読売新聞の朝刊一面から二面にかけて掲載されていたものですが、現在、日本人の
死亡原因の1割は煙草だそうです。毎年、１０万人を超す人が、たばこが原因で亡く
なっています。人の健康、生命に直接かかわる問題であり、嗜好とか趣味の問題で
はなくなりました。世界保健機関（WHO）は、2030年までに全世界で年間に800万人
以上の人たちがタバコの原因で死亡する、と予測しています。
また、WHOの下部機関である国際癌研究機関（IARC）は、2004年に世界中のタバコ関
連の論文を厳密に評価した結果、タバコの煙は直接人に吸い込まれる部分はもちろ
ん、周りに及ぶ煙も、もっと明らかなヒトに対する発ガン物質と定義している。
2003年5月の世界保健総会で、「タバコ規制枠組み条約（FCTC）」を採択した。その
主な内容として、�，燭个垣任箍然覆琉�き上げ��公共の場所や職場における禁煙環
境の整備��たばこ広告の禁止�い燭个格饒�へのわかりやすい健康警告表示――など
があり、日本政府も翌年６月、これを批准した。
タバコは長い間、人の嗜好、趣味、一種の文化と見なされてきた。しかし、世界的
潮流を前にして、2004年3月、アイルランドはパブやバー、レストランを全面禁煙と
し、世界を驚かせた。パブでは、酒とタバコをのみ、談笑する人々の姿は世界中に
認知されていたからである。これと前後して、ニューヨーク市でも、ノルウェー、
ニュージーランド、ウガンダ、ブータン、イタリアなども、スモーク・フリー（禁
煙）法を実施した。
また、ニューヨーク市では、2002年から包括的な完全煙草コントロール計画を実施
して、たばこ税を上げ、スモーク・フリー法を実施し、禁煙のための医学的支援、
メディアを使った徹底した啓発教育などを実施した結果、10年間下げ止まりだった
喫煙率が2割も減少し、18％を割り込んだという。煙草が健康上、有害であることは
1950年代に学問的に確立された。しかし、以来50年以上、その害や依存性を否定す
るタバコ会社や無知な方との闘いが続けられることとなりました。
先進国の一部では、タバコ政策を対がん戦略、あるいは健康上の問題として積極的
に展開した結果、喫煙率は20％以下となった。そこで、タバコ会社は販路を開発途
上国に求めた。1980年代の日米貿易交渉による市場開放の結果、現在の日本の輸入
タバコのシェアは35％に達し、そのうち実に97％は米国製であり。米国のタバコ会
社は、自国でタバコが売れなくなると、無知な日本人や発展途上国に利益を求めた
わけである。
現在、我が国の喫煙率は、男40％、女10％、全体で25％を切ったところである。
1960年代に、男84％だった喫煙率を40％まで低下させたわけだから、これをさらに
半減して20％をとすることは不可能ではないだろう。忘れることができないのは、
1904年専売事業法、1984年には、タバコ事業法と、２つの法律によって我が国のタ
バコ事業の発展の促進が図られてきた、という事実である。これはとりも直さず、
タバコによる財政確保と産業振興を意味する。
人の口や鼻から人体に入るものはすべて法律で厳しく規制されている。食品や添加
物、食器は食品衛生法、飲料水は水道法、空気は大気汚染防止法、そして衣料品は
薬事法による。しかし、従来、タバコはすでに健康上の危険性が長く認識されなが
ら、我が国では大麻とは違って合法的に認可され、危険性に見合った規制が行われ
てこなかった。個人の問題は抜きにして、国としては、公衆の健康の問題として最
優先でタバコ問題を規制の面からも考えるべき時期にきていると学者は言います。
癌対策基本法が施行された今、対癌戦略としても極めて重要です。2002年10月に
は、東京都千代田区が「マナーからルールへ」を標語として路上禁煙条例を決定し
て多くの追随する自治体が現れた。また、日本呼吸器学会、日本肺癌学会、日本癌
学会など多くの関連学会が相次いで禁煙宣言を決めていき、日本医師会、日本医学
会、日本歯科医師会、日本看護協会など各種の団体も反タバコ活動を展開してい
る。
そして、翌年には健康増進法が施行され、これに沿って、文部科学省は受動喫煙防
止通知を出すと、全国の自治体で、公立学校の敷地内禁煙が進んだ。一方、神奈川
県は不特定多数が利用する公共的施設の置く禁煙条例案を年度内に県議会に提出す
る予定だという。民間施設を含めた不特定多数が利用する施設は受動喫煙の可能性
が高いので、罰則付きで原則禁煙にしようというものである。松沢成文知事は、自
主性に任せるだけでは受動喫煙の防止は進まない、として思い切った手を打とうと
している。
我が国のタバコ対策として喫煙率を下げ、受動喫煙の機会を減らす上で、もっとも
効果的なのは、現行1箱300円のたばこ価格を、一気に500円に値上げすることではな
いかと学者は言う。1箱1000円にする議員連盟も生まれているが、少なくとも一気に
500円以上に値上げする必要がある。500円にすると、たばこ税収2兆3000億円を上回
る増収となり、喫煙率も消費量も激減する、とする試算もある。英国の1箱約1300
円、ニューヨーク市の930円などと比して、我が国の1箱300円は安すぎる。それが未
成年者の喫煙にまでつながっている。国民の健康、生命問題としてたばこ問題を捉
え直すなら、「たばこ事業法」の廃止も考慮されてしかるべき、だと読売新聞一面
に掲載されている。
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