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「私は……俺の……姉さん……だったの……!?」
私は小さい頃に離婚した両親の母方に引き取られ、普通に暮らしていた。
離婚の理由は父の傲慢な性格によるものだという。
まだ幼かった私は、当時の父や幼い弟のことはあまり覚えていなかった。
私は幼少時から頭もよく神童と呼ばれ、地元ではちょっとした有名人だった。
成長すれば、当然のように高校や大学は国立の難関校に受かり、秀でていた科学の才能を買われ、大きな企業のある研究の責任者として働くことになったのだ。
だがそこから私の人生は大きく揺れ動いた。
いざ研究所を紹介されると、そこで行われていたのは、人を人と思わないような実験や非合法な薬の製造ばかりだったのだ。
心優しかった私には、それがどうしても許せなかった。そして、この企業の代表を何とかしてでも思い直させようと思ったのだ。……たとえ命を奪うことになっても。
それからの私の行動は早かった。
嘘の情報を流し、研究所から薬を何本も持ち出し、実行犯たちをこの廃屋に誘導した。
そして今日になり、ドアの隙間から捕らえられた代表の顔を見て愕然としたのだ。
そこには血を分けた弟がいたから。弟の顔写真だけは入手していたが、代表が誰かは知らなかった。というより知らされてなかったのだ。
弟がこんなことするはずが無い。だが、現に代表は弟。さぞ私は混乱した。
そうしてどうしようか迷っていた時、敵か味方か分からない俺が目を覚ましたというわけだ。
だがそれでも、ドアをあけた時に私は決心がついていた。私のすべてを知ってもらおうという決心が。私は俺を信じたんだ。
……すべてを知った俺は、まずあることをしようと思った。
それは――
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