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靄がかかったように意識が集中できない。
「あの、どうだったんですか?先生。」
弥生がにっこりと微笑む。
「大丈夫、ちょっと戻ったら葉月が出てきたわ。」
「そうですか、よかった。って・・・なんで俺のままなんだ・・・?」
「葉月の擬似人格はその皐月のクローン体を動かすのに入れておいただけだから、貴方の人格の下に関連付けしておいた。」
「皐月・・・ちゃんのクローン?」
「そうよ。私がアメリカにいる間、姉として世話をするために作ったクローン。とはいっても住民データにアクセスしてちゃんと市民登録してある。数年間の学習で結構人間らしくなってたけどね、所詮は作り物。貴方の人格を構成している情報量に比べれば4%位よ。」
この人、いったい何者なんだ、という恐怖に似た感情が込み上げて来る。
「私はね、複数の財団から支援を受けて研究機関を運営しているの。学校の講師はその片手間にやっている趣味みたいなものかしら。まあ、一応学校の先生って身分があると社会生活を送る上での良い隠れ蓑になるしね。」
先生の手が伸び、俺の頭にふわっ、と置かれる。
「あのファスナーを持ち出すなんて。葉月ったら変な事に興味を持ち始めてたのね。」
「えっ!?あの、あれって先生が?」
「そうよ。仕舞っておいたらいつの間にか。調査依頼を受けていたんだけど、依頼がキャンセルされて廃棄するはずだったの。まさかこんな面白いことが起こるなんてね。」
「・・・・・あの、俺ってこれから・・・」
「大丈夫よ。社会的にも肉体的にも、貴方は私の妹として存在している。そのまま葉月になりなさい。研究の手伝いもして欲しいし。いくら私でも作れない人間としての君の人格でその脳は満たされた。前の葉月の人格も貴方の人格の下に残してあるから、ちょっと慣れれば前の葉月そっくりに行動することも、記憶を呼び出すこともできるはずよ。」
鏡原葉月・16歳♀。
どうやら俺はこの名前で生きていくしか無いらしい。
意識は全然俺のままなのに?
大丈夫なのか?
「あ、そうそう。記憶を見ればわかると思うけど、葉月、大学生のカレがいるから。精神的には処女だろうから覚悟しておいてね。ふふふっ!」
それって、まさか・・・
唐突に思考が葉月の記憶にリンクする。
「げっ・・・・」
数分後、
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