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Machine Girl Become Girl 1[再会と喪失] |
・投稿者/ 鉄
・投稿日/ 2007/08/03(Fri) 01:22:29
| 何回か見た夢。 ”私ではない誰か”の記憶。 けれど”生まれ”も境遇も似ている誰か。 その記憶を覗くのは今回が始めてじゃない。 幸せそうな記憶、臆病な私と違って好きな人に好きだと言って一つになれた記憶。 今までは幸せそうな記憶だったけれど、今回は違った。 熾烈な戦場。凄まじい戦場。 その中で「私」は動きまわったが、結局凶弾に倒れてしまう。…はずだった。 庇われていた。誰に?目の前には血まみれの男。 ああ、そうなんだ。「私」は「守るべき人」に庇われた。 「私」は応急処置をしようと奮闘する。けれど血は止まらない。染み出る赤、流れ出る赤。 視界が曇りながらも奮闘した。でも奮闘は虚しく男は息絶えた。 男を抱きかかえてひとしきり泣いた後に、「私」は自分の目に銃口を向けた。 ああ、なるほど。もうこの記憶の持ち主は此の世に居なかった。 結局、引き裂かれてしまった。 そして、視界が真っ暗になってすぐにその夢から覚めた。 酷い夢から覚めた私の頬には、一筋の涙が伝っていた。 外はまだ暗いけれど、また寝る気になれなかった。 だから、今はただ愛しい人の傍に居よう。 でないと直ぐに私は壊れるから。 でも、少しだけ触ってもいいよね? 自制しようとしても出来ない。うずうずして仕方が無い。 なら、少し触っちゃえ。
変な夢を見た。 やけにリアルな犬の夢。 それもやけに長い。 夢の中に出た犬はやけに懐き、どこにでも着いて来る。 ガーデンで授業をして居る時でも、部屋の中でも。 授業中に隣に居るのにクラスメイトは誰も不思議に思わない。 寮に入れても誰も不思議に思わない。 何かが可笑しい。だけどそれを夢の中で言えなくて。 犬は金色の毛並みを持つ中型犬。と言っても少し小さめ。 傍に居るだけで幸せなように尻尾をいつも振る。 構ってやるとそれ以上に嬉しがる。 そして何故か知らないがやけにリアルな感触が。 マシュマロ程ではないが柔らかく、少し弾性の有る…なんだこりゃ。 何処かで見たような…?いや、そもそも犬なんて飼った事は無いような…? そんな事を考えてみるといつものように優しい声で起された。
「お、起きてください。朝です。」
いつもと同じ朝。だが何かが違う朝。何故違うように感じるのだろうか? いや、何かが違う。やっとぼやけた視界が晴れる。っておい!
「…な、なんでこんなに顔が近いんだ?」 「それは……」
続きを言わずに赤面するエミリー。 …その…至近距離で赤面されると非常にマズい。 とりあえず心を落ち着かせるために昨日倣った理論を頭の中で唱える。 ………駄目だ。 クソッ、どうやって股間のアレを鎮めれば良いんだ。 と言うか、夢で感じた感触ってまさか…? 待て、そんな事を考えるな。考えたら負けだ。 とりあえず、このままでは非常にまずいので行動に出る他無い。
「と、とりあえず起きるから其処をど、退いてくれ。」 「は、はいっ。」
あちらもどもっている上に慌てていて、退こうとするが…
「うきゃっ!?」
鞄に足を引っ掛けてこけた。とても器用としか言いようが無い。 服についた埃を払ってコホンと態とらしい咳をして一言。
「…今の忘れてください。お願いします。」 「…ああ。分かった。」
分かったとは言うものの印象に残って中々忘れられない。 ある意味マジメなエミリーがあんなドジをするとは思えなかったし…な。 いやそもそも何かいつもとはちがうような…………あ。
「そうだった。今日は…」 「…?今日何か有るのですか?」 「今日、視察に爺さんが来るんだ!」 「爺さん?えーっと…ああ、クリード大佐ですね。」
親父絡みの事でいつも世話になる人がここにやって来る。 たしか留学を薦めたのも爺さんで、親父がAC乗りになる前の武勇伝を知っていたはず。 手紙では「お前の部下になりそうな奴を三人ぐらい連れて行く」と言って…っておい。
「たしか…」 「あと20分以内に駅へ行かなくてはいけませんね。」 「…クソッ、早く準備しよう。」 「はい。」
休日だと言うのに制服を見に纏い、トーストを齧って外へ出る。 エミリーも同様に制服を着てゼリーパックを口にくわえて後に続く 朝食を食べながらダッシュで駅へ急ぐ。 玄関は容易く突破。 自転車と言うモノは無いのでひたすら走る。 このときばっかりは爺さんの訓練を受けていた事を感謝した。 今日は休日だけあって駅前は人が多かった。が、そんなことはあちらは関係ない。 一秒でも早く!早く! 人ごみなど真っ向から突破! 迎撃予定ポイントへ到達。息を整えて待ち受ける。 迎撃予定ポイントに確かに爺さんは来た。 だが、爺さんは列車ではなく自前の車で来た。 爺さん自慢の戦時中の高機動車。乗り心地は最悪。 その高機動車だけでも注目の的であるのに…だ。 中に居た人間はさらに注目の的となった。
「ふぅ…APCばりにゆれたな」 「帰りもあるんだね…」 「はふぅ…気持ち悪いです」 「何じゃ、二人とも軟弱だの。おっと、久しぶりじゃな。ティグ坊と…エリ…エミリー」
俺と同じ背丈の少年と、俺よりも小さい少女。そして爺さんと厳つい中年。 しかも爺さんと中年には傷跡が沢山有り、少女にはメカメカしい腕を沢山持っている。 唯一人普通に見える少年は爺さんが見込んだ人間だけに一癖あるんだろう。
「久しぶりです。クリード大佐。」 「久しぶり…っていい加減ティグ坊はやめてくれ。」 「一人前になったらの。それまではティグ坊で十分じゃて。」 「…あのクリード大佐とタメ口…?」 「何を驚いておるんじゃ四人とも。ティグ坊とはちょっとした繋がりが有ると言ったはずじゃぞ?」 「あの…私は初耳なのですが。」
エミリーの抗議は無視され、爺さんが主導権を持ったまま会話が進む。 こうなってしまうと最早主導権をとる事は不可能だ。 しょうがないので爺さんの狙い通りに動く事となる。 まずは簡単な自己紹介から。 期待の新兵ことライリー、整備兵をやっているアリス、そして二人の上司たるアルフ。 だが、彼らはパワードスーツ部隊所属らしい。どう言う事なのだろうか?
「兵科が違う理由は教えんぞ。自分で考える事じゃな。」
とあっさりと返された。 この老人に勝てる時はいつ来るのか…? そんな時、エミリーとアリスが顔を見合わせて何やらおかしげな行動をしている。 あやしいが、何か可愛らしいだけに何をやっているのか聞けない。 ライリー達も同じらしく、困惑していた。 当のエミリーやアリスは胸に手を当ててみたり色々やっている。 3分後、ようやく動きに変化が出た
「負けた…」 「勝った…!勝ちました。」 「…何で競っていたんだ」 「…そんな事聞かないでください」
いや、顔を赤められても分からない。 普通に分かってたまるか。 無論、何事かと周りから注目される始末。 クソッ…!早く何処かへ行きたい。 そんな思考を察知したのか、あの老人の姿をした悪魔は…。
「とりあえず腹減ったのぅ。」 「って、大佐。まだ朝ですよ?」 「しょうがなかろう。さっきまで運転していたのじゃからな。」
確かに、この車は爺さんの愛車であるから爺さんが運転しているはずだ。 その割には何かいつもより重装備なのは見なかった事にしよう。 と言うかよく税関通ったな。ああ、そう言えば視察だから大丈夫かのか。あちらからすれば。 そんな時だったか、いきなり何か兵器が駆動する音がし…
「『Device on!』間に合って…!」
俺はエミリーに抱きかかえられるまま生身では信じられないほどのスピードで飛んでいた。 俺が居た場所に砲弾が突き刺さり、炸裂した。 今自分が分かる事は、人が多い駅前で2ndの襲撃に遭っている事。 そして目標はおそらく自分か、爺さんだという事。 そしてふと足に鋭い痛みが走る。 少し破片でも刺さったのだろう。
「こんな時、場所に襲撃とは敵も無鉄砲じゃのう。ほれ、時間稼ぎ頼んだぞぃ。」 「了解、アリスは車両の中に行って。『GearOpen』」 「あいよ。だがまあ、別に倒してしまってもかまわんだろう?」
各自が各自を守る。 爺さんもいつものアーマーを着込んで直撃を食らわない限りは無事っぽい。 だからなのか、俺の方向へ弾が飛んでくる。 エミリーはそれを全て左腕のブレードで弾くけれど、いつまで続くか分からない。 その終わりははっきりと早く来た。反対側から3人も突撃して来たのだ。 二人は止められたが、もう一人はとどまる事を知らずに俺へ向かってくる。 逃げてもこの距離ではおいつかれるだけだ。迫るブレード。 身構える俺。体の一部は持っていかれる事を覚悟したがその時、何か白い機体が俺を庇い…。 俺の顔に血がかかる。敵ではなく、身近な少女の血が。 当の少女は腕を一本亡くしながらもその斬った敵を切り返し、沈めた。
そして顔を少し痛みで歪ませながらも少女は笑みを浮かべ、胸糞悪い事を言って来た。
「ああ、よかった。貴方に怪我が無く―」 「おい、しっかりしろ!おい!…クソッ。」
崩れ落ちるエミリー。切り倒される暗殺者。 俺は腕をなくした少女を抱えて返事が返らぬ事を知りつつも問いかけるしかなかった…。 爺さんと共に病院で彼女が回復する事を祈る事しかできなかった。 体力にも、襲撃に対する対策もできているはずだった。だがそれはあまりにも無力だった。 それよりも俺は自分が大怪我を負っても動じずに自分を省みないエミリーをただ、胸糞悪く思っていた。 服は血まみれのまま、とっくのとうに血は乾いて厭な感じはするが、それでも病院でただ座って祈る事しかできなかった…。 初めて亡くす部下になってくれるな…。そう思いつつ何時間経ったか分からないが、やっと安否が分かった。 生きている。それも、腕は綺麗にもげているので繋がったそうだ。 なんとか五体満足でいる事ができた。それは喜ばしい事なんだが…。 未だにあの時に言った言葉が気にかかる。痛いとも何も言わずに俺の安否を気にする。 それは凄く腹立たしく、何かドス黒い衝動が体を支配していた。 それから2日か経ち、俺は傷ついた少女を爺さんと共に迎えに行った。 速すぎるような気がするが何故だ? 彼女の腕についた包帯は痛々しく、それよりもその後に出た言葉が…。
「思ったよりも速かったな。怪我の具合は…」 「ご迷惑をお掛けしてすいません。入院時間が短いのは少し無理を通したからです。」 「…なんだって?」 「任務を放り出して入院などしていられないので薬と包帯だけ貰って退院しました。」 「ってお前それじゃあ…」 「体の方は問題では有りません。体は正常に稼動しますし。私一人が壊れても、貴方さえ無事であれば…」
…クソッ、言葉の一つ一つが頭に来る。 何が「私一人が壊れても」だ。 何が任務を放り出してはいられないだ。 壊れる様を見せ付けられるこっちの身にもなってくれ。 黒い衝動はどこまでも溜まっていく…。 そして俺の腕が躍動し、乾いた音が鳴った。 顔色変えず見守る爺さん。呆然とするエミリー。 そう、俺は彼女の頬に平手で打ちつけた。 そして思えば一度も彼女に放った事の無い容赦ない言葉を吐き、俺は帰路へ向かった。 嗚咽が聞こえる。だけど俺には振り返る事はできなかった。 追って来る気配も無く、ただその代わりに虚しい感覚が俺を襲う。 部屋に戻ろうとする足取りも重く、ほんの刹那でも長い長いものと感じた。
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Machine Girl Become Girl 2[反省と告白] |
・投稿者/ 鉄
・投稿日/ 2007/08/03(Fri) 01:27:34
| …私は今ホテルの一室に居る。 自分の部屋には行けなくて。 そして何かを無くして。 隣には機械の少女。 彼女は何をするわけでもなくアームをわきわきさせている。 私は…ただ落ち込む事しか出来なかった。 何がいけなかったのか。何が原因となったのか。 それをただ考えることしかなかった。 このままの状態が続いたらどうしよう? 私はもう彼のために居る事ができないの? …そんな事が何時間経ったのかしら。 そんなことを思っていると、アリスが私に話しかけてきた。
「ねえ、まだ答えは出てないみたいだね?」 「………」 「ふぅ…寝ているのか考え込んでいるのかしらないけれど、そのまま聴いて。」 「…………」 「私が思うにね、ティグ君が怒った理由って簡単だと思うんだ。しかも、貴方はそれを分からないような考え方をしている。」 「……………」 「彼にとって、死んでもいい仲間なんて居ない。それを分かってた?」 「…………………」
分かっていなかった。そう言うしか無いけれど、今言う勇気が無い。
「ソレに対して貴方はどんな事をしてでも彼を守ろうとしている。それこそ、死ぬと分かっている方法でも。」 「……」 「貴方が庇った時なんてためらってなかったものね。きっと貴方は自分の命を安く見ているんじゃない?」 「………」
見ている。あの時はアレしかなかったと思っている。 それに、私の安っぽい命を彼のために使えるならば、どんな事に使っていいと思ってる。 それがいけないの?それが、どうして?
「でもね、貴方が思っている以上に貴方の命は貴重なの。本当に彼が貴方に死んで欲しいなら、そんなに怒らない。」 「……」 「むしろ、ほめていたはずね。いつでも使い勝手のいい盾がついてきてくれるのだもの。だけど、貴方は盾になるべきじゃない。」 「………」 「彼は、貴方に戦友、いやもしかしたらそれ以上のものになって欲しいと思っている。だから、彼のそう言う気持ちに気が付いても良いんじゃない?」
私は彼に盾となると言った、だけどそれをいまさら変えられるのか。 そも、私の命が大事にされているなんて思った事も無かった。 だけど、彼女の言葉は何か説得力に長け、どこかに何らかの威圧を感じた。 …答えは掴めたような気がする。これからの私がどう有るべきなのか。 それと、何をすべきなのか。あと少し、あと少し。
部屋に着くと勿論のように少女は居らず、変わりに居たのは爺さんの部下である中年が一人。 たしか…アルフとか言ったけ? そのアルフは、無表情なまま俺を見て、問いかけて来た。
「どうしてここに?とでも言いたいような表情だな。あと、何か有っただろう?」
その問いかけはあくまで確認であり、彼らには筒抜けなのだろう。 でなければアルフが此処に居るはずが無い。 だけど俺はこたえる気が失せていた。 だが、奴は容赦なく俺を言葉で貫く。
「大方聞き分けのない部下を殴って来た所なのだろう?言いたい事が伝わったか?」 「………」 「死にたがりをどう変えたいのか考えているのだろう?でなければこんなマネはできんよ。」
考えていた。確かに考えていた。 あの時踵を返す前の彼女の表情が心に残っていて。 まるで捨てられた子犬のような、放っておけないような…
「相当堪えてたらしいぞ?お前の前ではな。今は…まだ泣いているんじゃないか?」 「…!」 「ようやく表情を変えやがったか。お前さんには分かるか?泣いてる理由なんてよ。」 「分かるはずが…ないだろ。」 「そうだろうよ。だがな、お前に殴られたからじゃあない。お前に拒絶されたからだ。」 「何だって?」 「聞こえなかったか?お前に拒絶されたからだ。任務以外に何か拘りでも有ったんだろうよ。」 「拘り?あのエミリーが?」 「アレもお互い分かってなかったみたいだな…いいか、任務だからって命を投げ出す奴は居ない。 特に俺たちはそうだ。なら、任務以外でお前を命に代えてでも助けたいと思ったのだろうし、 あの様子だとお前に特別な感情を抱いているんだろうよ。 …で、お前はその想いに応えられるのか?どうなんだ、ティグリス=ユーフラテス?」
応えると言ってもどうすればいい? 俺には分からない。 更にアルフは言葉を重ねてくる。
「まさか応えられないほど初心ではないだろう?それとも、応えられないチキンな玉無しか?」 「俺はそんな奴じゃない。」 「よし、言ったな?早く身だしなみを整えろ。行くぞ。」
行くって何処へ?その前に今からか? いやまさか…クソッ…。また嵌められた。 目の前に居る男はニヤリと笑ってまた何か言って来た、
「何をぼさっとしている。お前さんが行かなきゃ事は始まらないんだぜ?」 「行くって…何処にだよ?」 「さあてね。黙って俺について来い。」
そう言うと奴は歩き始めた。 このまま放って置くこともできたが、俺はそれをせずついて行く事にした。 俺の予想が正しいならば…いや考える事はやめよう。 何か考える前にまずは会う事からだ。 そう思うと帰るときとは違い、俺の脚の重みが消えていた。
外はもうすっかり暗く、俺たちは公園に居る。 見晴らしのいい。そしていい風の吹く公園。 何故か直接行くのではなく、ここで待つらしい。 アルフ本人はそこのベンチに座っている。 エミリー達が来たらどこかへ行くらしいが…。
「ん?どうした。気にするな。」
ニヤニヤしながら言われても説得力無えよ。 クソッ…。早く来ないものか。 早く来ないと気が滅入りそうだ。 勿論原因はアルフだ。
「案ずるな少年。考えるより突っ走れ。な?」
…やけに映画か何か見るようなまなざしで見ているのは気のせいか? しかもポップコーン持ってきてるし。 そんな疲れたやり取りをしていたら、ついに来たようだ。 何か暗い表情のエミリーを必死に少女が励ましているようだが…?
「ほら、行って来い。」 「後ろから蹴るな!」 「うるせえ。とっと行ってこい少年。あたって砕けろ。素直に行けば解決だ!」
罵声と共にエミリーの下へ送り出される。 確かにイラっとは来たが不思議と心強い感覚が染み渡っていった。 俺とエミリーが対面してから、他の連中は邪魔にならないように消えようとした。 無論、残りそうな奴を撤去してもらった。
「チッ、つまんねえな。」 「つまんねえじゃないです。人の恋路をじゃますると蹴られて殺されるらしいですから。」 「あいよ、じゃあな少年、うまくやれよ。」
そして他の連中が消え、二人きりとなった。 気まずい空気が流れ出し、この空気を打開しようと話しかけたが…
「なあ…」 「あの…」
お互いが言い出そうとして、両方ともが止まってしまう。 …クソッ、こう言う気まずい空気は苦手だ。 どうやって打開する? そんな時、何か声が聞こえて来た。
―おいおい坊主、もうちょっと積極的に行こうぜ?
この声はまさか… 後ろを振り向いてみると、そこのベンチに座ってポップコーンをムシャムシャと食べるアルフの姿が…! 何かがおかしい。たしか連れて行かれたはずじゃあ…?
「何故そこに居る?って顔をしなさんな。さあ、続きでもやってくれ。」 「…ここじゃマズいから、場所を変えよう?」
覗く気マンマンな男をスルーして、場所を変えようとする。 無論ブーイングが聞こえるが無視。 俺はエミリーの手を握り、踵を返して他の場所へ…
ここなら誰も居ないはずだ… さてと、今度こそ…。 と、振り返ってみるとエミリーは赤面しつつ俯いていた。 何故だ?と思ってみると…ああ、手を繋ぎっ放しだったからだろうな。 このままでは話が進まないと思ったので手を離す。 でも、何か彼女は物足りないように上目遣いで俺を見てくる。 何かは分からない。なんだろう?と考えていた時にエミリーから話を切り出してきた。
「あの…すいませんでした。」 「何が?」 「身勝手な事ばかりしてしまってすいませんでした。…貴方の気持ちも考えずに。」 「…いや、身勝手なのは俺の方だ。それに、エミリーは俺の為に…」
カッとしてはたいてしまったのだ。これを身勝手だと言わないで済むわけがない! だけど、エミリーは俺を真っ直ぐと見て微笑みながら…
「なら、貴方もですよ。私に気付かせてくれたのですから。貴方を守る盾ではあってはならないと。」
そんな俺の愚かな真似を真剣に受け止め、彼女は考え詰めたのだろう。 俺に拒絶されたと泣き、何がいけなかったのだと考え詰めたに違いない。 尤も、あの出歯亀野郎の言っていた事が正しければなんだろうけど。 そして、彼女は暗い表情をして自嘲するように何か言った。
「私…やっぱり身勝手です。だって、任務と言う事を理由にして貴方の傍に居たのですから。 私から傍に居たいと言えなかった…!貴方に拒絶される事が怖くて…!」
震えた声で彼女は懺悔をする。 己の弱さを曝け出して、エミリーは言葉を紡ぐ。 俺はそれに応えられるのか? 泣きそうな表情をして、彼女は俺を求める。
「こんな…私ですけど…それでも傍に居させてくれますか?」
此処まで来れば、答えは一つしかない。 其れなのに、喉が動かない。 何でだよ。一言言えば良いだけの話じゃないか。 …クソッ。何時から俺はこんなにチキンになった。 泣きそうな表情で、小動物のようにエミリーは不安そうにしている。
「…やっぱり、私じゃ駄目ですか…?」 「駄目なんかじゃない。こんな俺で良いのなら…」
そう言いながら俺はエミリーに歩み寄ると、その小さな頭を抱き寄せた。 クソッ!もっと気の利いた台詞は吐けなかったのか? 俺が何か惨めに思えてくる。 だけど、彼女にはその一言でも十分だった。
「悪い訳が無いじゃないですか…。」
そして彼女は俺の胸に顔を押し当てたまま泣き出した。 俺はそれが止むまで彼女の髪と背中を撫でていた…
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Machine Girl Become Girl 3[青年と少年] |
・投稿者/ 鉄
・投稿日/ 2007/08/03(Fri) 01:28:36
| 「アルフさーん、いつまでそうしているんですかぁ!」
小僧とエミリーとか言ったか?あの子犬みたいな奴。 あいつらはちゃんとうまくいったようだな。 こう言うシーンを見るのはいいねえ。昔を思い出すぜ。 スコープの先を塞がれる。おっと、こっちをなんとかしなきゃあな。
「おいおい、勘弁してくれよ?それとも構う彼氏が居ないから構って欲しいのかい?」 「ちょ…。そんな事ないですよぉ!」
目の前に居る少女はアームをワキワキさせながら否定する。 何時見ても面白いなコレ。俺にも一本くれないか?いや、冗談だ。 にしてもそんな反応だと更に苛めたくなるよな? 俺はそうなんだが。
「そんな感じには見えないがねえ?それにアレだろ?奴と部屋を同じにしたのはやりたいからだろ?」 「な、何をやるんですかッ!」 「分からないほど初心じゃないだろ?ナニだよナニ。」
セクハラ親父になったなぁ俺も…。 まあいいか。面白いしよ。
「で?奴のナニはデカイのかい?」 「…!な、な、何を言っているんですか!うう、酷いですよー。」
顔を完全に赤くさせて慌てるところが笑える。 そんなにデカくは見えないのだがねえ、ライリー君のアレはよ。 それとも、あんな面してデカいのか?いや、そりゃないだろうよ。
「ひでえのは元からだろう?にしても爺さんも無茶をやるねえ。あのヒヨッコだけでここのボスと会いにいくなんてよ。」 「あの…大佐ってそんなに強いのですか?」 「当たり前だ。俺が10人束になっても勝てないだろうよ。無論MTスーツを着込んでいてもだ。」
俺ご自慢のマシーネンフィストによるコンビネーションも効かないしな。 よくあんなオンボロマシンで戦えるよ。 しかも背負ってる火器は使ってないのにアレだからな。 使ったらどうなるんだよ。 いやマジであの爺さんは人か? そう言えば切り裂きイワンとも一戦かち合ったらしいしなぁ… ホント、世界は広いぜ。うん。
「この間大佐のパワードスーツを整備したのですが…何なのですかアレは…! 設計思想や配線配置、防御形態まで現行機とは全然違うモノでした。あんな機体は見たことが無い!」 「そりゃ、そうだろうよ。あの爺さんは過去の遺物を使っているんだからよ。一度は聞いた事が有るだろ? エンフォースギアって言う馬鹿げたシリーズをよ。」 「エンフォースギア?何ですかそれは。」 「知らねえみたいだな…アレは大戦時の遺物だ。パワードスーツにACばりの火力を持たせようとしたのさ。 結果成功したんだが…コストと生存性が…な。それで爺さんが着ているモノで生産停止。 爺さんはそのままアレを使ってやがる。火力だきゃあピカイチだからよ。」
尤も、その火力が発揮された時は殆ど無いのだが。 爺さんにとってアレは奥の手なんだろうよ。 さあて、そろそろ爺さんが暴れている頃合か。 暇な俺はまたあいつ等を見ておくかねえ。 うん、若いっていいわ。
「アルフさーん、やっぱり覗くのは趣味悪いですよー。」 「おいおい、誰だったか?録画までしようとしていた奴はよ?」
まあ、こんな調子のやり取りが続くのかねえ。 まあ、それもいいか。
えーっと…僕はなんでこんな怖い場所に居るんだろう? 一体全体何故ですか? 目の前にはガーデンの武装組織の代表者…ジョンとか言ったけ?とクリード大佐がにこやかに手合わせをしていた。 目にも留まらぬ速さで繰り出される拳と足。 と言うか、なんでこんな展開になったのだろう? 僕には分からない。と言うか、何でオフィスから道場へ移動したんだろう? やっぱり、初めから大佐はこれをするために…?
「ヘロデトにまだこれほど戦える戦人が居るとはしらなんだ。うちに来る気は無いかえ?」
大佐は老人とは思えぬ軽快なスピードで拳を繰り出す。 ジョンはそれをかわしつつ反撃を行うも大佐は腕を取ろうとする。
「お断りだ。私はここの生徒達を教えねばならん。」
腕を取る事も失敗したが反撃も外れ、一瞬の空白が訪れる。 しかし、その空白も直ぐに拳と拳のぶつかり合いにかき消される。
「それは残念じゃのう。ほれ、小僧ども見ておるか?」 「あの…見るも何も速過ぎます。」 「右に同じく」 「不甲斐ない生徒達じゃのう。そこの新兵もじゃ。そんな事ではアリスを嫁にはやれんぞ?」 「ほぅ、娘か何かですか?」 「そうじゃ。わしに似ずに可愛げのある自慢の娘じゃよ。」
そう言った瞬間に僕に集中する視線。 うう、また居辛いよぉ…。 と言うかアリスって大佐の娘だったのか…。 目の前ではまだ迫力の有る戦いが起こっている。 足払いやかかと落とし、ワンツーやアッパー。 派手な技が続くが勝負は付かない。
「コレでは勝負が付きませんね。」 「そうじゃの。ここらでお開きにするかえ?」 「そうしますか。」 「良い拳じゃのぅ。ベースは空手と言った所かの?」 「そう言うご老人は軍隊格闘のようで。」
和気藹々と話し込む大佐。 神様、なんですかあの人たちは。 人を超越した何かですか。いやそうですね? ゾロゾロと生徒達も帰って行く。 そして残ったのは人外2名と僕一人。 僕も帰っていいですか…? と考えてもここで帰ったらマズい事だけは彼らのオーラを見れば分かる。 だから僕はここで体育すわりで待っておく。 あれ?僕になんで近づいてくるの?何で?ちょ、待ってなにをするのさ! この後僕はしばしの間地獄を見る羽目になった…
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Machine Girl Become Girl 4[喧騒と思い出] |
・投稿者/ 鉄
・投稿日/ 2007/11/05(Mon) 20:01:47
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「青い空、白い雲、よく管理されたプール。だけど、何なんだこのメンツは?」 「まあそう言いなさんな。爺さんのオゴリだしよ。」 「あの…私と一緒だと不服ですか?」
この数日間知り合いに出会わない訳が無いと思ったが、こんなタイミングが悪い時に… しかも何か邪魔したなとかなんなんだ? まさかとは思うが…ウォルは知っているのか。そんな事はないだろう。うん。 にしても…濃いメンツだ。 古傷だらけで目つきも悪いオッサンと爺さん、腹にデカい古傷を持つ青年、ロボットアームをワキワキさせている少女。 そしてエミリーは…
「………。」 「ど、どうかしましたか?」
タオルで身体を隠していた。 残念だ―って何を考えている俺。 今日は泳ぎに来たんだろ? 何も残念がる事はないはずだ。 だけど俺のモチベーションは下がる一方。
「そんなに恥ずかしがったら駄目じゃない。」 「でも………。恥ずかしいです。」 「今更何を言っているの?大丈夫だよ。きっと。」
励ましながらタオルを実力行使で剥ぎに掛かるのはどうかと思う。 それも本人ニコニコしてるクセにアームをワキワキ動かして。 なんてシュールな現場なんだ。
「あ、や、止めてください!」 「良いじゃない。減るものじゃないし。それとも…ふふふ。」 「い、言わないでくださいよッ!」
剥がされかかっているお陰でボディラインが強調されて……なんかエロイ。 しかもあの無骨なアームは別の部位も狙ってないか? 気のせいだと良いけど… と言うか誰も止めないのか。 そう思って後ろを振り返ったが…ああ。 爺さんはのほほんとしててオッサンは写真を撮って……ライリーは体育すわりをしている。 二人は動じてないが止める気もなく、ライリーは動けない様子。 理由は知っているが言わないでおこう。どうせバレる。
「ゃあ…ふぅ…や、やめ…」 「そらそらそらー!早く外しなさいってば。」 「こ、こんなところ…ひゃうん!」
…………耐えろ。耐えろ俺。 つーかこんな所で何を始めているんだあのメカは。 エミリーの声がどんどん色っぽく聞こえる。 マズい。非常にマズいぞ。 そうだ、別の場所を見れば関係ない。 そのはずだ。そうに決まってる。 なのに、なのに、目が離れない。
「之で十分かの。」 「そうだろうよ。おーい、そこのレズ入ったチビ。相方が寂しがってるから撤収しろ。」 「痛いいたいたい!何するんですかッ!」
ついにオッサンが動いた。 目にも留まらぬスピードで彼女らに肉薄し、フラフラしているエミリーからアリスを引き離す。 更にほっぺをつねって連行。ついでにタオルも剥いで行く大胆な犯行。 鮮やかな犯行にライリーは唖然としていた。 そして一人座り込んだエミリーは…
「はぁ……はぁ…ぁぅん…す、凄かった………あ゛。」
俺を見るなり跳ぶように柱の影に隠れ、赤い顔だけ覗かせる。 余程恥ずかしいのだろう。でも、周りから見れば変だと……思わないんだよな。 慣れって凄い。これぐらいで動じなくなるなんて。
「ど、どうしたんだ?」 「ははははは、そんなに照れていたら泳ぐ前に日が暮れちまうぞ!」
オッサンからのヤジが飛ぶ。 しかも例によってポップコーン持参。 つーかどこから出した。 そんなやり取りが5分ぐらい続き、遂に観念したのかエミリーが俯きながら柱の影から出てくる。 瞬間、俺の頭はパンク状態になった。
「ぁ……ぅぉ……」
エミリーの水着は予想に反してビキニタイプ。更に言うと腰の部分に紐のような物が……これが紐パンって奴?。 競泳用水着とかスクール水着を予想していた俺にはインパクトがデカい。 大胆にも露出度が高く、あんまり大きくは無いが存在を主張している胸や体つきを強調…って何俺はいやらしい目で見ているんだ。 しかも爺さんまでニヤニヤしてやがるし。…まさか。
「ティグ坊もそう言う歳になったもんじゃの。愉快愉快。」 「坊主、見て愛でるのは良いが視姦はどうかと思うぜ。」 「あの、その…じろじろ見られると恥ずかしいです。」 「あのお堅いティグがねえ…変わったよな。」
待て。待て待て待て。何故ウォルが居る? 仕事が有ると言っていたはずなのに!
「な…視姦なんてやってねえ。と言うか何故オマエが此処に居るんだよ。」 「俺がどこに居たっていいじゃん?それともジャマだった?」 「誰がジャマと言った?」 「OK,二人で楽しい時を過ごしてこいよ。邪魔者は退散するから。」 「おい、人の話を―」 「気遣いはいいから楽しめって!あばよ。」 「クソッ!逃げるな。」
スタコラサッサとウォルは去っていく。 と思いきやサーボアームをワキワキさせているアリスへ接近してナンパを開始する。 ……が。
「うわぁぁぁ!?」
サーボアームに跳ね飛ばされてプールへダイヴしていくウォル。 あんなモノにナンパするからだ。 自業自得なので救助には行かない。 どうせ誰かが引き上げに行く。 ソレよりも今は目の前に居る少女と楽しい時を過ごすのみ。 そこに爺さんもオッサンも介入はさせない。させてたまるか。 そのために俺は彼女の手を取り、いざプールの中へ飛び込んだ。
―その後色々とマズイ事が有った。 賭けに負けてエミリーのスク水を着させられそうになったり。 ウォルにその現場を撮影されたり。 飯を奢らされたり。 なんだかんだ色々有ったけど、楽しい一日だったと思う。 こんな日々が何時まで続くのか…? 数日後、爺さんは基地へ戻っていった。 どうやら休暇ではなく、シミュレーターか何かの視察だったらしい。 爺さんが帰る数分前、オッサンは変な事を言い残していった。 「あんまりここの連中とは親密にするなよ。でないと後悔するぞ」と。 その言葉の意味をあまり考えたくはない。 だけど、考えなければならない時期なのかもしれない。
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