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1617/ OVACGクイズ王決定王決定戦王決定戦
・投稿者/ トーリス・ガリ
・投稿日/ 2007/11/26(Mon) 22:45:10

    壷「ウルトラクイズぅぇあ!!」
    ミア「なんだよいきなり」

    壷「問題です、『テル・エル・ルサルナ』とはどういう意味?」
    ピコーン!
    シイナ「めどい、帰る」
    壷「正解!!」
    ミア「ええ!?」

    壷「次の問題、ラストリーヴは何処の所属?」
    ピコーン!
    リゼル「M――」
    壷「時間切れ!!」
    リゼル「え!?」
    ミア「早ッ!」
    ピコーン!
    ペー「――」
    壷「正解!!」
    ペー「いや、まだ何も――」

    壷「次の問題、ストーンバグは何を食べる?」
    ピコーン!
    セントリー「言うことを聞かない悪い子供」
    壷「正解!」
    ミア「おかしいよ! さっきからおかしいよ!!」

    壷「次の問題、エルフの正式名称は?」
    ピコーン!
    リミィ「うみぃ〜」
    壷「惜しい!」
    ミア「惜しいの!? アレで!?」
    ピコーン!
    サウザンド「わかりません!」
    壷「正解!」
    ミア「……(諦」

    壷「次の問題、ここは何処? 私は誰?」
    ピコーン
    パチェ「そこで色々吹き込んで恋人っていう設定にしちゃうんですはい!」
    壷「正解! ていうかその発想好き!」
    ミア「……(帰る準備」

    壷「次の問題、今帰ろうとしてるミアは誰が捕まえる?」
    ミア「………………え!?」
    ピコーン! ピコーン! ピコーン! ピコーン! ピコーン!
    ピコーン! ピコーン! ピコーン! ピコーン!
    パチェ「私が♪」
    セントリー「私が…」
    メリル「It’s me MARIO!!!」
    よしお「じゃあ俺も」
    よしき「なら俺も」
    よしと「よしきが行くなら俺もー」
    よしこ「みんな行くから私も」
    よしみ「…なんとなく私も」
    よしえ「じゃあ私も〜」
    ミア「知らない人がたくさんいるよ!」
    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

    壷「次の問題、ストーンバグは何を食べる?」
    ミア@磔「それさっき出たよ! ていうか下ろせー! お願いだからー!」
    ピコーン!
    ミロス「……うー……えーっと」
    ミア「うわ! 出た! ボタン押してから考えるっていう一番みっともないパターンだ!」
    ミロス「うっせーよ石灰肌! 黙ってろ! 注入すんぞコラ!」
    壷「正解! はい股開けー」
    ミア「あっ! だっ!? ちょっ! あっ! 待って待って!
       お願い! やめて! ダメだよ! テレビ的に!」
    ミロス「ダイジョブ! 鼻の穴だから!」
    ブチュチュチュチュチュチュ
    ミア「ヴア゛……ェ゛グェ゛…………」
    孤独のミロス「メロン味だぜ、あんまりないから味わえよ」
    ミア「ぅ……ぇ…………ぇえくしゅ!」
    ベヂャァーン!
    ミロスラフ=パロ=ウル=ラピュタ「目がぁ! 目がぁーーーー!」
    ミア「……(ぐったり」

    壷「次の問題、次の問題は何?」
    ミア「……ゴホッ……イミワカンナイデス……」
    ピコーン!
    ルカ「邪気眼を持たぬ者にはわからんさ!」
    壷「面白いから正解!」

    壷「次の問題、第2部では壷はどうなる?」
    ピコーン!
    ミア「お前――」
    壷「却下」
    ミア「……!?」
    ピコーン!
    はるきよ「考えとらんと見た!」
    壷「正解!」
    ミア「なんてダメなヤツ……!」

    壷「次の問題、ミューラの最近のお気に入りの本は何?」
    ピコーン!
    ミューラ「特にありません」
    壷「ぶー、はずれ、罰として懲役45年、ミアが」
    ミア「待てやコラ」

    壷「次の問題、アリアの主、ネクロマンサー・ファルの表向きの立ち位置は?」
    ピコーン!
    ウォルター「さっきから思ってたんだけど、
          ぶっちゃけミアを弄ってればそれでいいと思ってないか?」
    壷「正解! 正直飽きてきたとこさ!!!」
    ミア「オチは?」
    壷「ミア陵辱エンド」
    ミア「お前後で汚い金魚蜂に入れてヘドロだらけにしてやる」



    〜おわりwwwwww〜



1452/ OVACG紹介小説スレ
・投稿者/ スペランカー
・投稿日/ 2007/05/24(Thu) 23:30:24

    紹介小説専用スレです。
    他人のキャラの言動とかがよく分からないっていう人もいると思うので、情報交換的な感じでどんどん投稿してくださいー。



1498/ (削除)
・投稿者/
・投稿日/ 2007/05/31(Thu) 21:43:49

1499/ ぷろろーぐ【リゼル=プレサリス】
・投稿者/ スペランカー
・投稿日/ 2007/05/31(Thu) 22:28:53

     時計の針は終了の時刻を指していたがまだチャイムが鳴るまで少し時間がある。
     リゼル=プレサリスは教材を片付けながら次の授業の予定を簡単に説明する。

    「――明日の二限目はスーツ着用の実技演習よ。集合はB-2ポート。遅れないように。濡れても平気な服装で来なさいね。」

     今日の授業はこれまで、と言うと同時に五限目の終りを告げるチャイムが鳴り響く。
     静かだった教室、廊下共に騒がしくなる。
     学食はいつも開いているが料理を作るのは昼前と夕方の二回だけ。つまり人気のメニューを食べるにはコックが作っている間に並んでおく必要があるのだ。競争率の高い学食を胃袋に入れる為に廊下を生徒が駆け足で急いでいる。教室に残っているのは財布の状況が厳しくパンで昼食を済ませながら課題をやっている者くらい。教室は基本的には飲食禁止だがそれを咎める教師はほとんどいない。

    「リゼルせんせー」

     教科書を小脇に教室から出ていこうとしたリゼルは背後から女生徒に呼び止められる。

    「今日か明日せんせーの部屋で補習見て貰えますー?」

     リゼルは学生時から今まで学生寮に居座っており、そのために生徒が補習の面倒を見てもらいに来たりするのだ。
     リゼルは申しわけなさそうな笑顔で、ごめんなさい、と言う。

    「今日は友達と用事が入っててね。明日の昼からなら大丈夫よ。」
    「はぁーい。」

     せんせーまたねー、と手を振る女生徒達に手を振り替えし教室を後にする。
     一コマ1時間20分の授業、五コマ目が終わった所。今日はフルに授業が入っていたためにリゼルも少し疲れているようだ。
     職員室の自らの机に教材を置き、肩を揉みながらイスに身体を預ける。

    「認めたくないけど………歳には勝てないわね…」

     眼鏡を外して眉間を揉みほぐしながらつぶやく。認めたくはないが30代を目前とした身体は正直だ。それでも外見は20代前半といっても差し支えないのだが。
     教材を片付けていると内ポケットの携帯端末が振動する。片手で操作し用件を見てリゼルは眉を潜める。
     差出人は特別課外活動部[studennt's]のリーダー、ジョン・ホークウッド。用件は簡潔に一言。[召集]
     それが意味するのはstudennt'sの任務。
     リゼルは荷物を纏めて職員室を後にする。


             ●


    「構築開始……来なさい」

     音声によるコマンドの入力。
     リゼルの眼鏡のフレームに収めたコアストーンがあらかじめ入力されていたACスーツのデータを呼び出し装甲服の構築を開始する。
     リゼルの身体の周囲に力場が発生する。コアデバイスが座標秩序の乱れを抑えるために重力場をコントロールしながらコアストーン内に取り込まれたパーツをリープさせる。彼女専用に形成されたパーツは通常空間に出ると同時にあらかじめ設定されていたリゼルの身体の部位に装着される。
     極限まで軽量、簡略化された上半身に対して下半身、特に足首外側から広がった疑似反重力デバイスは威嚇的な雰囲気を漂わせている。
     リゼルは眼鏡のレンズに映し出された周辺の大気中の魔力濃度のデータを解析しながら部隊に通信を入れる。ジャミングの影響下でも大出力レーダーと抜群の対ECM性能のおかげで通信に問題は無い。

    「これよりジャミングをかける」

     リゼルは両肩のエクステンションに装備した電磁撹乱装置を起動させる。高濃度の魔力素と妨害電波をバラ撒いて自らの位置を欺瞞する。
     そして体重移動と脚の動きに連動するフロートユニットを蹴り付け加速させた。
     電子の尾を引いて高貴なる妖精が駆け抜ける。

    「各員、ミッション・スタート」

1500/ 確かめに行こう【ミロスラフ・ポドルスキー】
・投稿者/ ジョニー
・投稿日/ 2007/06/01(Fri) 07:15:45

     朝、目が覚めて、顔を洗って、朝食を取って、歯を磨いて、学校へ行く支度をして、家を出る時に両親に言ってきますと声をかけて、姉と一緒に登校して、友達と勉強して、家に帰って、宿題をしながら父の帰りを待って、帰ってきたら共に食事をして、他愛の無い会話で盛り上がって、風呂に入って、それからベッドにもぐりこんで目を閉じて、一日が終わる。
     そんな何でもない平凡な日々の連続が、つまるところ幸せと言うものだと父は語り、彼――ミロスラフ・ポドルスキーはそういうものなのだと思っていた。

     そんな日常があっさりと崩れ去ったのは、彼が10歳にも満たない頃だ。
     突然家から母と姉が居なくなり、そしてもう二度と二人が家に帰ることは無かった。
     幸せというのは、こんなに簡単に消えてしまうほど儚いものなのだろうか――聞けば答えが返ってくるものだと思い込んでいたミロスラフだったが、自分以上に落ち込んでいる父は一向に口を噤んだまま何も語ろうとはせず、ただ黙っているだけだった。
     そんな父の背中は、以前までのそれとは別人のもののように思えた。

     ミロスラフは考えていた。
     幸福の定義というものは人それぞれ違うものであり、時としてそれは大きくかけ離れているものだ、と。
     だから父が語ったあの幸せというやつは、あくまで父の中の幸せの定義でしかなく、それは自分の定義には当てはまっていなかった。
     「家族と共に日々を暮らす」ことなど、自分の幸せの定義だとか、幸せの条件には含まれていなかったのだ。
     そう思い込んでしまえば……そういう事にしてしまえばあとは簡単で、特に思い悩む必要も、それ以上落ち込む必要なども無い。
     両親が離婚して母や姉と別々に暮らす事になっても、何とも思わない。
     何故なら、それは幸せではなかったのだから。
     むしろ、姉との共同部屋が一人で使えるようになったので、喜ぶべきなのかもしれない。

     しかし今までの生活が幸せでなかったとするならば、当然の如く彼の中で一つの疑問が湧いて出る。
     自分の幸せとは何なのか?
     それはどんな形を、どんな色を、どんな匂いを……そしてそれは一体何処にあるのだろうか。
     父や教師、友人に聞いたところで返ってくるものは所詮彼らの定義でしかなく、自分が納得できるようなものでない事は分かりきっていたので、それを誰かに聞く気にはなれなかった。
     何より、聞けば答えが返ってくるわけではないのだから。

     だが、姿も形も何もかもが一切分からないというのに、そんなものをどこをどうやって探せばいいのか。
     答えの出ない巨大な一つの難問に頭を悩ませる日々が続き――両親が離婚してから数年が立った頃。
     未だに答えは出ておらず、ふとした時にそれを思い出して考え込んでしまう事はあったが、根が不真面目であるため、ミロスラフは以前のように頻繁にそれを考えることは少なくなった。
     そんなある日、友人からの誘いで彼はアリーナへと行くことになる。
     さして興味はなかったのだが、好意を寄せていたクラスメートも誘ってあると聞けば行かない訳にもいかない。
     どうすればそのクラスメートをホテルに連れ込めるかなどと不埒な事を考えながら、彼らはマックスボローのアリーナで非公式とされるCアリーナへと足を運ぶのだった。



    * * * * *



     そこで待ち構えていたものが、ミロスラフの予想だにしない物であったのは言うまでも無い。
     普段見ているAアリーナ――俗に言うイロモノアリーナを見に行くとばかり思っていたので、余計に度肝を抜かれただろう。
     今まさに眼前で行われているのは、正真正銘殺し合いなのだから。
     肉が弾け骨が粉砕し血飛沫が舞い散り、その度にそこら中で歓声が、あるいは怒号が巻き起こり地下施設はより熱気を充満させる。
     鳴り響く銃声が鼓膜を、巻き起こる爆炎が網膜を直に刺激し、強烈に脳を、心を揺さぶる。
     ミロスラフの体は自然と震えだし、拳を握る両手には汗が滲み、心の底からは言い様の無い熱い気持ちが込み上げ、呆けていた表情はいつの間にか笑みへと変わり、そして、叫んだ。意図して叫んだわけではない。ただ本能的に、まるでそうする事が当然であるかのように、叫んだ。一度ではない。何度も、何度も。
     声はとうに枯れ果てていたが――そんな事は最早どうでもよかった。

     気が付けばいつの間にか試合は終了していた。3対3のタッグバトルだったが、生き残っていたのはたったの一人。
     生き残った男が身に纏うACSは、コアブレイク寸前で、火花のようなものを散らしていた。
     男は息を切らし、極度の疲労からか立つことすらままならないようだったが、しかしこの場の誰よりも、観客よりも、ミロスラフよりも、ただただ楽しそうに――笑っていた。



    * * * * *



     帰路につきながら、ミロスラフは考えていた。
     あそこまで熱くなれたのは、興奮したのは、生まれて初めてだった。
     恐らくアレが、あの時あの瞬間こそが幸せだったといえるのだろう。
     現にあれほど興味の無かったアリーナが、今では他の何よりも大切な物になっているのだから。

    (やってみなければ、分からない……)

     胸中で小さく呟く。
     そう。やってみなければ分からない。、
     人間は、自分の主観でしか世界を見れない生き物だ。だからそれが幸せであるかどうかなんて、実際に自分で確かめてみなければ分からないのだ。
     だから先程アリーナで最後に勝ち残ったあの男のように笑えたらそれが幸せかどうかなんて、試して見なければ分からない。
     自然と笑みがこぼれる。

    (あァ何だ、簡単なことじゃねェか)

     一度収まった興奮が再び沸き起こるのを感じつつ、ミロスラフは右腕を大きく振りかぶった。
     例えば今ここで、目の前を歩くこの女を犯したら――その時自分はどう思っているのだろうか。
     あの男のように笑っているのだろうか。
     幸せを感じているのだろうか。

    (んなこたァやってみなきゃ分からねェわな!)

     目の前を歩く女の後頭部へ右拳を思い切り叩きつけると、あっさりとその場に崩れる。
     そのすぐ脇を歩いていた二人いる友人の内一人が倒れた女の下へ駆け寄り、もう一人がミロスラフの胸元に掴みかかってきた。

     そう、時としてこんな風に、邪魔が入るのだ。自分が幸せになるのを阻害するものが。
     そして思うに、自分の父はこれに負けてしまった。だからあんな簡単に幸せが消え去ってしまったのだ。
     その結果父に訪れたのは、絶望の日々だった。
     だが、自分は違う。根拠は無かったが、何故だか自信に満ち溢れていた。
     先程と同じように、胸倉を掴む友人の顔面に拳を叩きつけ、続けてもう一人の友人に蹴りを浴びせて、両者を沈黙させる。
     そして、恐怖に顔を引きつらせ、あとずさっていく女に向かって言い放った。

    「はーい股開けェー」

1574/ なんてこともない昔の話【イリュースク=エリツィン】
・投稿者/ 鉄
・投稿日/ 2007/09/14(Fri) 18:41:41

    私は我が祖国を愛している。
    祖国は私の家だ。
    祖国は私に役目を与える。
    祖国は私が私で有り続けさせるモノ。
    祖国なくして人民は有らず。
    それは当たり前である。
    ならば、ならば。
    何故祖国に抗う輩が現れるのか?
    私には理解できない。
    だが、私は一つだけ理解できる。
    そのような輩は潰してしまえばいい。
    故に私が存在するのだ。何、私は誰だ?
    君は失礼な人間だと昔から言われなかったかね?
    私は諸君らが狂人の巣窟と言っている機関の人間だ。
    それ以上でもそれ以下ではない。
    覚えておき給え。
    何、あの作戦に参加した人間として何か教えろ?
    本来なら断る所だが、諸君らは運が良い。
    特別に教えてやる。だが、話は長くなるぞ。
    あれは冬が始まろうとしていた時の事だった…


    ―ナローウッドの反乱より数時間後

    「畜生!畜生!サハロフ、おい、返事しろ!」
    「おい、そいつはもう死んでやがる。そいつはいいから早く弾を持って来い!」

    塹壕の中で俺達は数多の反乱軍兵士を相手に戦っていた。
    まるで雨のように俺達が居る塹壕に銃弾が降り注ぐ。
    クソッタレ、もうここまで押されてるのかよ。
    そうだ、最初は正規軍である俺達が数で優勢だった。
    だけどよ、不甲斐ないMT部隊のお陰でこの様さ。

    「ったく、あの野郎どもがもうちょっと奮戦してくれればよ!」

    俺達よりも数メートル前の連中なんて自分で掘った墓穴の中で火葬されて埋められたよ。
    あいつらなんて手持ちのRPG使わずにあの世までとっておきにしたのさ。
    あいつらは腰が抜けたに違いない。笑っているかもしれないが、一つ言っておく。
    想像できるかい?目の前で鉄の塊がこっちに凶器を向けてくるのを。
    俺達はそんな世界に居る訳だ。
    しかも俺達はパワードスーツなんて言う装備はありゃしねえ。
    一発石ころでも当たればあの世行き。
    あんたはそこで戦えるかい?

    「おい、イリュースク。俺に7.62mmのドラムマガジンを持って来い!」
    「こいつであと3個だ。それでもいいか?」
    「知るか!ここで使わずにおっ死んじゃあアホみてえじゃねえか!」

    機銃手に怒鳴られ俺は弾薬箱からドラムマガジンを取り出し、機銃手に手渡した…はずだった。
    突然体が地面に叩き付けられ、俺達が居た穴倉は形を変えていた。

    「一体何が起きたってんだ!」

    咄嗟に周りを見渡した。
    すると、黒い何かやちぎれた手、のた打ち回る戦友たちの姿が見えた。
    火砲だ。間違いない。こんな穴倉へこもってても俺はあいつらに殺される!
    俺はすぐさま塹壕を飛び出そうとした。その時、俺の眼前に巨大な鉄の塊が現れる。
    こんなライフル一丁でMTなど倒せるはずもない。自分の生を諦め掛けた俺に、銃弾が……降り注がなかった。
    崩れ落ちる巨体、現れる巨体。それは友軍の、軽量型MT部隊だった。

    「よーく頑張ったなひよっこども!後は俺達に任せろ。」

    野太い声で味方を激励する男。
    その男が操るMTはまるで玩具のようなフォルム。
    だが、そのでっかい玩具は勇ましい姿を見せ付けていた。


    ―現在 とある一室

    その後、私は壊滅した部隊を離れ、この職に付いた。
    そこから色々有ってだな。この地位に就いている。
    今の仕事に不満は無い。
    どのような事柄であれ、この仕事は確実に国に尽くせるからだ。
    私が言う事はそれだけだ。
    この先は…どうするかね。私は……
    すまない、用事ができたしまったのでここで終わりだ。
    では私は急ぐのでこれで。

    「お父様、何をしているの?」
    「さあてな。む、早くしなければ仕事に遅れてしまう。」


    今日はなんとしても行かなくてはならない仕事だ。
    私の力を試される仕事だ。
    私が一振りの銃剣となって国家に仇名す者を突き殺すのだ。
    部下は私を待っているだろう。
    私の号令を待っているだろう。
    ならば、ならば、私はそれに応える義務が有るのだ。



1613/ 世界一綺麗なビー玉【テルマ】
・投稿者/ トーリス・ガリ
・投稿日/ 2007/11/26(Mon) 20:22:10

     人工物に幸福なんて無い。
     自分はモノだ。
     ボクは今までずっとそう思ってた。

    「あ〜あ、かったりぃー……」
    (明日は土曜日なんだからあと少しの辛抱だよ。
     それに今日一時間目体育だよ? 体育好きでしょ、ミアちゃん)

     化け物とか悪魔とか、道具みたいな扱いを受けてたあの時は、
     心の底から笑うことのできる日常なんてボクには無理なんだと。
     人間の下で、人間の都合に合わせて生きてく宿命なんだと思ってた。
     それでもどこかに諦めきれない気持ちがあって……。
     砂漠の中のビー玉、そんな小さなものでも
     希望があるならそれを見つけたくて、抗った。

    (……そこだよ、ボクが文句を言いたいのは。
     今日は外で走り幅跳びだったはずだろ?
     ずっと雨降りだったから今日こそはって思ってたのにさ。
     お天気のお姉さんしっかりしろよ。
     アイツ2〜3回に1回はずすじゃん、
     公共の電波に乗せてテキトーなことぬかしやがって、
     アレでギャラもらってんのが信じられんねーって――)
    (あのっ、でっ、でもほら、中でドッヂボールも楽しいでしょ? ね?)
    (飽きた!)

     みんなより早く起きて食堂へ。
     寮の朝食は爺さんの手伝いをしてから。
     そのあと部屋に戻って軽くシャワーを浴びて。
     歯を磨いて制服を着て出発。
     ボクの朝はこんな感じ。

    「4〜」
    『お気をつけて…』

     人間の言葉を話すヘンテコな壷と晴れても荒れても暗い幽霊に
     見送られて寮の自室を後にする。
     こんなユニークな部屋は他に無いと思う。

    「ミぃアぁちゃぁん」
    「ひゃうっ!?」

     突然首の後ろを指でなぞられる。
     くすぐったくて飛び跳ねる、これもいつものことだ。
     耳元で囁かれる猫撫で声も馴染みのもの。

    「っんだよ毎回毎回気色悪ぃ!!」
    「愛情表現ですよー、愛・情・表・現♪」

     この一連の流れが朝の挨拶みたいなものだ。
     彼女、『パチェ』こと『ピアチェーレ』は
     ボクがガーデンに来てから2番目に知り合った友達。
     人間の友達という言い方をするならここに来てからは多分彼女が最初、
     悪友という意味でも彼女が最初……というか唯一無二だ。

    「お前のは愛じゃない! 煩悩だ!」

     ちなみにガーデンで1番最初の友達は、
     用務員をしてるアンドロイドの『エミュロス』。
     student’sに入ってからずっと会ってないが、
     彼女は元気にしてるだろうか。

    「はぁ……この際慣れちゃった方が気楽でいいかもなぁ……」
    「えー? ミアちゃんはウブな方がいーい、
     慣れちゃったら楽しくなーい、ぶぅー」
    「ボクはお前を楽しませるために生きてるんじゃない」




     こんなやり取りをする二人だけど、
     いつもやってるあたり、やっぱり嫌じゃないんです。
     二人で一人、隠し事が出来ない分、わかってしまいます。

    「まぁまぁいいじゃないですかぁ、
     それより遅れないうちにレッツゴーですよミアちゃん」
    「……あはは、ミアちゃん逃げちゃった」
    「あ、ズッコイ!」

     「プンプン」とわざわざ声に出して頬を膨らませるパチェちゃん。
     エミュロスちゃんとは同じ人間じゃないモノ同士仲がいいし、
     パチェちゃんなんていつもこうして自分から来てくれる。
     他にも友達はたくさんできて、私も今までが嘘のように明るくなりました。

    「ま、エイムちゃんはエイムちゃんで可愛いからよしとしますか!」
    「えへへへ、可愛いって言われると素直に嬉しいな」
    (なんで頬を赤らめてるんだよ)

     彼女達が私に見せる感情や表情は
     怪物でも悪魔でもモノでもなくて、友達に見せるものでした。
     まさかここに来て普通の女の子になれるなんて。
     だから間違いなく抗うことに意味はあったんです。
     ありもしない希望じゃなくて、人工物の宿命じゃなくて。

    「よー、おしどり夫婦ー!」

     冗談が聞こえた先には悪戯っぽい笑顔。
     ツンツン頭のハルキヨ君と
     帽子がトレードマークのメリルちゃん。

    「ハルキヨ君メリルちゃんおはよー」
    「Hey guys♪」
    「うりうりうりー、遅かったやないか?」

     メリルちゃんとハイタッチ。
     私の頭をクシャクシャと撫でるハルキヨ君。
     後ろからぎゅっと抱きつくパチェちゃん。

    「あぅー……ごめんね、ちょっと洗い物多くて」
    「んもーーーーーこのまま放さないのですよ〜♪」
    「それはちょっと歩き難いかな〜」

     私を普通の女の子として迎えてくれたみんなには本当に感謝しなきゃ。
     いろんな人と笑い合う、今日も当たり前のように始まります。

    「Hey、タイムリミットっす、タイムリミット!」
    「「「了解ー」」」




    「……どう思いますか?」
    「4?」
    「テルマさん、幸せそうではありませんか……」
    「…………」
    「幸せなんて人による…結局人それぞれで片付いてしまう言葉で…」
    「…………ん? 何? 聞いてなかった4」
    「………………虚しい」

     普通っていう言葉。
     当たり前のようだけれど当たり前じゃない。
     それって実は最高の幸せだったりする。
     結局、凍えるような夜の砂漠を歩いていたボク達は、
     その中からあっけなくビー玉を見つけることが出来た。

     陽の当たる日常こそが、砂漠の中にあったもの。
     恐る恐る近づくと、そのビー玉は綺麗に光って、
     私達が触れることを許してくれました。
     その代わり、手にしたからには最後まで大切に、
     応えてあげないといけないんです。




    「さー、今日も元気に張り切っちゃいまっしょー! もふもふ」
    「こんな不純物が混じったビー玉嫌だー!」
    (…ミアちゃん)



1557/ Machine Girl Become Girl(前書き)
・投稿者/ 鉄
・投稿日/ 2007/08/03(Fri) 01:21:24

    この小説は多数の未登録キャラクターが出ており、過去作品を辿らなければエミリー=サイモンの境遇についてはっきりと分かりにくい恐れが御座います。
    尚、現時点でジョンとティグリス=ユーフラテスの設定を拝借しておりますが、展開次第ではさまざまなキャラを拝借するかもしれません。
    ですが、この小説でキャラが体験した事を有ったものと書くか無いものとして書くかは自由ですのでご了承を。では始まりますよ。



1558/ Machine Girl Become Girl 1[再会と喪失]
・投稿者/ 鉄
・投稿日/ 2007/08/03(Fri) 01:22:29

    何回か見た夢。
    ”私ではない誰か”の記憶。
    けれど”生まれ”も境遇も似ている誰か。
    その記憶を覗くのは今回が始めてじゃない。
    幸せそうな記憶、臆病な私と違って好きな人に好きだと言って一つになれた記憶。
    今までは幸せそうな記憶だったけれど、今回は違った。
    熾烈な戦場。凄まじい戦場。
    その中で「私」は動きまわったが、結局凶弾に倒れてしまう。…はずだった。
    庇われていた。誰に?目の前には血まみれの男。
    ああ、そうなんだ。「私」は「守るべき人」に庇われた。
    「私」は応急処置をしようと奮闘する。けれど血は止まらない。染み出る赤、流れ出る赤。
    視界が曇りながらも奮闘した。でも奮闘は虚しく男は息絶えた。
    男を抱きかかえてひとしきり泣いた後に、「私」は自分の目に銃口を向けた。
    ああ、なるほど。もうこの記憶の持ち主は此の世に居なかった。
    結局、引き裂かれてしまった。
    そして、視界が真っ暗になってすぐにその夢から覚めた。
    酷い夢から覚めた私の頬には、一筋の涙が伝っていた。
    外はまだ暗いけれど、また寝る気になれなかった。
    だから、今はただ愛しい人の傍に居よう。
    でないと直ぐに私は壊れるから。
    でも、少しだけ触ってもいいよね?
    自制しようとしても出来ない。うずうずして仕方が無い。
    なら、少し触っちゃえ。



    変な夢を見た。
    やけにリアルな犬の夢。
    それもやけに長い。
    夢の中に出た犬はやけに懐き、どこにでも着いて来る。
    ガーデンで授業をして居る時でも、部屋の中でも。
    授業中に隣に居るのにクラスメイトは誰も不思議に思わない。
    寮に入れても誰も不思議に思わない。
    何かが可笑しい。だけどそれを夢の中で言えなくて。
    犬は金色の毛並みを持つ中型犬。と言っても少し小さめ。
    傍に居るだけで幸せなように尻尾をいつも振る。
    構ってやるとそれ以上に嬉しがる。
    そして何故か知らないがやけにリアルな感触が。
    マシュマロ程ではないが柔らかく、少し弾性の有る…なんだこりゃ。
    何処かで見たような…?いや、そもそも犬なんて飼った事は無いような…?
    そんな事を考えてみるといつものように優しい声で起された。

    「お、起きてください。朝です。」

    いつもと同じ朝。だが何かが違う朝。何故違うように感じるのだろうか?
    いや、何かが違う。やっとぼやけた視界が晴れる。っておい!

    「…な、なんでこんなに顔が近いんだ?」
    「それは……」

    続きを言わずに赤面するエミリー。
    …その…至近距離で赤面されると非常にマズい。
    とりあえず心を落ち着かせるために昨日倣った理論を頭の中で唱える。
    ………駄目だ。
    クソッ、どうやって股間のアレを鎮めれば良いんだ。
    と言うか、夢で感じた感触ってまさか…?
    待て、そんな事を考えるな。考えたら負けだ。
    とりあえず、このままでは非常にまずいので行動に出る他無い。

    「と、とりあえず起きるから其処をど、退いてくれ。」
    「は、はいっ。」

    あちらもどもっている上に慌てていて、退こうとするが…

    「うきゃっ!?」

    鞄に足を引っ掛けてこけた。とても器用としか言いようが無い。
    服についた埃を払ってコホンと態とらしい咳をして一言。

    「…今の忘れてください。お願いします。」
    「…ああ。分かった。」

    分かったとは言うものの印象に残って中々忘れられない。
    ある意味マジメなエミリーがあんなドジをするとは思えなかったし…な。
    いやそもそも何かいつもとはちがうような…………あ。

    「そうだった。今日は…」
    「…?今日何か有るのですか?」
    「今日、視察に爺さんが来るんだ!」
    「爺さん?えーっと…ああ、クリード大佐ですね。」

    親父絡みの事でいつも世話になる人がここにやって来る。
    たしか留学を薦めたのも爺さんで、親父がAC乗りになる前の武勇伝を知っていたはず。
    手紙では「お前の部下になりそうな奴を三人ぐらい連れて行く」と言って…っておい。

    「たしか…」
    「あと20分以内に駅へ行かなくてはいけませんね。」
    「…クソッ、早く準備しよう。」
    「はい。」

    休日だと言うのに制服を見に纏い、トーストを齧って外へ出る。
    エミリーも同様に制服を着てゼリーパックを口にくわえて後に続く
    朝食を食べながらダッシュで駅へ急ぐ。
    玄関は容易く突破。
    自転車と言うモノは無いのでひたすら走る。
    このときばっかりは爺さんの訓練を受けていた事を感謝した。
    今日は休日だけあって駅前は人が多かった。が、そんなことはあちらは関係ない。
    一秒でも早く!早く!
    人ごみなど真っ向から突破!
    迎撃予定ポイントへ到達。息を整えて待ち受ける。
    迎撃予定ポイントに確かに爺さんは来た。
    だが、爺さんは列車ではなく自前の車で来た。
    爺さん自慢の戦時中の高機動車。乗り心地は最悪。
    その高機動車だけでも注目の的であるのに…だ。
    中に居た人間はさらに注目の的となった。

    「ふぅ…APCばりにゆれたな」
    「帰りもあるんだね…」
    「はふぅ…気持ち悪いです」
    「何じゃ、二人とも軟弱だの。おっと、久しぶりじゃな。ティグ坊と…エリ…エミリー」

    俺と同じ背丈の少年と、俺よりも小さい少女。そして爺さんと厳つい中年。
    しかも爺さんと中年には傷跡が沢山有り、少女にはメカメカしい腕を沢山持っている。
    唯一人普通に見える少年は爺さんが見込んだ人間だけに一癖あるんだろう。

    「久しぶりです。クリード大佐。」
    「久しぶり…っていい加減ティグ坊はやめてくれ。」
    「一人前になったらの。それまではティグ坊で十分じゃて。」
    「…あのクリード大佐とタメ口…?」
    「何を驚いておるんじゃ四人とも。ティグ坊とはちょっとした繋がりが有ると言ったはずじゃぞ?」
    「あの…私は初耳なのですが。」

    エミリーの抗議は無視され、爺さんが主導権を持ったまま会話が進む。
    こうなってしまうと最早主導権をとる事は不可能だ。
    しょうがないので爺さんの狙い通りに動く事となる。
    まずは簡単な自己紹介から。
    期待の新兵ことライリー、整備兵をやっているアリス、そして二人の上司たるアルフ。
    だが、彼らはパワードスーツ部隊所属らしい。どう言う事なのだろうか?

    「兵科が違う理由は教えんぞ。自分で考える事じゃな。」

    とあっさりと返された。
    この老人に勝てる時はいつ来るのか…?
    そんな時、エミリーとアリスが顔を見合わせて何やらおかしげな行動をしている。
    あやしいが、何か可愛らしいだけに何をやっているのか聞けない。
    ライリー達も同じらしく、困惑していた。
    当のエミリーやアリスは胸に手を当ててみたり色々やっている。
    3分後、ようやく動きに変化が出た

    「負けた…」
    「勝った…!勝ちました。」
    「…何で競っていたんだ」
    「…そんな事聞かないでください」

    いや、顔を赤められても分からない。
    普通に分かってたまるか。
    無論、何事かと周りから注目される始末。
    クソッ…!早く何処かへ行きたい。
    そんな思考を察知したのか、あの老人の姿をした悪魔は…。

    「とりあえず腹減ったのぅ。」
    「って、大佐。まだ朝ですよ?」
    「しょうがなかろう。さっきまで運転していたのじゃからな。」

    確かに、この車は爺さんの愛車であるから爺さんが運転しているはずだ。
    その割には何かいつもより重装備なのは見なかった事にしよう。
    と言うかよく税関通ったな。ああ、そう言えば視察だから大丈夫かのか。あちらからすれば。
    そんな時だったか、いきなり何か兵器が駆動する音がし…

    「『Device on!』間に合って…!」

    俺はエミリーに抱きかかえられるまま生身では信じられないほどのスピードで飛んでいた。
    俺が居た場所に砲弾が突き刺さり、炸裂した。
    今自分が分かる事は、人が多い駅前で2ndの襲撃に遭っている事。
    そして目標はおそらく自分か、爺さんだという事。
    そしてふと足に鋭い痛みが走る。
    少し破片でも刺さったのだろう。

    「こんな時、場所に襲撃とは敵も無鉄砲じゃのう。ほれ、時間稼ぎ頼んだぞぃ。」
    「了解、アリスは車両の中に行って。『GearOpen』」
    「あいよ。だがまあ、別に倒してしまってもかまわんだろう?」

    各自が各自を守る。
    爺さんもいつものアーマーを着込んで直撃を食らわない限りは無事っぽい。
    だからなのか、俺の方向へ弾が飛んでくる。
    エミリーはそれを全て左腕のブレードで弾くけれど、いつまで続くか分からない。
    その終わりははっきりと早く来た。反対側から3人も突撃して来たのだ。
    二人は止められたが、もう一人はとどまる事を知らずに俺へ向かってくる。
    逃げてもこの距離ではおいつかれるだけだ。迫るブレード。
    身構える俺。体の一部は持っていかれる事を覚悟したがその時、何か白い機体が俺を庇い…。
    俺の顔に血がかかる。敵ではなく、身近な少女の血が。
    当の少女は腕を一本亡くしながらもその斬った敵を切り返し、沈めた。

    そして顔を少し痛みで歪ませながらも少女は笑みを浮かべ、胸糞悪い事を言って来た。

    「ああ、よかった。貴方に怪我が無く―」
    「おい、しっかりしろ!おい!…クソッ。」

    崩れ落ちるエミリー。切り倒される暗殺者。
    俺は腕をなくした少女を抱えて返事が返らぬ事を知りつつも問いかけるしかなかった…。
    爺さんと共に病院で彼女が回復する事を祈る事しかできなかった。
    体力にも、襲撃に対する対策もできているはずだった。だがそれはあまりにも無力だった。
    それよりも俺は自分が大怪我を負っても動じずに自分を省みないエミリーをただ、胸糞悪く思っていた。
    服は血まみれのまま、とっくのとうに血は乾いて厭な感じはするが、それでも病院でただ座って祈る事しかできなかった…。
    初めて亡くす部下になってくれるな…。そう思いつつ何時間経ったか分からないが、やっと安否が分かった。
    生きている。それも、腕は綺麗にもげているので繋がったそうだ。
    なんとか五体満足でいる事ができた。それは喜ばしい事なんだが…。
    未だにあの時に言った言葉が気にかかる。痛いとも何も言わずに俺の安否を気にする。
    それは凄く腹立たしく、何かドス黒い衝動が体を支配していた。
    それから2日か経ち、俺は傷ついた少女を爺さんと共に迎えに行った。
    速すぎるような気がするが何故だ?
    彼女の腕についた包帯は痛々しく、それよりもその後に出た言葉が…。

    「思ったよりも速かったな。怪我の具合は…」
    「ご迷惑をお掛けしてすいません。入院時間が短いのは少し無理を通したからです。」
    「…なんだって?」
    「任務を放り出して入院などしていられないので薬と包帯だけ貰って退院しました。」
    「ってお前それじゃあ…」
    「体の方は問題では有りません。体は正常に稼動しますし。私一人が壊れても、貴方さえ無事であれば…」

    …クソッ、言葉の一つ一つが頭に来る。
    何が「私一人が壊れても」だ。
    何が任務を放り出してはいられないだ。
    壊れる様を見せ付けられるこっちの身にもなってくれ。
    黒い衝動はどこまでも溜まっていく…。
    そして俺の腕が躍動し、乾いた音が鳴った。
    顔色変えず見守る爺さん。呆然とするエミリー。
    そう、俺は彼女の頬に平手で打ちつけた。
    そして思えば一度も彼女に放った事の無い容赦ない言葉を吐き、俺は帰路へ向かった。
    嗚咽が聞こえる。だけど俺には振り返る事はできなかった。
    追って来る気配も無く、ただその代わりに虚しい感覚が俺を襲う。
    部屋に戻ろうとする足取りも重く、ほんの刹那でも長い長いものと感じた。

1559/ Machine Girl Become Girl 2[反省と告白]
・投稿者/ 鉄
・投稿日/ 2007/08/03(Fri) 01:27:34

    …私は今ホテルの一室に居る。
    自分の部屋には行けなくて。
    そして何かを無くして。
    隣には機械の少女。
    彼女は何をするわけでもなくアームをわきわきさせている。
    私は…ただ落ち込む事しか出来なかった。
    何がいけなかったのか。何が原因となったのか。
    それをただ考えることしかなかった。
    このままの状態が続いたらどうしよう?
    私はもう彼のために居る事ができないの?
    …そんな事が何時間経ったのかしら。
    そんなことを思っていると、アリスが私に話しかけてきた。

    「ねえ、まだ答えは出てないみたいだね?」
    「………」
    「ふぅ…寝ているのか考え込んでいるのかしらないけれど、そのまま聴いて。」
    「…………」
    「私が思うにね、ティグ君が怒った理由って簡単だと思うんだ。しかも、貴方はそれを分からないような考え方をしている。」
    「……………」
    「彼にとって、死んでもいい仲間なんて居ない。それを分かってた?」
    「…………………」

    分かっていなかった。そう言うしか無いけれど、今言う勇気が無い。

    「ソレに対して貴方はどんな事をしてでも彼を守ろうとしている。それこそ、死ぬと分かっている方法でも。」
    「……」
    「貴方が庇った時なんてためらってなかったものね。きっと貴方は自分の命を安く見ているんじゃない?」
    「………」

    見ている。あの時はアレしかなかったと思っている。
    それに、私の安っぽい命を彼のために使えるならば、どんな事に使っていいと思ってる。
    それがいけないの?それが、どうして?

    「でもね、貴方が思っている以上に貴方の命は貴重なの。本当に彼が貴方に死んで欲しいなら、そんなに怒らない。」
    「……」
    「むしろ、ほめていたはずね。いつでも使い勝手のいい盾がついてきてくれるのだもの。だけど、貴方は盾になるべきじゃない。」
    「………」
    「彼は、貴方に戦友、いやもしかしたらそれ以上のものになって欲しいと思っている。だから、彼のそう言う気持ちに気が付いても良いんじゃない?」

    私は彼に盾となると言った、だけどそれをいまさら変えられるのか。
    そも、私の命が大事にされているなんて思った事も無かった。
    だけど、彼女の言葉は何か説得力に長け、どこかに何らかの威圧を感じた。
    …答えは掴めたような気がする。これからの私がどう有るべきなのか。
    それと、何をすべきなのか。あと少し、あと少し。



    部屋に着くと勿論のように少女は居らず、変わりに居たのは爺さんの部下である中年が一人。
    たしか…アルフとか言ったけ?
    そのアルフは、無表情なまま俺を見て、問いかけて来た。

    「どうしてここに?とでも言いたいような表情だな。あと、何か有っただろう?」

    その問いかけはあくまで確認であり、彼らには筒抜けなのだろう。
    でなければアルフが此処に居るはずが無い。
    だけど俺はこたえる気が失せていた。
    だが、奴は容赦なく俺を言葉で貫く。

    「大方聞き分けのない部下を殴って来た所なのだろう?言いたい事が伝わったか?」
    「………」
    「死にたがりをどう変えたいのか考えているのだろう?でなければこんなマネはできんよ。」

    考えていた。確かに考えていた。
    あの時踵を返す前の彼女の表情が心に残っていて。
    まるで捨てられた子犬のような、放っておけないような…

    「相当堪えてたらしいぞ?お前の前ではな。今は…まだ泣いているんじゃないか?」
    「…!」
    「ようやく表情を変えやがったか。お前さんには分かるか?泣いてる理由なんてよ。」
    「分かるはずが…ないだろ。」
    「そうだろうよ。だがな、お前に殴られたからじゃあない。お前に拒絶されたからだ。」
    「何だって?」
    「聞こえなかったか?お前に拒絶されたからだ。任務以外に何か拘りでも有ったんだろうよ。」
    「拘り?あのエミリーが?」
    「アレもお互い分かってなかったみたいだな…いいか、任務だからって命を投げ出す奴は居ない。
    特に俺たちはそうだ。なら、任務以外でお前を命に代えてでも助けたいと思ったのだろうし、
    あの様子だとお前に特別な感情を抱いているんだろうよ。
    …で、お前はその想いに応えられるのか?どうなんだ、ティグリス=ユーフラテス?」

    応えると言ってもどうすればいい?
    俺には分からない。
    更にアルフは言葉を重ねてくる。

    「まさか応えられないほど初心ではないだろう?それとも、応えられないチキンな玉無しか?」
    「俺はそんな奴じゃない。」
    「よし、言ったな?早く身だしなみを整えろ。行くぞ。」

    行くって何処へ?その前に今からか?
    いやまさか…クソッ…。また嵌められた。
    目の前に居る男はニヤリと笑ってまた何か言って来た、

    「何をぼさっとしている。お前さんが行かなきゃ事は始まらないんだぜ?」
    「行くって…何処にだよ?」
    「さあてね。黙って俺について来い。」

    そう言うと奴は歩き始めた。
    このまま放って置くこともできたが、俺はそれをせずついて行く事にした。
    俺の予想が正しいならば…いや考える事はやめよう。
    何か考える前にまずは会う事からだ。
    そう思うと帰るときとは違い、俺の脚の重みが消えていた。


    外はもうすっかり暗く、俺たちは公園に居る。
    見晴らしのいい。そしていい風の吹く公園。
    何故か直接行くのではなく、ここで待つらしい。
    アルフ本人はそこのベンチに座っている。
    エミリー達が来たらどこかへ行くらしいが…。

    「ん?どうした。気にするな。」

    ニヤニヤしながら言われても説得力無えよ。
    クソッ…。早く来ないものか。
    早く来ないと気が滅入りそうだ。
    勿論原因はアルフだ。

    「案ずるな少年。考えるより突っ走れ。な?」

    …やけに映画か何か見るようなまなざしで見ているのは気のせいか?
    しかもポップコーン持ってきてるし。
    そんな疲れたやり取りをしていたら、ついに来たようだ。
    何か暗い表情のエミリーを必死に少女が励ましているようだが…?

    「ほら、行って来い。」
    「後ろから蹴るな!」
    「うるせえ。とっと行ってこい少年。あたって砕けろ。素直に行けば解決だ!」

    罵声と共にエミリーの下へ送り出される。
    確かにイラっとは来たが不思議と心強い感覚が染み渡っていった。
    俺とエミリーが対面してから、他の連中は邪魔にならないように消えようとした。
    無論、残りそうな奴を撤去してもらった。

    「チッ、つまんねえな。」
    「つまんねえじゃないです。人の恋路をじゃますると蹴られて殺されるらしいですから。」
    「あいよ、じゃあな少年、うまくやれよ。」

    そして他の連中が消え、二人きりとなった。
    気まずい空気が流れ出し、この空気を打開しようと話しかけたが…

    「なあ…」
    「あの…」

    お互いが言い出そうとして、両方ともが止まってしまう。
    …クソッ、こう言う気まずい空気は苦手だ。
    どうやって打開する?
    そんな時、何か声が聞こえて来た。

    ―おいおい坊主、もうちょっと積極的に行こうぜ?

    この声はまさか…
    後ろを振り向いてみると、そこのベンチに座ってポップコーンをムシャムシャと食べるアルフの姿が…!
    何かがおかしい。たしか連れて行かれたはずじゃあ…?

    「何故そこに居る?って顔をしなさんな。さあ、続きでもやってくれ。」
    「…ここじゃマズいから、場所を変えよう?」

    覗く気マンマンな男をスルーして、場所を変えようとする。
    無論ブーイングが聞こえるが無視。
    俺はエミリーの手を握り、踵を返して他の場所へ…


    ここなら誰も居ないはずだ…
    さてと、今度こそ…。
    と、振り返ってみるとエミリーは赤面しつつ俯いていた。
    何故だ?と思ってみると…ああ、手を繋ぎっ放しだったからだろうな。
    このままでは話が進まないと思ったので手を離す。
    でも、何か彼女は物足りないように上目遣いで俺を見てくる。
    何かは分からない。なんだろう?と考えていた時にエミリーから話を切り出してきた。

    「あの…すいませんでした。」
    「何が?」
    「身勝手な事ばかりしてしまってすいませんでした。…貴方の気持ちも考えずに。」
    「…いや、身勝手なのは俺の方だ。それに、エミリーは俺の為に…」

    カッとしてはたいてしまったのだ。これを身勝手だと言わないで済むわけがない!
    だけど、エミリーは俺を真っ直ぐと見て微笑みながら…

    「なら、貴方もですよ。私に気付かせてくれたのですから。貴方を守る盾ではあってはならないと。」

    そんな俺の愚かな真似を真剣に受け止め、彼女は考え詰めたのだろう。
    俺に拒絶されたと泣き、何がいけなかったのだと考え詰めたに違いない。
    尤も、あの出歯亀野郎の言っていた事が正しければなんだろうけど。
    そして、彼女は暗い表情をして自嘲するように何か言った。

    「私…やっぱり身勝手です。だって、任務と言う事を理由にして貴方の傍に居たのですから。
    私から傍に居たいと言えなかった…!貴方に拒絶される事が怖くて…!」

    震えた声で彼女は懺悔をする。
    己の弱さを曝け出して、エミリーは言葉を紡ぐ。
    俺はそれに応えられるのか?
    泣きそうな表情をして、彼女は俺を求める。

    「こんな…私ですけど…それでも傍に居させてくれますか?」

    此処まで来れば、答えは一つしかない。
    其れなのに、喉が動かない。
    何でだよ。一言言えば良いだけの話じゃないか。
    …クソッ。何時から俺はこんなにチキンになった。
    泣きそうな表情で、小動物のようにエミリーは不安そうにしている。

    「…やっぱり、私じゃ駄目ですか…?」
    「駄目なんかじゃない。こんな俺で良いのなら…」

    そう言いながら俺はエミリーに歩み寄ると、その小さな頭を抱き寄せた。
    クソッ!もっと気の利いた台詞は吐けなかったのか?
    俺が何か惨めに思えてくる。
    だけど、彼女にはその一言でも十分だった。

    「悪い訳が無いじゃないですか…。」

    そして彼女は俺の胸に顔を押し当てたまま泣き出した。
    俺はそれが止むまで彼女の髪と背中を撫でていた…

1560/ Machine Girl Become Girl 3[青年と少年]
・投稿者/ 鉄
・投稿日/ 2007/08/03(Fri) 01:28:36

    「アルフさーん、いつまでそうしているんですかぁ!」

    小僧とエミリーとか言ったか?あの子犬みたいな奴。
    あいつらはちゃんとうまくいったようだな。
    こう言うシーンを見るのはいいねえ。昔を思い出すぜ。
    スコープの先を塞がれる。おっと、こっちをなんとかしなきゃあな。

    「おいおい、勘弁してくれよ?それとも構う彼氏が居ないから構って欲しいのかい?」
    「ちょ…。そんな事ないですよぉ!」

    目の前に居る少女はアームをワキワキさせながら否定する。
    何時見ても面白いなコレ。俺にも一本くれないか?いや、冗談だ。
    にしてもそんな反応だと更に苛めたくなるよな?
    俺はそうなんだが。

    「そんな感じには見えないがねえ?それにアレだろ?奴と部屋を同じにしたのはやりたいからだろ?」
    「な、何をやるんですかッ!」
    「分からないほど初心じゃないだろ?ナニだよナニ。」

    セクハラ親父になったなぁ俺も…。
    まあいいか。面白いしよ。

    「で?奴のナニはデカイのかい?」
    「…!な、な、何を言っているんですか!うう、酷いですよー。」

    顔を完全に赤くさせて慌てるところが笑える。
    そんなにデカくは見えないのだがねえ、ライリー君のアレはよ。
    それとも、あんな面してデカいのか?いや、そりゃないだろうよ。

    「ひでえのは元からだろう?にしても爺さんも無茶をやるねえ。あのヒヨッコだけでここのボスと会いにいくなんてよ。」
    「あの…大佐ってそんなに強いのですか?」
    「当たり前だ。俺が10人束になっても勝てないだろうよ。無論MTスーツを着込んでいてもだ。」

    俺ご自慢のマシーネンフィストによるコンビネーションも効かないしな。
    よくあんなオンボロマシンで戦えるよ。
    しかも背負ってる火器は使ってないのにアレだからな。
    使ったらどうなるんだよ。
    いやマジであの爺さんは人か?
    そう言えば切り裂きイワンとも一戦かち合ったらしいしなぁ…
    ホント、世界は広いぜ。うん。

    「この間大佐のパワードスーツを整備したのですが…何なのですかアレは…!
    設計思想や配線配置、防御形態まで現行機とは全然違うモノでした。あんな機体は見たことが無い!」
    「そりゃ、そうだろうよ。あの爺さんは過去の遺物を使っているんだからよ。一度は聞いた事が有るだろ?
    エンフォースギアって言う馬鹿げたシリーズをよ。」
    「エンフォースギア?何ですかそれは。」
    「知らねえみたいだな…アレは大戦時の遺物だ。パワードスーツにACばりの火力を持たせようとしたのさ。
    結果成功したんだが…コストと生存性が…な。それで爺さんが着ているモノで生産停止。
    爺さんはそのままアレを使ってやがる。火力だきゃあピカイチだからよ。」

    尤も、その火力が発揮された時は殆ど無いのだが。
    爺さんにとってアレは奥の手なんだろうよ。
    さあて、そろそろ爺さんが暴れている頃合か。
    暇な俺はまたあいつ等を見ておくかねえ。
    うん、若いっていいわ。

    「アルフさーん、やっぱり覗くのは趣味悪いですよー。」
    「おいおい、誰だったか?録画までしようとしていた奴はよ?」

    まあ、こんな調子のやり取りが続くのかねえ。
    まあ、それもいいか。



    えーっと…僕はなんでこんな怖い場所に居るんだろう?
    一体全体何故ですか?
    目の前にはガーデンの武装組織の代表者…ジョンとか言ったけ?とクリード大佐がにこやかに手合わせをしていた。
    目にも留まらぬ速さで繰り出される拳と足。
    と言うか、なんでこんな展開になったのだろう?
    僕には分からない。と言うか、何でオフィスから道場へ移動したんだろう?
    やっぱり、初めから大佐はこれをするために…?

    「ヘロデトにまだこれほど戦える戦人が居るとはしらなんだ。うちに来る気は無いかえ?」

    大佐は老人とは思えぬ軽快なスピードで拳を繰り出す。
    ジョンはそれをかわしつつ反撃を行うも大佐は腕を取ろうとする。

    「お断りだ。私はここの生徒達を教えねばならん。」

    腕を取る事も失敗したが反撃も外れ、一瞬の空白が訪れる。
    しかし、その空白も直ぐに拳と拳のぶつかり合いにかき消される。

    「それは残念じゃのう。ほれ、小僧ども見ておるか?」
    「あの…見るも何も速過ぎます。」
    「右に同じく」
    「不甲斐ない生徒達じゃのう。そこの新兵もじゃ。そんな事ではアリスを嫁にはやれんぞ?」
    「ほぅ、娘か何かですか?」
    「そうじゃ。わしに似ずに可愛げのある自慢の娘じゃよ。」

    そう言った瞬間に僕に集中する視線。
    うう、また居辛いよぉ…。
    と言うかアリスって大佐の娘だったのか…。
    目の前ではまだ迫力の有る戦いが起こっている。
    足払いやかかと落とし、ワンツーやアッパー。
    派手な技が続くが勝負は付かない。

    「コレでは勝負が付きませんね。」
    「そうじゃの。ここらでお開きにするかえ?」
    「そうしますか。」
    「良い拳じゃのぅ。ベースは空手と言った所かの?」
    「そう言うご老人は軍隊格闘のようで。」

    和気藹々と話し込む大佐。
    神様、なんですかあの人たちは。
    人を超越した何かですか。いやそうですね?
    ゾロゾロと生徒達も帰って行く。
    そして残ったのは人外2名と僕一人。
    僕も帰っていいですか…?
    と考えてもここで帰ったらマズい事だけは彼らのオーラを見れば分かる。
    だから僕はここで体育すわりで待っておく。
    あれ?僕になんで近づいてくるの?何で?ちょ、待ってなにをするのさ!
    この後僕はしばしの間地獄を見る羽目になった…

1591/ Machine Girl Become Girl 4[喧騒と思い出]
・投稿者/ 鉄
・投稿日/ 2007/11/05(Mon) 20:01:47


    「青い空、白い雲、よく管理されたプール。だけど、何なんだこのメンツは?」
    「まあそう言いなさんな。爺さんのオゴリだしよ。」
    「あの…私と一緒だと不服ですか?」

    この数日間知り合いに出会わない訳が無いと思ったが、こんなタイミングが悪い時に…
    しかも何か邪魔したなとかなんなんだ?
    まさかとは思うが…ウォルは知っているのか。そんな事はないだろう。うん。
    にしても…濃いメンツだ。
    古傷だらけで目つきも悪いオッサンと爺さん、腹にデカい古傷を持つ青年、ロボットアームをワキワキさせている少女。
    そしてエミリーは…

    「………。」
    「ど、どうかしましたか?」

    タオルで身体を隠していた。
    残念だ―って何を考えている俺。
    今日は泳ぎに来たんだろ?
    何も残念がる事はないはずだ。
    だけど俺のモチベーションは下がる一方。

    「そんなに恥ずかしがったら駄目じゃない。」
    「でも………。恥ずかしいです。」
    「今更何を言っているの?大丈夫だよ。きっと。」

    励ましながらタオルを実力行使で剥ぎに掛かるのはどうかと思う。
    それも本人ニコニコしてるクセにアームをワキワキ動かして。
    なんてシュールな現場なんだ。

    「あ、や、止めてください!」
    「良いじゃない。減るものじゃないし。それとも…ふふふ。」
    「い、言わないでくださいよッ!」

    剥がされかかっているお陰でボディラインが強調されて……なんかエロイ。
    しかもあの無骨なアームは別の部位も狙ってないか?
    気のせいだと良いけど…
    と言うか誰も止めないのか。
    そう思って後ろを振り返ったが…ああ。
    爺さんはのほほんとしててオッサンは写真を撮って……ライリーは体育すわりをしている。
    二人は動じてないが止める気もなく、ライリーは動けない様子。
    理由は知っているが言わないでおこう。どうせバレる。

    「ゃあ…ふぅ…や、やめ…」
    「そらそらそらー!早く外しなさいってば。」
    「こ、こんなところ…ひゃうん!」

    …………耐えろ。耐えろ俺。
    つーかこんな所で何を始めているんだあのメカは。
    エミリーの声がどんどん色っぽく聞こえる。
    マズい。非常にマズいぞ。
    そうだ、別の場所を見れば関係ない。
    そのはずだ。そうに決まってる。
    なのに、なのに、目が離れない。

    「之で十分かの。」
    「そうだろうよ。おーい、そこのレズ入ったチビ。相方が寂しがってるから撤収しろ。」
    「痛いいたいたい!何するんですかッ!」

    ついにオッサンが動いた。
    目にも留まらぬスピードで彼女らに肉薄し、フラフラしているエミリーからアリスを引き離す。
    更にほっぺをつねって連行。ついでにタオルも剥いで行く大胆な犯行。
    鮮やかな犯行にライリーは唖然としていた。
    そして一人座り込んだエミリーは…

    「はぁ……はぁ…ぁぅん…す、凄かった………あ゛。」

    俺を見るなり跳ぶように柱の影に隠れ、赤い顔だけ覗かせる。
    余程恥ずかしいのだろう。でも、周りから見れば変だと……思わないんだよな。
    慣れって凄い。これぐらいで動じなくなるなんて。

    「ど、どうしたんだ?」
    「ははははは、そんなに照れていたら泳ぐ前に日が暮れちまうぞ!」

    オッサンからのヤジが飛ぶ。
    しかも例によってポップコーン持参。
    つーかどこから出した。
    そんなやり取りが5分ぐらい続き、遂に観念したのかエミリーが俯きながら柱の影から出てくる。
    瞬間、俺の頭はパンク状態になった。

    「ぁ……ぅぉ……」

    エミリーの水着は予想に反してビキニタイプ。更に言うと腰の部分に紐のような物が……これが紐パンって奴?。
    競泳用水着とかスクール水着を予想していた俺にはインパクトがデカい。
    大胆にも露出度が高く、あんまり大きくは無いが存在を主張している胸や体つきを強調…って何俺はいやらしい目で見ているんだ。
    しかも爺さんまでニヤニヤしてやがるし。…まさか。

    「ティグ坊もそう言う歳になったもんじゃの。愉快愉快。」
    「坊主、見て愛でるのは良いが視姦はどうかと思うぜ。」
    「あの、その…じろじろ見られると恥ずかしいです。」
    「あのお堅いティグがねえ…変わったよな。」

    待て。待て待て待て。何故ウォルが居る?
    仕事が有ると言っていたはずなのに!

    「な…視姦なんてやってねえ。と言うか何故オマエが此処に居るんだよ。」
    「俺がどこに居たっていいじゃん?それともジャマだった?」
    「誰がジャマと言った?」
    「OK,二人で楽しい時を過ごしてこいよ。邪魔者は退散するから。」
    「おい、人の話を―」
    「気遣いはいいから楽しめって!あばよ。」
    「クソッ!逃げるな。」

    スタコラサッサとウォルは去っていく。
    と思いきやサーボアームをワキワキさせているアリスへ接近してナンパを開始する。
    ……が。

    「うわぁぁぁ!?」

    サーボアームに跳ね飛ばされてプールへダイヴしていくウォル。
    あんなモノにナンパするからだ。
    自業自得なので救助には行かない。
    どうせ誰かが引き上げに行く。
    ソレよりも今は目の前に居る少女と楽しい時を過ごすのみ。
    そこに爺さんもオッサンも介入はさせない。させてたまるか。
    そのために俺は彼女の手を取り、いざプールの中へ飛び込んだ。


    ―その後色々とマズイ事が有った。
    賭けに負けてエミリーのスク水を着させられそうになったり。
    ウォルにその現場を撮影されたり。
    飯を奢らされたり。
    なんだかんだ色々有ったけど、楽しい一日だったと思う。
    こんな日々が何時まで続くのか…?
    数日後、爺さんは基地へ戻っていった。
    どうやら休暇ではなく、シミュレーターか何かの視察だったらしい。
    爺さんが帰る数分前、オッサンは変な事を言い残していった。
    「あんまりここの連中とは親密にするなよ。でないと後悔するぞ」と。
    その言葉の意味をあまり考えたくはない。
    だけど、考えなければならない時期なのかもしれない。



1582/ 【自由参加】詩集スレ【痛いの歓迎】
・投稿者/ 怨是
・投稿日/ 2007/10/11(Thu) 02:04:48

    こちらのスレは、OVACGの登録キャラをテーマに詩を書くという、ちょっと上級者向けのスレでございます。

    決して諦めるな!
    自分の感覚を信じるんだ!

    と、ジェームズ・マクラウドも云ってました。
    我々も言語の空を、指と口という戦闘機に乗り、言葉の軌道を描いて行きましょう。
    何、「その前に怨是には途中で止まっている小説や絵があるだろう」と。
    申し訳ございません。その通りです。
    しかし、それでも一度温まったエンジンです。まずは少しだけこの空を飛ばせてください。
    どうか、よろしくお願い申し上げます。

         2007年10月11日 深夜 ガーデン第6演習場にて


    *追伸
    投稿の際、タイトルの指定はしません!
    ご自身の感性に一任します!



1583/ 錦の仮面
・投稿者/ 怨是
・投稿日/ 2007/10/11(Thu) 02:05:29

    いつごろから殴られてきたのかも解らない

    ご機嫌取りが出来なければいつも殴られてきた

    気を失うまで殴られて

    それでもいつか幸せになれると信じて

    笑顔で毎日を過ごしてきた

    いつかは、そんな日なんて訪れるはずが無いと気付いて、私には子供が生まれていて

    今まで私がされてきた事を子供に行ってしまうのだろうか

    そんなの嫌だと抗いつつも、拳が正直に動いてしまうに違いない

    一昨日は飼っていた子犬を殺してしまった

    昨日は友人を殴って気絶させてしまった

    今日は友人の親についカッとなって殴ってしまった

    明日は笑って過ごすのだろうか

    綺麗な宝石と頑丈な鎧で作った笑顔も、とんでもない物に溶かされてしまいそうな気がする

    私はそれが怖い
    --------------------------------------------------------------------------------

    スーゼ・クレメント
      錦の仮面

1584/ 修理 〜repair〜
・投稿者/ 怨是
・投稿日/ 2007/10/11(Thu) 02:06:27

    笑い方を忘れたなら
    私のところへいらっしゃい
    もう一度笑い方を教えてあげる

    流す涙が枯れたなら
    私のところへいらっしゃい
    私が変わりに泣いてあげる

    手の繋ぎ方を忘れたなら
    私のところへいらっしゃい
    色々な繋ぎ方を教えてあげる

    何もしたくなくなってしまったなら
    私のところへいらっしゃい
    何かしたいと思う心は、一人じゃ簡単に作れないものだから
    --------------------------------------------------------------------------------

    ウォルター=ストークス
      修理 〜repair〜

1585/ 愛に縋る者へ
・投稿者/ 怨是
・投稿日/ 2007/10/11(Thu) 02:06:52

    愛してるなんて百万回云えばいいと思っているのだろうか

    荒れた世の中だからこそ、人は愛に救いを求めて
    でもこの世の人の多くは、それらの愛を受け取れなくて


    愛してるなんて簡単に云えば馬鹿になる事を赦されるのだろうか

    荒れた人々だからこそ、本当は愛に救いを求めて
    でもこの世の人の多くは、今ある愛に気付けなくて


    愛で戦争が止まるというのなら
    どうか神様、この戦争を愛で止めてみてください

    愛があるから人は憎まなければならないんだ
    愛を守るために敵を作ってしまって、止まらなくなって、戦ってしまう

    愛してるなんて簡単に云えば傷つける事を赦されるのだろうか
    愛の為に人を傷つけていいというのなら、誰か私に愛されてください
    そして、誰か私の愛の為に傷ついてください

    傷つくのが嫌だからって
    傷つけるのが嫌だからって
    “愛”という言葉のみに救いを求めるような人が嫌いです
    --------------------------------------------------------------------------------

    コンチェルティノ
      愛に縋る者へ

1586/ 両手と風
・投稿者/ 怨是
・投稿日/ 2007/10/11(Thu) 02:07:35

    この手を繋ぐ温もりも、いつかはありがたみを無くしてしまうのだろうか
    手を離したらどんどん温もりが去ってゆくように、ありがたみも外気に晒されて霧散してしまうのだろうか

    寒空の中、泣いた
    この風は、外を歩く私には寒すぎて鋭利過ぎる


    この手を繋ぐ温もりも、外の風がさましてしまう気がする
    それほどまでに吹きすさぶ風がひどく冷たくて、歩くたびに両手がかじかんで痛くなってしまうのだった

    寒空の中、立ち止まる
    この風も、あなたの残り香をさらって消し去ってしまうのだろうか


    この手を繋ぐ温もりが、寒さの中でありがたい
    今こうして繋いでいる間はすごく温かくて、手から伝わる温もりが身体に染み渡る

    寒空の中、気付いた
    この風は、あなたの温かさを忘れさせないためにふいているのかもしれない
    --------------------------------------------------------------------------------

    アルトージェ・ロンバルディア
      両手と風

1587/ ○○八二回想録
・投稿者/ ケツアゴ熊ちゃん
・投稿日/ 2007/10/17(Wed) 22:36:02

     
     自分でお膳立てした舞台 道化は主役の到着待たずに白い暗幕引き上げたよ
     白け顔で熱に浮かされ  悲劇の道化はノーメイクのままソロのダンスで舞い上がるよ
     熱く登って 冷めて降りる 小雪のように 小雪のように

     ハラリ ハラリラ ハラリラ ハラリ
     ハラリラ ハラリラ 道化が通る
       
     壇上には雪が積もるでしょう メモの切れ端を紙吹雪にして
     刺客と死角の隙間から 地面が少しだけ見えてしまうのに
     銃弾で雪を掘り起こして 何が見たいというのでしょう

     雪の下にはがさつく荒れ地
     政治家の汚職も殺人鬼の正体も 世界遺産も新大陸も 何も隠れてはいないというのに

     ハラリ ハラリラ ハラリラ ハラリ
     銀世界に差した影に 手元のスコップを突き立ててやれ



     舞台の裏側晒された 十六組のスポットライトは道化の背中を追い回すよ 
     過去も未来も私も貴方も 土と一緒に雪と一緒に銀幕の中に舞い上がるよ
     カーテンコールは 誹謗と中傷 雪は霙(みぞれ)に 霙は雨に
      
     パラリ パラリラ パラリラ パラリ
     パラリラ パラリラ 道化が逃げる

     午後は雪のち土でしょう 時々埋めた死体も交えて
     地面を白銀にラッピングして 証拠は残さず隠した筈なのに
     ジングルベルの鐘の音が 罪を暴こうとするのでしょう
     
     白い世界に黒い影
     空回る役者も行儀の悪い観客も 舞台の上も客席も どちらも御伽の中だというのに

     パラリ パラリラ パラリラ パラリ
     雪の下までシャベルを立てて 死体を埋めてると勘違いさせてやれ

     パラリ パラリラ パラリラ パラリ 
     追いついてきた影の上から 白銀のカーペットに突き立ててやれ

     パラリ パラリラ パラリラ パラリ 
     どうせ埋めるのだとしたら

     パラリ パラリラ パラリラ パラリ
     核ミサイルでも掘り起こせないよう深く

     パラリ パラリラ パラリラ パラリ 
     パラリラ パラリラ 道化が笑う
        
      
     観客消えて道化一人
     コメディア・デラルテのアルレッキーノも アルルカンもハーレクインも 白い仮面の役目は一つ

     
     パラリ パラリラ パラリラ パラリ
     気付けば空薬莢の海で

     パラリ パラリラ パラリラ パラリ
     地面は真鍮色に染まる

     ハラリ ハラリラ ハラリラ ハラリ
     ハラリラ ハラリラ 幕が落ちる
        

     --------------------------------------------------------------------------------

     猪木 早苗
      〜○○八二回想録〜

1588/ 不幸縁者
・投稿者/ ケツアゴ熊ちゃん
・投稿日/ 2007/10/20(Sat) 20:15:00

     

     俺はどうしようもない不幸の下に生まれついていて
     逃げようがないから逃げる必要もなくて
     受け止めてしまったらそれは負けで 
     抵抗しても勝ち目なんかなくて
     受け入れたくもなくて
     拒んでも無駄で
     それが嫌で
     助けて
     誰か

     

     誰か助けて

     

     --------------------------------------------------------------------------------

     ケンジ・ロック・苦労
       〜不幸縁者〜
     
     



1573/ Dear my son - 1 - Break
・投稿者/ 怨是
・投稿日/ 2007/09/12(Wed) 21:45:45

    ミストラルが本名であるミッシェルを名乗っていたのは、いつ頃までだっただろう。

    父親がエンジニア。母親が設計士。双子の弟が一人。4人家族であり、当時では既に危惧すらされないほどに普及している、典型的な核家族である。
    当時の問題と云えば、もっぱら不倫や、それによって発生する、両親のどちらかの二重結婚、それを巡る利権問題などだった。
    ミッシェルと弟のボリスが生まれた家庭は、そのような時代背景の中において、至極平和なものであった事は、彼らの間でもよく話題に上る。
    母親が事故で他界した時も、妙に安らかな死に顔が、ミッシェルの脳裏に焼きついている。
    「俺達が死ぬときも、こんな安らかな顔で死ねれたらいいよな」という、普段から陽気な父がかんらかんらと笑っていたのだったか。

    机の上に立てかけた家族写真に煙がかからないよう、ミストラルは器用に煙草をふかした。
    機械油や、時代遅れのガソリンなどを扱っているガレージでは火気厳禁なのだ。
    煙草一本でドカンと行くのも、作り話ではない。なので、この自室に煙を充満させる時間と、車の窓から煙を連ねさせる時間が、彼にとっての喫煙タイムである。

    夕日が部屋をセピア色に染め始める。
    時計を見やれば、6時半になろうとしている。嗚呼、もう少し休めば両足の痛みも解れそうだと云うのに。
    ハードワークには慣れっこだが、疲れるものは疲れるのだ。休憩して、はじめて疲れというものを身体が理解し、上手く言い表わせないような、鈍い痛みが襲ってくる。
    ミストラルは、この休憩時間で最後の煙を溜め息に混ぜて乱暴に吐き出した。



1576/ Dear_my_son - 2 - Make
・投稿者/ 怨是
・投稿日/ 2007/09/16(Sun) 17:30:35


    手作りジープの走りは、それは順調なものであった。
    まだ安全度が基準値を下回っているために、都会まで走って行くとゲートで門前払いにされるが、いずれはゲートの車体スキャナーを素通りできるような車にしてみせるというものだ。
    その為に、日々、このレネンカンプ郊外のジャンク屋をこうして何軒もはしごしている。
    その時点で納得のいくパーツが見つかっても、他の店にはもっといいものがあるかもしれない。
    そう思うとガソリンを多少無駄にしてでも、あちこちを回っておきたいものである。
    それに、道中での空想が楽しいのだ。都会でそんな真似をすれば即死しかねない勢いだが。

    「ジャンク市場があればいいのにな」

    ボリスこと、ボイドが助手席でコーヒーを飲み干した。
    確かに、市場があれば、手間もかけずに色々なものが見れる。
    しかし、それ以上に様々な問題があるのだ。この辺りはマックスボロー拠りの場所で、レネンカンプ中心部よりも更に移民が多い事でも有名なのだ。
    “そういった”方面の問題も後を絶たない。

    「そんなもん作ったら、移民のボストージアの連中に全部パクられちまうよ」

    ボストージアの中には出稼ぎついでに物を盗む人間も数多い。
    窃盗事件も、公表はされていないが、ボストージア人の検挙率はヘロデト人を上回る結果となった。
    特にここ数年は強盗殺人も多く、孤児院の院長の話によれば、後ろの座席に座っているウォルターも、ボストージア出身のスキンヘッド集団に両親を殺され、孤児院暮らしだったという。
    今はすくすく育って5歳。元気盛りはまだまだ終わりそうに無い。


    「父ちゃん、キャラメルなくなった……」

    「いて、いててッ! 座席を蹴るな!」


    ミストラルとボイドのどちらが親になるかで二日くらい話し合ったが、結局はあまり懐いていないミストラルが親役をやる事にした。
    どちらかというとそのほうが後々の都合も良いのだ。
    例えば、叔父役であるボイドに懐いていれば、ガレージに連れ出す時も誘いやすいし、手元に置いておく事で自然に懐いてくれるだろう。
    もし逆のパターンなら、あまり親しくも無いミストラルに毎日会いに行くのも嫌がっていたかもしれないのだ。


    「こらこら、運転の邪魔しちゃダメだぞ、ウォル」

    ボイドが胸ポケットから飴を取り出して与えた。
    糖分が無くなるとイライラしだすのは、子供特有のわがままさか。
    いや、こんな考えしかできないから子供が懐いてくれないのかもしれない。バックミラーで顔を見てみれば、なるほど子供が懐かないであろう顰めっ面が映った。

    ミストラル車の速度を落とし、気休め程度に付いている窓を開けて、煙草に火をつける。
    その時にもウォルターが不機嫌そうな声を出した。

    「アメがけむたくなるから、それやめてよぉ」

    「これも煙が出る飴なんだよ」

    無愛想に、口から窓へと煙を捨てた。
    近いようなものなのかもしれない。自分も、この煙の残りかすが無くなると、少し不機嫌になってしまう。
    35歳にもなってみっともない話ではあるが、所詮、大人というのは子供が思っている程頼もしい存在でもないのだ。
    子供の頃はある種、大人というものを神格化していた。
    そしていつか歳をとってみれば、幻滅を覚え、「神は死んだ」と心の中で叫ぶ。
    多くの人間は、成人するまでに何度もその経験をしたと思われる。


    “髪が死んだ”と嘆く者が出てくるのも、そのあたりだろうか。


    確かに薄くなってきた頭髪を撫でながら、何気なく外を見ていると、助手席から素っ頓狂な声が聞こえてきた。

    「兄貴、あれッ!!」

    ハンドルを取られそうになりながらサイドブレーキで無理矢理急停車し、声のする方向へと向いた。

    「脅かすなよ。一体何があるんだ?」

    「とりえずあっちの道路見てみろって! 煙吹いてる車がいるんだ」

    湖のほとりの道に、確かに車が煙を吹いており、その周りで途方にくれている人々の姿が見える。
    このオンボロ手作り車で行くと一時間近くかけて迂回しなくてはならない道だった。
    歩いて行けば15分弱である。
    はやく時速300km以上出せるようにしたいものだと、ミストラルは煙草の吸殻を灰皿にねじ込み、ドアを開けた。

    「トランクの工具、ありったけ持ってくぞ。ボイド、ウォル、そっちのカーキのと黒い箱を頼む」

    原因が判らない以上、使える工具を片っ端から持っていくしかない。
    エンジンキーにチェーンを繋ぎ、ボロの南京錠をかければ、あとはモヒカン野郎による窃盗事件の当事者にならない事を祈りつつ、煙の方向に向かうのだった。


    「ウォル、あの車、修理してみたいか?」

    「うん」

    機械を見ると胸が躍るのは、ストークスの名がそうさせているのだろうか。
    血のつながりの無いはずのウォルターでさえ、もう箱からスパナを取り出して右手に握っている。

    「よし、二人で半分こだ。ボイドはコーヒー沸かせ」


    「えー。また油売りみたいな役回りかよ。兄貴ばっかずるいや。まぁコンピュータ担当だから何も出来ないけどね」


1577/ Dear_my_son - 3 - Freak
・投稿者/ 怨是
・投稿日/ 2007/09/19(Wed) 20:48:32



    「まぁ、メカニックって云うより、メカ・フリークみたいなもんだよな。ここまで来ちゃうと」

    洗濯機の修理を終えたウォルターは、自嘲しながら、新品の雑巾で洗濯機を拭き始める。
    使用済みの雑巾をそのまま他の電気製品に使うなど考えられない。
    そんなもので拭かれる身にもなってみろというものだ。
    清潔なもので拭いたほうが、精神的にも長持ちするような気分になるだろう。
    風呂上りの愛犬を撫でるように、丁寧に拭いていく。


    もちろん、クライアントとの会話も欠かさない。
    今回のクライアントはガーデンでも見知った仲なので、フランクな話も出来る。
    ちょっとそっち方面の話も出来てしまうのだ。


    「下着と他の服って一緒に洗濯したくないよなぁ」

    「ねぇー。汗いっぱい吸っちゃうし、ネットに入れて洗濯してもたまに色移っちゃうし」

    レベッカは水商売で稼いだことがあるらしいので、ソッチの手腕もそこそこあるらしい。
    高級ブランドのバッグなどを持ってきて見せてくれた。


    「うちのオヤジが、“どこでそんなもん手に入れた!”とかめっちゃ煩くてさー」

    「わかるわかる。貰い物にまでケチつけられちゃあたまったもんじゃないよな」

    「ヘンな男にツバつけられたくないって思われてるんじゃないか? レベッカは可愛いしな」


    何気ない会話から上手くおだててフラグを立てるのが、ナンパの基本だ。
    と、週刊軟派王の投稿記事にもあった。
    実際、ここまでは上手く行くものである。


    「そんな煽てたって何もでないゾ♪」

    「じゃあ、愛が出てくれるとありがたいんだけど、ダぁメかなぁ……!」

    話が弾み、良いムードまで辿り着けるし、ホテルで行為に及んだ事だって数回あるのだが、いつもそこから先で躓くものだ。うまく云い包められて逃げられてしまう。
    愛はどこへ行ってしまったのか。





    「あー……今カレシいるからちょっと無理だわ! ゴメンネ!」

    「マジかよ! 誰と付き合ってる?」



    こんな会話も日常茶飯事である。
    誘った相手が彼氏持ちだった割合は、全体の74%。
    とびきりの美人をえり好みしているからか、それとも彼氏持ちと云えば諦めてくれると思っているのか。


    「2年生のシャール」

    「あの愛想の無いガキか!」

    「えー。あのクールさがカッコイイんだってば!」

    そうか。今はクールな少年が流行っているのか。
    ちゃんと話し相手になれるのかが怪しいものだが、そういえばシャールは女性相手には幾分饒舌になる性格だったか。
    意気消沈しつつも、アフターフォローは忘れない。

    「今そういうキャラが流行ってんのか! 俺もクールキャラやってみようかな」

    「難しいんじゃなかなぁ。ウォル君結構、有名人だし」

    「今更キャラ変えても、何事かと思われちまうよなぁ」


    こうやってツバを付けておけば、今カレと別れた時に、電話をしてくれるかもしれないのだ。
    “私の心も修理してぇん!vvv”と。
    ……未だにそんな連絡が来たためしが無い所が、非常に残念である。


    「ま、直して欲しいものがあったらまた教えてくれよな」

    キメポーズにウィンクで、それっぽくキメておこう。

    「うん、ありがとね! 代金ここに置いておくよ」

    言い値で修理してると、気前の良いクライアントは沢山チップをくれるものだ。
    しかし、女性の客はなかなか手ごわく、節約価格だったりするので泣ける。
    60代のクライアントが狙い目ではないだろうか。

    「まいどっ!」

    工具をしまいこみ、代金を受け取る。
    リペア・ハイとも云える状態か、頬の緩みが止まらない。

    高級素材の木造ドアが閉まり、自動施錠装置の音が左後方から聞こえた。
    ちょうど、それが心のスイッチの切り替えのタイミングと一致する。
    嗚呼、ひとたび部屋を出れば、また狙いが外れた事と、意外と安いチップに涙が出そうになる。


    「はぁ……金平糖買うか」

    最近は売店も自動販売機が普及しており、普通の人間にとっては愛想もクソもないかもしれない。
    ウォルターにとってはこの自動販売機すら、敬愛の対象なので、ボタンを押すたびに「いつもご苦労様」と軽くキスするのだ。
    周囲の目ならば、もはや慣れっこなのでどうという事はない。
    ポケットに突っ込んでいた先ほどのチップを使い、お菓子専門の自販機のボタンを押す。

    出てきた缶を開けて、金平糖を一気に頬張った。
    偶然見てしまった鏡には、顰めっ面が映っている。


    「……糖が廻った! 力が湧いた!」


    おいちぃ。
    おもむろにメモを取り出し、次の仕事を探す。
    今日はもう予約が入っていないようだった。
    腕時計の時刻は、午後の7時半。






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掲示板管理者:RR
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