はじめまして、めいと申します。
「高機能自閉症」という症状についてはよくわからないので、小説を読んだ単純な 感想を。
人の感情を演算ではじき出そうとする感情の乏しい主人公と、狭い空間の中で少数 (二人)の登場人物だけで進んでいく流れは、"機械仕掛け"というテーマを上手に表 現していると思います。
ハヤトは特別な人間として周囲には見られているようですが、このように人の感情 や行動を決まった枠(計算)に当てはめて理解しようとする人は、現代にはわりと多 いのではないでしょうか? たぶん、ハヤトに共感が持てると言う方も多いと思い ます。"近くにいる相手+目が合う=微笑む"などという式には、私もドキリとしま した。西洋人には理解できないと言われる"モナリザの微笑み"ですかね?
決まった方程式で相手を理解しようとするが、人の感情とはそう単純に理解できる ものではなく、ゆえにその複雑さに疲れてしまい、人間関係を良好に保てない人が 世の中には多いのではないかと。その点においては、このお話はごく日常のどこに でもある風景を描いているのかもしれませんね。作者様は、日常のどこにでもある ありふれた風景に丁寧に目を向ける方なのではと思いましたが、いかがでしょう か?
ただ、このお話のラストはとても前向きで、主人公のハヤトはすべてが"大丈夫"に なる"法則"を見つけてみせる と決意しています。ありふれた日常を描写して読者 の共感を得るだけではなく、その少し先への道を作っているところがなかなか心憎 い。他人を理解できず悩んでいる胸の内に(明日からもがんばってみようかな?)と いう思いを抱かせてくれるラストは素敵ですね。問題提起だけしておいて後はほっ たらかし、では読者は納得しないでしょうから。ただ雰囲気に浸りたいだけなら別 ですが。
ラストにまで"法則"なんて言葉を出してくるところには笑えますし、冒頭から中盤 にかけての改行の少ない書き方は"機械仕掛け"という言葉の雰囲気に合っているよ うに思えました。テーマを大事にした良い作品だと思います。長々と書いてしまい ましたがおもしろかったですよ。
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