タバコの煙はガス成分と粒子成分です。ガスの中には一酸化炭素・アンモニア、粒
子成分には、「ヤニ」すなわちニコチンやタールなどが含まれており、人体に有害
な働きをします。煙から発生する粒子成分・タールを動物の皮膚にくり返し塗り続
けると、ガンができます。
また、可哀想なのだが、犬の気管の中にチューブをつけ、毎日7本のタバコの煙を2
年半吸わせ続けた実験では、気管支や肺にガンが発生しました。これは人間が1日35
本のタバコを、12年間吸い続けたのと同じ条件になると考えられています。
タバコの煙の中には約400種類の化学物質が含まれており、発がん性物質、発がん性
促進物質は約200種類が確認されています。代表的な発ガン性物質はダイオキシン・
ベンツピレン・シアン化水素・ベンゼン・一酸化炭素・ポロニュームなど、猛毒の
物質が多数含まれているのです。
タバコの害で一番の問題なのは、吸っている本人はフィルターを通しているが、周
囲の非喫煙者は、副流煙を直接吸い込み多大の健康被害を受けるという事です。ニ
コチンは、タバコだけに含まれており、成人でも、紙巻きタバコ20本分のニコチン
によって死亡するほど毒性が強い物質です。
煙の中のニコチンは肺から吸収されます。タバコを1本吸うと、血圧は約15％上が
り、脈拍は約40％増え、心臓への負担が大きくなります。また、皮膚温は約3℃低下
します。これは、ニコチンに全身の血管を収縮させる作用があるためです。
我々の体の中では、赤血球が酸素を運んでいますが、一酸化炭素は赤血球と結合す
る力が非常に強いので、赤血球から酸素を追い出して一酸化炭素が入り込みます。
すると血液は酸素を運搬できなくなり、体の中は酸素欠乏になります。酸欠状態が
続くと、心臓の弱い方、心臓に病気のある方は、心筋梗塞や狭心症の発作が起こり
やすくなります。
また、健康な人でも、酸欠状態が続くと脳の働きが鈍ってきます。ぼける方が多い
のはこのためです。気管支の表面は、薄い粘液の膜で覆われていて、その下に線毛
細胞が並んでいます。外部から吸い込まれた埃や細菌は、粘膜に付着し、線毛細胞
の働きで、咳や痰と一緒に外へと吐き出されます。
だが、タバコの煙は、粘膜を刺激し、線毛細胞を破壊する物質が含まれているた
め、粘液の分泌が増し、線毛細胞の働きが弱まって、痰が多くなり、年中咳をする
ようになり、気管支の粘膜が傷んで、細菌が増殖して炎症をおこし慢性気管支炎に
なります。
やがて、タバコの煙は、細い気管支にも炎症を起こして、空気の通りが悪くなり、
息切れを起こします。さらに、長年吸い続けていると、肺胞の壁が壊れ、肺気腫と
いう状態になります。最終的には死亡率が一番高い肺がんになるのです。
あなたの一本が、周りの人を苦しめています。タバコ産業の本拠地アメリカでは、
1965年からタバコの包装に「注意、あなたの健康に害を及ぼすかもしれません」と
書かれています。タバコの規制が厳しいアイスランドでは、分かりやすいイラスト
表示することを義務付けています。
また、スウェーデンは、成分表示をニコチンやタールだけでなく一酸化炭素につい
ても義務付けられています。喫煙の危険性を直接警告する表示、カナダの紙巻きた
ばこの包装警告表示には、「ガンの原因です」「喫煙はあなたを殺すかもしれませ
ん」「中毒になります」「致命的な肺疾患の原因です」「タバコの煙は非喫煙者に
とって重大な肺疾患の原因になります」「妊娠中の喫煙はあなたの赤ちゃんを傷つ
けます」「心臓発作と心疾患の原因です」と書かれています。
タバコの副流煙の影響で、吸わされている子供は虫歯のリスクが高まると、２００
４年３月のアメリカの医学会誌に掲載されました。その記事によると、ニューヨー
ク州ロチェスター大学児童健康研究センター研究チームが発表したもので、家族の
誰かがタバコを吸う場合、その副流煙により子供は虫歯のリスクが高まるという内
容です。
タバコの副流煙を吸わされると、血中のニコチンの代謝産物である血清ニコチンの
レベルが高くなり、これにより乳歯が虫歯になる危険性はおよそ２倍になるという
調査結果が出たそうです。調査対象は４〜11歳の3531人、副流煙を遮断すると27％
の乳歯に虫歯の発生が見られなかったことが確認されました。
副流煙を減少させることは、多くの病気の予防だけでなく、子供の虫歯予防にも重
要なことなのです。自分のためではなく愛する家族のためにタバコは止めていただ
きたいものです。自覚症状があまりないこの病気は気が付けば手遅れになっている
かも知れない危険な病気なのです。
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