初めまして。今企画にてご一緒させて頂いております、叶儀シウと申します。 この度、古川さんの「八日目」を拝読致しましたので、感想させて頂きますね。
やや文語的な文章に惹き込まれました。 硬く古めかしい言葉遣いひとつで、主人公の性格はもとより、構築されている世界 がどんなものかということまですぐに感じさせらて、文章の巧さに呻らされまし た。儚げな容貌でふっと現れた孝の存在もあり、繊細な絵柄の挿絵が似合いそうで す。 日を追うごとに切迫する主人公の気持ちと対称に、ぼんやりと、しかし確かに鮮明 に立ち上ってくる記憶のようなもののコントラストがとても印象的でした。そもそ も孝自体の実在感が希薄なので、八日目に何が起こるのか、拝読中ずっと恐ろしか ったです。
そしてその八日目。 物語における神隠しという現象は、ともすれば唐突に聞こえがちですが、この作品 では初めから文章がどこか非日常的なものを感じさせる書き方だったので、全く違 和感を覚えませんでした。どころか、「あちら」の幻想的な風景と共に、しっくり くると感じてしまったくらい。 消えてゆくところだというのに、記憶を取り返した孝が、途端に現実味を帯びる存 在に変化したのも皮肉ですね。(そして「自嘲」の表情一つでそれを表現されるな んて…!感服です) しかし最後、主人公の喪失感は「記憶」が原因ではない…のだと、解釈させて頂き ました。記憶を失った喪失感ではなく、あれは孝を失ったことに由来しているので はないかと。この八日間で、彼にとっての孝は確かに大切な存在になっていたんじ ゃないでしょうか。とか、妄想してみました。
もうひたすらに緩やかに物悲しい空気に陶然とさせて頂いておりました。 余韻まで美しい作品をどうも有難う御座いました!
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