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勿論元の体より、今現在自分自身の体の事だ。
姿が気になる。名前が気になる。年齢が気になる。性感帯が気になる。とりあえず今は、自分自身の姿についてだ。
俺は踵を返しトイレに戻ろうとした。が急速に意識が揺らぐ。何故か眼前の景色が溶けかけの飴細工のように歪んでいるのだ。体中の芯が痺れ上がり、意識が、暗い、底知れぬ闇へと……溶けて、消えて、まっさらに……なってゆく。し、まっ、た。まさか転移が、始まった、のか……
キーンとした耳障りな音が耳朶を震わせている。
俺の意識は見知らぬ処へと飛ばされてゆくのが解る。電気信号のように、あるいは光ファイバーのように魂が一本の線になり、光速で意識が移動す。
ホワイトアウト。光が眼先を差す。同時に柔らかい壁にぶつかり辿り着いた先は、屈強な胸板の上だった。筋肉隆々で腹筋が六つに分かれている。胸板には程よく胸毛が生えているようだ。惚れ惚れするような胸板を眺めてみていると突然息をするように動き出した。
目前の胸板に合わせ俺の体が跳ねる。刺激が、溢れんばかりの快感が俺を襲ってきた。
「ひゃうっ!?」
何が如何なっているんだ!? そ、それに俺の口から女のような高い声が出ている、だと。
何所かで聞き覚えのある声だけど、ま、まさか!?
「はぅん!」
考えようとしたが思考が回らない。耐え難い。至極強烈な、背筋を剣で貫かれているような鋭い刺激が、この体を奮い立たせている。
その度に視線が白く揺らぐ。激しい、激しすぎる。何が、何が起きているんだ!?
俺は見えずらい眼を確りと窄めて前を見つめ、自分の状態を確かめた。
そんな、う、嘘だろ……
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