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突然俺の体が前のめりになって倒れた。顔面からいったように見えたんだけど、大丈夫なんだろうか……?
そう思案していると、薫子の母親に声をかけられた。
「ねえあなた。もし良かったら、このまま薫子として生きてみない?」
「へっ……?」
あまりに突然すぎて、素っ頓狂な声を上げてしまった。
――いきなり何なんだ?俺にこいつとして、「薫子」として生きろだって?この人は何を……
「ど、どうして何です?何でそんな事を俺に?」
「簡単よ。貴方のほうが、この家の後継者に相応しいから」
「後継者ぁ?」
「そう。白川を継ぐのは、柔軟かつ大胆な思考と術を使うに相応しい才能を持つもの。
薫子は才能は十二分に有ったんだけど、どうにも視野が狭く、人を見下しがちでね……
でもね、薫子になっているあなたを見たとき、言葉では言い表せない何かを感じたの。それが何かは私にも分からないんだけどね。
でもこれだけは言える。間違いない。あなたは薫子を超える逸材よ」
「…………」
しばらく話を聞いていたが、訳が分からなかった。
――白川を継ぐ?才能?逸材?俺にそんな期待を?
俺の頭の中は疑問符でいっぱいだった。突拍子が無さ過ぎる。俺は白川という家について何も知らないのに。
だというのに俺は、母親の話をもっと詳しく聞いてみたいと思った。何故かは分からない。ただ、この話をもっと聞いておかないと、後々後悔する。そう思ったからだ。
「どうかしら?」
「……まだ決められません。いきなりですしね……
でも、俺はあなたの話に、あなたに興味がある。もう少し詳しく教えてください」
「ふふっ。そうくると思ったわ。じゃあまずは下準備からね」
そういって、母親は床に倒れ伏している俺の身体に近づき、頭に左手を置いた。
それと同時に、右手を俺にかざしながら言った。
「ちょっとこっちに来てくれるかしら」
「え?あっ……はい」
不思議がりながら近づくと、俺の頭にも母親の手が置かれた。
それを確認した母親が、さっき唱えた呪文のようなものを唱え始めた。
するとどうだろう、急に俺の身体と薫子のからだが光り出し……
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