできない。

          「今まで野球続けてるのって、やっぱりマリーンズの早川選手の影響かな?」
          「はい! その通りです!」

           明菜は早川選手の大ファンである。そのため。よくマリーンズとホークスの試合には、一緒に見に行っていた。
           早川選手が出て来ないと機嫌が悪くなって困ったが。

          「おい、上田。練習はいいのか?」
          「何かこのムードでやってもあんまり、身が入らないからな。今日は家に帰って休むよ」
          「妥当だな……」

           俺は六道にそういうと帰り支度をするため部室に入った。



          「ちょっと! さっき練習するって言ったじゃない!」
          「お前が来るから、練習する空気じゃなくなったんだよ」

           今俺は明菜と一緒に帰っている。兄弟だから当然かもしれないが。
           そして、商店街に足を踏み入れた。ここの商店街を通ったほうが家に帰る手がかりになるからだ。

          「ちょっとやめてください!」
          「ねぇ、あれ! 助けないと!」
          「お、おい!」

           女の人の声に明菜は反応すると俺を置き去りにして走り出した。一体どうする気なんだ。
           追いかけると、明菜は不良っぽい――いや不良とにらみ合っていた。
           周りは見ているだけで助けに入ろうともしない。

          「ちょっと! この人嫌がってるじゃない!」
          「ぁあ? お前には関係ねぇだろうが!」

           不良が明菜の服をつかみにかかろうとする。俺は咄嗟にポケットの中に何時も入れていた硬球を手にとり、不良目掛けて投げつけた。
           この硬球は早く硬球の感覚に慣れるため何時も手にしている物である。
           ボールは見事不良の後頭部に命中。不良は頭を抑えながら倒れる。
           大丈夫なのか? まぁ、ピクピク動いてるしいいか。

          「明菜逃げるぞ。アンタも!」
          「え? ちょっとまってください!」

           俺は女の人の声を無視して手を取るとそのまま商店街を出て行った。


      [48] Re[15]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/09/08(Tue) 22:53:17)


          「ここまでくれば……」
           
           商店街を出た後、無我夢中で走り、ようやく家の前に着いた。
           明菜は肩で息をしている。よほど疲れたのだろう。
           
          「あの〜……手を」
          「す、すまない!」

           手を繋いでいた女の人に言われてようやく俺は手を話した。
           しかし、この女の人全然息が上がってないな。

          「ええと、危ない所を助けていただきありがとうございます」
          「いや、俺じゃなくて明菜に――疲れすぎだろ」
          「だって……」

           女の人が頭を下げてくる。俺はここでようやくちゃんと女の人の顔を見た。
           栗毛のセミショートの髪に小豆色の瞳をしている。
           俺はすぐに明菜を指さす、しかし、まだ明菜は息を整えていた。
           
          「どうもありがとうね」
          「いえ、気にしないでください」

           栗毛の女性は明菜にも頭を下げた。
           明菜はようやく息を整えたようだ。

          「あ、申し送れました。私は天音海(あまねうみ)と言います」
          「私は上田明菜って言います。こっちは兄の修です」
           
           天音海……何処かで聞いたような。

          「ええと天音――さんは何処の高校なんですか?」
          「天音でいいですよ。私はあかつき大付属高校です」
          「あかつき大付属高校って甲子園常連高校じゃないですか」
          「もしかして、あかつきの一年生女性投手というのは……」
          「うん、私だよ」

           週刊パワスポで読んだことがある。あかつき大付属に期待の女性投手がおり、二つの練習試合に登板し両方とも完封勝利を飾ったらしい。
           同じ一年生なのにこの差は……

          「修と同じ一年生なのに……凄い違いだね」
          「そっ、そんな事言っちゃだめだよ」
          「明菜……」

           俺は無言で明菜の前に来ると力を込めて明菜の額にデコピンをかました。

          「いたっ! 何するの!」
          「ところで、あかつき大付属は埼玉のはずだけど、なんで神奈川に?」
          「無視するなぁ!」

           明菜はスルーして話を進める。天音は何故かニコニコしていた。

          「練習の一環として野球を見にきたんです。見終わって皆と一緒に帰るときにどうやら電車をのり違えたみたいで……誰かに助けを求めようとして商店街に入ったら声を掛けられてしまいまして」
          「それは大変ですね……そうだ! 明日は日曜日ですし、今日はこの家に泊まって言って下さい!」
          「え? ですが……」
          「いいからいいから! さぁ、入って!」

           明菜は天音を引っ張り家の中に入れてしまった。
           明日は日曜日だが、あかつき大付属で練習はないのか?
           俺も、家の中に入っていった。
           


      [49] Re[16]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/09/09(Wed) 23:27:02)


           両親に聞くと二つ返事で了解と言われた。
           少しは考えてくれよ……

          「海ちゃんは何か嫌いな物とかある?」
          「い、いえ。お気遣いありがとうございます」

           天音は隣の席で縮こまりながら答えた。
           その隣で明菜がしきりに話しかけている。
           そんな事をしていると、夕食の用意ができた。

          「じゃあ、いただきます」
          「いただきます〜」
          「いただきます」

           手を合わせ、食べ始める。
           夕食の間、天音は母さんと明菜の質問攻めにあい、俺と父さんは静かに食べていた。

          「そういえば、海ちゃん。電話したほうがいいんじゃない? ご家族の方も心配するでしょうし」
          「あ、先程しまして、了解を得ました。大丈夫です」
          「そう、それならいいわね」

           母さんは微笑みながらそういうと、また天音に対し質問を始めた。
           天音が少々困っているが、まぁ楽しそう出しよしとする。

          「ごちそう様」

           そういいながら立ち上がり、食器を台所に持っていった後自室に戻る。
           そこから素振り用のバットを取りだし、家の庭に向かった。




           この素振りは今や生活の一部と化している。始めたのは確か中学で、三年生が引退した後だからおよそ一年半ほど前。
           当時、守備はともかくとして打撃は全く駄目駄目であった。それを直すために明菜に毎日百回以上素振りするように命じられた。
           そして、その習慣は今でも続いている。

          「頑張ってますね」
          「あ、天音か」

           五十回ほど素振りを終えた頃、天音に背後から声をかけられた。何時もは明菜にしか声をかけられないから変な感じがする。
           
          「毎日やってるんですか?」
          「ああ、うん。一応毎日やってる」

           そう答えながら俺は素振りを続ける。

          「う〜ん……もう少し背筋を伸ばした方が良いかな?」
          「こんな感じ?」
          「うん、そんな感じで良いと思うよ」

           天音の言うとおり、背筋を少し伸ばして構え、バットを振ってみる。すると、何時もよりスムーズに触れた感じがする。

          「俺にそんな事教えて良いの?」
          「うん。お礼だよ、助けてもらった」

           素直に受け取るべきだろう。俺はそのまま素振りを続ける。

          「悪いな、強引に泊まらせて。でも悪く思わないでくれ。明菜なりに天音を心配してのことだと思うから」
          「悪くだなんて……それにしても修君と明菜ちゃんって本当に仲よしだね」
          「そうかな……」
          「そうだよ。いいなぁ〜私一人っ子だから羨ましくて」

           俺が頭を下げつつ言うと、天音は首を横に振りながら答える。
           昔から近所の人たちから、よく俺と明菜は仲が良いと言われた。
           俺自身仲が良いかどうかはしらない。何処の家でもそう変わらないと思っている。
           
          「あー! 修なんか海さんと良い感じじゃない!」

           そんな事を考えていると明菜がいきなり話しかけてくる。
           少しは空気を読んで行動してもらいたい。

          「良い感じって……天音が迷惑がるだろ」

           そう思いつつ、天音を見ると何故か顔を下に向けていた。
           
          「まぁ、そんなことは良いとして。海さん! 一緒にお風呂はいろう! 修は覗いちゃ駄目だからね!」
          「言われなくてもそんな事しないよ」

           それだけ言うと明菜は天音の腕を掴んで連れて行ってしまった。
           俺はその後、天音に言われた事に気をつけつつ素振りを続けた。


      [50] Re[17]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/09/11(Fri) 00:51:15)


          素振りを終えた後、二人がまだ風呂に入っていたため、自室に戻ってきていた。
           そして、毎週買っている週刊パワスポに目を通す。

          「猪狩守選手が負け無しで三連勝……すごいな」

           目に付いた記事は、猪狩守選手が早くも今期三勝目を達成した記事。
           全ての試合で二点以下に抑えている。
           
          「決め球のライジングショットに打者も切り切り舞……か」
          「へぇ〜すごいね〜」
          「ノックぐらいして入ってこいよ……」

           読み言っていると横から明菜がパワスポを覗き込んでくる。
           幾ら、注意しようがノックをせずに入ってくる。

          「あ、お風呂あがったから入っていいよ〜」
           
           それだけ言うと明菜は俺のベッドでパワスポを読み始めた。これも注意しようが直らない。
           俺は何も言わずに風呂場に向かった。




           風呂に上がり自室に戻ると、何故か明菜と天音がゲームで対戦をしていた。
           やっているゲームは「プロ魂」と呼ばれるゲーム。
           明菜はホークス、天音はライオンズだった。
           少々呆れつつ二人の対戦を眺める。
           明菜がぼろ負けしている。弱いのに好きだからなぁ〜
           とりあえず、寝たいから出て行くようにいうか。

          「あのさ……」
          「天音さん強い〜」
          「お前が弱すぎるんだよ……」
          「修は黙ってて」

           しゃべっている間にも、天音にホームランを打たれる。
           もう少し配球を考えた方が良い。

          「ああ! 修交代!」
          「この点差は……」

           まだ三回であるのにもかかわらず二十対二。二点取れてるのが奇跡にすら思える。

          「とりあえず、和田から杉内のスイッチっと」
          「ああ! 和田さんが!」

           因みに明菜は和田選手の大ファンである。しかし、絶不調の選手を先発にするってどうかと思う。
           その後打たせて取って攻撃を終える。
           ここから勝つのはかなり厳しい、でもホークス打撃力結構高い選手多いけど。
           しかし、そう簡単にいくはずもない。
           




          「ああ! 修負けたじゃない!」
          「五点返せただけましだろ……」
          「修君ってゲーム上手なんだね」

           あの後何とか頑張り五点返すものの、普通に負けた。
           最初からしていれば勝っていたのに……
           



           あれ? 何で俺こんなノリノリでゲームしてるんだ?


      [51] Re[18]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/09/12(Sat) 23:58:43)


           その後明菜に付き合わされて寝るのは夜遅くになった。
           俺と天音は眠そうにしているのに対し、明菜はかなり元気だった。天音が居るから嬉しいのだろう。
           しかし、少し自重してもらいたい。




          「修起きて! 出かけるよ!」
          「もう少し寝かせてくれ……」
          「今日練習お休みなんでしょ!」

           俺はまだ覚醒しきっていない頭で考える。
           そういえば昨日明日の野球部の練習について聞いていたけど、こういう事ですか。

          「外で海さんも待ってるから早く来てね!」

           天音を引き合いに出されると、流石に無視はできない。明菜一人なら無視してたかもしれない。
           俺は気合で起き、手早く私服に着替える。とりあえず、財布を後ろポケットに仕舞うと外に出て行った。



          「それで、何処に行くんだ?」
          「デパートでお買い物だよ〜」

           そんなの俺抜きで二人で行ってきてほしい。
           前で二人が会話し、その少し後ろを俺が歩く。
           道中は特に何も無く近くのデパートについた。
           しかし、天音は時々曲がる方向を間違えたりしていた。
           逸れたのもそれが原因と思われる。







          「これどう思います?」
          「凄く可愛いと思うよ」

           明菜はすぐに女性服の置いてあるフロアに行ってしまった。
           俺は「終わったら連絡してくれ」と言って、野球用品のフロアに向かった。



      [53] Re[19]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/09/14(Mon) 00:06:21)


          「これが最新作のか……」

           今俺は最新作のバットを見ている。
           今触っているのは福家選手の愛用しているバットをモデルにしたバットである。
           福家選手はパワフルズの四番打者であり、毎年本塁打王、打点王を獲得するほどの選手である。

          「あぁ! アンタは!」
          「ええと……何処かで会った事ありましたっけ?」

           背後の声に反応して振り返ると何処かで見たような女性が立っていた。

          「おい、みずき。どうした――上田! 何故こんなところに?!」
          「何故って……そりゃ買い物にだな……」

           みずきと呼ばれる女性の背後から、六道が歩いてくる。何故か着物を着ていた。
           
          「じゃあ、俺はそういうことで」
          「ちょっと待ちなさい!」
          「待て、上田」

           俺はそのまま立ち去ろうとすると、背後から強い力で両肩を掴まれた。
           このまま猛烈に走り出したい衝動に駆られた。しかし、そうすると何か報復でも食らいそうな予感がする。
           俺は二人に促されるまま、二人の後をついていった。





          「なるほど、だから俺には黙っておけと」

           デパートにある、喫茶店に連れてこられた俺は話しを聞いていた。
           何処かで見たことあるような女性は橘みずき。聖橘学園の二年生で生徒会の会長だとか。
           そして、野球がしたいけど親が許してくれないとか。

          「別にそんなことはなしてくれなくても、何も言いませんけどね」
          「ええ、そうかもしれないわね。だから貴方には協力してもらうわ」
          「協力……って何をですか?」

           俺はその後橘先輩から聞いた言葉に目を丸くした。




      [54] Re[20]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/09/14(Mon) 22:55:55)


          「そんな日暮先輩を利用するような手に加担するわけには――あ、すいません。少し待っててください」

           俺が橘先輩に反論しようとした矢先、携帯に着信が入る。
           番号を確認すると見慣れない番号、二人に断りを入れて席を立ちトイレに向かった。

          「はい、もしもし」
          「天音ですけど」
          「あ、天音? 何で番号を……」
          「ええとね、明菜ちゃんに番号教えてもらって。今明菜ちゃんはパワ堂って言うところの行列に並んでいて」

           パワ堂で理解した。明菜はパワ堂のきんつばが好きであり、現在行列に並んで買っているのだろう。
           それは一人一箱なので俺にも買わせるつもりだろう。

          「分かった。すぐ行くよ」

           それだけ言うと電話を切り、二人の所に戻った。

          「諸事情が出来たため自分は行かなければなりません。というわ毛で失礼しました」
          「え! ちょっと!」
          「上田、待て!」

           二人の制止を振り切り、俺は走りだした。生憎何も頼んでいないため勘定をする必要はない。
           六道と俺だと俺のほうが体力あるし、多分橘先輩も俺よりは少ないだろう。確実に逃げ切れる。





           逃げ出してから一時間後俺は家に戻っていた。
           天音と明菜はきんつばを美味しそうに食べ、俺は昨日結局読めなかったパワスポを読んでいた。

          「食べないんですか?」
          「胃がもたれそうだからな……」

           何故女はあんなに甘い物をたくさん食べて平然としているのだろうか。理解できない。

          「そういえば、時間はいいのか?」
          「ええと、もうすぐですね」

           ここから大体三時間あれば自分の家に着くらしい。間違いが無ければだが。

          「道に迷っちゃ駄目だよ」
          「わ、分かってます!」

           天音は頬を赤らめた。

           


      [55] Re[21]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/09/16(Wed) 00:22:45)


          「また来てね! 海さん!」
          「うん。ありがとうね明菜ちゃん」

           玄関前で二人が別れの挨拶を交わしている。
           また来るというのはあかつきの野球部からしたら結構難しいと思うのだが。

          「じゃあ、私行くね。とめてくれてありがとう」
          「ああ――って駅は反対だぞ」
          「えーと……ちょっと間違えちゃったかな?」
          「……駅まで送るわ」





           駅にも満足に行けなさそうだったので俺が送る事にした。明菜も突いていきたいと言ったが、却下した。
           拗ねていたのでこの後大変そうだ。

          「ちゃんと確認してから電車に乗れよ。分からなかったら駅員に聞いて……」
          「修君って結構世話ずき?」
          「ん〜……何故かしらないけど何時も明菜が傍にいたからなぁ。そうなってるかもな」

           駅までの道中帰り道について話していた。
           ちゃんと行き先を確認してのるとかそんな感じな事を。
           自分では世話好きとは思っていないが、昔から結構言われている。
           そのせいで昔シスターコンプレックスだのシスコン兄貴だの罵られたこともある。
           まぁ、そのときは明菜に助けてもらったが。

          「私も修君みたいなお兄ちゃんが欲しかったな〜明菜ちゃんが羨ましいよ」
          「そういうもんなのか?」
          「そういうものなの!」

           何故か凄い剣幕で怒られてしまった。何か悪い事いったか?





          「着いたな……じゃあ、気をつけて」
          「うん、ありがとう。明菜ちゃんによろしくね」

           天音は笑顔で手を振るとそのまま駅の中に入っていった。
           


      [56] Re[22]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/09/16(Wed) 23:38:45)


           修が天音に出会ってから一ヶ月ほどたち、五月の下旬となった。
           一年生達も硬球になれ練習は一層厳しいものとなっている。

          「なぁ、山岸一つ聞いて良いか?」
          「ああ、どうした?」
          「何か人数少なくないか?」

           現在はまだ練習は始まっておらず、二人はストレッチを行っていた。
           大体この時間になると部員は全員揃う筈であるが、今日は何人か少なかった。

          「全員揃ったようだな。では始めるぞ」
          「何人か足りないと思うんですけど」
          「そういえば一年生には言ってなかったね。四人ほど元の部の部活の試合が近いから元の部に戻ったんだよ」

           監督である大仙が号令をかける。
           気になった修が尋ねると日暮がポンと手を叩きながら答えた。

          「そ、そうなんですか……」

           修は内心焦っていた。四人いなくなり現在人数は12人。その半分程度は助っ人である。
           という事はこれからも何人か部に戻る者が出るかもしれない。
           
          (まぁ、なんとかなるかな……)

           修の心配をよそに練習が始まった。





          「次ショートいくぞ!」

           現在は内野手の連携の確認をしている。
           監督が叫ぶと、日暮が構える。しかし、監督はボールを空振ってしまう。

          「監督……ノック変わりましょうか?」
          「大丈夫だ!」
          「それならいいんですけど……あ、学長とみずきちゃんだ。一応注意しておこう……」

           日暮がノックを変わろうとホームに行こうとするのを、大仙は手で制止した。
           日暮が元の位置に戻ると、野球部のグラウンド内に学長とみずきちゃんが居るのを発見する。
           ボールに辺りでもしたら危ないので日暮は監督に断り、注意に向かった。

          「お二人共ここは危ない――」
          「紹介するわ、おじいちゃん。この人が私のフィアンセの日暮君」
          「なんじゃと! こんなどこの馬の骨ともわからん男など認めん! 冗談もほどほどにするんじゃ!」
          「おじいちゃん、この人はとっても器の大きなすごい人なのよ」
          「なんじゃと! 笑止な、こんな奴になにがあるというんじゃ」
          「この人は将来プロ野球選手の超一流選手になるのよ! それを私は見届けるの!」
          「部員もろくにいない野球部でプロ野球選手だと!」
          「うん、だから私もこの人からいろいろ学びたいのよ」

           二人は日暮を置いてけぼりにし、話を進めてしまう。
           日暮は全く話を理解できないでいた。

          「そこまで言うのなら認めよう……ただし、もしプロ野球選手になれなかった場合お前はワシの決めた許婚と結婚してもらう!」

           学長はそれだけ言うとグラウンドから出て行ってしまった。

          「ねぇ、今の話しって何? みずきちゃんのフィアンセってだれなの?」
          「日暮君よ。フィアンセ役だけどね」
          「ああ、俺ね――ええ?!」

           日暮の絶叫が木霊した。





          「実行したんですか……橘先輩」
          「知っていたのか……上田は」
          「すみません。一ヶ月間何も無かったのですっかり忘れてました」

           現在、部室にて話しが行われている。
           居るのは、日暮、矢部、上田、聖と生徒会メンバーである。

          「まぁ、やっちゃったからには仕方ないとして。甲子園は簡単にいけるほど甘くないよ」
          「大丈夫よ! 私達首都体育大学で秘密特訓してたから」
          「大学野球部の強豪でやんすか!」
          「とりあえず、私達の実力を見せてあげるわ!」

           みずきはそういうとグラウンドに出て行ってしまった。





          「みずきちゃん、着替えなくて良いの?」
          「大丈夫中にちゃんとはいてるから。じゃあ、まず宇津君お願い」
          「分かりました。誰か捕手をやってくれないか?」
          「私がやろう」 

           そういうと宇津はマウンドに立つ。
           捕手は六道がかってでた。
           宇津は振りかぶり、ボールを思いっ切り放る。
           その球はプロとそう変わらないレベルの速球である。

          「す、すごい……」
          「次は私ね。内角低めギリギリにスクリュー!」

           みずきはそういいつつボールを投げる。
           そのボールは寸分の狂いも無く、内角低めギリギリに納まった。

          「次はワイやな」
          「いくわよ!」

           また、みずきからボールが投げられる。
           外角高めギリギリのストレート。決して楽な球ではないが、原はそれは確実にミートし、センター前ヒットを放つ。

          「最後に私ですね」
           
           大京はみずきの投げた球を軽く柵越えしてしまった。

          「どう? これなら文句ないでしょ」
          「す、すごいでやんす!」
          「これなら……夏が楽しみだなぁ」

           その日から練習の質が上がったのは言うまでもない。
           


      [57] Re[23]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/09/17(Thu) 23:22:36)


           時間は風のように過ぎ去り今は七月の下旬となっている。
           生徒会メンバーが入った後、みずきの挑発に乗り、三条院麗菜が野球部のマネージャーになった。
           七月中旬から大会が始まり、ここまで順調に勝利を重ねている。
           神奈川県には、強豪高が少ない。それにくわえて生徒会メンバーの加入により大幅に戦力が上がったことも起因している。



          「今日の準決勝の相手は数年間連続で甲子園に出場している恐怖高校だ」
          「中心選手は三番打者の洞と、投手の長谷川を中心としたチームみたいですね。どちらかというと守備型のチームみたいです」
          「長谷川か……アイツには去年散々やられたなぁ〜」
          「日暮先輩、恐怖高校と戦った事あるんですか?」

           控え室で野球部の一同は集まってミーティングを開いていた。
           麗菜が相手チームの特徴を述べ、皆はそれを聞いている。

          「右投げで球速は大体140キロ。スライダー、シュート、チェンジアップ。そんなに曲がらないんだけど、芯を外して打たせてとるタイプの投手なんだ」
          「あの時は、日暮君の打ったヒット一本以外完璧に押さえられたでやんすね」
          「しかし、今はあの時とは違いますよ。では、皆さんそろそろ行きましょうか」

           太鼓がそういうと皆はグラウンドに向かっていった。



          「では今日のオーダーを発表する」
           
           監督がオーダーを読み上げていく。

           一番 矢部 中
           二番 原 二
           三番 日暮 遊
           四番 大京 左
           五番 外村 一
           六番 六道 捕
           七番 山岸 三
           八番 上田 右
           九番 太鼓 投

           矢部、原が出塁し、器用な日暮が繋ぎ、大京と外村の一発に期待する。
           返しそこなったランナーは六道に確実に返してもらい、打撃は安定している山岸を七番に置く。
           八番の上田の打撃は余り期待されていないものの、守備を変われてスタメンとなっている。

          「じゃあ、気合入れて行きますよ!」

           太鼓の掛け声に皆が答えグラウンドに駆け出して言った。



          「ただ今より、恐怖高校対聖タチバナ高校の試合を始めます。一同礼」

           審判がそういうとお互いのチームが一斉に礼をする。
           先行は恐怖高校のため聖タチバナの面々は守備につく。
           因みに、恐怖高校のスターティングメンバーはこうなっている。

           一番 長谷川 投
           二番 飯山  中
           三番 洞   右
           四番 熊井  捕
           五番 梶本  三
           六番 池田  二
           七番 河本  一
           八番 福島  左
           九番 裏山  遊

           全員が堅守、俊足。洞を除く全員が強肩である。
           反面打撃能力は洞以外飛びぬけた選手は居ない。
           足やバントを使い一点を取り、守り勝つ野球をしてくるだろう。

          「プレイボール!」

           審判がそう告げると恐怖高校の一番長谷川が左打席に立つ。
           足を警戒し、内野手は少し前気味の守備位置を取る。

          (まずはここで様子見だ)
          (うむ)

           六道が出したサインはボールになるカーブ。太鼓はそれに頷き、要求されたコースにボールを放る。
           しかし、長谷川はピクリとも動かない。

          (打つ気なのか?)

           六道は慎重にもう一度ボール球を要求する。
           しかし、それにも反応しない。

          (初回からフォアボールはいけない……)

           六道は、内角のストレートを要求する。
           太鼓が内角に放ると、長谷川はバントの構えを取る。
           それに反応し、山岸と外村がダッシュしてくる。
           しかし、それをあざ笑うかのように長谷川はバットを引くと思いっ切りバットを振りぬく。
           ボールは一塁線を転がり、ライトの上田が捕球する。
           二番の飯山は確実にバントで送る。

           ワンナウト、ランナー二塁で要注意バッター洞を迎えた。


      [59] Re[24]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/09/18(Fri) 23:17:11)


          「太鼓さん楽に行きましょう!」
          「打たれてもワイらが取ったるで!」

           バックが太鼓に声をかける。
           その声に太鼓は奮起し、ツーストライク、ワンボールと洞を追い込んだ。
           
          (これで!)
          (このコースならそう簡単には打たれない――なっ!)

           投げられたコースは外角低めのカーブ。しかし、洞はそれを確実にミートさせると逆らわず流す。
           打球はライナーとなり三遊間にとんだ。

          「原! セカンド頼む!」
          「分かったわ!」

           しかし、日暮はその打球をダイビングキャッチで捕球し、間髪いれずに、二塁に送球する。
           長谷川は、二塁に戻れずそのままアウトとなり一回表が終了した。



           その後、お互いに点は取れず回は進んでいく。
           聖タチバナ高校は、長谷川の投球の前に凡打の山を築き、恐怖高校は太鼓の粘りの投球の前に、連打が出ず攻め倦んでいた。
           そして、回は五回表に移る。

          「太鼓、なんとか六回まで頑張ってくれ」
          「分かりました。監督」

           太鼓以外の投手はスタミナに不安がある。
           そのため太鼓は一人で全ての試合の先発をし、大体六回、七回まで投げ抜いてきている。
           その後は、みずきと宇津が抑えるという感じになっている。
           この回九番から始まり、三振にきって取るものの、一番、二番に立て続けに連打を浴び、ワンナウト一塁、三塁という状況になっている。
           日暮はタイムを掛けると、内野手がマウンドに集まった。

          「芯で捕らえられ始めてきている。次のバッターは確実に捕らえてくると思うぞ」
          「じゃあ、どうするんだ――ですか?」
          「お前敬語下手だな……」
          「そんな事言うてる場合かいな!」
          「え〜と……とりあえず、ゲッツーを狙っていこう」

           変な空気になった場をとりあえず日暮がまとめる。
           皆はそれに頷くと、守備位置に戻る。
           内野前進はせずに、通常通りの位置でゲッツーにし止める事にきめた。
           これが吉とでるか凶とでるか、今は誰にも分からない。


      [64] Re[25]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/09/20(Sun) 00:38:39)


          「守備気合いれていくぞ!」

           日暮の掛け声に、全員が掛け声を返す。
           一回のようにダブルプレーにできれば理想的である。
           しかし、打者は洞。油断すると簡単にヒットを打たれてしまう。

          (スクイズの可能性も捨てきれない……まずは外そう)

           初球に出したサインはウエストボール。
           しかし、洞はピクリとも動かない。

          (違うのか?)

           カウントを悪くし、歩かせるのは避けたい。
           歩かせたとしても次は四番であり、一発を浴びるのは怖い。
           二球目は、外角にシュートを要求する。しかし――

          (しまっ――)
          (失投! まずい、真ん中に!)

           此処まで、太鼓が抑えられてきたのには、六道のリードがある。
           今回の相手にはちょっとのコントロールミスが命取りとなる。
           此処まで太鼓は精神をすり減らしながらも、コントロールミスをせずに打者を抑えていった。
           その失投を逃すバッターではなく、洞は真芯で捉える。
           打球はライトの頭をこし、フェンスにワンバウンドでぶつかる。


          (三塁ランナーは当然無理……一塁ランナーは阻止しないと!)
           
           すぐに、カットに入っている原に矢のような送球をする。
           一塁ランナーは三塁を蹴って、ホームに向かっている。
           原も、すぐにホームの六道に送球する。
           六道は捕球するとすぐに滑り込むランナーにタッチする。

          「……アウト!」

           何とかアウトを取り、一点に抑える。
           その後四番をセンターフライに抑え、チェンジとなる。



          「すみません皆さん」
          「いいんですよ、太鼓先輩。それより後一回お願いしますね」

           ベンチに戻ると、日暮はすぐに長谷川へと視線を移す。
           第一打席は、ぼてぼてのサードゴロ。何とか内野安打にしたものの、ヒットとは程遠い。
           此処まで塁に出ているのは二人。日暮と原である。
           日暮は三塁内野安打。原はセンター前ヒット。原しか、長谷川の球をしっかり捕らえる事ができていないのだ。
           そして、打席には六道が入る。



          (厳しいな)

           カウントはツーストライク、ツーボール。
           ここまで六道は見るのに徹している。
           
          (そろそろ打ちに行く……)

           正直言うと、六道が出たとしても後は下位打線である。
           山岸には期待できるが、上田と太鼓はあまり期待できない。
           六道は内角にスライダーをつまりながらもライト前に落とし、ヒットとする。

          「よっしゃ!」

           山岸はバットを何度も振るって打席に立つ。
           右打席にクラウチング打法で構える。
           一打席目は、打ち急ぎピッチャーフライ。
           山岸は三球ボールを見てワンストライク、ツーボールとする。

          (この試合ワンナウト、ツーストライク、右打者の時に次に投げてくる球はカウントを稼ぐストレート……)

           山岸の読みどおり、長谷川の投げた球はストレート。その球をセンター前にはじきかえし、ノーアウト、一塁二塁とした。
           
          「何でこんな時に俺なんだよ……」

           そして、打者は八番上田。


      [65] Re[26]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/09/20(Sun) 16:32:35)


           修は左打席に立ち、構える。
           彼の打法は振り子打法。
           投手側の足を高く上げるか、あるいはすり足の様に移動させ、体を投手側にスライドさせながら踏み込んでスイングする。
           タイミングが合わせやすく、ボールが見やすく、見極めもしやすく、非力な打者でも長打を打ちやすいなどの利点があるといわれている。
           しかし、その分大きいモーションゆえに、内角攻めに弱い、速球に振り遅れやすいなどの弱点もある。
           この打法は中学時代に完成した。
           その頃はまだスクエアスタンス という基本の構え方とされるものを使っていた。
           しかし、その打法では全く打てなかったため、打法改良に勤しんだ。
           色々な打法を試した結果、振り子打法を使用することなり、少しは当てれるようになった。
           
          (ダブルプレーは避けたい……でも、サインはバントはするなって……)

           修は、バントはそれほど上手くないので仕方ない。打ち上げてダブルプレーになれば最悪である。
           
          (よく打てたなあの二人……)

           ワンストライク、ツーボールをしたところで、一旦打席を外し素振りを行う。
           
          (とにかく当てる事だけ考える……)

           そう考えまた打席に立つ。



           その後五球連続でファールとなる。しかし、ファールする度に辺りが鋭くなっていく。
           六球目、ボール気味のスライダーをファールにする。

          「何か、ボール球もカットしてるみたいやな」
          「うん……見送っていればフォアボールなのにね」

           今、修の頭には見送るという考えは無い。
           とにかく当てることだけしか頭の中には無い。
           そして、七球め。長谷川は集中力が切れ、球が高めに浮いてしまう。

          (来た!)

           修はその球を思いっきり振り抜いた。




      [67] Re[27]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/09/22(Tue) 00:57:52)


          「あっ!」

           修の打ったあたりは、サードへボテボテのゴロとなる。
           三塁手は、一瞬躊躇するもすぐにボールを捕球すべくダッシュする。
           修はすぐに、一塁に向かって全力疾走を開始した。
           三塁手は一瞬三塁を確認する。もう六道が滑り込んでおりアウトは無理と判断するとすぐに一塁に向かって送球する。
           修は一塁を駆け抜けた。

          「……セ、セーフ!」

           微妙な差で修の足が勝った。
           これでノーアウト満塁。
           しかし、太鼓はこの場面スクイズを狙うもスリーバント失敗でアウトとなってしまう。
           そして、迎えるは矢部。

          (き、緊張するでやんす……)

           矢部はチャンスを苦手としている。
           こういう場面普通は、緊張してしまうが、矢部の場合それは大きく現われてしまう。

          「タイムお願いします〜。矢部君ちょっと!」
          「何でやんすか?」

           日暮はタイムを取ると矢部をベンチ近くに呼び寄せた。

          「何でやんすか?」
          「矢部君、ワンストライク目をフルスイングだ!」
          「え! そんなことしていいんでやんすか?」
          「そうすれば緊張なんて吹き飛ぶよ! さぁ頑張って!」

           そういうと、日暮は矢部の背中を叩きバッターボックスに送った。

          (あれは緊張をほぐそうとしてくれてるでヤンスかね)

           長谷川はスクイズを警戒して一球目をはずす。
           そして、二球目内角高めのシュートを矢部はフルスイングした。
           しかし、全く掠りもしない。

          「良い振りだよ!」

           ベンチで日暮が声を出す。
           矢部の緊張はもう無くなり、何時も通りの打撃ができるようになっていた。
           


      [68] Re[28]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/09/23(Wed) 02:22:49)


           カウントはワンアウト、ワンストライクワンボール。
           長谷川の投球回数は既に七十球を超えていた。
           これは聖タチバナの作戦である。出きるだけ多く球数を投げさせる。
           長谷川はこれまで一人で投げ抜いてきており疲労している。
           そこを狙いとにかく聖タチバナは一打席めは相手の球筋を見極めるという意味合いもこめて、一打席目はツーストライクに追い込まれるまで球を振らなかった。
           その効果もあってか長谷川は厳しいコースをつきにくくなっている。

           二球外れて、ワンストライク、スリーボール。
           此処で恐怖高校がタイムをとると、ライトの洞と長谷川の守備位置が入れ替わった。
           矢部は一度打席を外す。

          「これは予想外……アイツ投げれたんだ」
          「球速は百三十あるかないかだけど……変化球投手かな?」

           洞が投球練習を日暮とみずきは観察していた。
           投球練習を終えると矢部は打席にまた入った。
           洞が投じた一球目。真ん中高めに投げられた何でもないボール。

          (良い球でやんす!)

           しかし、それはゆらゆらとゆれながら矢部のバットの下を通った。


      [76] Re[29]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/10/20(Tue) 23:52:29)


          「今の球は……タイムを掛けたいところだけど……」

           高校野球ではタイムの回数は一試合につき攻撃時、守備時それぞれ三回である。
           因みに選手交代やボール交換のための試合進行の上でのタイムはカウントされない。

          「日暮先輩、今の球って……」
          「多分ナックルだと思う。そうだよねみずきちゃん」
          「ええ、多分そうだと思うわ」

           ナックルとは投手が投げた後、殆ど回転しないボールが捕手に届くまでの間に不規則に変化しながら落ちる変化球である。
           無回転で放たれたボールは不規則に変化し、打者はおろか受ける捕手や投手本人にすら全く予想のつかない変化をする。

          「ナックルは確かに凄い変化球よ。だけど欠点も多いわよ」
          「欠点……球速が遅いとか?」
          「それもあるけど、変化が球場の地理的な影響を受けるからコントロールが難しい。後捕手の捕球に高い技術が要求されるわ。まぁ聖ならとれるかもしれないけどね」
          「ですが、初見でアレを打つのは困難でしょう」
          「いや……ナックルのコントロールの難しさなら……」



          (あんな変化球は見たことも無いでやんす)

           矢部はナックルを打つための方法を頭の中で考えていた。
           しかし、良い考えが浮かばない。
           考えている内に洞は投球モーションに入る。

          (今は目の前の事に集中するでやんす)

           洞が投じたボールは先程と同じくナックル。
           しかし、そのボールは矢部の手前でワンバウンドした。
           フォアボールで押し出し同点とする。
           しかし、二番の原はナックルを捕らえる事ができず三振に討ち取られてしまう。
           そして、次のバッターは――

          「三番、ショート日暮君」


      [79] Re[30]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/10/30(Fri) 20:59:41)


           日暮は左打席の前で軽く素振りを行うと左打席に立った。
           ここまで洞の投じた球種はナックルのみである。
           実際メジャーリーグではナックルを投げる投手はナックル以外の球種をほとんど投げない。
           レッドソックスのティム・ウェイクフィールド選手が良い例である。

          「よし! 来い!」

           一度バットの先を洞に向けるとバットを立てて構える。
           彼が使っているのは神主打法。全身をリラックスさせた状態で構え、スイングの瞬間に全身の筋肉を動かすことで、より大きな力を発揮するという理論に基づく打法である。
           長打が望める反面、バットコントロールが非常に難しく、フォームの構造上、タイミングの見極めにも熟練が必要とされる
           一球目、二球目と洞が投じたナックルを見逃し1−1となる。
           そして、三球目のナックルを見極めバットを振る。
           しかし、予想が外れたのかボールは一塁線に転がり、ファールになる。

          「日暮君絶対打ちなさいよ!」
          「あー、打たなかったら後が怖いなー」

           ベンチでみずきが大声を上げている。それを見て日暮は軽く苦笑いすると、また洞に集中した。

          (当てることは出来るけど確実に捕らえるのはなぁ……)





           その後ファールを連発し、カウントは2−1。

          (来る球は分かってるけど……)

           今までは全てナックルボール。他の変化球は投げてきていない。
           そのため日暮は次の球種を勝手に判断してしまった。それがいけなかった。
           洞から投じられたボールはストレート。しかし、ナックルの連投で集中力が切れていたのかボールは日暮の右足首を直撃した。
           日暮は右足首を押さえてその場に蹲る。

          「日暮君!」
          「日暮君大丈夫でやんすか!」

           一塁から矢部が猛スピードで日暮のところにやってくる。
           ネクストサークルにいた大京もやってきて、日暮は二人に支えられベンチに戻った。

          「こんなの全然平気、大丈夫だよ……っっ!」
          「やせ我慢でヤンス! こんなに腫れてるででやんすよ?」

           スパイクを靴下を脱ぐと、日暮の右足首付近は大きく腫れていた。

          「これは駄目だな……三条院氷を持ってきてくれ」
          「大丈夫です監督! やらせてください!」
          「だけど、こんな傷じゃあ……」
           
           大仙監督が日暮の怪我を見て静かにそういうと、日暮は立ち上がる。
           しかし、顔は苦痛の表情であった。

          「それにこの怪我では、ショートを守るのは無理だ」

           ショートはボールに触る機会が全ポジションの中でも特に多く、守備範囲も広い。
           そのため、怪我をした状態の日暮が守るには無理があった。

          「だけど監督、ショートを守れる選手ってこの中にいましたかね?」
          「それは……日暮がずっと守るものと思っていたからな……」

           聖タチバナにはショートを守れるのが日暮しかいない。
           内野手のなかで二塁手と並んで難しいショートを守ることを出来たのは日暮だけだったのである。
           さらに日暮は精神的にチームの柱である。その彼が抜けることはチームに多大な影響を及ぼすだろう。
           聖タチバナは判断を迫られていた。


      [80] Re[31]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2009/11/02(Mon) 23:19:23)


           三条院の持ってきた氷を右足首にあてる。
           部員全員が日暮の怪我の具合を見守っていた。
           それを察してか、日暮は監督に笑顔で話す。

          「大丈夫ですよ、監督。本当に迷惑を掛けるようならすぐ変わりますから」
          「……分かった。だが、駄目だと思ったらすぐに変わらせるぞ。お前の為にも、チームの為にもならないからな」
          「よし! 日暮、矢部君は塁に戻ろう! 大京、一発頼む!」

           元気よく言うと一塁に駆け出す。しかし、誰の目から見ても足を引きずっていた。
           大京はナックルをセンターに運ぶものの、難なくキャッチされる。
           こうして、五回裏が終わり六回表へと移る。
           現在は1対2と聖タチバナがリードしているものの、守備の要である日暮の負傷がどう響くか。勝負はまだまだ分からない。

          「この回が正念場ですね。出来るだけショートには打たせたくないですが……」
          「相手は、確実にショートを狙ってくる。コントロールミスをすればもっていかれる」
          「ええ、分かってます。任せてください」

           投球練習を終え、ピッチャーマウンドで太鼓と六道は軽く作戦会議を行う。
           それを終えると、太鼓はロージンバックを手に取った。
           もう先ほどの回のように失投することは出来ない。

          「プレイ!」

           次の打者は五番。油断はできない。
           審判の合図と共に構えると、六道の構えた所に力いっぱい放る。
           しかし、相手も上手く合わせショートにへと打球が飛ぶ。

          「しまっ――」
           
           しかし、六道は驚愕した。日暮は何時も通りボールを捕球すると何事も無く一塁に送球したのである。

          「よし! ワンアウト!」
          「流石先輩だな……」

           その後、相手はショートを狙ってくるも全て日暮が危なげなく捌き六回の表を終える。
           しかし、こちらの攻撃も沈黙し、1−2のまま終盤へと入る。

          「聖タチバナ高校、選手の交代をお知らせします。ピッチャー太鼓君に代わり、宇津君」




           


      [91] Re[32]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2010/03/27(Sat) 22:13:31)


          「宇津先輩、出来る限りショートにボールは打たせないで貰いたい」
          「わかっているさ、彼は責任感が強いからね、下手なプレイをして士気を下げたくないんだろう」

           六道は横目で日暮を見る。日暮は何時もと同じように振舞っている。

          「じゃあ、リードは任せるよ」
          「分かった」

           この回宇津は、8番、9番、1番を三者凡退にきってとる。
           しかし、こちらの攻撃も上田、宇津、矢部がナックルに翻弄され追加点を入れることが出来ない。
           そして、八回表二番打者に出塁を許し、ノーアウトで一塁にランナーを出し、打者は洞を迎える。

          (ノーアウトであの三番……盗塁もあり得るが……)

           今日洞は此処まで、二打数二安打と調子がいい。
           打者に集中したいものの、此処まで相手に盗塁を二回許している。
           足で掻き回されたくは無い。しかし、六道の肩では外さないと刺すのは難しい。
           宇津は初球を高めに外す。しかし、相手は外す素振りを見せない。

          (盗塁は無いのか?)

           二球目は低めに落ちる高速フォーク。しかし――

          「ランナー走った!」
          (しまった! ヒットエンドランか)

           洞の打った打球は一二塁間を転がっていく。何時もなら捕球できる打球だが、原は二塁の方に向かっているためライトに抜けてしまう。

          「上田! サードだ!」

           上田がボールを捕球したときランナーは既に二塁を蹴って三塁に向かおうとしている。

          「舐めるなよ!」

           走りこんできた勢いそのままサードに向かって送球する。矢のようなボールがサードに向かって飛んでいく。
           それを見た二塁ランナーは慌てて二塁に戻る。
           四番打者は三振で仕留めるものの、ワンアウト一二塁。
           五番打者はバントで送りツーアウト二三塁。

          「あと、ワンアウトだ! しまっていこう!」
          『オウ!』

           日暮の声に全員が声を大きく上げて答える。
           次の打者に対し宇津は低めに威力のあるストレートを投げる。
           打者はバットに当てるものの平凡なゴロがショートに飛んだ。
           少し右に動けば捕れるボールである。しかし日暮は右に動こうとした瞬間その場で倒れてしまう。
           
          「レフト! バックホーム!」

           一瞬日暮に気を捕られたものの、六道が大京に指示を出す。
           ボールは返球されるものの、二人のランナーの生還を許した。
           しかし、それ以上に問題なのは転んだ日暮である。
           原と山岸に支えられ、日暮は一度ベンチに戻った。

          「ちょっと足がもつれてしまいまして」
          「良いから早く足を見せるんだ……これは」

           監督は絶句した。先程の腫れはさっきより更におおきくなっている。

          「もう無理だ。交代だ」
          「か、監督! 大丈夫です。お願いします!」
          「駄目だ! お前を潰すわけには行かない。お前には来年もチームを率いてもらう」

           監督の剣幕に押され、日暮は渋々交代した。
           日暮の交代による士気の低下は避けられず、結局5対3で恐怖高校に敗北した。
           その後、全員が高校に戻った。

          「日暮君病院に行かなくていいんでやんすか?」
          「大丈夫、太鼓さんの話が終わったらいくよ」

           矢部に支えられ歩く日暮。その右足は痛々しかった。

          「それでは、引退する太鼓から話がある」

           監督の言葉に全員が太鼓の方を向く。

          「残念ながら私の代では甲子園に出場する事はできませんでした。しかし、貴方達は甲子園に出場できる力を持っていると思います。そして、そのチームを日暮、貴方が率いていくのです。次のキャプテンは君です」
          「はい! 任せてください」

           全員が拍手する。太鼓は涙を浮かべつつもわらっていた。


      [94] Re[33]: 2人の約束

      記事引用返信

        ・投稿者/ シード -(2010/04/01(Thu) 20:55:57)


          「なんというか……気が入らないなー」
          「まぁ、試合が終わった翌日だから無理も無いけど……」

           現在二人は全体練習が始まる前にキャッチボールをしていた。しかし、二人には覇気が全く感じられない。
           その後ちょっとして監督から集合がかかった。

          「キャプテン、足そんなに酷いんですか?」
          「大丈夫だよ。大体一週間で完治するって。これは早く直す為に借りてきたんだよ」

           日暮は松葉杖を持ち右足を浮かせている。
           日暮の言葉に全員の顔から安堵の表情が漏れた。

          「今日はしっかり気持ちを入れ替えて次の秋大会に向けて頑張ろう!」
          『オオーッ!』





          「なぁ、日暮ちょっといいか?」
          「はい、何でしょうか」

           素振りをしていた修に日暮が声をかける。
           修は駆け足で日暮の元へ向かった。

          「悪いと思うんだけど……投手と外野を兼任してくれないか?」
          「投手……ですか」
          「うん。太鼓先輩が抜けて投手は宇津とみずきちゃんだけ。それに二人も先発タイプじゃない。だからもう一人投手が欲しいんだ。ご要望会議で誰かを仲間にしても秋大会にまでは間に合わない」
          「わかりました……出来る限りやって見ます」

           修はそういうとグローブをはめ、山岸に声をかけキャッチボールにむかった。

          「出来る限りか……僕も出来る限り指導をしないと」





          「全員集合! 今日の練習は此処までとする。それと八月の初めから二週間合宿を行う」
          「どこででやんすか?」
          「奈良県だ。因みに時間の合間を縫って甲子園の試合を見に行くつもりだ」

           監督のその言葉にチームは喜びの声を上げた。

          「だがその分スケジュールに余裕が無い。いつも異常にハードに行くぞ! 分かったな!」
          『はいっ!』

           そして、時は流れ――

          「もう夏休みで合宿か……早いもんだな」
          「そうだな」

           野球部一同は奈良県に来ていた。


      [140] Re[6]: 2莠コ縺ョ邏蒭

      記事引用返信

      [146] Re[11]: 2莠コ縺ョ邏蒭

      記事引用返信

      [150] Re[12]: 2闔繧ウ邵コ繝ァ驍鞘卵謫

      記事引用返信


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