元来は砂漠を渡る旅人達の休憩地点であるオアシスを繋いだ交通路、運んでいた品 物の名前を冠し「シルクロード」と呼ばれていた道。その始発点(また逆路での終 点)に当たるオアシスを取り込む形で築かれた国、それが「キノウツン藩国(正確 には“前”が付く)」である。 藩国は近郊にある湾口を生かし、そこに港を作り上げ交易の便を図り、シルクロー ドより渡る品を、そしてシルクロードを通して渡す品を管理。そこから上がる収益 を元に国を発展させていった。この頃の取引物は当時にしては高度にして最先端技 術品と呼ばれた繊維・衣料関係、美術品、この地方でしか取れない香辛料・「尖 撫」と呼ばれていた精錬方法により硬くも柔らかくもなる鉱物、様々な種類の水晶、 化石燃料(小規模)、そして女性=神秘的存在という文化風潮が生み出したメイド教 育、それを施した女性達である。 前キノウツン藩国、その特徴の一つに美人の名産地というのがある。この藩国が作 りだした美術・工芸品の大体が女性を讃える物であるのもその証拠だと言えよう。 (後の萌えポップアート発生もこの素地があってのもの)元々が女性=神秘だとし て女性を尊重する文化の国であり、その裏返しとして女性がこの国の弱点であっ た。この頃人々は野蛮であり、度々女性と美術品の略奪が発生。そしてそれは国レ ベルにまで発展、交易路の始点であり終点として存在していた前キノウツン藩は、 その文化性などに目をつけた隣藩によって攻撃を受ける。共に和して国を作るはず の共和国において大国がその数の力で他の小国を圧殺するという行動を行ったので ある。交通の要所である港が進軍ルートとなり、そこを拠点として幾度とない戦が 繰り広げられた。最重要事項として女性を守らなければならなかった前キノウツン 藩国は戦い空しく敵藩国に制圧される事になる。最後には女性を生かす事を選んだ のだ。藩王たる初代キノウツン様が幼少のみぎり、敵国に虜囚として渡る屈辱を受 けたのもこの戦の中での悲劇であろう。 前キノウツン藩国の消滅。キノウツン藩国で失われた時代とよばれた時期。だが、 その時代は50年前で終わりを告げる事となる。敵国となったキノウツン藩国領地 で屈辱を受けながらも成長した初代キノウツン藩王による三度にわたる再独立のた めの戦争。「どんなに小さくとも我が領地を取り戻せ!」それは誇りを取り戻すた めの戦争であった。ここで女性に施したメイド教育が功を奏す事となる。その統率 力により、1日にして独立戦争の情報が全女性へと秘密裏に行き渡り、2日にして 全女性が計画通り敵国を裏切ったのだ。女性達の異常とも思える対応の早さに敵藩 国は内部から壊滅。自由と女性を再び我らの手に奪い返したのである。 同時期に初代藩王陛下崩御。藩王は次の代“キノウ=ツン男爵夫人”へと移り代わ り“新”となる「キノウツン藩国」が誕生する。新藩国は過去からの学習により高 度成長を迎える。廃墟だらけの藩地の復興、飛行場設立、最新のRB部隊配属。 元々砂漠という過酷な環境で育まれた力強い国民性は逆境を跳ね返し自らを鍛え上 げ続けた。キノウツン藩国女性の再評価を受けたのもこの頃である。もともと高い 評価だったが独立戦争での統率力を持った動きが賞賛され、全藩国内で名実共に NO1となる。特需としてメイド派遣ビジネスが高騰。小国には十分過ぎるほどの財 を手に入れる事になった。富は新しい文化を生み出す。電子機器の発展と同時に 「萌え」と呼ばれるポップアート文化が発生。当初は美術だけにとどまると思われ ていたのが、萌えの影響を受けた新しい世代により社会へと反映、藩国第二の歴史 として特殊な進化を成す事となる。この第二の歴史は先代藩王陛下崩御後、2代目 となるキノウツン藩王がお帰りになった三年前の時より始まる。敵藩国で過ごした 頃に見た、一般国民レベルにまでソフィスティケートされ“親和さを得た”バトル メード達。それは「気品」を最重要にしていたキノウツン藩国女性とは逆のベクト ルにあり、女性教育の未来を案じ「気品」だけでは足りないと考えていた藩王はこ れにヒントを得、国レベルでのメイド産業を開始。様々な案が交わされ、それは一 つの形に結びつくことになる。そう、“メイド喫茶”である。女性教育と収入、他 人種との更なる交流、観光。国としての特殊性を持つことでキノウツン藩国は生存 できる。そう考え付いたのである。幸運な事に萌えポップアート文化の後押しもあ り、最初に国民の間で大流行する。 (人々の中にある、誰かに傅かれてみたい特にそれが美女達だった堪らないという 願望を一時とは言え、味あわせてくれるのがこのメイド喫茶店である。余談だが、 キノウツン藩国のメイド喫茶には他国に少数存在するものとは違う点が一つある。 ここに居るメイドたちは、主従の関係よりも家庭を思わせるのだ。キノウツン国 は、周辺を砂漠で覆われた国である。そして交易路の終点であるため、様々なとこ ろから人間たちの流れてくる土地でもある。その結果として、この国には若くして 親を失った子供、家族を亡くした大人などが多い。彼らはメイドたちに母を見て、 娘を見るのだ。藩国の入り口近くのメイド喫茶では、時に客が咽び泣く姿が見られ る。これは、この国に家を見て、かつての思いを呼び起こした旅人たちの姿であ る。) メイド喫茶の大流行からメイド喫茶だけではなく様々なバリエーションの喫茶etc が考えられ、とんでもない多様性を持つことになった。また、飲食店経営に関わる 産業も活発化、食料に関しては大体の物が比較的安価で流通するまでになった。げ に恐ろしきは平均にして給料の60%以上を喫茶やフィギャーという工芸品関係に使 う男国民達である。中にはこれで破滅する者もあり、通称「萌死」と呼称され生き 神として祭られる。 この高度成長後、貿易品も様変わりする事となる。主に工芸品にその変化が見ら れ、萌えポップアート文化の産物である通称「ガレキ・フィギャー」が特に人気が 高い。他にも藩国製萌え&燃えアニメの放送(に伴う放送権やCM料)、萌音響学 最大の功績とまで言われた“音声ドラッグ(電波ソング)”などが人気である。 鉱物「尖撫(一般名としてTD鉱)」は採掘量が年々低下、レアメタル化し現在貿 易で輸出されるのはごく僅かである。 国民の主な趣味にも触れておこう。高度成長後に台等してきたのがもちろんメイド 喫茶巡礼といちいち言動が愛くるしい12歳人妻現藩王“キノウ=ツン男爵夫人”観 察(笑)と自作ガレキ・フィギャー作りである。藩王“キノウ=ツン男爵夫人”の 言動はすぐさまに動画アーカイブシステム「よつver3(通称:四葉さん)」に上げ られ日々の仕事に疲れた国民達を一杯の酒と共にまったりさせている。自作ガレ キ・フィギャー作りも人気であり、そのせいか手先が異常に器用な人物が多いのも 最近のキノウツン藩国男性の特徴となりつつある。
貿易とメイド喫茶の二枚看板は、これよりキノウツン国の隆盛の歴史として刻まれ るであろう。
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