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「ゴミ袋?」
「違います。」
委員長がそれを広げる。
それはごく薄い生地で作られた全身ストッキング?見たいなものだった。
「イイダ科学産業で開発中のVRトレーニングシステムの端末ですわ、お嬢様。これに着替えてトレーニングルームで早速。習うより慣れろ、ですからね。」
「ぶ・・・VRって?」
「仮想現実空間で普段の彩花様の行動を体で体験してもらいます。目が覚めてシャワーを浴びるところから、服の着方、話し方、彩花様の字でノートをとり、その場面に応じた表情や態度。繰り返し何度でも体験していただきます。自然と身につくまで、ね。ここがトレーニングルームです。とっととお入り下さいませ♪」
「うわあああっ!」
「はぁああああぁ・・・・」
ベッドに倒れこむ俺。
時計はもう深夜直前。
こんなことで、学習なんて出来るのだろうか?
だめだ、今日はもう寝よう。明日こそ何とか脱出・・・を・・・
インチキだと思っていたこのトレーニング、効果が出てしまったのは突然だった。
「お嬢様、明日からいよいよ学校ですね。法事でパリに行っていた、ということになっておりますので。」
どんな親戚の法事だよ。
「大丈夫かしら、バレたらどうしましょう・・・」
「大丈夫ですよ、私達から見てもちょっとした仕草までカンペキにお嬢様です。」
「えっ?そんな、別にワタクシ真似してるつもりは・・・ないの・・・に?なっ何なんだこの話し方っ!?」
考えは俺のままなのに、体が勝手に彩花そっくりの行動を!?
「VRトレーニングと、寝室に設置されている睡眠学習システムの相乗効果ですわね、お嬢様。その偉そうに腕を組んで見下した表情もそっくりですわ。」
慌てて腕を解く。
睡眠学習?やたら寝つきが良かったのもそのせいだったのか。
そしていよいよ翌朝、俺はリムジンを降りて校門の前に立った。
やっと俺に化けた彩花と話が出来る。
この状況を何とかするにはアイツと話をつけないと。
「行ってらっしゃいませ、お嬢様。」
「ご苦労様。」
髪の毛を手で払い、颯爽と歩き始める俺。
向かう先は・・
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