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冨美枝は、床に落ちたヘッドキャップを拾い上げると、4枚は小包の中にもどした。一枚だけ手に持って、目の前に持ってきて、しげしげと眺めてみたり、伸ばしてみたり、被ってみたりしていたが、しばらくすると飽きたのか小包の中にそれをもどし、小包を元どおりにすると、何事もなかったかのように、部屋を出て行った。ドアを開け、部屋を出て行く時に、冨美枝の口元にかすかに笑みが浮かんだ。
その頃、俺はむしゃくしゃしながら街をぶらついていた。それはそうだろう。全財産をほとんどつぎ込んで買ったものがあれでは、泣くに泣けなかった。
これから夏に向かってイベントが目白押しなのに、資金がないのだ。俺の目の前には、真っ暗な未来しか見えなかった。
「ヘイBOY!?」
がっくりと肩を落とし、生ける屍のようにふらふらと歩いていた俺の後ろから若い女の声がした。
「ヘイBOY!」
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