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「分からないって、どういうことだよ!」
予想外の返答に思わず声を荒げてしまう。そんな俺を制止するように健介が手を俺の口にかざす。
「まぁ落ち着けって。少なくとも、肉体とか、顔とかそんなんじゃないのは分かってるんだからさ」
「落ち着けねーよ。……つーかそんなもん見たら分かるわ! 紺道の身体にお前の顔が付いてるなんて考えたくもねえ。バケモノだ、バケモノ」
「うわ、それ傷つくわー」
と、言いながらもくっくっと楽しそうに笑う健介。
目の前に居るのはどうみても委員長の紺道なのに、俺には健介の姿が重なって見える。
――もう、戻ってこないと思っていた。俺の、親友。
笑い終えると、いつしか感傷に浸っていた俺を尻目に話を戻す健介。
「……確かにお前が言うように、入れ替わったのは物質じゃないだろうな。精神だとか、記憶だとか、そんなところだろ」
「そうなんだろうな。それぐらいでなきゃこの状況を出来ないし」
ふと、ここで俺は思い立った。
――本物の紺道零香は何処に行ったのだろう、と。
「なぁ健介」
「何だ? エロ本の隠し場所以外なら教えるぜ?」
相変わらずのスケベ心だが、今はそんなこと聞いちゃいない。
「本物の……紺道零香は、どうしたんだ?」
途端、場の空気が一変する。
空気の流れがせき止められたかのように消える。凍るような冷気が俺の頬をなでる。
さっきまでの憩いの場はもう無い。
有るのは、静寂。それを刈り取るように健介は口を開く。
「あぁ、アイツなら――」
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