テニスの王子様―小説掲示板
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501/ 心の戦士
・投稿者/ ユキ
・投稿日/ 2006/09/30(Sat) 13:37:38
・URL/ http://m-pe.tv/u/page.php?uid=ammtseisyun&id=1
・IP/ 211.18.91.111

    過ぎていく日々の中
    最後に見たのは変わらない表情の中の涙
    いつものようににっこり笑ってくれれば良かったのに

    俺が兄貴のウソ見抜けないわけないだろ

    「裕太くん、今日は早めに帰ってもいいですよ」
    「へ?何でですか?」
    珍しい。
    観月の言葉に裕太は眉をひそめた。
    それを見て観月はふふっと笑う。
    「今日は不二くんの・・・お兄さんの誕生日でしょう」
    そういえば。
    四年に一度しかないあいつの誕生日。
    今年はその日が存在する。
    妙な気分。

    ふと・・・思い出した。


    「裕太・・・本当に・・・」
    「あぁ。転校する」
    弟という名がうっとうしい。
    こんな奴のそばになんかいたくない。
    「俺は俺だ。お前のように天才なんて呼ばれなくても上に言ってやる!!」
    裕太は不二を見ないで言った。
    その時、一時の沈黙の後に返ってきたのは
    「本当に・・・嫌いなんだね。残念。僕は裕太が好きなのに」
    にっこりとした声。
    違和感。
    無意識に違和感を感じた。
    だから振り向いた。
    いつもの笑顔の奥に潜む静かな涙が存在してた。
    「・・・勝手に言ってろ!!」

    何にも気づかない・・・ふりをした。



    今考えてみれば・・・子供だった。
    自分のテニス?上に行く?
    バカらしい。
    実際は弟というプレッシャーから逃げただけの姿だったのに。
    弟に嫌いと言われたあいつの気持ちはなんとなく理解できた。


    頬をなでる風に乗せてこの言葉を届けたい。

                   嫌いじゃない

    ただ・・・羨ましくて。

    「何あげればいいんですかね。兄貴の趣味っておかしいんスよ」
    「サボテンが趣味だとデータには記録されてますよ」
    「あー・・・そっか。ありがとうございます」
    「んふっ・・・家族で仲良く過ごしなさい」

    兄貴って言う名前の壁は嫌になるほどでかいけど・・・




    それに向き合えるような心の戦士に俺はなる。



478/ 歪んで不動峰!!
・投稿者/ ユキ
・投稿日/ 2006/09/09(Sat) 11:38:45
・URL/ http://m-pe.tv/u/page.php?uid=ammtseisyun&id=1
・IP/ 211.125.179.85

    私は戸田翔子!!
    なんか飛べそうな名前だと思いませんか?
    不動峰の二年生だったり!!
    ついでに伊武が好き。
    ボヤキ最高!!
    何が悪い。

    「伊武くぅぅぅぅん♪」
    「うざっ」
    酷。
    まだ何も言ってないじゃん!!
    名前呼んだだけ!!!
    愛する伊武。
    実は三角関係。
    私は伊武が好き。
    三角関係作りやがったのは橘だよ!!
    ホクロヤロー!!!
    橘さんは私が好きらしい。
    ウゼェェェェ!!
    でも伊武は私よりも橘さんが大事だって。
    ありえねぇ!!
    なんだそれ!!!
    鬼太○・・・じゃなくて神尾はというと杏ちゃんにゾッコンらしい。
    おーいー橘!!
    大切な妹に妖怪が近づいてるよ!!
    気づけ!!!
    守ってやれよ。
    「調理実習で作ったのあげるよ」
    チョコレートのカップケーキ!
    少し自信作!!
    杏ちゃんには負けるけどね・・・。
    天才的能力をここで発揮したか杏ちゃん!!
    伊武はカップケーキを見て一言。
    「何それ?・・・焦げたピーマン?」
    ドスッ!!
    調理実習で焦げたピーマン作るって凄くね!?
    常識的に考えろ!!
    「チョコレートカップケーキ!!」
    「何?そんなもん俺に食べさせる気?やめてよ。神尾とかならまだしも俺?そんな
    にも俺に恨みあるわけ?いやんなっちゃうな・・・」
    そこまで言うか!!?
    カップケーキの立場は!?
    てか私の立場!!
    この恋はまだ遠い・・・。
    (伊武が逃げるから!!てか橘さんのせい!!←八つ当たり)
                           
                            続く 



479/ Re[1]: 歪んで不動峰!!
・投稿者/ ユキ
・投稿日/ 2006/09/09(Sat) 12:55:58
・URL/ http://m-pe.tv/u/page.php?uid=ammtseisyun&id=1
・IP/ 211.125.179.85

    愛が強いから逃げるのかしら?
    というわけで自称:伊武の親友、神尾に相談。
    伊武の親友があんたみたいな妖怪なわけあるか!!(←酷い)
    相談するったらこいつしかいなかったのさ。
    伊武友達少ないし(本音)
    まぁ神尾に相談したって解決する確率はたかが知れてるよね(←最低)
    「伊武くんは私をどう思ってるの!?」
    「しらねぇよ。うざいとか?」

    バキッ

    殴ってやった。
    乙女に何てこと言うの?
    脳天かち割るわよ?
    「好みのタイプとか分かる?」
    「殴ったことに謝罪はないのか」
    「妖怪は退治しろっておじいちゃんの遺言にあった気がする」
    「(酷っ)ま、まぁいい・・・好みのタイプ・・・かわいい子か外国人?」
    「かわいい子!?私!?」
    「(何言ってんの?)あと・・・歯並びのいい子」
    翔子は神尾に尊敬のまなざしを向けた。
    「お前伊武くんのパシリだと思ってたけどもう少し上のランクだったのね」
    「フォローにも何にもなってないぜ?てかそんなこと思ってたのか」
    だって伊武くんに妖怪と友達?って初対面のとき聞かれてたじゃない。
    鞄に杏ちゃんを誘うためのコンサートのチケット入れてるピュアボーイが!!
    「にしても橘さんうざい」
    「お前橘さんを侮辱するなよ!!」
    「大丈夫、君も十分うざいよ?」
    「何が大丈夫!?てか俺のどこがうざい!!」
    「リズムとかリズムとか」
    全否定するっつーの。
    橘もなんだっけ・・・そう!!
    アッサムそっくりなのよ(動○の森)
    ライオン頭だったときとか同一人物?
    「私のどこがいいのよ」
    「あーそれ同感」
    「フォローしやがれ妖怪」
    「(自分で聞いてきたのに!?)」
    「知性的な美貌とか?」
    「社会××点(←言えない)のくせに知性的?」
    「うるさい。お前は話すな」
    「相談してきたのお前!!」
    社会なんて冒険家くらいよ、必要とするの。
    実際全教科いらない気がする。
    天気のいい日に学校に行くこともおかしいよね(←お前がな)
    「・・・何してんの?」
    「・・・・・・・・・・・・・・あ」
    Myダーリン参上!!(←Myじゃないしダーリンでもない)
                           
                              続く

490/ Re[2]: 歪んで不動峰!!
・投稿者/ ユキ
・投稿日/ 2006/09/20(Wed) 21:52:56
・URL/ http://m-pe.tv/u/page.php?uid=ammtseisyun&id=1
・IP/ 211.125.179.85

    「ん?私に愛の告白かしら?」
    「無理」
    「無理!?嫌ならわかるけど無理って!!?」
    神尾が笑いやがった。
    ちくしょう。
    殺してやる。
    「・・・神尾と仲いいんだ」
    「ううん。」
    「全否定しないで!!」
    泣くなよ神尾。
    男だろ?
    いつか杏ちゃんとデートさせてやるよ。
    橘部長つきで!!
    「ふーん、俺に言えないことでも話してたわけ?別に聞きたくもないからいいけど
    ね。だけどさ、やっぱりむかつくんだよね、こそこそしてさ」
    「え・・・すんまそん!!いつかこのセリフ流行させてあげるから許して!!」
    ダッシュで逃げる!!
    魔物の住む教室には長居できない。
    身が持たないから!!
    「・・・やきもちかよ」
    「にやにやするなよ気持ち悪い。神尾のくせに生意気だよ。プールに沈んで来い」
    「・・・!!」

                     続く

500/ Re[3]: 歪んで不動峰!!
・投稿者/ ユキ
・投稿日/ 2006/09/30(Sat) 09:54:18
・URL/ http://m-pe.tv/u/page.php?uid=ammtseisyun&id=1
・IP/ 211.18.89.225

    「伊武のぶぁ〜か・・・」
    乙女の言うようなことだけどやっぱり伊武が好き。
    赤い糸で繋がれてるって言っても・・・

    「どす黒い糸じゃなくて?」

    とか言うし(泣)
    橘さんに乗り換えちまうわよ!!・・・・・・・・・・やっぱ無理。
    思いつきでモノをいってはだめですよ全国の皆さん。
    「生きるのがつらいよ〜はぁ・・・ブドウゼリーになりたい」
    プルプルしたい。(オイ)
    「何考えてんのさ」
    「・・・」
    「・・・・・・」
    「ぎゃぁぁ!!いいいいいいいいい伊武!!?」
    まさしく不機嫌そうな伊武。
    「驚くなよまったく失礼だよな、君っていつもそうなんだから・・・」
    「ご、ごめん」
    さっきまで(私的には)悩んでたわけだからちょっと話しづらい。
    そんなのを察知したのか伊武は困った顔をした。
    「お前が・・・今度のテスト、社会を俺より・・・十点多く点数取ったら・・・」
    「?」


    耳元でささやかれた言葉。




          「付き合ってやる」







    社会のテスト、伊武は十点だった。
    なんでそんなに悪いかを聞いても答えてくれない。
    ・・・きっとわざと。
    だって神尾が言ってた。

    「あいつ、お前に惚れてるんだぜ」

    って。
    でもこれを伊武に言ったら神尾殺されるよね。
    ・・・少し見てみたい。
    歪みっぱなしの不動峰の歪んだ恋の物語。
    (恋か?なんて言わないで)
     
                            END



430/ (削除)
・投稿者/
・投稿日/ 2006/07/25(Tue) 13:35:03
・IP/



431/ 千石編 第一話 アンラッキーデイ
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/07/25(Tue) 14:02:25
・IP/ 221.78.11.16

    「千石君。関東ジュニアオープンテニス、というのをご存知ですか?」


    「ああ…知ってるよ。今年開催される大会のことでしょ?」


    部活が終わり、部室で着替えていた千石に話しかける伴爺



    「はい。関東の各学校から何人かリーダーになる選手を指名し、その指名された
    選手は一ヶ月以内にチーム員を自分を含む四名以上集め試合を行うんですよ。」


    伴爺は念のため、千石に説明するように言った


    「へぇ〜…おもしろそうじゃんw…でも…山吹からは誰かリーダーになる人でた
    の?」


    「お…いいとこに目をつけましたね。」


    伴爺は少しにやけた顔で言った


    「ん?誰か出るの?」


    千石は疑問に思ったので問いただしてみた


    「はい。千石君。あなたを私が指名したんですよ。」


    「え」





    ・・・


    千石は伴爺の話を淡々と聞いていたが、「指名したんですよ。」という言葉を聞いて
    態度が一変した


    「もしかして…俺にその関東ジュニアオープンテニスとかいうやつのリーダー
    に…選んだわけ…!?」



    「はい。そうです。」

    あっさりと答える伴爺


    千「っちょ…ちょっとまってよ!!なんで俺なわけ!?そんなリーダーみたいな地味な
    仕事は南とかにまかせりゃいいじゃん!」


    「はい。確かに南君は部員をまとめることには長けています。ふつうなら南君に
    任せるところなんですが…」


    「じゃあ南でいいじゃん。」


    千石はそっけなく言い放つ。よほどリーダーがやりたくないようだ


    「まあ聞いてくださいよ。でも南君と対象的に、あなたはどちらかというと部員
    をまとめるのは苦手ですよね?」


    「うん。だからやりたくないんだけど…」


    「いやいや、苦手だからこそやるんですよ。ウィークポイントを克服するため
    に。」


    「そんな勝手なこと言ったって〜…」


    抵抗し続ける千石


    「まぁまぁ、決まったことはもう変えられないですし、もうあきらめてください
    ねwそれでは〜。」


    バタン


    伴爺は逃げるように部室から出ていった





    「う〜ん…リーダー…ねぇ…」

432/ 千石編 第二話 地味
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/07/25(Tue) 15:48:24
・IP/ 221.78.11.16

    ━火曜日━


    ここはストリートテニスコートの校舎からそう遠くないところにある喫茶店


    「全く…ねぇ?何で俺が南みたいな地味なことしなきゃいけないんだよ…」


    レモンティーを飲みながら南に喋りかける千石


    「…」


    「ご…ごめんごめん!怒った!?」


    今日は休日。関東ジュニアオープンテニスのため、関東地区のテニス部の活動は全
    て中止となっているため、南はストリートテニスコートに自主練習にいこうとして
    いた。
    だが途中偶然にも千石に出くわし、今に至る…


    「…そんなことより、お前ジュニアオープンテニスのリーダーに指名されたんだ
    ろ?こんなとこにいていいのか?」


    「でもね〜…ぶっちゃけどんなことすりゃいいかわかんないんだよ〜…」


    「じゃあまず、自分のチームに入って欲しい選手に、声をかけてみたらどうだ?」


    「え〜…めんどくさ…」



    「…」


    南はあきれたように千石を見る。見る、といっても、見下す、に近いかも知れない


    「なんで一々メンバーなんて集めなきゃならんのか…はぁ…」



    「………ホントリーダーに向かないな…お前…」


    二人の会話は進まない。







    ─十分後


    「おwここ上手そーな食いもんありそーじゃんw」


    「でっしょ〜!?ここ俺のお気に入りの店〜w」


    どうやら新しい客が入ってきたようだ



    「ん?どっかで…聞いたことあるっぽい声…」


    新しく来た客に反応する千石



    「どうした?千石?」



    「い、いや。なんでもないよ。」


    千石は少し気になりながらも、あまり重要なことではないと思い、そのまま新しく
    たのんだストロベリーパフェを口に含む


    「あ…っそ。」


    南はなんとなく千石に返事を返す


    「えっと…こちらのお客様でよろしいですよね?ポテトフライ。お持ちいたしま
    した。」




    「あ…はい。」


    先ほど南が頼んだと思われるポテトフライを店員が運んできた



    「ん?でもこのポテトフライ…」



    「?…おおいあお?(どおしたの?)」

    千石はまだ口の中にパフェがたくさん入っているのにもかかわらず、南のつぶやき
    に反応した


    「食ってからいえよ…いや、ただな。ケチャップがついてないな〜…って。」


    「…い゛み゛〜…」


    「もしかして…地味とかいったか?」


    「べふにぃ〜♪(別にぃ〜♪)」


    「いったな…確実に…。」





    「あれ…あっちにいる奴らって…」


    「あ…ホントだ。そこにいるのは山吹中の千石だろぃ?…あともうひとりは…誰
    だっけ…?」


    先ほどの新しい客が、千石たちのことを話している


    「ん?」


    突然自分達のことを話されたようで、千石は気になって振り向いた


    「よw」


    「こん〜w」


    「君は…立海大の…丸井君と氷帝の芥川君!?」


    千石の振り向いた先に居たのは氷帝の丸井、立海大丸井だった


    「そそwしかし…おめぇ等こんなとこでなにしてんの?」


    芥川が千石と南に話しかける


    「なにって、ただパフェとかなんか色々おやつ食ってるとこだよ。」


    千石は丸井の質問に答えた


    「へぇ…奇遇だな。俺等もおやつとか食いにだよ。」


    またその答えに反応する芥川


    「ふ〜ん…」


433/ 千石編 第三話 バナナチョコクレープ
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/07/25(Tue) 20:51:34
・IP/ 221.78.11.16

    「しっかし、こんなところで立ちながら話すのもアレでしょ?一緒に座らな
    い?」



    「いいぜぇwじゃ座らせてもらうよ!」


    千石は丸井を席に座らせる


    「お〜れもぉw」


    丸井に続き、芥川も席に座った


    丸井は千石の隣に、そして芥川は南の隣に腰掛けた


    「おwそのイチゴパフェうまそ〜じゃんw上手いの?それ?」


    丸井は千石に問いただす


    「うん。さっぱりしてておいしいよ。」


    率直な感想で答える千石


    「へぇ。じゃあ俺もw…」


    丸井は大きな声で店員を呼ぶ


    「すいませぇ〜ん。イチゴパフェいと〜つ。」


    「はい。イチゴパフェ…と」


    店員はなにやらメモ帳のようなものにペンで書き込む


    「あ、じゃあ俺はチョコバナナクレープね〜w」


    丸井が店員を呼んでいたことに気づき、芥川は自分も注文した


    「チョコバナナクレープ…ですね。…他には何か?」


    「いや、もうこんだけっす。」


    「それでは、商品の確認をします。イチゴパフェ。チョコバナナクレープ。でよ
    ろしいでしょうか?」


    「は〜ぃ。OKで〜す。」


    「かしこまりました。ただいまお持ちします。」


    店員は丸井と芥川の注文を受けると、カウンターの奥側にあるドアの中に入ってい
    った…




    ・・・



    「ところでさ…氷帝や立海大とかは、関東ジュニアオープンテニスのリーダーに
    選ばれた人は居ないの?」


    千石は実は先ほどから気になっていたことなので聞いてみた


    「う〜ん…俺のとこは…って眠くてよく監督の話聞いてなかったからわかんねぇ
    や…まぁ俺じゃないってコトは確か。」


    芥川は話を聞いていなかったようだ


    「俺のとこは幸村と仁王だったぜぇい。」


    千石「でも幸村君…手術は…成功したのかい?」







    千石の目の色が変わった


    そう。立海大部長、幸村精市は病名・ギャランバレー症候群といわれる病気に酷似
    している病気をわずらっているらしく、症状の悪化により手術を行ったのだ


    「…おかげさまでな。今は必死に全国大会に向けてリハビリ中だぜぃ。」


    「そっか…よかった…。」



    千石はほっとした様に、肩をおろした



    自分には直接的には関係ない。ただ手術が成功してうれしかった


    純粋にただ一人の人が助かった、ということが、千石はうれしかった



    「(今度…戦ってみたいな…幸村君と。)」





    「まぁな…そういや幸村はしらねぇが、今日仁王は青学の不二を誘いにいくとか
    何とか…」



    丸井は千石に簡単に仁王の今日の行動予定を教えた


    「へぇ…もうメンバー集めに行くんだ…早いなぁ…w」


    「(普通だって…)」


    南は千石への突っ込みを、心にそっとしまった


    「ところで…二人は誰かのチームにもう入ったの?」


    千石はふと考えた。…もしこの二人がどこのチームにも所属していないなら、ここでこの
    二人をメンバーに加えよう。選手を一々自分から誘いに行く手間が省ける。それに
    この二人はかなりの強者。実力には申し分ない。というような考えで


    「俺はまだ。」


    「俺も。」


    「(おwこりゃ…ラッキーw)」


    どうやら二人はまだどこのチームにも所属していないようだ。千石は自分の強運に
    感謝した。


    「じゃさ…二人とも、俺のチームに入らない?」


    千石は思い切って聞いてみた


    「え…お前リーダーに選ばれたの…!?」


    丸井は少し驚いたような表情を見せる


    「まぁね…伴爺が無理やりだけど。」


    「ふ〜ん…じゃあ俺は入ってもいいよ。おめぇのチーム。」


    芥川は千石のチームに参加するといってくれた


    「おwうれしいねぇwありがと芥川君!」


    「じゃあ…ジローが入るなら俺も入るよぉい。」


    芥川に続き、丸井もチームに参加してくれるらしい


    「ホントwよしwナイス丸井君!」


    全て千石の計画通り。…なんと浅い考えなのだろう。…しかし何はともあれ二人はチーム
    に参加してくれた








    「イチゴパフェ、バナナチョコクレープお持ちしました。」


    「あ…ども。」





    ─ジュニアオープンテニス開催まで・・・あと二十四日

434/ 千石編 第四話 審判
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/07/26(Wed) 13:42:39
・IP/ 221.78.11.16

    ─水曜日


    「よし!今日から練習だ!はりきっていこ〜!」


    「やっけにテンション高ぇなぁ…オイ。」


    「ふぁぁぁ…」


    昨日チームに誘った丸井と芥川を連れ、クラブハウスコートに練習に来ている。
    …先ほど喋っていた順にいうと、千石、丸井、芥川の順である


    「え…何?もしかして二人ともやる気ナッシング?」


    自分と二人のテンションの違いが大きいため千石は違和感を感じた千石


    「そういうわけじゃねぇけどよ。…たださ…」


    うつむきながら話す丸井


    「何?」


    丸井の答えを待つ千石


    「…ボール五個持ってきてないってどゆこと?」


    千石「…」








    どうやら千石はラケットと自分の持っているボール五個しかもってきてないらしく、丸井
    の一言がなければ千石は気がつかなかっただろう


    「いやぁ…伴爺から山吹のボール借りるの忘れちゃっててね〜☆」


    軽く返す千石


    「忘れちゃっててね〜☆…じゃねぇよ!どうやって練習すんの!」


    丸井はあきれたように千石にいい放つ


    「zzzzz…」



    ベンチに腰掛け眠る芥川


    「…ジローも寝てんじゃねぇよ!」


    寝てるを芥川に声をかけて丸井は起こそうとするが、芥川には効果がない


    ・・・

    「いやぁ…試合すりゃいいじゃん☆練習試合も十分練習さ♪」


    千石は、あまり考えず思ったことをいってみた


    「じゃあ聞くけどよ…」


    丸井は千石の浅い考えに実に正しい突込みをする・・・それは…


    「ん?」



    「3人でどうやって試合すんだ?」









    「あ…」


    千石は不意をつかれたように、少し焦ったような表情を見せる


    「だ、大丈夫!誰か一人が審判をすれば…!!」



    「だ〜れ〜が〜!?」




    千石にガンを飛ばす丸井


    「そ・・それは・・・・ほら!ジャンケンかなんかで!!」


    丸井から目をそらしながら喋る千石


    確かにそうだろう。どちらだって試合はしたいハズだ


    「ジャンケン…ねぇ・・・ボール忘れた本人が言える言葉かねぇ・・全く。」


    丸井はわざと大きな独り言のようにつぶやく


    「わ、わかったよ!俺がやるから審判!」



    千石はしかたなく・・・試合を譲った


437/ 千石編 第五話 ドロップボレー
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/07/26(Wed) 14:24:40
・IP/ 221.78.11.16

    「はぁ〜あ・・・じゃあ、立海大丸井vs、氷帝芥川慈郎の試合をはじめちゃいま
    〜す・・・。」


    やる気のない、ふぬけた声を出す千石


    「よ〜C!いくぜぇ丸井君!」


    丸井に試合をしようとといわれたとたん、一変して態度が変わっている芥川


    「お〜・・・レィ!!」


    スパァン


    芥川のおなじみの掛け声から繰り出されるサーブ


    「・・・っと!!」


    パァン


    丸井はバックハンドのサイドストロークで一気に振りぬき、それを返す


    タッタッタッタタ・・・


    芥川は丸井のフラットストロークをネット際にダッシュし返す


    「うぉっと!!」


    ポン


    芥川の打球はネット際に落ちてくる


    「(っち・・いきなりドロップボレー・・・かよ!)」


    丸井は一瞬動揺したような表情を見せるが・・・


    丸井「(とれねぇ・・・ボールじゃねぇ・・!!」


    ポン・・・


    ボールが地面に当たり、低くバウンドする


    タッタッタッタ・・


    丸井はネット際に走り出す


    「(でも・・・あれじゃあ・・・届かない・・・よね?)」


    千石がいうのもそう思うのも無理はない。打球は丸井から二メートル以上離れてい
    て、しかももう地面つくすれすれの位置である


    「そぉ〜らぁ!!」


    丸井は大きく声を上げる


    ズサササ・・・


    「な・・!」


    芥川は目を大きく見開き動揺する


    「スライディング・・・!?」


    千石も芥川と同じく、丸井のスライディングに動揺した


    「うぉぉ〜!!」


    丸井はひざを曲げ、スライディングを行う


    ポン・・・


    丸井はギリギリ打球に届くことができたようだ。打球は深いロブ


    「お・・・返した!」


    「・・・っ!」


    「しまっ・・・!!」


    ポン・・・ポンポン


    「0−15。」








438/ 千石編 第六話 見もの
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/07/26(Wed) 20:21:28
・IP/ 221.78.11.16

    「やりぃ。」


    丸井はこぶしを握り締め、小さくガッツポーズをとる


    「さっすが・・・丸井君。」


    芥川は丸井をみつめ、微笑むような感じに近いように笑った


    「(・・・結構足速いじゃん・・・丸井ブン太。・・・あれって・・・不動峰の神尾
    君ぐらい・・・俊敏性あったんじゃない・・・!?)」


    ─千石の予想は大当たり。…やはり王者、立海大の正レギュラーである丸井ブン太。
    立海大の全てのレギュラー兼選手は、身体能力、技術力、精神力の全てにおいて他
    の他校選手に比べ、明らかに高い能力を誇る。その上でまたやら「「皇帝」「達人
    「五つの肺を持つ男」「赤目のエース」などの異名をもつのであるから、実力は相
    当なものなのであろう。・・・ここにいる「天才ボレーヤー」の異名を持つ丸井ブン太
    も、かなりの実力者と十分言える



    「なら・・・俺もO…!!」


    ─しかし、こちらの男、芥川慈郎の力量も、引けを取らない


    「・・!!」


    ひょい


    トスを上げる芥川


    「っでぇい!」


    パァン




    さきほどより、鋭いサーブを放つ芥川



    ─…あのテニスの名門校、氷帝学園中の正レギュラーの実力を持つ男。芥川慈郎


    「・・・そら!!」


    パァン


    丸井はアンダーストロークから、ややロブ気味のトップスピンでサーブを返す


    ─・・丸井と同じく、「天才ボレーヤー」の異名を持ち、さらにあの不二周助の弟、
    「左殺し」の異名を持つ不二裕太を、たった十五分で倒してしまった男・・・


    「・・・っは!!」


    パァン


    そのロブ気味のトップスピンショットを、低い体勢でローボレーで返す芥川


    ─どちらも・・・実力には申し分ない・・・


    「また・・・ドロップボレー!?」


    打球は先ほどと同じように、ネット際に落ちる


    タッタッタッタッタ・・・



    「っく・・・でや・・!!」



    ポン



    苦し紛れにロブがあがる・・・



    「・・・も〜らいぃ!!」


    ネット際でジャンプし、スマッシュの構えを取る芥川


    「っは!!」


    シュパァァン


    ・・・


    「15−15!」


    千石の大きな一声


    芥川のスマッシュエースだ



    「中々・・・練習試合にしちゃ・・・見ものだね。」


    千石が…そうつぶやいた




439/ 千石編 第七話 興味深い試合
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/07/26(Wed) 23:43:48
・IP/ 221.78.11.16

    「まったく・・・自分、人の約束破るのもええ加減にせえよな・・・宍戸。」


    ─ここはクラブハウスコートに近い付近にあるバス停・・・何者かが携帯電話に話しか
    けている


    「ああ。わりぃわりぃ。ジュニアオープンテニスってやつがあんだろ?アレの
    チームのメンバーに誘われてよ。これから練習なんだ。」


    ─どうやら、電話の相手は氷帝学園中レギュラー、宍戸亮のようだ


    「まぁ・・・それなら仕方ないがな・・・。」


    「ホントわりぃな!じゃ、またいつか試合しようぜ!侑士!」


    ップ・・・ツーツーツー・・・・


    「ったく・・・自己中なやつやな・・・自分。」


    ─電話をしていた本人は宍戸と同じく氷帝学園中正レギュラー、忍足侑士


    「どうすりゃええねん・・・もうテニスコートの近くまで来てるんやぞ?」

    独り言のように、ぼそっとつぶやく










    シュパァン


    「ゲーム丸井!3−4!チェンジコート!」


    千石の掛け声により、コートチェンジを行う丸井と芥川


    ─一方先ほどから試合中の丸井と芥川。かなりの接戦らしい


    「オラw不二裕太と戦ったときより、腕が落ちてんぞwジローw」


    コートを移動する際、ちょうど丸井がポストネットに並んだとき、丸井は言った


    「まっさかぁ!これでも一応あれから練習量上げてんだからね!」


    お互い、意地を張り合うように言い放つ


    「(ホント・・・面白い試合だよ。どちらも一歩も引かない・・・)」


    千石は心の中でつぶやいた…













    「ん?向こうで試合やってんのは・・・?ジロー?・・・それと・・立海大の丸井
    か?」

    ─・・・忍足は関東ジュニアオープンテニスの開催期間中は部活が無く、暇なので宍戸
    にこのクラブハウスコートで練習試合を頼んでいたのだ。しかし、宍戸も関東ジュ
    ニアオープンテニスに参加するらしく、今日の練習試合は取りやめとなった・・・
    だがせっかくテニスコートに来たのだ。このまま帰るのも、悔しいと思い、
    どうせなら自主練習をしようとコートの近くに来たのだが・・・




    パァン


    「15−30!」


    ─中々、興味深い試合が行われている。これは見ないと損。そう思ったらしい。





    「あれ?そこにいるのは・・・氷帝の忍足君?」


    千石は忍足の存在に気づいたようだ


    「ん?まぁな・・・」


    ─気づかれてしまった。まぁ気づかれてどうというわけではないが・・・

440/ 第八話 審判放棄
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/07/27(Thu) 22:52:31
・IP/ 221.78.11.16

    「・・・にしても・・・何か用があってきたの?」


    忍足があまりにも突拍子もなく現れたので、少し不思議に思った千石は、忍足に質
    問してみた


    「まぁ・・・な。・・・ただ、ある理由があって中止になったがな。」


    忍足は千石に説明するのがめんどくさかったらしく、適当な返事で質問に答えた


    「へぇ〜・・・」



    忍足の適当な返事を適当な返事で返す千石







    ・・・・





    「ぐわ・・・!!」



    丸井の苦し紛れに声を上げる

    ポン・・・


    丸井は、かなりきつい逆コースに速度の速いドライブ気味のストロークを突かてし
    まったが、なんとか取ることができたものの、返球はチャンスボールのロブになっ
    てしまった


    「キタキター・・・!!!」


    芥川の歓喜の声が弾む


    タッタッタッタッタ・・・


    ネット際にダッシュしながら、スマッシュの体勢をとった芥川


    「っちぃ・・・スマッシュか・・・!!」


    タッタタ・・・


    丸井はスマッシュを警戒し、ベースライン付近に下がる


    「・・・いっくよー!!」


    芥川はひざを曲げ、ジャンプの体勢をとった


    シュゥン!!


    芥川はスマッシュのタイミングを取りながら、大きく跳ぶ



    「!!」


    丸井は動揺して目をつぶってしまい、グリップを強く握り締めた





















    「・・・♪な〜んてねw」


    ─…芥川の声だ…しかし目をつぶっていて、当然丸井の視界にはなにも写らない芥川が何
    をしているのか確認することもできない…











    ポン・・・ポンポン・・・



    「・・・お!ゲーム芥川!4−4!」


    千石のポイントを知らせる声…


    「な…!?」



    ─一瞬何が起こったかわからない丸井…



    …そう、芥川はスマッシュを打つと見せかけ、体をひねらせて、空中でドロップボレ
    ーをネット際にぽとりと落としたのだ


    「 や 〜 り ぃ !!w」


    …芥川の、歓喜の声



    「…やりよったな。ジロー。」


    ボソッとつぶやく忍足










    ・・・・








    「で・・・・今やることないわけ?」


    話を戻す千石


    「まぁな。暇なのは確かや。」


    ─確かに暇だろう…もともと宍戸と草試合をするためにここに来たのに、肝心の宍戸はジ
    ュニアオープンテニスのために試合にこれないのだ。







    「ふぅ〜ん・・・じゃあ・・・」


    千石は少し考え、こういった


    「なんや?」




    「じゃあ俺と・・・試合しない?」

441/ 第九話 セルフジャッジ
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/07/28(Fri) 21:13:25
・IP/ 221.78.11.16

    「ほう・・・自分と試合か・・・結構おもろそうやん。」



    忍足は自分の肩にかかっているラケットケースからラケットを取り出した…





    「じゃ、あっちのコートのほう使おうか。」


    トサ・・・


    千石は、審判台から飛び降りる


    「…ちょっとまてい・・・」


    忍足は千石に突っ込みを入れてみた…


    「ん?何?」


    「自分、審判やってんとの違うか?」








    「あ・・・でも、まあいいや!!芥川君!俺等試合するから、審判自分達でやって
    ね!!セルフジャッジで!!」



    「え・・・まあいいや。わかった!!」


    いやいやながら返事する芥川


    「ッチ…あいつ審判逃げ出しやがった・・・」


    舌打ちを鳴らす丸井



    ─セルフジャッジ。すなわち、自コートに入ってきたボールは、自分がインかアウ
    トか判定するもの。まぁ、こんなやり方より審判がいたほうがかなり試合がしやす
    いのだが・・・



    「・・・ほな、いこか。」


    おなじみの忍足の関西弁


    「OKw」


    「ジュニア選抜の実力・・・見せてもらおか・・・」



    二人は丸井と芥川のとなりのコートに移動する

442/ 第十話 オールラウンダー
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/07/30(Sun) 22:17:44
・IP/ 221.78.11.16

    カランカランカランカラン・・・


    サーブ権を決めるため、トスを行う。ラケットを回し裏か表かを決める・・・


    千石は裏・・・忍足は表だ


    「・・・それじゃ、サーブ権はいただくよ。」


    「はぁ?何ゆうてんねん・・・?まだラケット回っとるやん。」


    忍足の言うことはもっともだ。まだラケットが回っている最中にもかかわらず、サ
    ーブ権をもらう。といっている。普通は表か裏か決めてから発言する言葉のはずだ
    が・・・


    カランカランカランカランカラン・・・カシャ・・・


    「・・・!」


    ラケットの向きは・・・表


    「だからいったでしょ?サーブ権はもらう・・・って。」


    千石は当たり前のようにいった


    「・・・なるほど・・・これが跡部がゆうとった強運の持ち主・・・か。」


    忍足はなにかを思い出すようにつぶやいた…


    「お。跡部君俺の話してくれたの・・・?」


    そう・・・千石と跡部は二年生のとき、jr選抜により顔をあわせている






    ─一年前


    「そら・・・チャンスボール!!」


    千石はスマッシュの構えを取る


    スパァン


    審判「ゲーム千石!0−2!」







    ─jr選抜─



    「っち・・・見かけによらず・・・やるじゃねぇの・・・」


    この男は跡部景吾。


    「っはは。見かけによらずは失礼じゃない・・・?w」


    跡部の発言にかるく反応する


    ─一年前のjr選抜隊の練習試合だ。これにより、練習の班を決めるらしい。・・・も
    っともその選手の力量により班を決めるのではなく、その選手達のプレイスタイル
    から適任のコーチを決める、というような感じだ。だが、この方法には・・・少しばか
    り誤算があった・・・






    「・・・ったく・・・ここの奴等は全員オールラウンダーばかりじゃないか!・・・弱点
    や癖があれば直してやるための班決めのはずだったんじゃが・・・」



    ─この年配の女教師は竜崎スミレ。青春学園の顧問を務める



    「まぁまぁ、そう機嫌を損ねないでくださいよ。・・・確かに、ここの選手は全
    員、オールラウンダーであり、全く弱点がありません。・・・しかし、これより上に育
    てることも十分にできる素質をも兼ね備えています。」


    そしてこの年配の教師は伴田。山吹中の顧問だ


    「そんなのはしってるわい!!・・・ただ何年に一度かの選手ばかり集まりすぎてい
    る・・・ということじゃ。」


    「確かにそうですね。素質を持つものばかりです。・・・しかし、損をすることは
    ないでしょう。」


    「まぁな・・・」






    ─そう・・・誤算とは・・・今年度jr選抜に選ばれた選手は・・・弱点のないオールラ
    ウン
    ダーばかりだった・・・



443/ (削除)
・投稿者/
・投稿日/ 2006/07/30(Sun) 23:39:08
・IP/

444/ 第十一話 絶望への前奏曲
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/07/31(Mon) 20:38:48
・IP/ 221.78.11.16

    「・・・だが・・・千石よう・・・?」


    ─跡部はボールを握っている左手を千石に向ける…


    「ん?」


    跡部に左手を向けられたので、とりあえず反応してみる千石



    「お前の攻撃は・・・ここまでだぜ!!」


    跡部はその千石に向けていた左手にあるボールでトスを上げた


    シュパァァン


    跡部は空中高く上げたトスを、ラケットの超先端に当て力の限り振りぬいた


    「・・・!!」


    跡部のそのあまりにも特徴てきなサーブに一瞬動揺してしまった千石


    シュゥウゥゥゥン…


    「(速い・・・!!)」


    …肉眼で確認するのが難しいほどの速球サーブ。…竜崎は言葉に出さず思った


    「(・・・でも、ただのスピードサーブってわけじゃ・・・なさそうですよ。)」


    ─なにやらあのサーブには他の仕掛けがあるとにらんだ伴田


    シュゥゥゥ・・・


    ボールがネットを越える・・・








    千石はボールの来る方向を予想し、ストロークの構えを取る…


    「(…あのサーブは単なるスピードボールじゃない…あのボールにはかなりのバックスピ
    ンがかかっている・・・!!)」


    ─サーブのボールの回転など、予想することはできても、肉眼で確認し判断すること
    は常人には到底できない。・・・しかし


    「(今のゲームカウントは0−2でこっちがリードしてるし・・・まだどっちもポ
    イントを取ってない・・・まずはこのサーブを確認するため・・・わざとエースを与えて
    みるか・・・!!)」


    ─千石には常人とはかけ離れた動体視力と、完璧なゲームメイクをもっている。・・・そ
    の脅威の動体視力は相手の打球が全てコマ送りで見えるほど。さらに、ある程度打
    球が遠く、見えにくい場合にも、相手の先を読むゲームメイクにより、大体の打球
    ならその場の状況に応じて予想することができる


    シュゥゥゥン・・・



    打球は地面すれすれの位置になった・・・


    「…ッフ。」


    跡部のかすかな鼻で笑う声が聞こえる…



    「(バウント・・・する・・・!!)」


    千石がそう思ったのもつかの間…


    シュゥゥゥン・・ポンポン・・・



    跡部のサーブはバウンド後、鋭いバックスピンにより、バウンド後ドロップショッ
    ト並みにしかバウンドせず、バウンド後転がりネット際に戻ってきた







    「!!!…全く・・・弾まない・・・!!」


    千石は思わず声に出す



    「・・・。ほう。」


    眉にしわを寄せ、うなずく伴田





    「ッフ・・・。絶望への前奏曲(絶望へのプレリュード)だ。覚えとけ。」


    …クレーコートに響く跡部の美声。…

445/ 第十二話 インサイド
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/08/01(Tue) 21:47:07
・IP/ 221.78.11.16

    「…千石…。」


    ─先ほどの美声の後、そのまま言葉を続ける跡部…


    「何?」


    「テメェ・・・さっきの俺の絶望への前奏曲・・・わざと取らなかっただろ。」


    「…!!…ばれちゃってたか…♪」


    ─ウィンクしながらいつもの軽い口調ではなす千石…




    「・・・でもまぁ、とっさのことだったし?どうせ返そうとしても返せなかった
    よ。だから様子を見てもいいか〜・・・と。」



    「フン…。」


    跡部には、千石がわざとサーブを返そうとせず、様子を見ることが分かっていたよ
    うだ




















    「・・・うちの千石君には、恐ろしいほどの強運とゲームメイク、そして動体視力
    を持ちますが・・・」


    ─突然話し出す伴田…


    「ん?なんだい?」


    伴爺は跡部が千石の行動を読んでいたことを知り、竜崎に語りだした


    「跡部君には・・・相手の弱点を見抜く、・・・インサイドがある・・・と榊先生が言っ
    てました・・・。」



    「インサイド・・・!?・・・なんじゃそりゃ?」




    跡部「・・・。」

448/ 第十三話 原因
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/08/03(Thu) 21:32:14
・IP/ 221.78.11.143

    「はぁ!!」


    シュパァン


    跡部はまたラケットの先端でサーブを打つ


    「・・・もう…効かない…よ!!!」


    ポン・・・パァン



    千石は体勢を低くして、フォアハンドで絶望への前奏曲の跳ね返り際をアンダース
    トロークで取った…


    「ほう・・・ライジングか…!!」



    眉間にしわを寄せる跡部…確かに、あの特徴的で変則的な『絶望への前奏曲』を一回で見
    切り、すぐさま返してしまったのだから…そう…それは千石ならではの、ずば抜けた動体
    視力があってこそできるのである。




    「・・・♪」


    千石は自慢げな表情…






    タッタッタ・・・



    「返されることは予想済みだ。あれを返せないようなやつじゃねぇもんな。テ
    メェ…!!」


    跡部は打球に追いつきならが千石に言った



    パァン


    「っよ!!」


    そしてソレを返す千石…


    パァン


    パァン


    ・・・

    ・・







    激しいラリーの展開…


    「ところで・・・そのインサイド、というやつは、具体的にどんな効果なんじ
    ゃ?」


    竜崎は先程の会話を続ける



    「ええ…それがですね…相手の一番弱い…死角…とでもいいましょうか。そこ
    を狙ってくるんですよ。」



    「死角・・・ねぇ。だが、千石も、弱点のないオールラウンダーじゃろう
    が。」


    「確かに、千石君も穴がないプレイヤーです。…しかし、その穴がない、とい
    っても穴が小さく見つけにくいだけですよ。そもそも、弱点のない、プレイヤーなどいま
    せん。ただ、ものすごくあまりにも穴が小さく、弱点を見つけるのが困難なだけです
    よ。」


    「そういうもん…なのかのう…??」



    「それに…今の千石君は…普段とは違った動きになってますね…」


    「…?…そうなのか・・?」


    伴田の言ったことが気になり、千石を観察する竜崎


    パァン


    「っぐ!!」



    跡部のドライブ気味のストロークを返す千石…


    パァン


    「そら!!」


    パァン


    跡部は一瞬とも引かず、パワーストロークを続ける…


    千石「っつ!!」



    …先程から千石は跡部の打球を返すたびに、なにやら苦しい表情を見せる…


    「確かに…。」



    何かに気づいた竜崎


    「…恐らく…跡部君は千石君のある弱点に…気付いてしまったようです…」



    そして何かを知っている伴田


    「…怪我か何か…してるのかい?」



    ─…かなり察しがよい竜崎…



    「おや…勘がいいですね…やはり…あのことが原因でしょう…」



    「原…因…?」



    伴爺はなにか痛いことを思い出すような口調で話した…


    ─一週間前


453/ (削除)
・投稿者/
・投稿日/ 2006/08/05(Sat) 11:22:33
・IP/

454/ (削除)
・投稿者/
・投稿日/ 2006/08/05(Sat) 16:44:28
・IP/

455/ (削除)
・投稿者/
・投稿日/ 2006/08/06(Sun) 12:40:14
・IP/

457/ (削除)
・投稿者/
・投稿日/ 2006/08/09(Wed) 00:43:26
・IP/

458/ (削除)
・投稿者/
・投稿日/ 2006/08/09(Wed) 08:56:42
・IP/

463/ 第十四話 橘結平
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/08/12(Sat) 21:04:53
・IP/ 221.78.11.143

    ─一週間前


    「着いた…ここだね。」





    千石が歩くこと三時間。…千石の前に広がる大きな校舎。…ここは私立、不動峰中
    学校である。




    「ここに…居るんだよね。…あの選手。」


    千石は校舎の中に足を踏み入れる





    「そうだ…あの子に聞いてみようかな…」


    ─千石は校舎の中に入り、校内に居た1年生かと思われる、髪の色が少し亜麻色で
    長いながらもきちんと整っている女子生徒にに話しかける



    「ねぇねぇ、ちょっといいかな?」


    「…?はい?なんですか?」


    その女子生徒は千石に突然声をかけられたのにも関わらず、全く動揺した表情も見せずに
    千石に反応する




    「今年転校してきた…」



    早速千石は質問をする。…


    少し間を空けすぐに…


    「橘結平…って人、知らないかい?」





    ─橘結平。九州二強であり、前にいた中学校、獅子学中のエースとして活躍していた選
    手。
    その選手が転校してきたと知り、さっそくあってみたくなったらしい。




    「!……その人に…何か?」


    女子生徒は少し動揺したように目を大きく見開くが、すぐに冷静な表情に戻った


    「…実はね…試合申し込みに来たんだけどさ…どこにいるか…わかる?」



    千石は、自分の実力を確かめるためか、その橘に試合を申し込みに来たようだ



    「…ええ…グラウンドのほうで…他の一年生と練習してます…。」



    千石は唖然とする。


    「い…一年生と…?しかも何でグラウンドで…!?」


    さすがに不思議に思った千石はその女子生徒に問いただす


    「まぁ…本人に聞いてみればわかりますよ…ついて来て下さい…」






    トサ、トサ、トサ、トサ…





    女子生徒はグラウンドに案内するようなので千石はついていってみる


    「あ…うん。お願い…」







    「…あと…私…」


    「ん?」


    「その橘結平の妹の…橘杏です。」

464/ 第十五話 獅子学中の経歴
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/08/13(Sun) 20:07:48
・IP/ 221.78.11.143

    「…君が…橘結平くん…だよね。」




    「…ああ。…しかし、金髪ではないのによく気づいたな。」















    ─ここは不動峰中のグラウンドの端っこにある、周りが木に囲まれた目立たない場
    所である。…いや、もしかしたら空間…といったほうがいいのかもしれない。広さ
    はちょうどテニスコート一面分である。
    …周りをよく見回すと囲んでいる木にワイヤーをきつく縛りつけ、そこにネットを
    掛けてテニスネットを作っている。









    「…気迫でわかるさ。そのぐらい。」




    ─ 九州二強の橘。確かに千石のいうとうり、雰囲気が違うのかもしれない…





    「…で…なんのようだ…?」



    橘は冷静に千石のここに来た理由を話してもらいたいようだ。




    「…試合を申し込みに…来たんだ。」


    千石の、一言



    ・・・



    長い間が訪れる



    「…」


    橘は猛獣のような気迫の眼光で、千石を睨みつける





    「…獅子学中の二年エースにして九州二強。…その君が同じ県に引っ越す…って聞いて
    ね。jr選抜でどれくらい自分の実力が通用するか…みたくなったん
    だ。」


    千石はその橘の眼光に動じようともせず、話を続ける


    「…でも、その丸刈りの理由や、転校したこの学校で起きた出来事。…こんな
    状況で橘君の実力が衰えてないか心配だけどね。」



    「その話…誰から聞いた…?」




    橘の眼光はよりいっそう鋭くなる


    「君の妹、杏ちゃんからだよ。」






    「杏め…余計なことを…」



    先ほどまでの鋭い表情が少し柔らかくなり、同時にため息のようなものをもらす橘


    「…とにかく…試合は…してくれるの…?」







    ・・・





    「…いいだろう。相手をしてやる。」

471/ 第十六話 本気
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/08/31(Thu) 16:32:15
・IP/ 221.78.11.143





    「そぅらぁ!!」



    シュパァァァァン!!!


    橘は渾身の力を込め、ウェスタングリップのフォアハンドで一気に振りぬくトッ
    プスピン回転のストロークを放つ…




    「…!!」




    千石は打球を集中して目で追う…



    ポォン…ポンポン…


























    橘のトップスピンに、千石は触れられなかった。



























    「ゲ、ゲーム橘さん…!!0−3!!」


    千石と橘の試合の審判を任される、当時一年生の内村京介。
    黒帽子がトレードマーク。


    審判台こそないものの、1コート分のちょうどの空間がある場所。



    審判はネットをくくりつけている木のそばでジャッジすればいい上、ラインを棒で
    深く削って引けばたちまちテニスコートの完成。









    …いまこの手作りの荒いコートで、…





    『場に合わない』。というほうが一番正しい言い方だろう。





    『場に合わない』試合が行われていた。







    「ふぅ…。」


    橘はフォアのストロークを打った構えから、自然な姿勢に戻す。



    「…やるじゃん…。やっぱ。」



    千石はつぶやく









    「さっすがぁ!橘さん!」


    こちらは当時一年生の神尾アキラ。


    「…ほんと…橘さんすごいよね。一気に3ゲームも取っちゃうなんて。…でもさ
    ぁ、いきなり来て試合しようなんて人…普通いないよね?」


    そのそばで小さな声でぶつぶつ独り言を言うような声で喋っているのは伊武深司。
    彼も当時一年生である。



    「まぁな!ったく、そのせいで俺らの練習ができなくなったんだしよ!ここは橘さ
    んに一発ぶちかまして欲しいよな!」


    神尾は伊武言った



    どうやら千石は、不動峰の一年生からはあまりいい印象を受けてないらしい

    「うん。はやく練習したしたいし。…でも橘さんの試合も…見てて面白いね。」













    「そろそろ…本気をだしたらどうだ?千石。」



    「?」



    橘の言葉に、一年生全員は反応した。石田鉄を除いては。




    「自分から真剣勝負をしようと言ってきたくせに、なんだ?そのまま手加減なんて
    してると、お前あと15分でゲームセットだぞ?」



    話を続ける橘。



    「?…え…手加減?」



    神尾、伊武は言葉が重なるように、おもわず口に出した。


    「…あの山吹の人…確かに手加減してた…。!」


    神尾と伊武に、石田は話しかける



    「な、た、確かに橘さんが圧勝してはいるぜ!?でもよ、あの山吹のヤツも、すげ
    ぇうまいじゃねーか。!あれで手加減…なのか!?」


    神尾が動揺しながら喋る



    「あの山吹の人には…さっきまでのゲームでは闘志がなかったんだ…。」



    石田は神尾に言葉を返す


    「闘志ったって…じゃ、ホントはもっと強ぇってのかよ!?」


    「・・・多分な…」



























    「…そんなこと言われたって…」



    千石は橘に言った




    「本気じゃない君がいっても、説得力ないよ。」








    「!?」





    またもや試合をしている千石と橘以外の観戦している一年生達が動揺する。





    「た、橘さんも…本気じゃないだって・・・?」



    伊武がつぶやく



    「…ホント…なんて人たちだ…あの人たちは。」



    石田は目を輝かせてみている










    「まったく…俺が今本気をだしたら…お前、あと10分以下で終っちまうぞ?」



    橘は千石に言葉を返す…



    「じゃあ…本気、出させてあげるよ。」



    千石は不敵に笑った。

476/ 第十七話 バックハンド、ショット
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/09/06(Wed) 20:40:52
・IP/ 221.78.11.143

    「…いくよ。」


    シュゥゥゥ…!!


    「な…あんなに高くトスを…!?」


    森、神尾が同時に発言した


    「…!!」


    橘は眉間にしわを寄せ、視線を千石の上げたトスに集中する




    「…決めさせて…もらうよ…!!」




    スパァァァン!!!




    千石はあの高いトスに向かってかなりの飛距離でジャンプし、一気にラケットを振
    り下ろす




    「(…!!速い!!)」



    橘がそう判断と同時に…




    ポン…ポンポン…




    「フィ、15−0!」



    少し内村は言葉が詰まった




    千石のサーブはコートに突き刺さり、やや高めのバウン
    ドで橘を抜いていったのだ。





    「…やるな。」




    橘は、先ほどと同じように眉間にしわを寄せた












    「うん♪絶好調!!w」



    自信気に千石は拳を握り締める…



    「!!バウンドするまで…打球が見えなかった…!!」


    驚きを隠せない石田



    「…あんな高い打点で…叩いてくるなんて…」


    伊武も石田に続き、伊武も驚愕する







    「ほう。やっと…攻める気になったようだな。」





    「♪wまぁね。…君も…本気で…来てよね?」




    「フン。どうだろうな。」








    ・・・・








    ・・・








    ・・



















    スパァン



    「はぁ、はぁ、…そら!!」



    スパァン



    かなりのクロスコースをついてきた千石



    「う、うまい…!完全に逆を突いた!」



    神尾が驚いている間にも、橘は打球に向かっている








    「…甘い…!!」


    パァァン!



    バックハンドから、一気に振りぬき、千石のクロスコースをストレートに返す




    「!!アレを返した!!…さすが…橘さん!!」




    神尾は目を見開く…


    神尾のスピードを持ってしても、あのボールに追いつくのはかなり難しいだろう。


    …もっとも、この頃の神尾に、あの信じられないほどの俊敏性があったかどうかは不明だ
    が、それなりには動きは速かったと推測される。




    「…!!…なら…仕掛ける!」




    ポン…




    ストレートコースの打球をローボレーでネット際に落とす




    シュゥゥ







    「(!ドロップ…!)」




    橘は千石のドロップに対し、ネット際にダッシュする…










    このとき、この場に居る皆が思っただろう…









    「ぬらぁぁぁ!!!」





    橘の表情が、一瞬猛獣と化していた









    シュパァァン!!




    橘はバックの体勢から一気に振りぬいた。その威力は、そのバックハンドを打った
    橘自信が後方に後ずさりするほど。…考えてみれば見るほど恐ろしいほどの球威となる…




    「ゲ、ゲーム橘!4−5!」



    内村はこのような試合を目のあたりにし、もう審判どころではないはずだ。




    「…面白い球…もってんじゃん。!」



    …打球は千石をそのまま抜き、一気にコートに叩きつけられていた。












484/ 第十八話 九州時代
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/09/15(Fri) 21:28:03
・IP/ 221.78.11.143

    「…ふぅ。」


    橘は振りぬいたフォームから通常の体勢に戻しながらため息をつく。



    「…今のが…あばれ球…かい?」


    千石は橘の猛烈な球威のショットを目のあたりにしたにもかかわらず、冷静に橘に
    問う。


    「あばれ…球…。そのことも杏は喋ったのか?」


    「まぁ、俺が君の事について詳しく聞いたからなんだけどね。」





    「なるほど…ということは…千歳のことも…もちろん知ってるよな?」


    橘の眼光が鋭くなる


    「…一応ね。」




    「千歳…?知ってるか?深司?」


    「知らないよ。第一、橘さん自分の話あんましないもん…」


    ─千歳千里。橘の九州時代のライバル。


    橘は自分のことをあまり話したがらない性格であるため、当時の神尾と伊武がこの
    人物を知るはずが無いのだ。




    「…今のは…あばれ球ではないぞ。」


    橘は話を戻すように、千石にもともとの質問を答える


    「…あばれ球の原理は、打球をフレームとガットの間で打つことで微小のブレが生
    じる…それも改良して思いっきり振りぬくことで、打球が7,8個にぶれさせる打
    球だ。…その振りぬき方はさっき打った奴と同じだがな。」



    丁寧にあばれ球の効果を橘は説明する。


    「なるほどねぇ…じゃあさ…






    打ってみてよ。そのあばれ球って奴。」



    千石はいつものように軽く言う。



    「…ふん、やめとけ。怪我するぞ。」



    橘は千石の言葉の意味を理解すると、鼻で笑った



    「いや、いいよ。打ってみて。」



    「…本気か?」



    「うん。」









    「いいだろう。…打ってやる…。」









487/ 第十九話 2バウンドしたコート
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/09/17(Sun) 21:45:47
・IP/ 221.78.11.143

    「はぁ…!!!」



    スパァン


    「!!」


    千石は深いロブに、ひざを曲げ、筋肉のばねを利用し後ろにジャンプしスマッシュ
    を叩きつける…


    「…甘…い…!!」


    橘はそのスマッシュボールを、フォアハンドのボレーではじき返すフォームのよう
    な構えを取る…


    「(橘さん…アレをボレーで…!!)」


    確かに、石田の思うとおり、あの強烈な球威と速度を誇るスマッシュに対し、ジャ
    ストな位置のボレーの体勢を取ることなど、常人の反射神経では困難とされる行動…それ
    を橘は行ったのだ…。


    「…くるか…!!」


    千石はスマッシュを振りぬいたフォームからすばやく反応できるフォームに切り替
    える…


    「ふん…!!」


    橘のラケットが、打球すれすれの位置になる…











    ポン…



    橘の打球はコートには叩きつけられず、空中に向かっていく…


    「!!フェイク…!!」


    普段はあまり物事に動揺しない伊武だが、さすがにこれには裏をかかれたようだ…




    「…♪!!」






    スパァン!!



    千石はまるでロブが来るのを分かっていたように、


    ロブを叩きつけている千石がそこにいた…



    いや、



    分かっていたかのようにではなく、分かっていたのだ。





    フェイクが千石には通用しなかった理由…それは…


       橘がボレーの体勢に構え、ラケットに打球が当たるまでの間の何もかも、


       




















       千石には全てコマ送りに見えていたのだ─






    「ぬぅらぁぁぁ!!」




    パァン!



    橘は叫び声とともに、スマッシュに飛び込み、力強い打撃音のボレーでスマッシュ
    にしがみつく…



    「…っちぃ…!!」


    ポン…


    千石は強烈な打球にわずかながらひるみ、ほんのわずかなミスが出た…









    「…みせちゃるばい…












































































              あ  ば  れ  …  球  ぁ  !!」


















































    ポン、ポン…






    ボールが地面に2バウンドしたコートは千石のコートではなく、







    橘のコートだった─

488/ 第二十話 千石清純
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/09/18(Mon) 22:49:48
・IP/ 221.78.11.143

    ポン、ポンポン…



    橘のコートに打球が落ちた


    「…!!…」


    橘は度肝を抜かれたような表情だ…


    あのとき、千石にスマッシュを打たれた後ネット際にダッシュし、あのバックハン
    ドの快速ショットの構えを取った。


    もんだいはそこからだ…─




























            「 あ ば れ 球 ぁ!! 」










                 ─ここで─

















         橘の脳裏にあのシーンが蘇ってきたのだ─















       自分の打球が、ライバル、千歳の左目に直撃したあの場面が─










































    「もう君とやっても…意味が…ないみたいだね。」


    千石は橘との試合を、ここで放棄すると言い出した


    「…。」


    橘は黙って千石に鋭く視線をおくる


    「…確かに、君の中ではあの出来事がかなりのトラウマになってると思う。…け
    ど、」



    千石はいったん言葉を切った



    「それを乗り越えていかなきゃ、上へはすすめないんだよ。」


    「…橘…さん…」


    ここでこのつぶやきを言った神尾以外にも、深い事情は知りえないが、橘が九州で
    なにか人生を大きな出来事があったことを感づいたらしい。


































    「…またいつか…試合…できるか?千石。」



    大きな間をおいて、深い瞬きと同時に橘は千石に言った






















    「こっちはいつでも…大歓迎だよ♪」


    千石の口調は、いつものひょうきんな雰囲気に変わった。

492/ 第二十一話 尊敬の意
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/09/20(Wed) 22:48:16
・IP/ 221.78.11.143

    「千石さん…って…言うんですよね!?」


    「うん。♪覚えておいてねw君は…神尾君…だよね?」


    試合が終わり、橘と千石が試合を誓い握手をした後、千石と橘達に大きな拍手が浴
    びせられた。


    その後、千石は他の一年生の部員達にさよならと挨拶をし、もってきた荷物をもっ
    て立ち去ろうとしたのだが、


    「はい!不動峰の神尾です!!いつか、俺とも試合しましょう!!」


    はじめは他の部員からあまり好印象をもたれていなかったが、千石と橘の試合を目
    のあたりにし、部員達は千石に尊敬を覚えたのだった。


    「OK OK!!不動産の神尾君ね!!」


    「は…なにいってんの?…ここ、不動峰だけど?」


    突っ込みを入れる伊武


    「まぁまぁ!細かいことは気にすんなって!!深司!!」



    「そうそう!気にしない気にしない♪」


    「…嫌になるよなぁ・・・全く。」





















    「橘さん、お疲れ様。」


    石田はイスらしきものに座っている橘の肩を後ろからポンっとたたき、スポーツド
    リンクを差し出した。


    「お…サンキュ。」


    橘はふたを開けると、勢いよく口に注いだ



















    「…いい・・・試合でしたね…。」



    「ふん…。そうでもないさ…まだ俺は、本気を出すのを…怖がっていた・・・。い
    や・・・今も・・・」



    橘は一気に飲み干すと、石田に返事を返した。





    「・・橘さん・・・千石さん・・・でしたっけ・・・?・・・あの方がが言ってたことが、なにか
    少し気になったので聞いてもいいですか?」



    「・・・なんだ?」




    「九州にいた頃、なにか・・・あったんですか・・・?」



    橘は一瞬黙り込む・・・


    「・・・。」


    「ス、スイマセン・・・!!嫌ならいいんです!!・・・ただ少し気になっただけなので・・・」


    石田は橘の気を伺って聞いたつもりだったが、橘が少し硬い表情で黙り込んでしま
    ったため、慌てて取り消した



    「・・・そうだな・・・









       そのことは、杏から聞くといい。・・・俺の口からはいえない・・・からな。」




    「杏ちゃん・・・から・・・ですか・・・。わかりました。」

493/ 第二十二話 快勝
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/09/21(Thu) 22:33:46
・IP/ 221.78.11.143

    「こいつで・・・終わりだぁ!!」


    スパァン!!


    丸井は最後の力を振り絞り、一気にスマッシュを振り下ろした


    「!!・・・しまっ・・!!」












    ポン、ポンポン



    ゲーム丸井─


    王者の意地により勝利、と言ったところか─





    「はァ、はァ・・・やっぱ丸井君強いわぁ・・・!!」



    「おうぃ・・・立海大がここで負けてられるかって・・・!!」



    二人は汗だくで息切れしながら話していることから、かなりの大接戦だったことが
    分かる。・・・そのゲームカウントは・・・─







                   6−4─






    デュース12までの大接戦の末、勝利したのは丸井。最後は綺麗なスマッシュエー
    スによるゲームセットである。


    「全く・・丸井君新人戦の時よりもっと強くなってんじゃン!!w」


    「フン!2年もして力が変わってないわけねぇだろぃ!!w」


    「あっはは!!w確かに!!」


    「お・・・あっちも試合、終ったみたいだぜぃ・・・」
































                ─2−6─

















           忍足の快勝であった─

















    「ふぅ・・面白かったよ。君との試合。」



    「ああ・・・俺も十分楽しませてもろたで。・・・自分おもろいやっちゃ。」







    二人は握手を交わすと、千石が大きな声で言った



    「よし!これで今日の練習は終わりね!!w」

498/ 第二十三話 俺のチームに入らない?
・投稿者/ 來一
・投稿日/ 2006/09/28(Thu) 20:05:23
・IP/ 221.78.11.143

    「…うーん…結構暗くなってきたなぁ…忍足君。」



    練習が終わり、丸井と芥川はコートを出て帰っていったのだが、千石と忍足はまだ
    コートに残り、ベンチに腰掛けていた。日はもう沈みかけている。



    「せやな…そろそろ帰ったほうが…けど、少しだけ時間もらってもええか?」


    「ん?何?」


    忍足は地面にうつむきながら言った


    「…千石。自分は、俺に本気じゃなかったやろ…。」



    「…」


    忍足は言葉を続ける


    「…自分と試合するとな、なんか…出し惜しみがないんや。…なんつか…、ゲームメイク
    が上手いいうんかな。負けない程度に手加減して、それでいて相手が潰れん程度に攻める
    ちゅーか…。」


    忍足は頭を上げ千石の目を見る…


    「それで俺が釣り糸に引っ張られるような感じで能力も引っ張られてってな…勝つことが
    できたんや。


              でもやっぱ、それは自分と戦ったことにならへんねん。


              本気でごっつぅぶつかってきて欲しかったんや。」




    「…なるほど…ねぇ。」



    千石は図星を付かれたようだった。図星、というよりは自分自身のプレイスタイル
    を気づかさせられたように、頭を軽く上下に振っている。…事実、桃城戦や神尾
    戦、全て千石は勝利に執念を燃やすような様子は見せなかった。対戦相手調子をわ
    ざとベストコンディションにさせ、試合を楽しんでいた。



    「…ビデオ、自分の試合を見たんやがな。…やっぱその戦い方が敗因やとおもう
    で。」


    「うん…アリガト。君に気付かさせてもらった…なんで二人に負けていたか…
        すぐに直せるかはわからない。でも、
        







        君に気付かされたおかげで、なにか変わった気がする…多分。










    …今度は…俺の話…聞いてもらっていいかな?」




    「なんや?」















    「俺のチームに入らない?」

491/ (削除)
・投稿者/
・投稿日/ 2006/09/20(Wed) 22:47:06
・IP/



495/ 里奈とゆかいな仲間達
・投稿者/ 椎名
・投稿日/ 2006/09/23(Sat) 11:39:23
・IP/ 221.185.208.103

    立海大付属中等部3年    仁王雅治

    仁「いってきまー・・・」

     いつものように朝練に行こうとドアをあけ、固まった

    【理由】
      目の前に少女が寝むっていたから

     仁王は一人暮らし。(両親は海外です)いつものように家のドアをあけたら女の子がいた

    仁「どーしようかの〜・・・」

     このままほうっていくこともできず、とりあえず連れて行くことにした



    ―――――――学校――――――――

    ブ「よっす!仁王」

    仁「おーブン太、ちょうど―・・・」

     運良く(悪く?)部室前でブン太にあった。ブン太は仁王が抱えてるものを見るなり


    ブ「おい!どっからそんなちっさな子つれさらってきたんだよ!!!」


        ゴツ

    ブ「いってー!!」

    仁「アホ!!俺がそんなことするか!!!」

    柳生「何してるんです」

    真「朝から騒がしいぞ」

    柳「仁王が持ってるものに関係する確立100%」





435/ ━関東ジュニアオープンテニス━番外編 一話 意外な人選
・投稿者/ キリ
・投稿日/ 2006/07/26(Wed) 13:42:56
・IP/ 60.41.57.166

    「皆、聞いてくれ」

    手をパンパンと叩く音。
    幸村と真田がいきなり部活後の部室に入って来てレギュラーを集めた。


    「皆、関東ジュニアオープンテニス…ってのは知ってるな?」


    「ああ、知ってる」


    「今度ある大会の事だろぃ?」


    関東ジュニアオープンテニス―――
    リーダーに選ばれた選手が、自分含め4名の仲間を集め、
    ダブルス1組、シングルス2人で行われるトーナメント制の大会。

    わざわざそんな選手にとって面倒なシステムにしたのは、
    選手達の自主性を高める為、など色んな目的があっての事だ。


    「そのリーダーに、ウチからも二人、選出されたよ」


    「へ〜、誰なんすか!?それ!」


    赤也はよほど興味津々なようで、顔を突き出し、幸村に聞いた。
    自分が選ばれてるんじゃないかとか、期待もしていたのだ。


    「ま、まあ落ち着きなよ、赤也。残念ながらお前は違うよ」


    「ちぇ〜、期待して損した〜」


    「まず一人は、俺だ」


    「まあ、やっぱりそうだよな」


    ジャッカルが納得したように言った。


    「わが立海の部長だ。俺のデータでも選ばれる確率は96%だった。しかし…もう
    一人は分からんな… 弦一郎か?」


    柳も幸村が選ばれることはとっくに想定済みだったらしい。
    しかし、あと一人はどうも完全には予想できていない模様。


    「いや…違うよ。あと一人は―――」



    「仁王。お前だ」


    まるで、自分には関係ないよと言わんばかりに、
    ロッカーの方を向いて黙々と着替えていた仁王が、幸村の方をみた。


    「…… ふ〜ん…」


    そう反応し、ニヤっと口を少し歪ませた。



436/ 番外編 二話 一人目
・投稿者/ キリ
・投稿日/ 2006/07/26(Wed) 14:21:15
・IP/ 60.41.57.166

    翌朝、日曜日―――


    「あれ? なあ柳生、あれ仁王じゃねえ?」


    「おや、そのようですね」


    向こうから向かってくる人間。
    特徴的なツンツンした銀髪、間違いなく仁王だ。
    しかし立海大付属の校則ではこんな髪型で問題ないのだろうか。


    「おーい、お前仁王だろぃ?」


    「ん… 何だ、お前らか。二人してどこ行くんだ?」


    仁王は話しかけられ、やっと彼らの存在に気付いたようだ。


    「いや、俺らたまたまそこで会っただけでよ」


    「ええ、お互い行く所は違います。仁王君こそ、どこへ?」


    「は!?」


    仁王は大きな溜息をつき、言った。


    「お前らもう忘れたのか? 俺はリーダーぞ? 勧誘に決まってるだろ」


    「…………」


    丸井と柳生は顔を見合わせた。


    「昨日も思いましたが… 君はこういうの、嫌がる人だと思ってました」


    「…………」



    ――――――昨日――――――


    『仁王。お前だ』


    『に… 仁王ぅぅぅぅぅ!?』


    皆、その言葉には驚いた。
    しかし、当の仁王は、相変わらず澄ましている。


    『幸村、一つ聞かせてもらっていいか?』


    『なんだ?』


    『何故俺だ?』


    かなり単刀直入な質問だった。
    そしてこれに対する幸村の答えは、意外なものだった。


    『…それは俺のただの好奇心だ』


    『! 好奇心…?』


    これにはさすがに仁王も少し驚いた表情を見せた。


    『ああ、詐欺師と称され、蓮二や青学の乾でさえデータの取れないお前だ』

    『お前はいつも、自分の底を見せてくれてないような気がする』

    『お前にリーダーに選ぶ事によって、見た事のないお前が見れるんじゃないか…と
    思ったんだ』


    『…… 分かった。やらしてもらおう』



    そうして仁王は、リーダーになる事を承諾した。


    「また、どうゆう風の吹き回しで?」


    「…… 別に、ただたまにはこういうのも面白いんじゃないかって思っただけさ」


    「… やっぱり、幸村君の言っていた事が気になるんですか?」


    「……… フっ」


    仁王はまた走り出していった。


    「あ、オーイ!一体誰を誘いにいくんだよ!?」


    丸井が大きな声で走り去っていく仁王に訪ねる。
    そして仁王は走りながら、丸井の方に振り返る。


    「今日は―――」











    ある中学生二人が、お喋りをしながら、校門に向かって歩いている。
    筋肉質なのと、結構痩せ型の二人組。

    そして二人は校門を通り校外に出る。
    そしてその時、一人の男が校門近くの壁に寄りかかってるのが見えた。

    二人は特に気にせず、通り過ぎようとした。


    「やあ…」


    「!」


    見知らぬ人間だと思っていたが、話しかけられた。
    もちろん二人とも振り返る。

    その男が話しかけたのは、痩せ型の少年の方だった。


    「こんにちは… 不二 周助…」


    「仁王……かい?」

456/ 番外編 三話 条件
・投稿者/ キリ
・投稿日/ 2006/08/06(Sun) 19:40:54
・IP/ 222.150.161.218

    「仁王って… あ、立海の仁王!」


    不二と並んで歩いていたタカさんが驚愕の声をあげた。


    「珍しいじゃないか… 君がこんなトコに…。一体何の用だい?」


    「…… この時期… 分かりきった事じゃないか?」


    仁王は暑苦しいフードを取り、不二に駆け寄った。


    「… 君がリーダーに選ばれた…って訳かい?」


    「さすが察しがいいじゃないか、不二」


    「ええ!?じゃ、不二を勧誘しに来たって事かい!?」


    タカさんが再び、驚愕の声をあげる。
    仁王は「ビンゴ!」と河村の方に人差し指を向ける。


    「理由を聞かせてもらえるか?」


    「… 天才と言われているお前が俺のチームに入れば優位に立てる…なんて浅い理
    由じゃない」


    「!」


    「お前が俺と同じ類の人間だからさ」


    「…… どういう事だい?」


    不二が訪ねる。
    仁王はさらに不二に歩み寄り答えた。


    「幸村に言われた。『お前は普段は底を見せず、データも取れない』と。お前も同
    じ様な人間だって聞いてるぜ?」


    笑顔で淡々と話す仁王。
    『詐欺(ペテン)師』と言う異名を持ってるこの男。
    誘う相手の事を何も調べず、誘うと言う行動に移すはずがない。
    相手を騙すには、いや何に対してもいえることだが、下調べと言うのは重要なの
    だ。

    そしてそれを聞いている不二自身も、楽しそうだった。


    「面白いよ…仁王。僕もちょうど入るチームのあてが無かった」


    「それも分かって誘った。青学でリーダーになった奴にもお前はいなかったしな」


    「… さすがじゃないか、仁王」


    「まあな。じゃあ、お前は俺のチームに…」


    「うん。ただし条件があるよ」


    「!」


    これは正直、想定外であっただろう。
    仁王は全てを見越して行動していたつもりだったが…自分の甘さを痛快した。
    不二の性格を把握しきれてなかった。この男には多少気まぐれなとこがあるのだ。
    仁王は、データが取れない理由も、少し分かった気がした。

    しかし、全てはその『条件』とやらにかかってる。
    これが難なくクリアできるものだったらいい。
    しかしそうじゃなかったら―――― S2・不二計画がぱあだ。

    思い切って、仁王は聞いてみた。


    「その…… 条件とは?」


    「これだよ」


    不二が差し出したのは、カッパ巻き―――らしきものが二つだけ残ってる、小さい
    寿司の容器だった。
    仁王はそれを見ただけで「ははあ」と条件の内容を全て理解した。
    不二は仁王が理解したことに気付いていたが、一応『条件』の説明を始めた。

    「見たとおり、これはカッパ巻き。帰り際、タカさんのお父さんが差し入れっても
    ってきてくれたんだけど… 僕はこの二つだけ今のトコ余らしてるんだ…」
    「わさび抜きのカッパ巻きを食べたら君の勝ち。そして君がもしわさび入りのカッ
    パ巻きを食べたら…」


    「俺の負け…と言う訳か。いいな、単純で」


    仁王はあっさり受け入れた。その表情は自信に満ち溢れていた。
    そして仁王が手に取ったのは――――――二つとも。

    驚くタカさんに、微笑む不二。
    仁王はその手で、カッパ巻きの形を崩す。
    大量のワサビが、顔を覗かせた。どちらからもだ。


    「…… フフン、やはり、な」


    「酷いじゃないか、不二。こんなの反則だ」


    不二を非難するタカさん。


    「いや、実は全然反則なんかじゃない」


    「え?」


    それを言ったのは、仁王のほうだった。
    不二は表情は変えず、黙り込んでる。


    「確かに不二は俺に『カッパ巻き』差し出した。しかし一度も『どちらかがわさび
    入りで、どちらかがわさび抜きだ』とは言ってない」

    「不二は言ったのはわさび抜きのカッパ巻きを食べたら俺の勝ちで、わさび入りを
    食べたら負けだという事。これのどちらかを食べろとは、一言も言ってない」


    「な… 何かずるくないか?」


    「いいじゃないか。この世の中多少ずるしなきゃ面白くないしやっていけない。ず
    る結構。大いに結構」


    仁王は笑いながら、不二のやり方を肯定しまくる。
    騙されそうになったんだぞ… と、タカさんは思ったが、それで思い出した。
    仁王こそ、詐欺師。騙す側。こういう手口には慣れっこだったと言う訳か。

    不二が拍手を始める。
    きっと、彼もこうなる事が分かってやってたのだ。
    どちらも喰えない男だ。確かに似た者同士なのかもしれない。


    「見事だよ仁王。このゲーム君の―――」


    「勝ちだ」と言おうとしたが、仁王に止められる。


    「何を言ってる。俺はまだ勝ってない。何故ならわさび抜きのカッパ巻きを食べて
    ないからな」


    「!」


    ここまで言う事は、どうやら今度は不二にとっての想定外。
    確かにそう言ったのは、自分の方なんだが。


    「…で、悪いんだが。このカッパ巻きの一つ。わさびを取り除かせてもらった」


    仁王は綺麗にわさびがなくなったシャリを見せると、再び巻きなおし、口に運ん
    だ。そして飲み込んだ。


    「俺の勝ちだな?」


    「… やられたよ。ああ、完全に君の勝ちさ。で…もう一つ条件を加えさせてもら
    っていいかな?」


    「…… まだあるのか? まあ、聞かせてみろ」


    不二はタカさんを人差し指で指した。「俺?」という感じにとぼけた表情になるタ
    カさん。


    「タカさんも、このチームに入れて欲しいんだ」


    「ええ!? ちょ… ちょっと待ってくれ、不二!」


    「何? タカさん。このチーム嫌? 先約あるとか?」


    「そんなんじゃない! けど… このチームははっきり言って凄い。俺みたいの
    が…」


    「いや、俺は一向に構わない」


    「!」


    仁王の返事は『YES』


    「実は不二以外に、誰誘うかまだ悩んでいたところなんだ。それに、俺も不二もど
    ちらかと言えば技で勝負するプレイヤー。お前みたいなパワープレイヤーも欲しい
    と思っていた。だから、構わない。いや、むしろ歓迎しよう」


    「けど…」


    「いいじゃないか。リーダーが言ってるんだし。2対1じゃ多数決でもこっちの勝
    ちだ。これは入るしかないよ」


    「… ありがとう。分かった。このチームに入らせてもらうよ」


    かくして、仁王のチームは3人になった。
    集めるべき人間は――――――あと一人。

459/ 番外編 四話 観察
・投稿者/ キリ
・投稿日/ 2006/08/11(Fri) 19:30:20
・IP/ 218.44.126.109

    ボロボロのネットに、錆びた鉄柱。
    かなりの歴史を感じられるクレイコートで、不二と河村は打っていた。
    時々、ネットに引っ掛かるボールがネットに空いた穴をすり抜けてしまうことさえ
    ある。
    本当に、かなりひどくボロボロだ。

    ここに二人を連れてきたのは、もちろんリーダーの仁王。
    ここは立海では仁王しか知らない穴場らしく、ここで練習しておけば、誰の目も心
    配する事は無いとの事。
    つまり、偵察の心配は無いという事だ。

    それにここは、ネットや鉄柱はボロにせよ、地面は特に問題ない。
    イレギュラーバウンドもしないし、ラインも良く見える。
    まさしくここは『穴場』なのだ。


    そして、二人に打たせ、リーダーの仁王は何をしているかというと、
    コートの傍らに設置してあるベンチに、ぐたーっとだらしなくもたれ、アイス『ガ
    キガキクン』を銜えている。


    「くあー、暑ー……。ん、お… やった!当たってる♪」


    アイスの棒には『当り』と書いてある。仁王はそれを見て喜んでいる。


    「… なあ、仁王…」


    「どうした河村? 言っとくが、あげないぞ」


    「いや… いらないけど…」


    河村がラリーを一時中断し、仁王に話しかけてきた。


    「お前、さっきからそこに座ったままだけど… 打たないのか?」


    「言ったろ。『ちょっとお前らの実力を再確認したいから、今は見とく』と」


    (…… 全然見ていると言う感じが無い…)


    疑惑の目を仁王に向ける河村。


    「まあ、正直途中から見てなかったけど。ちょっと寝てたし」


    「………」


    河村の思った通りだった。

    仁王が勢いづけ、椅子から立ち上がる。むしろ『飛び上がる』と言う表現の方が似
    合ってる感じさえしたが。


    「よし… 分かった。もうラリーはやめていい。俺も練習に参加するよ」


    やっと普通の練習が始まると思い、河村はホっと胸を撫で下ろした。


    「……が、その前に俺はこの当り棒を引き換えてくる。その間、ラリーなり休憩な
    り、好きにしてくれ」


    「………」


    まあ、さすがは詐欺(ペテン)師とでも言っておこうか。


    駄菓子屋に向かう仁王を見送った後、河村は不二に不満…というか、不安をこぼし
    た。


    「本当にこんな調子で大丈夫かな…。まだあと一人、チームメイトも集まってない
    のに……」


    「フフ… けど、結構楽しいよ。ちょっと抜けた感じがあるのも、新鮮で。普段指
    揮を執っているのが手塚だからかな」


    「けど、抜けすぎてるのも……」


    「大丈夫だよ。彼も考えなしの事をする奴じゃない。それは僕らがチームに入った
    あの日、実証されてるだろう?」


    「確かにそうだけど………」


    結局その話し合いは、仁王の帰還で中断され、普通の練習がある。
    まあ、さすがは立海大付属のテニス部の練習を知っている彼だ。
    練習全てが効率よく、かつ彼らのプレースタイルとマッチしている。

    けどやはり、考えた彼自身は適当にやってるように見える。
    それが河村にはどうも不安でたまらない。


    そして練習は終了した。
    解散前に、仁王はメンバーを集め、話をした。


    「今から、基本のオーダーについて話をする。何か無い限り、あまり動かしたくは
    無い」


    「まず、S1・俺。S2・不二… つまり後必要なのは、河村のペアになりたる人
    間という事だ。そしてそれについて今日一日、河村を見て考えてみた」


    「!」


    そうだ。彼は何も適当にやっていた訳ではない。
    自分の練習ではなく、『観察』に徹していたのだ。


    「実際に味わってみてよく分かった。河村のパワーは本当に凄い。おそらくかなり
    のトレーニングを積み重ねてきたのだろう」
    「しかし短所を挙げるならば、『技に対処が出来ない事』だ。スライスが掛かって
    たり、ドロップされたり揺さぶられたりしたら、その本来の力を発揮できない」
    「おそらくそれが分かっていて、今まで短所を無くすんじゃなく、長所を伸ばす事
    に力を注いでたんだろ?」


    「!……」


    不二が小声で言う。「僕の言った通りだったろ?」と。
    河村もやっと気付いた。何も不安がる事は無い。仁王は信頼できる、と。
    詐欺師には『観察力』も必要。やはり彼は根っからの詐欺(ペテン)師なのかもしれ
    ない。


    「そこでお前のパートナーに良いと思うのは、お前の短所をカバー出来る人間だ」


    「そ… そうか…」


    「と、最初は思ったが、やっぱり止めた」


    「そ… そうか……って、え!?」


    「そんなダブルスの教科書通りみたいなのは、面白くもないし、試合も上に行くと
    勝てない。お前の場合… 長所をもっと伸ばそうと思う…。つまり、お前のペアは
    『パワープレイヤー』がいい。力でゴリ押しだ。相手に小技なんかさせる余裕も与
    えない」


    「…… なるほど」


    無茶苦茶に見えて、中々に的を射てる意見にも見えた。
    仁王の話術も、少しは関与しているのかもしれないが。


    「それでお前のペアにいいと思われる人物なんだが…」


    急に腕を組み、考え込む仁王。
    どうやらそこはまだ考えていなかったようだ。

    そして今度は急にバっと河村に顔を向ける。どうやら閃いた様だ。


    「… 不動峰の石田……なんてどうだ……?」


    仁王は顎に手を当て、不気味に笑みながら唇を舐めた。

467/ 番外編 五話 握手
・投稿者/ キリ
・投稿日/ 2006/08/17(Thu) 17:59:58
・IP/ 60.36.132.18

    「着いたよ。不動峰だ」

    後日、仁王は二人を引き連れ、不動峰中に来ていた。


    「けど… 確か大会の期間中は部活無いんじゃないっけ?」


    そう、実は大会までの期間、参加が決まってる学校は部活を禁止されている。
    それを知ってか知らずか、仁王は不動峰に足を運んだ。


    「ああ、知ってる。けど、俺らはアイツの何も知らない。情報源があるとすれば、
    ここしか考えられない」


    知ってたようだ。

    確かに、彼らは石田の事は特に知っていない。家なんて知る訳無い。
    唯一彼の居場所として特定できるのが、不動峰中学校くらいなのだ。


    「それはそうかもしれないね。でも… 何も用が無いのに学校に来るとは思えない
    し、学校側が彼の個人情報を僕らに流すはずが無い。会える確率は少ないと思うけ
    ど?」


    乾や柳じゃあるまいし、不二が確率の話をするのは珍しかったが、
    意見としてはまともで、的を射ていた。


    「ああ… 俺もそう思ってたが… どうやら俺達は運がいいみたいだな」


    「… ?」


    仁王が耳の裏に手を当てている。どうやら耳を澄ましているようだ。
    どうやら打球音が聞こえてるようだ。


    「… 相手は居ない… 壁打ちか…? そして……やっぱりこれは『パワーヒッタ
    ー』だ」


    「に… 仁王?」


    二人にとっては意味不明な発言を残し、仁王はいきなり走り始める。
    校内には入ってない、塀を沿った道を走る。

    音のする方に向かって―――…


    「ヌンッ!」


    轟音を出し、ボールは壁に向かって飛んでく。
    しかし、当りどこが悪かったようで、ボールはまともには返って来なかった。


    「ふぅ… やっぱ練習無いと暇だな…。誰かと打ちたいな…」


    「そうかい」


    「! へ!?」


    汗を拭っていた石田は、突然の声に驚き振り向いた。
    後ろにいたのは、塀の上に座り込んでる仁王。


    「こんにちは、石田君」


    「え… あ、ああ… こ、こんにちは…」


    そこは律儀な石田。挨拶されたら、挨拶してしまう性分。
    けど、状況は一切理解出来ていない。当然ながらだが。


    「え… と… と、とにかく、何の御用で?」


    「… 関東ジュニアオープンテニスってのは知ってるな?」


    いきなり高圧的な口調で話し出す仁王。これが彼の素なのであるが。
    しかし、その一言でどうやら石田は気付いてくれたようだ。


    「…… 勧誘…ですか?」


    「察しがいいねぇ… その通りさ。一人寂しく壁打ちなんかしてるとこ見ると… 
    お仲間は皆どっかのチームに入っちゃったか?」


    「ええ……… ですが…」


    「ん? 何か問題でも?」


    「いえ… 他のチームメイトは?」


    「もう揃ってる。青学の不二と河村。お前で最後。ちなみに河村とダブルス組んで
    もらうことになるぜよ」


    ちなみに、その不二と河村は塀の向こう側で会話を聞いてる。
    別に登れない訳じゃないが、3人して登ることもないだろう、と。
    事実は、ちょっと恥ずかしかったり。3人が塀の上で同じポーズを取っている姿を
    想像すると、確かに少し滑稽だ。


    「まあ、ちょっとこっちに来てくれ。こんなとこで話すのも何だ。ゆっくり話せる
    トコに行こう」


    石田は渋々、仁王に付いて行く事にした。
    着いたのは喫茶店。代金は仁王が全て持つらしい。


    「ま、チームに入ってくれたらの話だがな」


    「…………」


    脅しか。

    そして3人は店内に入ると、奥の方のちょうど4人座れる禁煙席に腰を下ろした。


    「じゃ… 改めて、このチームに入ってくれるか?」


    「う〜ん… とてもいいお話なんですが…」


    どうやら迷っている様子。
    理由といっても特に無いが、そう簡単に決めていいものかと。


    「あー、河村がいるからか。そうだよなー。自分の技パクられて、腸煮え繰り返っ
    てるよなー?」


    「! 俺!?」


    「え? え!? いや、いやいや、そんな事は…」


    「だからこんなのはどうだ?」


    仁王のいつも使う手。自分の土俵に持っていく。


    「ここで河村と腕相撲をして、河村が負けたら諦めてやる」


    こうやって、『勝ったらこっちのもの』という条件を突きつける。
    こういうのが単純だ。下手に悩まれて、結局断れても困る。その前に突きつける。


    「… 分かりました。それで行きましょう」


    ニッと笑った後、仁王は河村と席を交代した。
    こうしたら、二人が向かい合わせに並ぶ。


    「考えたね。けど、正直絶対勝てるとは言えないよ。何か考えがあるの?」


    仁王の向かいに位置することになった不二が、話しかけてきた。


    「…… いや、正直これは賭けだな」


    「賭け?」


    「負けたら負けた。河村はそれまでの男だった訳だ。 …ま、河村以上のパワーを
    誇る奴なんかいたなら仲間にしたいんだが… ところでお前は何喰ってんの?」


    先程まで気付かなかったが、不二は何か注文している。
    緑色のパフェ。仁王は抹茶か何かと直感する。


    「わさびパフェ」


    「…………」


    ―――結構来るとこだったが、そんなゲテモノがあったとは…

    仁王は、領収書を見てみる。


    「………」

    ―――何でこんな高いんだ? これ。


    「代金は全部、君が持ってくれるんでしょ?」


    「…… お前結構遠慮しない奴だったんだな」


    そんな二人をよそに、既に河村と石田は、始まる体勢に入ってる。
    しかし、少しも動かない。


    「おい、もう始めていいぞ。なんなら俺が合図を―――――」


    「いや、必要ないと思うよ、仁王。もう始まってる」


    「…… ほほー…」


    そう、既に始まっている。二人とも全力を出している。
    しかし、その力は均衡しあっている。
    傍から見たら、確かに始まってないようにも見えるかもしれない。

    しかし、二人の表情を見たならば、そんな考えは消えてしまうだろう。

    例えるならまるで、崖から落ちそうなのを片手だけで支えるという窮地に立たされ
    た人間の見せる顔。
    それほど力の篭もった顔。汗ももう迸るほど出ている。冷房の効いた、店内でだ。


    (何だこれ…? 石田君… ここまでパワーが… クソッ! 腕が張り裂けそう
    だ!)


    (河村さん… 不二さんと組んでたあの時のパワーとは比に…! きっと… よほど
    のトレーニングを…)

    (―――… この人と、組む… か…)


    「ぬおおおおおッ!! バーニンッ!!」


    「!」


    均衡が崩れる。腕が傾く。押されてるのは、石田。
    いや、もう立て直せない。

    石田の右拳が、勢いよく喫茶店のテーブルに叩きつけられた。


    「ハァ… ハァ… ハァ…」


    二人とも息を切らしている。


    「…… まさかこうもいきなり、決着が着くとはね…」


    「何故かは知らないが、石田が一瞬怯んだな。そのお陰だ」


    石田が怯んだのは、一瞬、河村と自分が組んで戦っている姿を想像してしまったか
    ら。
    「この人と組んだら、どうなるだろう」と考えてしまったから。

    息を整え、「フぅ」と息を吐いた後、石田は右手を差し出してきた。


    「よろしくお願いします…」


    「! …ああ!」



    硬い握手が交わされる。仁王チームに、最後の一員が加わった瞬間であった。

473/ 番外編 六話 傷
・投稿者/ キリ
・投稿日/ 2006/09/02(Sat) 20:33:22
・IP/ 125.203.145.44

    「こ…… ここは…」


    石田が仲間に入り、後日、仁王は二人の他、石田を例のボロコートに連れて来てい
    た。
    普段あまり良いとは言えないであろう環境でテニスをしている彼でさえ、呆気に取
    られるほどのボロさだった。
    くどいほど繰り返しているが、このコートの見た目は本当に酷かった。


    「大丈夫。使うには特に問題は無いから」


    不二がフォローを入れる。
    河村も初めて来た時は、こんな反応だった。
    不二はと言うと「面白いコートだね」と微笑んでいるだけだったのだが。


    「よぅし。メンバーも揃ったし… 今日やるのはなぁ…」


    仁王は石田のリアクションは無視し、喋り始めた。


    「ダブルスの特訓だ」


    「え? いきなり…ですか?」


    軽く驚く石田。


    「いきなりもくそもないだろう。お前らまだ組んでろくに打ってないんだ。大会ま
    でに完成させるつもりなら、早くから始めていた方がいい」


    「…それもそうですけど…」


    「まあ、まずはとりあえずシングルスの試合してみろ。俺は見てるから」


    「は……はい!」


    河村サーブでゲームは始まる。


    「バーニンッ!!」


    ―――河村さんのパワーは分かってる…。最初から全力で行く!


    「ぬん!」


    河村の勢いあるパワーサーブを、さらに勢いのある打球でリターンする石田。


    「…あいつの球、立海戦の時より威力上がってる…」

    ―――僅かながら、河村の波動球の方が劣ってる。取れないか…。


    「ぬどりゃあ!」


    「!」


    仁王は思わず、ベンチから立ち上がってしまった。
    普段河村が打ってる波動球とは打ち方が違う。ダッシュをしてから打った。
    何より威力が段違いだった。

    石田のラケットが、弾き飛ばされてしまった。


    「ダッシュ波動球… ただ真似するだけじゃ、オリジナルを超えるのは難しい。だ
    からタカさんは、オリジナルをアレンジした。オリジナルを越える為にね…」


    「ダッシュ… 加速する事によってパワーが増す? はは…単純すぎて逆に誰も考
    えないな…」


    単純な発想ながらも、誰もやらないのは、それこそ単純に難しいからだろう。
    テニスは、球を追う時こそは走るものの、テイクバックを始めてからは動かないだ
    ろう。
    それでこそフォームが綺麗で、いいショットを打てる。
    走りながらいいショットを打つのは難しい。最後まで全力で走らないと追いつけな
    いような球を、鋭いショットで返すのは困難極まりないだろう。
    そこまで難しい訳じゃない。追いつける球に向かって走ってるし、縦の動きだか
    ら。
    それでも、普通はやらない。走った勢いをそのまま乗せて打つなど。

    オリジナルを超える為のアレンジ。
    しかもそれは六角戦で見せた時より確実に威力が上がってた上、使える頻度も格段
    に上がった。
    その証拠に、彼はこのゲーム、ダッシュ波動球を使い続けた。

    その結果、ストレートで石田から1ゲームを奪った。


    「……アイツ…入れてよかったな」


    「よっしゃぁ! グレイトォ!!」


    次のゲームは、石田のサーブから。
    河村は、コートの後ろの金網にべったり張り付いてる。


    「! リターンからダッシュ波動球を使う気か…」


    「タカさん… 一気に畳み掛けるつもりだね」


    仁王の言った通り、石田のサーブが放たれた瞬間、河村はボールに向かってダッシ
    ュを始め、
    まだ威力の衰えてないダッシュ波動球を放った。

    「!」

    しかしそれは返された。
    さらに鋭い勢いの打球が河村の横を過ぎ去った。


    「…ダッシュ波動球が、返された……?」


    ダッシュ波動球の弱点。
    体重を全て乗せきった打球を打った後の体勢は不安定だから、打ち込まれたら返せ
    ない。
    その上、ダッシュで勢いよく前に出てしまうので、同じく打ち込まれたら返せな
    い。
    しかし、『打ち込まれる心配など無い球』だから、そんな弱点関係無かった。
    それが今、打ち込まれてしまった。
    いや、ダッシュ波動球の弱点を考えなくても、それは返せなかったであろう。


    「…なあ不二よ。実は俺、ちょっと気になってる事があったんだが」


    唐突に仁王が不二に話しかけた。
    不二が「何?」と返事をする。
    少しの間を空け、仁王は言った。











    「…何で石田の顔は、あんなに『傷だらけ』なんだろうな?」


    その時、河村、仁王、不二、三人全員が、石田の身から、沸々と闘志が溢れ出てる
    のを感じ取った。


    ―――河村さん… まさか波動球をそういう風にアレンジするとは… 予想以上で
    した。

    ―――どうやら『素の全力』じゃ敵わないみたいですね。


    三人のうち、不二のみがこのオーラの感じに覚えがあった。
    彼の脳裏に、ある日の光景が過ぎる。


    「……橘…っ!」


    傷も、オーラも、見掛け倒しでは無い事を、彼はこの後身を持って証明する。

482/ 番外編 七話 回転
・投稿者/ キリ
・投稿日/ 2006/09/12(Tue) 22:37:28
・IP/ 125.203.148.28

    石田のパワーが上がってるのは、一目見て明らかだった。
    受けている河村には、見るよりも何倍もそれを痛感できた。


    「……不二、お前あの石田のオーラについて何か知ってんだろ? 無我とは違うよ
    うだが…」


    仁王が視線の先はコートから動かさぬまま、不二に話しかけた。


    「…よく分かったね」


    「お前の反応を見ればな」


    「さすがだね…。うん、ちょっと前、橘と打ったんだけど、その時、本気になった
    彼の雰囲気。そっくりだよ。まさにあんな感じだった」

    「あの時の橘は、少なくとも関東大会時の切原には負けなかっただろうね」


    「そこまでか…。やるな、橘も。そしてそれをやってのけるアイツもな…」


    そうこう話しているうちに、今度は石田がストレートでゲームを取り返した。
    石田の波動球の威力は、既に河村のダッシュすら抜いていた。

    技術の差で負けるのは仕方なしと今まで思ってきた。
    そんな河村が、パワーで負けるのは相当堪えたであろう。


    ―――ダッシュすら返される…。凄いな。本当にパワーアップしてる。

    ―――あの顔を見れば分かるよ。きっと並大抵でない特訓を積んだのだろう。

    ―――どうしよう… ただの練習試合っぽいものだったのに…彼、本気だ…。



    ―――やっぱ、俺も本気でやんなきゃ失礼か…。

    「バーニンッ!!」

    河村のパワーサーブが放たれる。
    衰えるどころか、その威力は上がっているくらいだ。
    しかし、それも『焼け石に水』程度。石田は波動球で返した。


    「! 石田君の波動球の威力も上がってる…!」


    「猛獣のようなオーラだな…。ここまでとは…」


    しかし河村は向かってくる球に向かい、ダッシュした。


    「無駄だ、河村! 止せ! お前の腕が潰れるぞ!」


    仁王は叫ぶ。河村は無視してスイングを開始していた。


    「! ………なっ」

    ―――スイングの開始が早過ぎる! 血迷ったか河村! それじゃあ空振るだ
    け…。


    空振った。しかし、そのまま一回転し、再びスイングを始めた。


    ―――まさか…ダッシュの勢いでそのまま回転し、その勢いと、遠心力を―――…

    ―――加速(ダッシュ)と回転(スピン)を利用した、パワーショット…………


    河村の打球が地に突き刺さる衝撃は、地面を伝って仁王達にも伝わった。
    これにはさすがに石田の表情も曇る。仁王も、呆気にとられてしまった。


    「ダッシュスピン波動球……ってとこかな」


    不二が小声で、そう呟いた。


    ―――こいつらのパワー、本当に想像以上だ。この二人のパワーが重なった
    ら………… ん?

    「ふふ…はは…はははははは…はははははははははは!」


    「?」


    急に声高らか笑い出し、ベンチから立ち上がる仁王。
    普段クールな彼だ。不二も思わず彼の方を向いてしまう。
    試合に集中していた、二人でさえ。


    「くく… いや、すまんな。おい、試合は終わりだ」


    「え!? 終わり!? でもまだ……」


    「バーカ、元々決着着ける為の試合じゃなかろうが。本気出して、試合前に潰れて
    くれるなよ。今のショットなんか、一球が限界じゃないのか? 河村」


    慌てる二人を他所に、仁王がコートに入って来る。
    ちなみにダッシュスピン波動球が、一球で限界だという事は、実は正解だった。


    「まあ…お陰で『これ』が思いついたんだがな…。おい、今から俺の言うとおりの
    事をやってみてくれ…」


    訳の分からぬ二人に、仁王は『やってほしい事』の説明をした。
    どんどんと、二人の表情が歪んでいく。


    「そ、それは………」


    「ああ、正直上手くいくかどうかは賭けだな。でも、面白そうじゃないか。上手く
    いったら、使えるし」


    どういう心臓をしているんだ、この男は。河村は思った。
    失敗したら、損が大きいのはどちらかと二人なのだから。
    でも、この男はそういう男なんだ。河村はそうも思い、無理矢理納得してみせた。


    「ま、百聞は一見にしかず。とにかくやってみよう」


    微妙に意味が違う気もしたが、仕方なく二人はコートに入った。
    石田が前、河村が後の陣形で二人は構え。仁王は一球だけ、球を出すという事で。

    唯一会話に参加してなかった不二は、ただ何が起こるかを、コート脇から見てる事
    しか出来なかった。

    仁王が軽くボールを打つ。そしてもう次の瞬間、返球されたボールが仁王の足元を
    バウンドした。

    先ほど、二人が打っていた打球を、さらに上回る勢いの打球が。


    不二の目が軽く見開かれる。その驚きは、打球に勢いに対して…でもあったが。
    それよりも、二人の『打ち方』に、彼は驚かされたのだろう。


    「くく… 予想以上に上手くいった」


    それを打った二人でさえ、顔を見合わせ驚いていた。

486/ 番外編 八話 不二
・投稿者/ キリ
・投稿日/ 2006/09/16(Sat) 22:47:33
・IP/ 60.41.44.247

    「……朝…か。練習…。…今日は休みだった…」


    大会まで、あと少しと迫っていた。
    仁王の思いつきで出来たダブルスの技は予想以上に上手くいったみたいで、
    タカさんと石田君。二人のダブルスは、もうかなり出来上がっている。


    「僕は………」


    二人の技が出来たあの日、仁王に言われた事を思い出した。


    『正直言わせてもらう。今のままのお前じゃもう通用しないぞ。だが、お前なら出
    来る。大会までのパワーアップ……やってみせろ』


    確かに、最近僕は通用しなくなってきた。


    樹に返された『つばめ返し』
    英二の助けが無かったら、どうなってただろうか。


    切原にスマッシュで返された『白鯨』
    『羆落とし』で何とか切り抜けられたけど…。


    そして、その『羆落とし』

    橘に、ラケットを飛ばされ、ガットに穴を開けられた。
    返すことしか、出来なかった―――


    僕の返し球(カウンター)が、効かなくなってきてる。
    仁王にそれを、見抜かれてしまった。
    彼の観察眼。興味無いだけで、実際は乾や柳より凄いんじゃないかと、少し思って
    しまう。

    4つ目の返し球(フォースカウンター)もあるが、あれが使えるケースは結構稀だ。
    使ったところで、それまで攻略されたら世話無い。

    天才天才と煽てられてきたが、皆が本気になって攻略すれば、こんなもんだ。
    切原がいつぞや、僕に言ってたな。


    『天才ってさぁ… 一度潰れると案外モロいんだよなぁ』


    確かに、彼の言う通りかもしれない。一度潰れた天才は、脆い。

    が、僕はこのまま崩れるつもりはない。
    脆いなら、頑強なものにもう一度作り直せばよい。


    仁王の言った通り、大会までにパワーアップを計る。
    これまでの仲間、敵が教えてくれた。限界なんか無い。僕ならきっと、出来るはず
    だ。


    やってやる…。カウンターの進化…。
    それに必要なのは…………。


    ―――とにかく僕は外に出た。
    練習が休みといっても、こんな天気のいい中、何もしないのはもったいない。

    軽く走りながら、これからどうするか考えてみる。
    まず早急に改善が必要なのは『羆落とし』かもしれない。

    四つの返し球(フォースカウンター)の中でも一番使い勝手が良く、
    テニスの決め球『スマッシュ』を封じれる事がウリだったが、あれが一番破られて
    る。


    『蜉蝣包み』を習得するため、ボール3球をいっぺんに打ち返すという練習した場
    所に行ってみる事にした。
    結構遠いけど、走ってれば30分もあれば着く。

    それにあそこは、仁王とは違う僕にとっての穴場で、少なくとも近隣の学校の人間
    と会った事は一度も無かった。

    結構設備も良く。スマッシュをイメージしたボールを打ち返す練習も出来たと思
    う。

    ともかく、腕時計のストップウォッチ機能で計って25分13秒。ベストタイムで
    僕はそこに着いた。


    中は結構広く、スマッシュを打ち返す練習が出来る場所がイマイチ分からず、中を
    少し彷徨ってた。

    すると、先ほども言ったが、僕が『蜉蝣包み』の練習をしたあの場所に、結構な人
    だかりが出来ていた。
    気になったので、人垣に入り込んで、見えるトコまで進む。

    パーカーを着て、フードを被った男がボールを打ってる。
    僕も流石に驚かされた。その男はいっぺんに『5球』ものボールを打ち返している
    のだ。

    男がまた、飛んでくる5球の球を打ち返したら、機械は止まった。


    「チッ… もう終わりかよ…」


    小さく呟くと、その男はネットをくぐり、そこから出る。
    自然に人だかりは彼の為に一歩後にさがり、彼が通れる道を作った。

    その道を通り抜け、出口に向かう男。外に出る直前、彼はフードを取った。
    後姿だったけど、その髪型には見覚えがあった。


    「あ………跡部!」


    「?」


    思わず叫んでしまった。本当に思わず。
    あまり、今は会いたくなかった。このままやり過ごせば良かったのに。
    僕は、人違いである事を祈った。


    「…あーん? 不二か?」


    やはりこの男は、氷帝学園テニス部部長・跡部 景吾、その人だった…。

    数秒間、見合ったまま沈黙が続く。もう先ほどのギャラリーは散らばっていた。


    「てめぇ… ずっと見てやがったのか…?」


    先に彼の方が口を開いた。


    「いや… ついさっきだよ。君が5球もの球をいっぺんに打ち返すのを、2回ほど
    見ただけさ」


    「……ククク…そうか、それはすまなかったな」


    「? どういう意味だい?」


    意味が分からなかったので、聞いた。
    彼からは、思いも寄らない返答が返って来た。


    「いや…『5球程度しか』打ち返さないようなの見ても、詰まらなかったろ?」


    彼は何と『5球程度しか』と言ってのけた。
    しかし、彼が言うと、虚勢には感じないのが不思議だ。
    彼はいつも大きい口を叩くが、それ相応の実力を、彼は確かに持っているのだ。


    「時に不二よ… お前は今度の大会…出るのか?」


    正しい固有名詞は言わなかったが、言わずとも分かると思ったのだろう。
    実際、今『今度の大会』なんて言われ、思い浮かぶのは一つしかなかった。


    「……出るよ」


    「ほう… 一体誰のチームで?」


    「それは言えないよ…」


    「ハッ…敵に情報は洩らせないってか…?」


    「まあ、そういう事だね…」


    仁王にも口止めされてるし。


    「じゃあ、俺のチームを教えてやろう。橘に真田……そして越前だ!」


    「!」


    驚いた。まず僕が何も言わなかったのに自ら自分のチームメイトをバラす事。
    そして何より、そのチームメイトに……だ。


    まず、彼、跡部。
    手塚と並ぶ関東の超強豪。
    相手の弱点を見抜く『インサイト』という技を持つ。とにかく厄介な男だ。
    多少ナルシストで、自らをとても高く評価してるが、決して自信過剰じゃない。


    元九州二強の橘。
    超攻撃的なテニスは相手に反撃のチャンスを与えない。
    先述したが、彼のスマッシュは僕の『羆落とし』でも返せない程の威力だった。
    猛獣のようなオーラを使う、元祖のような男だ。


    中学テニス界の皇帝・真田。
    彼も跡部と同じく関東の超強豪。純粋な実力は跡部を上回るかもしれない。
    『風林火山』と名付けられたタイプの全く違う技を4つ持ってる。
    『林』と『山』は見た事ないが、いずれも強い事は間違いない。


    …そして青学(ウチ)の、越前。
    一年生ながら、上記の3人をも凌駕し得る実力を持ち得てる。
    彼に何より驚かされるのは、その成長スピードだ。
    試合の途中ですら、彼は何らかの糸口を見つけ、成長する。
    僕が知り得る範囲では、彼は公式戦負け無しだ。
    もうもはや、手塚すら超えつつある…。

    青学の柱を奪い取る事を期待されてる超一年生(スーパールーキー)。


    反則的なまでの、オールスターチームだった。


    「何故俺がお前に情報を洩らしたか分かるか? それを知ろうが、お前ら…いやど
    のチームにも勝ち目は無ぇからだ!ハハハハハハ!」


    「言っとくが…テメーの使うカウンターなんて小細工、俺には通用しないぜ…」


    …そんなの、分かっていた。
    手塚や跡部には勝てなくても、仕方なしと思ってた。
    勝ちに執着できない。手塚にも指摘された事があった。

    けど、手塚と跡部の戦いを見て、勝利への執着心を知り、
    そして僕は切原戦で、勝ちへの執着心、執念に縋り、勝利した。

    僕はもう…誰にも負けたくない!


    「じゃあな不二。次は大会で会おうぜ」


    彼がまた僕に背を向ける。


    「…仁王、タカさん、石田君」


    「あ?」


    何を血迷ったか帰ろうとする跡部に、僕はチームのメンバーを教えてしまった。
    そしてその後も、何も考えぬまま、僕は喋り始めた。
    熱くなってしまったのだろうか…。


    「言っとくけど、僕らのチームだってどこにも負けない」

    「もちろん跡部、僕は君に負ける気もない…!」


    「……ハッ! 下んねぇ大言壮語だな…」

    「まあ、せいぜい俺らと当るまで負けねぇこった」


    「悪いけど、大言壮語を吐いてるのは君の方だよ」


    「………」


    跡部は軽く笑みをこぼし、自動ドアから去っていった。


    「………そうだ」


    そうだ。僕は誰にも負けない。負ける訳には行かない。
    最初は嫌だったけど、会ってよかった。
    跡部のお陰で俄然、やる気が沸いてきた。


    跡部… 君が通用しないと言ってたカウンターを、見違える物に仕上げてあげる
    よ…。

489/ 番外編 最終話 決意
・投稿者/ キリ
・投稿日/ 2006/09/19(Tue) 21:17:51
・IP/ 125.203.145.162

    大会まで、あと3日。
    出場メンバー及び対戦表が全てのチームのリーダーに配られた。

    仁王達の相手は鳳チームだった。

    仁王はメンバーの方を確認してみた。


    『鳳・伊武・南・佐伯』


    仁王は仁王なりに、これでどういう風にチームを構成するか考えてみた。


    S1・伊武 S2・佐伯 D・鳳・南


    大体こんなもんだろうと思った。
    彼が考える限りでは、これが一番あり得るらしい。


    ―――ならばこっちは、何も替えず、だ。


    今仁王の頭の中で対戦表が出来上がった。


    河村・石田VS鳳・南

    不二VS佐伯

    俺(仁王)VS伊武


    相手の方は何度も言うが、あくまで予想。
    仁王の理想とも言えよう。

    いや、正直シングルス1はどうでも良かった。
    実は仁王、まだチームの誰にも言ってなかったが、極力自分にまわる前に決着を着
    けてほしいと思ってた。
    別に試合がしたくない訳じゃない。したい訳でもないのだが。

    仁王が今回集中した事は、自分がリーダーとしてどれだけやれるかだ。
    ここまで来て、仁王は自分にとっても予想以上のチームが出来たと思ってる。


    最強のパワーを身につけた河村と石田。
    自ら前へ進みだした天才・不二。


    ちょっと上記の表現は間違ってるかもしれない。
    『自分にまわる前に決着を着けてほしい』というより、
    『自分にまわる前に決着が着く』と思っているのだ。

    前者だと、まるでやる気が無い様に感じれる。しかし全くそんな事は無い。

    リーダー仁王 雅治。彼はこの大会、優勝する気である。


    不二からあの日の出来事を聞いた。オールスターチームがいる事も知っている。
    しかし、彼はその話を聞いた時、不二にこう言った。


    『それがどうした』


    不二は少しあっけらかんとさせられたが、くす…と笑い『そうだね』と言った。


    仁王は再び対戦表に目をやる。
    そのチームと戦うとしたら、決勝。


    ―――上がって来い、跡部。お前らも優勝する気なんだろ…?

    ―――早く教えてやりたい…。


    ―――強い選手の寄せ集め=強いチームでは無い事を…

    「!」


    仁王の乗ってた電車が目的の駅に着く。
    例のコートの最寄の駅だ。

    ホームに設置されてる時計を見る。
    集合時間40分前。ここから5分ほどで着くと考えても、35分前。
    早く着きすぎたと、仁王は額をパンと叩いて軽く後悔した。

    時間まで何をしようと考えているうちに、コートに着いた。
    仁王は驚いた。もう既に、3人が打ってた。

    一体いつから来ていたのだろう。彼はもう、汗だくだった。

    笑顔になった仁王は、すぐ彼らに合流した。
    結局練習は、夕暮れまで続けられた。

    そして解散前、仁王は結構長く話した。
    冒頭のチーム構成について。自分の考え、決意について。

    皆、真面目に聞いた。同意した。
    特に『優勝する』という事。
    同意どころか、全員ハナっからその気だったようだ。


    「せっかく出るんだし…やっぱり、ね」


    「このチームなら優勝できると踏んだから入ったんです」


    「負けたくないだけだよ。僕は」


    三者三様。理由は様々だが、皆、目指す場所は同じだ。


    前日だけ、練習は休みだった。
    しかし、時間が流れるのはとても早く、もう大会当日となっていた。


    待ち合わせの場所…。分かりやすく言えば会場となる場所に着いた仁王。
    もう既に、結構な人数が集まっていた。

    ごくりと、仁王は唾を飲み込んだ。
    彼らしくも無く、少し緊張していたようだ。

    今までは、真田や幸村に引っ張られてた。自分のヘマをカバーするパートナーがい
    た。
    しかし、今回はそれがいない。自分が引っ張る存在。
    今になって、リーダーを重荷に感じ、緊張してきたようだ。


    ―――…くそ…俺らしくも無い。落ち着け。落ち着け……。


    背中を、ポンっと軽く、誰かに叩かれた。


    「辛気臭い顔はあんまりらしくないよ」


    「不二…」


    横を見ると、不二がいた。
    さらに、もう2発、同時に叩かれた。


    「もっと強気に行こうっ! いつもみたいにふてぶてしい態度でさ!」


    「悪いですけど、俺ら優勝までずっと仁王さんベンチに座らせとく気ですよ」


    「河村…石田……」


    不二が少し、前進した。
    そして振り返りながら言った。


    「さあ… 行こうか」

    「仁王……? 僕ら、ここに何しに来たんだい?」


    「! ……」


    仁王の表情が、瞬く間に柔らかくなっていく。


    ―――どうやら… 俺は少し、驕っていたようだ。


    「もちろん……」


    ―――こいつらを、引っ張る必要なんて全然無かった。こいつらはいつも、俺と並
    んで進んでいってくれてた――――――










    「勝ちに…だ!」


    全員が、再び決意を固め、ベストコンディションで臨める状態となり、関東ジュニ
    アオープンテニスは幕を開けた。


                            <番外編・完>



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掲示板管理者:マリル
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