台湾の方から日本人を見ると、日本人はもともと争いごとを嫌う、平和的な民族に
見えるそうです。「和の精神」というように、戦いや戦争を通して利益を獲得する
より、争いを避けて平和・共存することこそが利益と考える民族性を持っている
と、明治以降、弱肉強食の国際社会に、無理やり引きずり出された以上、富国強兵
を国是とせざるを得なかったが、それでも絶えず国際環境の安定と平和の確立を求
め続けていたように見えたと語っています。
隣国・中国の不安定な情勢は、日本にとっては座視できるものではない時代。それ
はロシアをはじめとする列強の進出を誘発し、ひいては日本の存亡に関わる脅威と
なっていくからです。「富国」のため日本も中国に経済進出し、勢力を扶植しなけ
ればならなかったのは、そのためで、日本は中国の安定と日中の平和的提携関係を
求め続けたのです。
列強による中国進出の課程を時期的にみると「アヘン戦争〜日清戦争」英・仏など
が武力・脅迫で不平等条約を締結し、中国での特権を獲得し進出の基盤を開いた。
これに国防上の危機を抱く日本は近代化に着手していく。「日清戦争〜日露戦争」
日清戦争での敗北で、中国が「眠れる獅子」でないことが判明し、独・露をも含む
列強が領土・利権の争奪戦を開始。このような「支那分割」の情勢に対し、日本で
は「支那保全」が国論となった。露の満州進出は日本の絶大な脅威となった。日露
戦争に勝利した日本は南満州の権益を獲得し、列強角逐の舞台に参入した。
「第一次世界大戦〜支那事変」大戦の勃発で西洋勢が中国を顧みる余裕がなくなっ
たため、日本は権益獲得の遅れの挽回を急いだ。21カ条要求など、しかし戦後、米
英は日本の進出を抑えるため、ワシントン会議で9カ国条約、門戸開放主義を成立さ
せ、日本は満州と華北で勢力を固め、米と英は蒋介石の南京政府を積極的に援助
し、日本に対抗した。日本の事情は、昭和9年4月17日に外務省情報部長天羽英二
の、定例記者会見での発言から読み取れます。
「東亜における秩序維持の責任は、日本と支那とが分担するより他にない。従って
支那の保全統一と秩序の回復とは、日本のもっとも切望するところであり、同時に
それが支那自身の自覚と努力に待つべきは、過去、現在、将来にわたってしかりで
あろう、支那側がもし他国を利用して日本を排斥し、東亜の平和に反するような手
段に出るときは、日本としてこれを排撃しなくてはならぬ、各国が中国に武器、軍
用機を供給し、軍事教官を派遣し、政治借款をおこすがごときは、日支離間を策
し、極東の平和および秩序の維持に反するので、日本としては黙過できない」
この声明が出たのは、「反日侮日」気運の高まりのなか、中国政府が各国に経済援
助を要請するに際し、日本だけを除外しようとする動きを見せた背景がある。日本
の中国進出に掣肘を加えようとする米英その他各国の動きもあった。米国紙の中に
はこの声明について、「東洋モンロー主義」と非難するものもあった。日本は東ア
ジアの平和を希求しながらも、このような中国と列強の提携による対日敵対行為に
絶えず苦悩していたのである。
昭和13年11月3日、近衛首相が発表した、いわゆる「東亜新秩序」声明の一節では、
「日・満・支」三国の政治・経済・文化などの提携が必要だと訴え、中国（蒋政
府）にも新秩序建設への参加を強く求めました。当時の日本政府がつねに強調し
た、戦争目的としての「平和」や「安定」は、つまるところ西洋列強の妨害を受け
ることのない、日本と中国を中心とした、東アジアの新たなる共生秩序を実現した
いとの切望を意味しているのです。
だが、東亜の新秩序を願っていても中国人の裏切り遭うのです。盧溝橋事件の3週間
後、北平（北京）東方の通州では、済南事件を上回る日本人居留民虐殺事件が発生
しました。これを、通州事件といい、当時通州には親日政権の「冀東防共自治政
府」が設立され、一万余の保安隊がいました。日本はこの冀東保安隊を信頼してい
たので、日本の兵力はほとんど配置していなかったのです。
事件の原因は、盧溝橋事件の直後のラジオでデマを流布したことでした。「日本軍
は敗走した。29軍は大挙して冀東を攻撃する。�犁凝圻當冥�の敵を屠り、殷汝耕
（主席）を血祭りにあげよ」これを鵜呑みにした通州保安隊千数百名が寝返り、突
如日本の民を襲撃したのである。日本側の兵力が手薄なことに乗じ、小銃・機関銃
を乱射しながら日本人居留地に突入し、虐殺・凌辱・略奪のかぎりを尽くしたので
ある。
これにより、現地の日本人385名のうち、幼児12名を含む23名が虐殺され、多数の女
性は強姦されたあと陰部を銃剣で突かれ、えぐりとられ、首に縄をかけられ、引き
回しにされたうえ、目玉をえぐられた者もいた。牛のように鼻に針金を通されたま
ま殺された子供や、生きたまま片腕を切断された老婆もいた。これらはすべて中国
伝統の虐殺の作法である。
通州事件は中国の抗日戦史の中では「反正」（親日政権に対する�狎亀舛糧人隲瓠�
「義拳」と評価されている。愚昧な保安隊による単なる虐殺事件に過ぎないのに。
これらの事実は、東京裁判で弁護側から提出された証拠に記録されているのだがこ
の事件に関する証拠は却下されたのです。なぜなら、中国人の暴虐の事実が明らか
になると連合国側に不利になると判断されたからである。
この残虐事件によって、中国兵に対する日本将兵の憎悪心は燃え上がったことは間
違いない。しかしそれでも日本軍は、北京が日本軍に占領されていることも知らず
に逃げてきた中国側保安隊を、あえて攻撃することなく城外に逃がしたのです。そ
れは、中国の民とは仲良くしようとする戦争の不拡大方針に基いた判断だったから
なのです。
|