ども林ですーフラフラと。
誤字脱字その他 底本は08年12月8日ウェブ上に掲載されている文章を使用した。出版物に通 常用いられている文章規則を適用した。
「まずは女とのつながり、仕事の向き不向きなどを見てやらなくてはいけない。セ ックスも、愛も、すべては女を満たしてやるための道具だ。女は満たされなければ 従ってくれない。そして愛されなければ輝かない。それが赤城の持論だ。赤城の女 たちは、赤城の仕事ならば喜んで足だって開く。それが赤城の仕事だからだ。―― 赤城は女を信用する。しっかりと愛してもやる。幸いにも赤城には、女たちのこと を記憶かる有能な頭脳があった。」 「記憶かる」当て字が用いられるのだろうが、読めない。
「むしろ、赤城を裏切りる女もいる。だが裏切り場、それだけ失うものも大きい。 一度裏切った女は、もう、夜の仕事は出来ない。夜の街は広いようで、狭いのだ。 噂なんてたちまた広まる。」 「裏切りる」 “裏切る”「り」欠字。
「裏切り場」 “裏切れば”打ち間違い。
「たちまた」 “たちまち”打ち間違い。
「遼は夜の街でで生まれ、育った。」 “でで”重複。
「だから同情したわけではない。そんな話は、この街ではごろごろしている。自分 もそうだ。遼の父親は飲んだれだった。母親もそうだった。決して悪い人たちでは なかったが、子供のころは息が詰まりそうだった。遼のことを父親は可愛がった が、母親は蹴ったりした。そんな母親が父親に蹴られていることを遼はしってい た。遼はそんな両親を見て、どう嫌いになればいいのかわからなかったが、今だっ たらあの両親は最悪だったと心から思える。」 「飲んだれ」 “飲んだくれ”「く」欠字。
「母親は遼をただ見ないようにしていた、そして父親がいないときは、父親似たい する憎しみをまるで呪詛のように遼に語り聞かせた。遼は、そんな両親を十五歳の ときに捨てて家を出た。あてなどなかったが、こんな家にいるよりはマシだと思っ て外へと出た。」 「父親似」“父親に”変換ミス。
「遼は耐え切れずに、その場から逃げた。誰が、俺を、罵られるだろうか。」 「罵られる」“罵れる”受動態になっている。可能のれるを用いる。
「いろいろな不満を携えて、ぶちまけて、その神様という名の何を殺そうとするだ ろうし、いるとしたら、それこそ気が狂ってしまう。このすべての不満も、悲しみ も、すべてが誰かに認められているなんて――この世には、本当に救いがなくなっ てしまう。」 「名の何」“名の何か”
「そんなんじゃないよ。……Cがほしい」 半角英字の使用。出版物だとだいたい全角にする。半角表記にするのは単語、文 章などある程度の長さを持つ場合。
「Cとは、銃のことだ。」 半角英字の使用。
「これは自分の復讐だ。女を愛しながら、憎んでいく。女たちと離れることはでき ないが――人間なんてものは、だいたいは男と女しかいないのだから、どんなに離 れたくても女と離れて生きていけるはずがない。」 文頭の一字下げ無し。
「ようやくマンションに帰ってきたが、足を勧めれなくなった。」 「勧めれなく」“進められなく”ら抜き言葉の使用。
「マンションの前に、あの夕日の娘がいたからだ。その娘の前に男が立っていた。 父親らしい男が手をあげて娘を叩いた。娘は悲鳴をあげはなしかった。それで、よ うやく、ああ、あの娘は――声がないのか。」 「あげはなしかった。」“あげはしなかった”転位。
「遼はしばし考えるようにしてから懐から鍵をあけにかかった。悪がきだったとき にさんざんこの技術は学び、さらにはホスト時代も何度が活用した。鍵開け技術と いうのは、さして難しいものはない。少しだけ器用であればいいのだ。」 「何度が」“何度か”打ち間違い。頭の中で文字を追う働き(内言)が強すぎる。 そのため打ち出すときのいろいろな音と記号の不一致のミスに気がついていない。
あちらこちらに助詞の異常な接続が見られる。ただし完全に意味が通らなくなる ほどではない。また音位転移(なしかった)、語の強調(か→が)、口語の使用 (勧めれなく)、見直しの不足(父親似・名の何)などが観察される。これらは語 を作り出すときに内言の働きが強すぎ、口語体での打ち出しに対して文語としての 整形が追いついていないためではないかと思われる。
感想
文体に勢いがあり口語の速さがある。ただし助詞の用法・意味の滑らかな疎通・ リズムが粗い。意味を追い、脳裏に思考の感触を作り出す時点でうねりの様なラグ が生じる。その点で粗い。 読んで価値観を作り出す上で、扱っている劇が重い。人生には重たい苦痛や苦悶 が多い。すると人間はカタルシスを得ようとして虚構の中になにがしかの理想や理 念を求める。原文の劇では浄化が生じず(与えられず)価値観を作り出すことが難 しい。人生が糞か屑かさもなくばゴミだと知っている人間にとってはさしたる問題 ではないが、なにかあると思っている人にとっては、ある一定の体験の完了を得に くい作品だろうと思われた。体験の経過には富んでおり、またドライブ感がある。 展開が速く行為・事件が刺激的である。
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