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つまり先生だ。
アメリカの大学を18歳で修士課程まで修了し、某国立大学をダントツな成績で卒業。
就職先はいくらでもあったはずなのに何故か安月給の講師をしているのは学園七不思議のひとつに数えられている。
「騙されないで!弥生お姉ちゃんっ!」
皐月がビシッ、っと俺を指差す。
「な、何なの?葉月がどうかしたの?」
「うまく化けてるけど、この人、葉月おねえじゃないんだよっ!」
「うん〜?皐月、何の冗談なの?」
「だって、だって皐月が胸むにゅむにゅ〜ってしても怒らないし、とにかく絶対違うのっ!」
「・・・・・という訳で、俺は葉月ちゃん本人には間違いないんだけど、俺だと思い込んで行動しちゃってる、のかな。俺自身もまったく訳判んないだけど、ね。」
弥生さんがじっと俺を見つめている。そしてかすかに微笑んだ。
「鈴木君、なんだ。ふふふ・・・面白いわ。こんな楽しいシチュエーション、楽しまない手は無いわよね?皐月。」
「うんっ!!中身がおにーちゃんな葉月ちゃん、男の人なら女の子好きだよねっ!?」
そんなにワクワクした顔で俺を見ないでくれ。
「あの、心配じゃないのか?葉月がこんなで。」
「大丈夫でしょ。きっと一時的なものだと思うし。」
その根拠も語ってくれ・・・お願いだから。
「とにかく貴方が私たちの家族の葉月であることには間違いないんだから。ちょっと変なこと覚えて帰ってきただけだし。あ、でも一応確認だけはしておこうか。鈴木君の生年月日いつ?住所は?ご両親のお名前は?」
弥生先生はノートに走り書きしたメモをシャーペンでとんとんと突きながら考え込んでいる。
「あの、何かわかりましたか?先生。」
「ん?ああ、そうね。貴方の鈴木君としての記憶は完璧みたい。矛盾点もないし、抜けているところも無い。子供のころの記憶まで。」
「・・・ということは?」
「一時的な思い込みで、葉月が自分を鈴木君だと思い込んでるかと思ったけど。ここまで完璧だと自己暗示とかじゃないみたいね。葉月の知らないことばかりだもの。そうだ、ちょっと催眠術で逆行してみようか。」
「えっ?催眠術って・・・」
「大丈夫よ。皐月、カーテン閉めて。」
俺にべったりと抱きついていた皐月がしぶしぶ立ち上がってカーテンを閉める。
「ベッドで頭をぶつける前まで遡ってみるわね。このライトを見て。」
「はい、起きてもいいわよ。葉月。」
弥生さんの声で目が覚める。
「う・・・」
眩しい。どうやら催眠術にすっかりかかっていたらしい。
俺は・・・
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