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脱出するにはどうにかしてこの密室から出なければならない。だがここは人の通れる隙間などなく、たとえ液体や気体になったところで出られるかどうかは怪しい。
慣れない体で正しく自分の思うように動けるかも分からないと言うのに。人間の身体とは勝手が違うのだ。
そうやってうんうん唸っていると、身体を抱き上げられた。そうか、今の俺は粘性のある液体でかつ、なぜか質量も減っているから女でも軽々持ち上げられるのか。
「早くなさい! その姿になったということは、あなたは薬に打ち勝ったということでしょう?」
「早くしろって?何を? ……まさか!?」
「そのまさかよ!」
そう言って俺を飲み込み始めた女。気は確かなのか?俺に身体を乗っ取られるのが当然だとでも言わんばかりじゃないか。
どんどんと体内に侵入、浸透していく。胃カメラってこんな感じなのかな、と思いつつ作業は進行。やがて体中に行きわたると、俺が身体の主導権を手にしたことを理解した。
「ん……どうやら終わったようね。む、どうやら言葉遣いや立ち振る舞いは相手に依存する様ね。ちょっと変な気分だけど、我慢しましょう」
目を開けて自分の姿を確認。体のラインがくっきりでる黒系のスーツに身を包んだ、短髪の凛々しい女が今の俺の姿。
確認も終わったところで、脱出の準備を……と思った時、一つの疑問点が思い浮かんだ。この女の動機と立場だ。自分の体を明け渡してまでなぜ俺に協力するのか知っておきたい。
そう思って意識を集中して女の記憶を探ると――
「なっ、これはいったいどういうことなのよ!?」
とんでもない秘密がこの女には隠されていた。
それは――
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