|
目を覚ますと、そこにはさっきと変わらぬ母親の姿が。
「気分はどうかしら?薫子?」
「はい……私(わたくし)は大丈夫です。お母様……ってええ!?」
「その様子では成功したようね。まあ、私がやったんだから当然だけど」
「こ、これはいったいどういう事でございますの!?お母様!?」
「まったく……とりあえず落ち着きなさい、貴方。はしたないわよ?」
「はっ、はぁ……」
信じられない。俺は今、完全に白川薫子として存在している。
さっきまで身体に感じていた違和感が、まったく感じられないのだ。言葉遣いも、白川のそれである。
そればかりか、目の前の女の人――白川葵が自分の母親だということもはっきりと認識できる。
一度深呼吸をして、葵さんを見つめる俺。
「どうやら落ち着いたようね。」
「はい。お母様。……私はいったいどうなったのです?元の私は何処へ?」
「まずはあなたの状況から話すわね。簡単にいうと、貴方と薫子の精神を混ぜたのよ。
その結果、今のあなたが出来たってわけ。今の貴方は薫子そのものと言っても過言じゃないわ。とは言っても、簡単な処置だから2日もすれば元に戻るんじゃあないかしらね。
次に、元の貴方が何処に行ったか、どうなっているかだけど……
薫子にも同じ処置をして、家に帰したわ」
「えっ……そんな事してしまいましたら、直ぐにバレますわよ!?
あの御方、只でさえ男嫌いですのに、俺の代わりなんてしたら発狂してしまうのでは……」
「その点は大丈夫よ。別の術を使っておいたから。今の薫子は貴方になりきってる。目を覚ましたとたん、慌てて出て行ったわ。2回もこけてたのが面白かったわよ」
「それはそれは……酷いことをしますわね……」
絶対この人ドSだ。俺の勘が、いや、私の経験がそう言ってる。
……待て、「私」の経験ですって……どうやら何時の間にか俺は私になっているようですわね。少し嬉しい気分。でも、俺っていう響きに悪寒を感じるのが、悲しいですわ……
「まぁ、こんな所かしらね。貴方からは何かある?」
「ありませんわ。お母様。徐々に私の記憶も読めるようになってきましたし」
「あら良かった。なら早速やって貰いたいことがあるのよ」
「?なんです?」
「それは――」
|
|